『外道の歌』1巻2巻のネタバレ感想をレビュー。作者は渡邉ダイスケ。掲載誌はヤングキング。出版社は少年画報社。ジャンルは青年コミックのアングラ漫画。絶賛AmazonのKindleでもダウンロード購入や無料で試し読みが可能です。

『外道の歌』は『善悪の屑』の続編にあたる漫画。『善悪の屑』のレビューでは面白いと評価しましたが、果たして『外道の歌』も面白いのかつまらないのか。基本的に内容は変わらないので、あらすじは割愛します。

ちなみにTwitterで言ってたマツダ・アテンザのフルモデルチェンジ情報は既に執筆済み。


鴨ノ目武の額に傷ができた理由(カモの過去)

『外道の歌』の最初はまず主人公・鴨ノ目武(かものめ・たけし)の4年前に起きた惨劇から始まります。

外道の歌1巻 鴨ノ目武1
(外道の歌 1巻)
現在復讐代行屋の鴨ノ目武は、どこにでもいる優しいパパだった。生意気盛りの娘・里奈に手を焼きながらも、自分に甘えてくる里奈を溺愛していた。作者・渡邉ダイスケの子供の描き方が上手い。頭の顔のバランスやプニプニ感など。

外道の歌1巻 鴨ノ目武2
(外道の歌 1巻)
鴨ノ目武は娘・里奈が猫を飼いたいと言い出したときも、猫の平均寿命を考えて「里奈が思春期になる頃には別れが来る。それぐらいの年齢に生き物の死を経験するのはいいこと」とめっちゃ将来のことまで考えてくれてる良いパパ。決して裕福な暮らしはしてなかったものの、まさにTHE幸せな家庭を築いていた。

この鴨ノ目武の奥さんにフラッと街中で目をつけたのが、ある犯人。「お子さんがお菓子の箱を落としましたよ」とアパートのブザーを鳴らす。不審に思うものの、お菓子を玄関前に置いて立ち去る男をドアの覗き穴から確認して少し安心したのかドアを開ける。

その瞬間にガバッと男の手。「人妻って欲情してるんだろ?」と案の定な展開。娘の里奈は大泣き。犯人は当然…

外道の歌1巻 鴨ノ目武3
(外道の歌 1巻)
巨大な扇風機を持ってズガン。悲しいかな、自分もこのタイプの扇風機を持ってます。確かに鈍器としては最適なぐらいの重量感があります(T_T)

娘・里奈は結果的にズタボロ。奥さんも娘をかばうようにして守るものの、それも虚しく息絶える。パパである鴨ノ目武は仕事から帰宅直後、この惨劇を目の当たりにする。でも鴨ノ目武は泣かなかった。

外道の歌1巻 鴨ノ目武4
(外道の歌 1巻)
何故なら人間は本当の絶望を目の当たりにすると過呼吸で息ができなくなるから。鴨ノ目武は自分の母親が亡くなった時はヒドく落ち込んだが、父親の場合は比較的早く立ち直ることができた。

それは娘・里奈の存在があったから。人間は親よりも自分の子供を優先するように生きているらしい。ただ逆に言えば、自分の子供が亡くなったら何を糧に立ち直ればいいのか。つまりは鴨ノ目武にとって、それが「復讐」だった。

犯人は「警察官僚の息子」ということで逮捕されず。高畑裕太くんのように、今まさに海外留学という名の逃避行間近。実際、警察官の犯罪者や身内が容疑者だとほとんど実名が公開されないので割りとありうるケースなんでしょう。

外道の歌1巻 鴨ノ目武5
(外道の歌 1巻)
そして無言で犯人に向かっていく、鴨ノ目武がこえええ。この時に犯人に抗われて、鴨ノ目武の額に傷がつく。当然DNAの付着が気になるところですが、犯人の体はバラバラに遺棄されて行方不明。

いずれ犯人の父親の「警察官僚」も登場しそう。いくら息子がグズだとしても我が息子。それこそ鴨ノ目武の理屈を借りるのであれば、そのまま何もないまま終わるとは思いにくい。ましてや警察官僚としてのメンツも考えると…といった感じ。

最後のオチも切ない。娘・里奈が飼い始めた猫の名前が「日曜日」。これは里奈が仕事で忙しい父親・鴨ノ目武がずっと家にいてほしいという意味を込めて付けた。ただ経緯を知らない、トラや奈々子は不思議がって聞いてくる。

それに対して鴨ノ目武は寂しそうな目で猫を見つめながら「さあねえ」とごまかす。娘は死んでるにも関わらず、娘のために飼い始めた猫はまだ生きてるという対比が切ない。飼い始めた動機も含めて、現在から考えると何とも全てが皮肉めいている。

鴨ノ目武が復讐の鬼と化すのであれば、どうしても娘の存在が思い返される猫を捨てるべき。それでも娘の存在が唯一思い返されるのが猫だけだからこそ捨てられない。未だに鴨ノ目武の悲しみや心の傷は当然ながら癒えてない。

「素人が遊び半分でやるような仕事じゃない」と商売敵の鶴巻にディスられる


ウシジマくんばりに過去を回想

だから基本的には同じくオムニバス形式ってことは変わらないものの、前作と違って『外道の歌』では一エピソードあたりのボリューム感がアップ。

前作だと明らかに実際の事件をモチーフにした犯人をポンポンと登場させてましたが、今作の『外道の歌』からは『闇金ウシジマくん』のように一人の犯人を深く掘り下げるテイストに変更されてるっぽい。もちろんこの感想をレビューしてる段階ではまだ2巻しか発売されてないので、3巻4巻以降の展開がどうなるかまでは分からないですが。

外道の歌2巻 横澤夏子
(外道の歌 2巻)
2巻だとお笑い芸人の横澤夏子にしか見えない女が登場。「どぉもう」という挨拶がウザすぎるます。ただどう見てもブスではありますが、犯罪をおかすような女には見えません。でも横に小さい子供を連れてるママさんらしい。「嫌な予感」を感じた方は、まさにその嫌な予感がきっと的中。

外道の歌2巻 横澤夏子4
(外道の歌 2巻)
ママ友の子供を…。見事な身長差と表情。リアルの事件ではきっと「言葉」は不要。

この場面でも「小さい子供の描写」がやはり上手い。ちょこんと座ってる姿など、まさに子供。色んな漫画を読んでますが、意外と子供を描くのって難しい。ただ体のサイズを小さくすればいいってもんじゃないから。

この横澤夏子のストーリーは、実は高校生時代から話が始まる。最初は被害者かと思って読んでいると、一向に事件が起きない。そして大学生、就活、彼氏に甘いプロポーズをされ、娘を出産するまでを淡々と横澤夏子の人生が描かれる。

外道の歌2巻 横澤夏子2
(外道の歌 2巻)
この一件無意味にも思える過程で何を伝えたいかといえば、横澤夏子の人間性や性格。出産直後に娘が隣で泣いてるにも関わらず、スマホを片手にSNSでポチポチ報告。一見すると同情や共感を誘ってるように見えて「ダンナは仕事でニューヨーク」と虚勢を張る。

こういう性格をしてるもんだから、ママ友のリーダー格の女性から少し嫌われてハブられる。

外道の歌2巻 横澤夏子3
(外道の歌 2巻)
例えば「そのカバンってグッチじゃない?うらやましい…でも4・5年前のよね?」と嫌味をチクリと言われる。横澤夏子はブランドで全身固めるものの全て中古。この虚勢を張るためだけに、隣町までしがないアルバイトまで行ってるぐらい。

横澤夏子は田舎育ちだから「東京でカッコ良く生きる自分像」を高校時代から思い描いてて、それが少しでも崩れるのが嫌。更に周囲とは疎遠になって孤独感を募らせていく…という、どんどん落ちぶれていくプロセスを丁寧に描いてる。

だから前述の被害にあった子供は、このリーダー格の娘。言ってしまえばやや自業自得感もあるんですが、それ故に闇金ウシジマくんばりにリアル。一人のキャラクターを時間をかけて作り上げていく様は、一人の人生を垣間見てるようで面白い。悪い連中がどうこうってよりも「人間を描写」するのが上手い漫画家。

しかしブスって怖い。イケメンや美女が持つ殺意より、やっぱりブスが持つ殺意の方が怖い。特にキャラクターの髪型が顕著なんですが、『外道の歌』のどうしようもないクズは髪型が気持ち悪いwww


外道の歌 総合評価 評判 口コミ


『外道の歌』はやっぱり安定してそこそこ面白い。前作の『外道の歌(全5巻)』が面白いと思ったなら今作の『外道の歌』を買ってもハズレはないはず。

外道の歌2巻 園田夢二
(外道の歌 2巻)
練馬区の殺人鬼・園田夢二も今作でも登場しますが、まさかの初っ端からホモの漫画家志望者に襲撃される!?という展開に。果たして凶行は止まるのか。

ちなみに前作はいたずらに悪意を煽ってるだけって感じでしたが、『外道の歌』ではテーマ性をより掘り下げた内容になってる。前述の横澤夏子はやはり鴨ノ目武らに復讐されるものの、遺族である依頼した元リーダー格のママ友は言う。

外道の歌2巻 人を許すとは
(外道の歌 2巻)
「死んだあの子はそんなこと望んじゃいないとか、私と同じ目に遭ってもない人達が私に言うのよ。でも私はぜったいに許すことはできない。許すことが人間として正しいことなら、許せない私は人として間違ってるの?」。

それを聞いた鴨ノ目武は更に言う。「周囲の人間はただの一つも被害者遺族に何かを要求するべきじゃない」。一見すると死刑廃止論者だけをディスってるのかと思いきや、最終的にリーダー格のママ友は横澤夏子を生かす。

何故なら、横澤夏子は部屋の中でずっと徘徊しながらお漏らしするなど、まともな精神状態じゃなくなってる。鴨ノ目武と対峙したときも「早く死んで楽になりたい」とつぶやく。このことからも死刑大好きな連中に対しても「恨め」や「復讐しろ」と遺族に要求するなと言ってるようにも見えます。

だから純粋な怖い度合い・胸糞度合いでは前作が上回るかも知れませんが、それでも作品としての深みは『外道の歌』で増してるのかなーと思いました。犯人にも共感や同情というか、何と表現していいか不明ですが、無性に心を動かされる部分があります。