『中間管理録トネガワ』3巻のネタバレ感想。作者は荻原天晴、橋本智広、三好智樹、福本伸行。月刊ヤングマガジンで連載中のスピンオフ。


帝愛の悪魔的面接

初っ端のネタは帝愛ファイナンスの入社面接。超絶悪徳ブラック企業でもしっかり新卒大学生は欲しいらしい。だから就活生は他の企業と同じくエントリーシートが必須。そこで合格したものだけが筆記試験を受けることが出来て、更に合格したものだけが面接会場へ行くことができる。

面接通知には「当日はあなたらしい自由な服装で会場へお越しください」と書かれてる。それを鵜呑みにした大学生がラフな格好で来ることもしばしば。ただ、これが悪魔的な落とし穴。もちろん帝愛グループ社員は「上下黒のスーツ」が暗黙の了解。帝愛グループに「TPOも弁えられないクズ」は不要なのである。

この面接を担当するのが、このマンガの主人公である利根川。その人である。ただ学歴も筆記テストも受け答えも聡明そのもの、そして何より帝愛への熱意にあふれた就活生を不採用にする利根川。モブ黒服が驚く。

利根川は言う。「帝愛を素晴らしい企業と言ったが、その時点でズレている。帝愛はブラックの中のブラック」。つまり帝愛のブラック企業っぷりを見抜けていない就活生は長続きしないという理屈。この理不尽な選考基準がたまらない。さすが帝愛やでぇ。帝愛からのお祈りメールに就活生は更に震え上がることだろう。クックックッ。

次に面接にやって来た就活生は、既に帝愛社員の弟・萩尾。読み方は「おぎお」ではなく「はぎお」。この間違いの訂正の仕方が兄の荻尾にそっくり。思わず利根川の頬も緩む。ただ結果は不採用。
中間管理録トネガワ3巻 帝愛の面接1
(3巻)
何故なら「これ以上、まぎらわしい苗字は要らない」から。今度は萩尾兄は「おぎおあに」か「はぎおあに」か荻尾弟は…といった具合に指揮系統が混乱してしまう。じゃあ何故採用面接時で弾かなかったんだ?みたいなツッコミはさておき「なるほど」である。

荻尾の次にやって来た就活生は、間違いなく帝愛的にも逸材だった。経歴も完璧、筆記テストも全教科満点、面接の受け答えも完璧。「債務者への容赦無い悪魔的措置」も理解済み。
中間管理録トネガワ3巻 帝愛の面接 クッキングパパ
(3巻)
そして何より圧倒的特徴!圧倒的アゴ!もとい圧倒的クッキングパパ!これはもう採用するしかない!

…と思われたものの、利根川は不採用の結論を出す。理由は「目につく」から。他の社員と混同するのも問題だが、その逆もダメ。何より会長の兵藤より目立ってしまったら悲しむ。

でもさすがに、ここまで来ると理不尽!そりゃあ、まともな新卒社員を採用できるわけがない!(笑)


大阪の悪魔的上司・木根崎

関西での売上が鈍化してるということで、急遽利根川が大阪支社へ出張することとなる。食い倒れの街ということで、利根川は「役得」とばかりにほくそ笑む。ただ大阪のグルメ情報には疎いので、末端の黒服たちに案内させようと目論む。

そこで取った手段がアメとムチ。大阪支社の業績が悪化してることを厳しく批判。緊張感がみなぎる社員に対して、すかさず「立場上厳しいことも言うが業務時間内だけの話。ワシは嫌いではない。酒、アフター5」とアメを与えて飲みに誘われやすい空気を作る。部下との信頼関係を築け、なおかつ自分も大阪グルメを堪能できる。何という策士。

ただ大阪支社の幹部・木根崎が怒鳴る。「利根川センセがちょっとやさしい顔見せただけですぐ気ぃ緩めよって!勘違いすな!気を緩めていいのは利根川センセに限った話や!」と黒服たちはシューン。一気に場が白ける。

この木根崎に邪魔されながらも、黒服たちからアフター5に誘われるため奮闘する利根川がとにかく健気。
中間管理録トネガワ3巻 大阪支社
(3巻)
例えば終業時間をとっくに過ぎてるのに、まさかのクロスワードパズルを始める。お前、誘われるのを待つの下手か!何で初老のジジイがクロスワードパズルやねん!さっきの策士っぷりはどこ行ってん!?

結末はやはり木根崎に邪魔をされて、利根川は黒服と大阪グルメを満喫できずに帰京します。


悪魔的なネットワークビジネス

続いて海老谷という黒服の話。1巻2巻のレビューでも登場しましたが、何かにつけて使えない部下。

利根川に対して仕事の失敗を詫びようと喫茶店に誘うものの、何故か自分だけデラックスパフェを注文してるようなヤツ。利根川も「百歩譲ってコーヒーゼリー!」と激怒。いや何基準やねん?(笑)

そこで海老谷は言葉ではなく行動で謝罪の意思を示そうと考える。つまりは仕事の損失を実際のお金で埋めようと思い立ち、ある集会に利根川を誘い出す。
中間管理録トネガワ3巻 海老谷1
(3巻)
それがまさかのマルチ商法。

中間管理録トネガワ3巻 海老谷2
(3巻)
思わず利根川も「仮にも帝愛幹部のワシを…」とドン引き。違法なヤミ金などで暴利を貪ってる帝愛グループですから、マルチ商法なぞ論外。

そして利根川は主催者に対して「月収100万円とは才能のあるものがコツコツ働いて努力を重ねた結果に到達する」とお説教。冷静に考えると何様やねんって話ですが、海老谷を救おうと「このバカにはまだ謝罪をしてもらう貸しがある。こんなマルチじゃなくてきちんとした行動で」とカッコ良く海老谷を連れだそうとする。

中間管理録トネガワ3巻 海老谷3
(3巻)
ただ海老谷は「マルチ商法じゃなくて、ネットワークビジネスです」と赤面。既にズブズブにマルチの泥沼に浸かり込んでた。だから利根川に感謝するどころか、「利根川を物分りの悪いジジイ」として下に見てた。哀しい、哀しすぎるぜ利根川のとっつぁ~ん( TДT)


一条の悪魔的接待

最後は一条。『賭博破戒録カイジ』に登場した帝愛傘下のカジノ店店長。

このカジノ店にはパチンコ「沼」がある。最近のパチンコは一玉1円とかで打つそうですが、この「沼」に関しては一玉4000円。大当たりが出たら「沼」に溜まった数万発という玉が全部貰える。つまりは一度で10億円以上といった大金をゲットすることも可能。

とはいえ実際にはカイジが攻略するまでは、帝愛グループの兵藤会長と利根川しか当てたことがない。要はインチキ全開のパチンコ台。詳しくは『賭博破戒録カイジ』を読んでください。そして3巻では利根川が「沼攻略」という名の「収益金の回収」をしにやってくる。

でも単にお金を渡すだけではつまらないと、一条は「我々は一切手を抜くつもりはございません」と宣戦布告。利根川も思わず「みかけによらずなかなかの毒蛇」と生唾を飲み、ギャンブラーとしての血が騒ぐ。

中間管理録トネガワ3巻 悪魔的接待の一条
(3巻)
ただパチンコ台の釘設定が明らかに不自然。こんな直線的なん見たことないわ。しかもセンサーを玉が通過したら役物も自動的に開く仕組み。「玉をただの一つも逃さない」状態で、もはやどうやっても入ってしまう。

つまりは一条が悪魔的なレベルで接待が下手。利根川も「この若造ガチンコを装ってはいるが、とどのつまり子供扱い」と慟哭。一条の演技も下手すぎて、正直見てられない。

前述の海老谷にしても、冒頭で触れたような悪魔的な面接をしてたら、そりゃあまともな人材は集まってきませんわなッッッ!!(笑)


総括


『中間管理録トネガワ』は相変わらず安定してる。下手すりゃ10巻ぐらいまで連載が続くんじゃなかろうか。

他だと黒崎の話が面白かった。『賭博黙示録カイジ』で利根川が失脚後、ちゃっかり帝愛グループのNo.2に上り詰めた幹部。見た目が意外と柔和だからか、「会長がイライラしてるのは生まれつきなんじゃね?」と会長・兵藤に対して失礼な言動を放つものの、何故か怒られない。

中間管理録トネガワ3巻 黒崎1
(3巻)
そこで編み出した技が黒崎の会話の後にくっついていく戦法。ただイメージ画像がクソ惨めったらしい(笑)