『orange-オレンジ-』全5巻のネタバレ感想。作者は高野苺。掲載誌は別冊マーガレット。出版社は講談社。ジャンルは少女コミックの恋愛漫画。既に実写映画化が決まってるそう。発行部数も現地点で既に300万部超えで、最終5巻は品切れ状態らしい。

そこで「漫画orange オレンジ」は面白いか、つまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は高校二年生に進級したばかりの高宮菜穂。

orange1巻 高宮菜穂にナゾの手紙
(1巻)
そこへナゾの手紙が届く。差出人の名前は「高宮菜穂」。手紙を見てみると「私は10年後の未来から手紙を書いています」というイタズラとしか思えない内容だったものの、そこに書かれていることが予言のように次々と起こる。

orange1巻 成瀬翔
(1巻)
その最たる例が、成瀬翔が始業式に転校してくるというもの。しかも成瀬翔の席は自分の隣に座ることまで予知してあった。徐々に手紙の内容を信じ始める高宮菜穂。

10年後の自分が手紙を送ってきた目的を先にネタバレしておくと、この成瀬翔の命を救うため。実は成瀬翔が自ら命を絶とうとするので、それを過去の自分に止めて欲しい。だから記事タイトルでは「過去に戻れたら」と書いてますが、厳密には異なります。SFモノではありますが、高宮菜穂たちが直接過去や未来を行ったり来たりするわけじゃありません。

orange3巻 手紙の内容・指示
(3巻)
だから手紙の内容には「この日こういったことが起きるから、ああいうことはしないでくださいorしてください」といった指示が事細かく書かれてる。でも実際に事を運ぶのは難しく、またこの指示自体が正しいのか?といった疑問を持ってしまうこともある。所詮は一方的な意思疎通ですから。

orange1巻 事故じゃなかった
(1巻)
そもそも「何故10年後から手紙が来たのか?」ということですが、それまで高宮菜穂たちは成瀬翔の死は事故だと思ってたから。でも高校時代に残したタイムカプセルを開けた時、成瀬翔の手紙は非常に簡素なもので未来の自分に対する言及はなかった。そこで高宮菜穂たちは「成瀬翔が自分で命を絶った」ことにようやく気付く。

高宮菜穂だけではなく、友達だった須和弘人や村坂あずさ、茅野貴子、萩田朔たちと共に、成瀬翔を救うことはできるのか?みたいな展開。漫画タイトルの「orange」は「オレンジジュースのように酸っぱい思い出」的な意味合い。

成瀬翔の自責の念が切ない

そもそも成瀬翔が何故生きたくないと思ったのかですが、これは母親の存在。成瀬翔の母親はずっと病弱で精神的に参ってる状態。

orange1巻 母を失う成瀬翔
(1巻)
ただ始業式の日に、自分の命を絶ってしまった成瀬翔の母親。

この始業式の日は、高宮菜穂らに誘われて成瀬翔は帰宅するのが遅くなった。その日は母親が新しい病院に転院する日だったので、「早く帰ってきてね」と二人は約束してた。でも面倒くさいと思った成瀬翔は、結果的に約束を破ってしまう。母親は精神的に不安定だったこともあって…。

orange3巻 後悔しっぱなしの成瀬翔
(3巻)
だから成瀬翔はこの日の自分の選択をかなり後悔してる。一方で手紙の指示のおかげか、高宮菜穂たちとはどんどん仲良くなっていく。自分のことが励まされる度に、却って自分を責めてしまう。そして高宮菜穂たちに八つ当たりしてしまう。

orange5巻 成瀬翔の後悔
(5巻)
にっちもさっちもいかない状態に「やり直したい。全部最初から。友達になんてならなければよかった」と自責の念に苦しむ成瀬翔が切なすぎる。

orange2巻 成瀬翔の笑顔
(2巻)
成瀬翔が見せてた屈託のない笑顔も、実は色んな意味を持ってたのかなと。

orange5巻 生きよう
(5巻)
オチでは成瀬翔は「生きよう」と決意する。高宮菜穂にチョコをもらったことが、些細なことではあったけれども、生きる希望に繋がった。手紙の内容や指示も効果的に働いたカタチ。

そして成瀬翔は最終的にタイムカプセルに「10年後のみんなも変わらず、仲良しで笑っていますか?菜穂と結婚、できていますか?ちゃんと毎日、生きていますか?」とポジティブな手紙を入れる。そこへ10年後の高宮菜穂がシンクロするように「もしもまた生きることが辛くなる日が来たとしても、その時は救うよ、何度でも何度でも」と終わる。


世界観がパラレルワールド

ちなみにラストの最終回の結末をネタバレしておくと、結果的に成瀬翔は救われますが、10年前の自分に手紙を出した高宮菜穂そのものは成瀬翔と結婚するわけじゃない。

何故なら、10年前の時間軸と現在の時間軸は別々で、それぞれが重なり合うことはないから。いわゆるパラレルワールド。別世界にいる成瀬翔が救われただけで、自分たちの世界にいた成瀬翔は死んだまま。

つまり「現在」の自分の人生に変化があるわけじゃないので、あくまで同級生の須和弘人と結婚したまま。須和との子供もいる高宮菜穂の人生は同じ。リアルっちゃリアルな解釈だと思いますが、ここらへんが女子中高生といった読者層的に理解できるのか、この結末に納得できるのかは不明。

でもだからこそ恋愛ベースではなく、どちらかと言うと友情ベースの青春群像劇で自分には面白いと感じました。一歩退いて自分が好きだった男の子を助けて、現在は現在で最愛の男性(須和弘人)を支えるというリアリスティックな感じは、少なくとも大人向けっちゃ大人向けな恋愛マンガかなと思います。


総合評価・評判・口コミ



『orange オレンジ』のネタバレ感想をまとめると、成瀬翔の苦しむ姿に思わずキュンキュンしちゃいます。結果的に高宮菜穂とは結ばれないものの、それが「淡い初恋感」も演出されていた良いのかも。いや厳密には、別世界にいる成瀬翔と高宮菜穂は結ばれるはずですので、それが余韻の残る終わり方をしてる。

個人的には先程も言いましたが、「友情」に重きが置かれてる印象。だから男読者が読んでも、それなりに面白いかも。10年後の高宮菜穂が言った「もしもまた生きることが辛くなる日が来たとしても、その時は救うよ、何度でも何度でも」というセリフが恋愛感情も飛び越えたものがあって好きでした。

5巻というボリューム感もちょうど良い。展開に中だるみ感もなくもないですが、小中学生の女の子でも全巻大人買いしやすいと思われます。未来と過去、現在といった時間軸の違い・場面転換はもっとハッキリと大胆に描いて欲しかった気がします。

ちなみに『春色アストロノート』というマンガも5話分掲載されてます。少女コミックはページ数が埋まらないのか、結構読み切りの掲載が多い不思議。