『四月は君の嘘』全11巻のネタバレ感想をレビュー。作者は新川直司。月刊少年マガジン(講談社)で連載してた音楽漫画。

『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎が褒めてたことで話題に。広瀬すずと山崎賢人の主演で実写映画が今年2016年9月頃に公開されるらしく、このブログとしてもその人気に便乗しないわけにはまいりません。ということで四月は君の嘘はどこが面白いのかを考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は有馬公生(ありま・こうせい)。中学3年生。将来を嘱望された天才ピアニスト少年だったが、11歳の秋に突然ピアノが弾けなくなる。

四月は君の嘘3巻 有馬公生のトラウマ
(四月は君の嘘 5巻)
理由は母の死。有馬公生は徹底したピアノの英才教育を受けていたが、母は病魔に襲われてからスパルタ度合いが増す。有馬公生は「母を元気にするため」という理由のみでピアノを弾いていた。

ただ、ある演奏会で有馬公生は失敗の連続。それに激怒した母に何度も殴られた。有馬公生は喜んで欲しかっただけなので、ついには我慢の限界が来て「お前なんか死んじゃえばいいんだ」と心にもないことを言ってしまった。程なくして母は容体が悪化して呆気なく亡くなる。

有馬公生の本心ではなかったが、それが強い罪悪感となりピアノを弾くがトラウマとなった。そして自分がピアノの演奏をすると途端に聴力が奪われてしまう精神的な病にかかる。有馬公生は「これは罰」と納得するしか無かった。あれほどカラフルに輝いていた音の世界は「モノトーンの世界」と化した。そして有馬公生は表舞台から去った。

四月は君の嘘1巻 宮園かをり
(四月は君の嘘 1巻)
しかしそのモノトーンだった有馬公生の世界に、無神経にズカズカと上がり込んできたのが宮園かをり。圧倒的な技術と感情を豊かに表現するヴァイオリニスト。有馬公生の才能に目をつけ、コンクールにピアノの伴奏として再び有馬公生を表舞台に引きずり出す。

性格は明るいが、とにかくワガママ。少し暴力的な一面すらある宮園かをりは、有馬公生を私生活でも翻弄していく。有馬公生に再び春はやって来るのか?…みたいなストーリーの漫画。


音楽表現がまあ見事

『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎曰く、『四月は君の嘘』は「音楽表現が、まあ見事」だとのこと。自分もそこが面白さの一つだと思います。

四月は君の嘘2巻 音が聞こえなくなる描写
(四月は君の嘘 2巻)
例えば主人公・有馬公生の「音が聞こえなくなる」場面だと、楽譜に書かれた音符がペリペリとめくれて飛んで行く。4巻だと有馬公生がピアノを弾く直前に、プレッシャーから「ピアノに威圧」される描写とか個人的に好きでした。

四月は君の嘘4巻 ページいっぱいの音楽表現
(四月は君の嘘 4巻)
コマ割りも独特で、ページ全体を使った音楽表現がなされることも多い。まさに大胆不敵。

四月は君の嘘9巻 相座凪 音楽表現
(四月は君の嘘 9巻)
セリフが一行二行と短く読みやすく、テンポ感が良い。それが激しい、時には軽やかなピアノのリズミカルな演奏を体現。読者にさもそれを聴いてるような錯覚すら与える。画像の女の子は相座凪。

四月は君の嘘11巻 音楽表現
(四月は君の嘘 9巻)
目に見えない「音」は表現しづらいんですが、それを聴いている聴衆のリアクションを描くことで見事に間接的に伝わってくる。同じ音楽漫画だと『ブルージャイアント』も似たような演出が取られてるんですが、音楽マンガを連載する上では非常に有用な表現方法だと考えられます。

四月は君の嘘6巻 音楽表現
(四月は君の嘘 6巻)
しかも演奏そのものをしっかりストーリーの中に組み込めてる。単にキレイ・美しいだけではない。また会話をするかのような演奏者と聞き手のやり取りは、更にテンポ感を高めてくれる。

演奏場面では主人公・有馬公生といった、キャラクターの心理描写や過去の経験と重ねてセットで描かれることが多いのも新鮮。有馬公生の場合、宮園かをりと過ごした瑞々しい日々をリンクさせて、演奏そのものをカラフルに豊かにする。結果的にそのことが有馬公生をピアニストとして復活させる。

四月は君の嘘9巻 有馬の音はカラフル
(四月は君の嘘 9巻)
有馬公生と宮園かをりが一緒に伴奏してる場面は、まさに美しい。正確には画像の場面では宮園かをりをヴァイオリンを持ってませんが、尾田栄一郎がこういった描写にホレたんだと思われます。

ただ尾田栄一郎曰く「四月は君の嘘の音楽表現は見事」とのことですが、どちらかと言えば躍動感やダイナミズムよりも「美しさ」や「上手さ」が際立っている印象。技術的な上手さがとにかく先行してしまって、問答無用に感動させられる度合いで言えば、個人的には前述の『ブルージャイアント』の方が音楽漫画という点では上回っている気がします。

もちろん好みの問題というか、決して『四月は君の嘘』が面白くないという意味ではありませんので、是非自分の目で確かめて見てください。


恋愛青春要素のアプローチ

だからどうしても「音楽表現」ばかりに目が行きがちですが、『四月は君の嘘』の面白さは恋愛面でのアプローチ、もっと言うと青春要素もウリだったりする。

四月は君の嘘8巻 有馬公生と澤部椿
(四月は君の嘘 8巻)
例えば有馬公生の幼なじみ・澤部椿は有馬公生のことが大好き。でも二人は男友達のような関係性で、まず恋人同士の関係に発展することはない。

椿はピアノを弾かなくなった有馬公生を見て「時間が止まった」ような錯覚に寂しさやイラ立ちを感じてた。でも有馬公生は宮園かをりのおかげでピアノを再び始めた。ただピアノを始めたら始めたで、有馬公生は自分の手元から再び離れていく。

結局、実際には「幼なじみの関係」から飛び出す努力をしていなかったのは自分。有馬公生の時間は動いたけど、自分の時間は昔から止まったまま。画像の「私の時間 動け」というセリフは、そんな自分に対して発奮させる言葉。

四月は君の嘘8巻 有馬公生と宮園かをり
(四月は君の嘘 8巻)
有馬公生と宮園かをりが自転車の二人乗りをしている最中、宮園かをりは涙を流したりといった場面も象徴的。

そもそも宮園かをりが何故泣いてるかというと、自分の死期が近いことを悟っていたから。宮園かをりは明るく振舞っていたものの、実は病気。画像は有馬公生との楽しかったひと時がもう訪れない。それに対する涙。

四月は君の嘘10巻 宮園かをりの死・私を見て私を見て
(四月は君の嘘 10巻)
だから結論のオチをネタバレしておくと、宮園かをりは死んでしまう。『四月は君の嘘』のストーリーも、死を予期した宮園かをりが有馬公生に近付く場面から始まってた。

だから最初は宮園かをりのハイテンションにウザさを感じるものの、また有馬公生自身も「印象最悪」と思っていたものの、それが終盤になってジワジワと効いてくる。まさに悲劇的なラストに繋がる見事な前フリ

四月は君の嘘11巻 宮園かをりからの手紙
(四月は君の嘘 11巻)
最終話では最期に書いた宮園かをりの手紙が読まれるんですが、多分泣けます。そこで宮園かをりが付いた嘘の意味が明らかになります。ぶっちゃけ宮園かをりも有馬公生のことが好きだと分かってたので意外感はあまりなかったですが、ストーリーとしてはキレイにまとまってました。

宮園かをりの「具体的な病名」を書かなかったのも良かった。そこを含めての「嘘」だと思いますが、具体的な病名を書くとどうしても新たな「嘘」ができる可能性がある。そこを有馬公生の精神的なトラウマを前面に持ってきたことで、読者の意識を宮園かをりの病名にいかせなかったのかなと。


悲劇的すぎる最終回は泣けるものの…

しかし主人公・有馬公生は既に母親が病死してるわけで、このラストの終わり方は主人公への追い打ち感がハンパない。ただ、それでも有馬公生は宮園かをりと出会わせたくれた「音楽」で悲しみを乗り越える。病死した母親の時とは違って、有馬公生はピアノを止めることはなかった。

ラストのシーンでは有馬公生が一人でピアノの演奏をする。舞台上には宮園かをりの幻影と共に伴奏を行う。
四月は君の嘘11巻 心拍数と連動
(四月は君の嘘 11巻)
宮園かをりの心電図や手術シーンを上手に組み合わせることで、二人の「共同作業感」を演出すると共に宮園かをりの「最期感」がにじみ出てる。心電図や長時間に渡る手術はまさに「死」の象徴ですから。

四月は君の嘘11巻 有馬公生の涙
(四月は君の嘘 11巻)
宮園かをりの死期に気付いて「僕をおいていかないで」と涙を流すものの、それでもピアノを弾く手を止めない有馬公生が切ない。ピアノを止めることは、一番宮園かをりを悲しませるだけ。この演奏は手術が成功して欲しいという有馬公生なりのエール、そして愛の告白でもあったから。

そして有馬公生の演奏が終わると同時に、宮園かをりの幻影が桜の花びらと共に消える。つまり宮園かをりはそこで死亡した。だから終わり方としてはかなり辛いものの、この最期の伴奏があったからこそ有馬公生はピアニストとして生きていくことを決意できた。音楽表現の巧みさと相まって悲しみが倍増されます。

ただ有馬公生はピアニストとしては一皮むけたのかも知れませんが、一人の少年として一人の人間としては「宮園かをりという影」がずっと落とし続けるハメになった。前述の宮園かをりは最期の手紙で「好きです」を連呼。有馬公生が縛られる呪縛の強さは、きっと母親に対するそれとは比較にならないはず。また幼なじみ・澤部椿が有馬公生に明るく振る舞えば振る舞うほど、有馬公生の二度と叶うことのない「悲恋」がくっきりと強く浮かび上がってしまう。

嘘で始まった恋は真実になることは一度もなく、有馬公生の中で「虚構の恋」のままずっと生き続けるだろうと容易に想像できます。これをもってして有馬公生は悲しみを乗り越えたのか、また人間として成長できたのか、それを断言できる自信はありません。宮園かをりの愛も悲しみも全部受け止めて生きようとする有馬公生に幸せは訪れるのか?

まさに悲嘆にくれるわけでもなく、だからといってポジティブに明るく終わるわけでもなく、最終回の手紙シーンはなんとも言えない余韻の残るオチでした。良くも悪くも気分をズーンとさせられる終わり方・読後感。


総合評価・評判・口コミ


『四月は君の嘘』の考察レビューをまとめると、意外に泣けます。「しっかりヒロインを死なす」という作品はマンガ以外を見渡しても珍しい。「どうせ死なないんだろ」と軽く思ってたから清々しいほどの裏切りが面白い。

つまり一見するとポップな絵柄にダマされますが、中身は案外ヘビーで重い。尾田栄一郎は「音楽表現が見事」と評価してましたが、むしろ『四月は君の嘘』はストーリーこそがメイン。そこに音楽表現が強力なアイテムとして巧みに活かされてるといった評価が正しいでしょう。

最後に肝心の「四月は君の嘘は面白いか?」という質問ですが自信を持って「面白い」と言えます。プロットの組み立て方、伏線の張り方などストーリーの完成度は高い。また画力も表現力も抜群。マンガとしては言うことない。でもラストシーンは「救いようがない」と思う人もいるかも。恋愛漫画として評価しても好みはきっぱり分かれるか。