TPP(環太平洋連携協定)に伴う交渉で、映画や音楽といった著作権が侵害されたら、作者の告訴がなくても警察や検察が立件できるようにすべきという話があるらしい。いわゆる、著作権法の非親告罪化。

そこで取り沙汰されてるのがコミックマーケットの存在。いわゆるコミケってやつ。既存のマンガやアニメのキャラクターを使って、アマチュアもプロも含めた方が「二次創作」をして新たな作品を出品してる。8月中旬(夏コミ)と12月下旬(冬コミ)に行われてるらしく、時期的には数カ月後でそろそろ東京ビッグサイトで開催するはず。

ただTPPに関しては、情報が右往左往しまくり。日本政府は著作権の非親告罪化に難色を示していて、一応一律に義務付けない方向で決まってると3月ぐらいにニュースになってた。漫画家の赤松健あたりのロビー活動も効いてる?

でも内閣府副大臣だった西村康稔はこれを否定。アメリカは自動車の交渉を見てもかなり強引。おめおめと確かに引き下がるわけがない。だから著作権は非親告罪化されるという前提で、コミケがどうなりそうかという話を考えてみます。

非親告罪化されたら?

コミックマーケットは幕張メッセから一度追い出された過去がある。その理由は「青少年健全育成条例の改正」があったと言われてる。それだけ行政機関は法的なリスクを嫌う。

ということは、著作権が非親告罪化されれば、同じように自治体による会場の貸し出しが難しくなることが予想できます。しかも現在の東京ビッグサイト然り、大きい会場はほとんど自治体が運営してるわけだから、必然的に民間の小さい会場を借りざるを得なくなる。

つまり人が物理的に集まらなくなるわけだから、コミックマーケットの市場は必然的に縮小せざるを得なくなる。お客さんが集まらないということは、出品してる同人作家の数も自然と減りそう。まさに悪循環。

公開の場をインターネットに逃げることは可能ですが、「同人作家とお客さん」という人と人とで繋がってる部分も多いはずだから、ただ「売る買う」というドライな関係性に落とし込まれると、やはり厳しいのかなと。

パロディーは除外されたら大丈夫?

ただ一方で、日本政府は「二次創作をクールジャパンの一つとして認める」とも公式に答弁してる。著作権の非親告罪化については、安倍ちゃんの交渉力のなさから考えて特には期待できないですが、少なくとも先進国の中ではパロディーという存在はそれなりに確立されてる。

もし著作権の非親告罪化に穴があるとしたら、そこ。パロディーという名の二次創作が法律で認められれば、コミックマーケットの存在はそこまで危ぶまれることはなさそう。

でもエロはパロディーじゃないわけです。例えばフランスはパロディー王国ですが、そんな国でもエロはパロディーとして認めてない。そもそも政府が「エ口もオッケーよ」と法律で認めるとは到底思えない。ネトウヨのような差別的な言説は言うまでもない。

ただ同人コミックの大半は、いわゆる下系の内容。ONE PIECEのナミや名探偵コナンの毛利蘭があんなことこんなことしてるわけです。ということは、仮に法律でパロディーや風刺は非親告罪から除外されたとしても、なかなかコミックマーケットの存続は厳しい。健全な内容の同人コミックがホソボソと販売されたとしても、結果的に市場の縮小は避けられず「コミケは自然消滅」という流れになりそう。

出版社が母体で運営したら?

ただ著作権を保有してる出版社側が運営するなら、基本的に何の問題もないはず。「自分たちのキャラクターを使ってもいいYO」という許可前提で開催されるコミックマーケットだったら、法的なリスクはなにも抱えない。

最近、ドカベンの山田太郎の銅像が茶化した写真がいっぱい撮影されて、作者・水島新司がブチ切れ。結果的に山田太郎の銅像は取り壊しになるそう。一応事前審査を導入して、作者的にアウトだったらその作品は弾けばいい。現に既にコミケでも作品の審査もあってダメなものは弾かれてるそう。

出版社としてコミックマーケットを開催するメリットがあるとしたら、才能がある同人作家を発掘して、本誌でデビューさせることが可能。実際『黒子のバスケ』の作者も同人出身らしい。赤松健も言うまでもない。新人マンガ家の草刈り場になってることは間違いなさそう。

既にワンダーフェスティバル(ワンフェス)というガレージキットのイベントは、フィギュアや玩具を作ってる海洋堂が主催してる。同じように出版社がコミケを運営すればいいやん、という声もある。

ただ、コミケは同じようにはいかないはず。なぜなら、海洋堂はフィギュア業界としてはトップで、売上高も30億円程度と企業としては小さい。一方、集英社も小学館も売上高自体は1000億円を超えてたはず。講談社も言うまでもなく、そんな大手の出版社が複数存在してる。

じゃあ仮に出版社が運営母体になるとしても、果たして「どこの出版社が音頭を取るのか?」という疑問。主導した出版社の立場が上になって、自然と上下関係も生まれる。小学館が母体のイベントにおめおめと講談社が乗っかってくるようなことがあるのか?

みんな仲良くが理想ですが、そんなことができたら、とっくに他の分野でしてるはず。出版各社が統一した行動が取れるとは思えない。じゃあそこまで無理して出版社がコミックマーケットを運営したいか?…と考えると、実はそこまで旨味がないんじゃないかとも思う。

そもそも二次創作という行為に対して、出版社の中でちゃんとコンセンサスがあるかも疑問。前述の水島新司然り、自分の作品を他の人間に手を加えられるのが嫌なマンガ家も多いはず。とりあえず、まとめると、コミックマーケットの前途は多難だと言わざるを得ない気がする…という悲観的な記事でした(笑)

ただこの記事を書いてる時期は4月半ば。記事が公開された段階では何かしらの進展?後退がある可能性はあります。