『蜘蛛ですが、なにか?』1巻2巻のネタバレ感想をレビュー。作者はかかし朝浩(原作)と馬場翁(漫画)。掲載サイトはヤングエースUP。出版社は角川書店。ジャンルは少年コミックのファンタジー漫画。『蜘蛛ですが、なにか?』は絶賛AmazonのKindleでもダウンロード購入・無料で試し読みが可能です。

今からレビューする『蜘蛛ですが、なにか?』は同名小説をコミカライズ化したものなんですが、割りと面白かったので色々と考察したいと思います。他にもクルマブログ《くるまン》では「4代目アクセラのフルモデルチェンジ情報」、「レクサス新型LSのフルモデルチェンジ情報」も書いてたりするので自動車好きの方は良かったらどうぞ。


「蜘蛛ですがなにか」のあらすじ物語 ストーリー内容

主人公はどこにでもいる、さえない女子高生。休み時間には友達としゃべらず、居眠りをしているようなTHEスクールカーストの底辺。今日もまた何でもない学校生活を過ごしていると、国語の授業中に突如として天井がバリバリバリ。女子高生は激痛に襲われて意識を失う。

蜘蛛ですがなにか1巻 あらすじ1
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
そして気付いた時には、何故か異世界で女子高生は「巨大な蜘蛛」に転生してしまった。思わず「イヤァァアアア!ナンデ!?蜘蛛ナンデェェ!?」と絶叫。そりゃそうだ。せめて女子的にはハーピーやサキュバスあたりがお好みでしょう…ってそういう問題じゃないか。

それよりまず蜘蛛の戦闘力のなさが問題。森羅万象、卵をたくさん産む生物ほど一匹一匹の個体は極めて脆弱と決まってる。確かに見た目こそ女子とは程遠いが、中身の弱さという点で実は「蜘蛛」に転生したのはあながち間違ってない。

蜘蛛ですがなにか1巻 あらすじ2
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
何故なら女子高生が蜘蛛に転生した場所は奥深いダンジョン。いかにも凶悪そうなモンスターばかりがひしめき合う。たかだか蜘蛛ですら人間大サイズに巨大化されてるのに、鹿やコウモリがフツーであるはずがない。

蜘蛛ですがなにか1巻 あらすじ3
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
思わず「ホギャアア!!」とやっぱり絶叫。果たして、どこにでもいるうら若き(?)女子高生は
理不尽な弱肉強食のダンジョンで生き抜くことはできるのか?…という内容のストーリー。

つまり『蜘蛛ですが、なにか?』の設定はいかにもラノベらしい設定といったところで、何故いきなり唐突にファンタジーの世界に転生するんだ?みたいなツッコミをしたら負けです。『名探偵コナン』や『サザエさん』が一向に進級しないのと同じようなもんです。


蜘蛛の主人公のキャラクターが良いw

まず主人公のキャラクターが良い。あらすじを読む限り、どう考えても人間時代は陰キャラっぽい女子高生。当然圧倒的にピンチな状況が状況だけに、不平不満をウジウジタラタラ垂れるのかと思いきや全く真逆。

蜘蛛ですがなにか1巻 主人公 ノリが軽い
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
ウジウジするの終了!はい切り替えていこう!!」とまさかのアッケラカン。往年の子役マジシャン・山上兄弟ばりの美しい「はいっ」。お前どんだけポジティブ少女やねん。人間時代の根暗さはどこ行ったんだ。確かにスパイダーマンはスパイダーマンになったことで少し性格が明るくなった気がしますが、そんな感じ?

蜘蛛ですがなにか2巻 主人公 中二病全開のノリ
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
敵を目の前にして「ご名答…ようこそ私の結界へ…さあ殺戮の宴を始めようか」と自分の蜘蛛の糸を「結界」と表現するなど中二病全開。しかも画像は単なる妄想。弱いくせにイキってるのが、ちょうどいい感じにウザくていい。

蜘蛛ですがなにか2巻 主人公 バイオハザード パロディー
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
主人公がスキルアップして毒合成ができるようになった場面では、まさかのバイオハザードパロディー。他にも『BLEACH(ブリーチ)』の名言「なん…だと…」など、ノリが良い感じにしょうもない。しかし「なん…だと…」の汎用性の高さがヤバイですな。

だから主人公は見た目は蜘蛛そのものですが、中身はしっかりノンキな女子高生。一人きりの状況特有の変なキャピキャピ感もあって、このノホホンとした間の抜けた性格につい親戚のおじさん目線で応援したくなる。

ただ主人公はノリが軽いだけじゃない。

蜘蛛ですがなにか1巻 主人公 ギャップ感
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
強敵のモンスターや悪辣な環境に四苦八苦しつつも、しっかり「力強く生き抜こう」とするギャップ感が良い。主人公の「いらっしゃいませ!死ね!」という決めセリフもどこか女子的で良い。緩めるところは緩める、締めるところは締める。このことが展開にもメリハリをつけられてて面白い。

ちなみに「蜘蛛(くも)」と聞くと虫嫌いの方はどうしても敬遠しそうですが、フォルムやキャラデザ的には可愛らしさが6割7割を占めてるのできっと問題なし。また主人公のキャラクターや性格も相まって、そこまで苦手意識を持つ必要はなさそうです。


王道RPGゲームってレベルアップしてナンボやん?

『蜘蛛ですが、何か?』の設定は転生ものではあるんですが、世界観的にはどっかの「ゲームの世界」っぽい。

蜘蛛ですがなにか1巻 レベルアップ
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
だから主人公が敵を倒すとレベルアップしていく。面白くないバトル漫画にありがちな特徴だと、例えば変に出し惜しみ感が強すぎてなかなかキャラクターがレベルアップしないこともザラ。でも『蜘蛛ですが、何か?』はポンポンとレベルアップしていくので読み心地が良い。

本当にテンポ感が絶妙で、それがストーリーや展開にも勢いをつけてる。コンシューマーゲームやスマホゲームでもそうですが、やっぱりレベルが上がってナンボ、上げてナンボ。まさにゲーム的な王道の面白さがある。

またRPGゲームだとレベルアップしていけば、普通は必殺技や魔法やスキルを体得する。面白くないバトル漫画だとやはり必殺技が覚えにくかったり、スキルを覚えても結局使う機会がなかったり、といった特徴が見られます。

蜘蛛ですがなにか2巻 バトル描写 繰糸 一本背負い
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
『蜘蛛ですが、何か?』ではちゃんとスキルや必殺技、耐性が次の展開やバトルの中で活きる。画像は操糸(そうし)。糸の周りだけスクリーントーンを削ってるのがミソ。後述しますが『蜘蛛ですが、何か?』では作者・馬場翁が描くバトル描写も上手い。

蜘蛛ですがなにか2巻 スキルアップ 地龍アラバ
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
例えばボスクラスの地龍アラバを遭遇した場面では、主人公の「恐怖耐性スキル」がグングンと上がっていく。先程のレベルアップとは違って、まさに悲壮感あふれる連続スキルアップ。演出としても巧みで面白い。

だから『蜘蛛ですが、何か?』では淡々とレベルアップさせてるだけではなく、しっかり「意味のあるレベルアップ」を描写できてる。他にも深手を追って絶体絶命のピンチなものの、タイミング良くレベルアップしたことで負傷したダメージが修復されて形勢逆転するなど、ストーリーの中に必殺技やスキルも組み込めてる。

最初は弱い主人公が徐々に強くなっていく王道的な生き様やプロセスは、まさにゲームの中の勇者そのもの。主人公のキャラや性格の良さも手伝って、『蜘蛛ですが、何か?』は読み応えがあって面白い。「さえない女子高生」という設定だからこそ同世代の読者は共感を覚えて、そんな若者が「どうすれば生き残れるか」を必死に考えて生き抜こうとする様に中年世代の読者は思わず応援したくなる。若者が頑張ってる姿に中年世代はきっと触発されがち。


鑑定スキルがゲーム実況的な面白さをうむ

主人公は「蜘蛛」である以上、特に腕力があるわけではないので当然にして弱い。ましてや中身は女子高生ということからもお察し。

蜘蛛ですがなにか1巻 鑑定スキル
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
そこでスキルポイントを使って、最初に身につけたのが「鑑定」というスキル。これが地味に漫画全体の面白さを下支えしてる要素。蜘蛛は弱者だからこそ、周囲の状況把握が必要。でも画像のように最初は「石」は「石」とだけしか表示されない。洞窟内を鑑定しても「壁」だけ。

でも徐々に鑑定のスキルレベルがアップしていくことで、自分の個体の種別名は何なのか。ここは何と呼ばれている洞窟なのか。モンスターのレベルや強さも把握できるように成長していく。まさに「弱者だからこその戦い方」を成立させてるのが、この鑑定スキル。『蜘蛛ですが何か?』では制約の使い方も上手い。

ちなみに主人公の種族は「スモールレッサータラテクト」と呼ばれる劣化タラテクト種の幼体。色んな弱さが凝縮されちゃってるような種族(笑)

蜘蛛ですがなにか2巻 鑑定スキル ツッコミ
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
主人公は腕力こそないものの異様にスピードだけは速い。これも後々自分を鑑定して気付くんですが、まさかの「韋駄天(いだてん)」補正がかかっていた。スキルレベル×100の速度アップって、まさにチート級。思わず主人公も「はいいいいい!?何このトンデモスキル!?」と自分自身に驚愕。

だから徐々に情報が明らかになるたびに色々と面白いことも発覚する。そして、その中には主人公が知りたい情報もあれば、知りたくない情報もある。狩野英孝が女子高生を抱いてたとか、やっぱり自民党のパンツ大臣はガチ犯罪者だったなど。

蜘蛛ですがなにか1巻 鑑定スキル ツッコミ
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
例えば「悪食」という称号を獲得したときには、主人公は「やかましいっ!魔物しか喰う物ないんだよ!」とキレ気味にツッコミを入れる。これがさながら漫才のような掛け合いを見ているようで面白い。主人公は異世界の洞窟内で一人きりだからこそ、鑑定スキルがちょっとした「会話の相手」にもなってる(笑)

主人公の的確なツッコミセンスも相まって、一人でプレイヤー自身がゲームの展開や状況を解説しながら孤軍奮闘進行していく様は、さながら「ゲーム実況」を眺めてるような面白さがある。これが『蜘蛛ですが、何か?』という漫画を、不思議とダラダラと読んでしまう根源なのかも知れない。鑑定スキルが本当に良い味をもたらしてる。


「蜘蛛ですがなにか」のバトル描写が地味に上手い

あと『蜘蛛ですが、何か?』はバトル描写が地味に上手い。原作ラノベも設定やストーリーを推察する限りは面白そうだと思いますが、漫画版の場合は馬場翁という作者に救われている部分も多そう。

蜘蛛ですがなにか1巻 バトル描写1
(蜘蛛ですがなにか? 1巻)
毒ガエルと主人公が戦ってる場面は、様々な構図からダイナミックにとらえたバトル描写に仕上がってる。「見やすい」という点でも高評価。主人公のキャラの良さも手伝ってか、モンスターを倒すまでのテンポ感も見事。作者・馬場翁はこれから期待大なマンガ家さんの一人だと思います。

蜘蛛ですがなにか2巻 巣を使って戦う主人公
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
他にも自ら「巣」を作って戦うなどバトル展開の幅も広い。主人公の「新設計のマイホームで相手してやる」とクモーニングスターを大股でブンブン振り回してる絶妙なマヌケっぷりも、読み味としてはシリアスすぎないので良い。

蜘蛛ですがなにか2巻 アノグラッチ
(蜘蛛ですがなにか? 2巻)
『蜘蛛ですが何か?』3巻以降のストーリーをネタバレしておくと、主人公はアノグラッチと呼ばれる猿のモンスターに襲われる。個々の戦闘力がそこそこ高いくせに、知能もかなり発達してる厄介なモンスター。しかも仲間意識が強烈に強い。

だから画像は主人公が一匹アノグラッチを食い殺したことで、一斉に群衆化して襲ってくる場面。ダンジョンの天井に巣を張っていたものの、当然猿なんで余裕で何十匹と登ってくる。「頭いいならこんな蜘蛛一匹、獲物としては割に合わないって気付けよ」という主人公のツッコミが的確すぎて笑えました。

とはいえ、まさに「殺すか殺されるか二者択一でしか終わらない」という状況。しかもアノグラッチの上位種も加勢してくるなど、果たして主人公はどう生き延びるのか?!というハラハラ展開で終わってくれてる。『蜘蛛ですが何か?』はシリアスもマヌケな笑いもいける。


「蜘蛛ですがなにか」の総合評価 評判 口コミ



『蜘蛛ですが何か?』の感想を一言でまとめるとフツーに面白かった。新ブログ「ドル漫」で書いた「おすすめファンタジー漫画12選」にもランクインさせていただきました。

かかし朝浩の原作ラノベ版は読んでないので評価や論評は避けますが、コミカライズした馬場翁の手によって予想を超えた「視覚化」が体現されている気がします。もし他のマンガ家がコミカライズしてた場合、ここまで面白くはなってないはず。

『蜘蛛ですが何か?』はバトル描写だけではなく、本当に主人公が躍動的に動いてる。少しマヌケなドジっ子だけど、リアルでは根暗な女の子だけど、必死に力強く生き抜こうとする様はクモのフォルムなのにしっかり愛おしい

ラノベや小説のコミカライズ漫画と聞くと、どうしても原作の世界観などの説明に終始してる漫画も多いですが、しっかり面白いポイントのみをとらえて調理できてるので、『蜘蛛ですが何か?』は単純に料理(漫画)として美味しい(面白い)。

実際グルメ漫画要素もあって、どこか「ダンジョン飯」に近いテイストもある。色んなジャンルの面白さが絶妙なバランスで成立してるので漫画としてレベルが高い。まさに『蜘蛛ですが何か?』はコミカライズのお手本。良い意味で裏切られました。