『よつばと!』1巻から13巻のネタバレ感想をレビュー。作者はあずまきよひこ。掲載誌は月刊コミック電撃大王。出版社は角川書店。よつばと13巻はAmazonコミックランキングで2016年上半期の売上がトップだったらしい。

この『よつばと!』は『HUNTERxHUNTER(冨樫義博)』や『ベルセルク(三浦建太郎)』ぐらいに休載が多いんですが、国内の発行部数は1800万部、海外の発行部数も200万部ぐらいを突破。日本国外でも人気という数少ないマンガの一つ。最近第20回手塚治虫文化賞を受賞したらしいので「よつばとは面白いマンガか?」という考察記事を書いてみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は「よつば」という5歳の女の子。とにかくお転婆娘。そして、このよつばがとある街に「とーちゃん(父親)」と一緒に引っ越してきたところからストーリーは始まります。

見るもの全てが新しく新鮮に映る。全てに驚き、感動するよつば。ただ、そんなよつばの言動に振り回される周囲の大人は大変。隣家に済む綾瀬家の三姉妹(あさぎ・風香・恵那)たちも加わって、一見するとなんてことはないハチャメチャな日常をコミカルに描いた内容。

だから漫画タイトルの意味は「よつばと一緒に◯◯しよう・遊ぼう」みたいな省略形。つまり漫画タイトルは「よつばと(遊ぼう)」というイントネーションで発音するのが正しいっぽいですが、個人的にはキジバトやカラスバトのように鳩の種類を呼ぶようなイントネーションでいつも読んでます。割りとキャラ名も含めて呼び方がって難しいですよね。

とりあえず内容はゆる~い感じのほのぼのマンガ。

よつばと9巻 表情
(よつばと 9巻)
こんな風に表情がコロコロと変わるよつばが愛おしくてたまりません。父性愛や母性愛が思わず刺激される、クスっと笑えるようなホノボノした面白さがあります。


リアルな子供像

子供を主人公にしたマンガはどうしても脚色が強くなりすぎて、少しリアリティーとは程遠い感じになりがち。でも「よつば」というキャラクターは、ものすごく子供に近い子供。だからマンガの世界観にスッと入れる。

よつばと9巻 コーヒーこぼす
(よつばと 9巻)
例えば幼児は同時に2つのことはできない。画像のよつばは人形のジュラルミンと一緒にコーヒーを隣家の綾瀬家に持って行こうとするものの、ジュラルミンに気を取られてコーヒーを見事にこぼす。身体が根本的に小さすぎるので仕方ありませんが、一つのことに集中してしまうと他に気が行かない。

よつばと7巻 商品の棚
(よつばと 7巻)
他にもコンビニで高い位置に陳列されてる商品を長い棒で落とす。思わず親がいたら「ギャー!」と叫んでしまうことでしょう。

一応画像の状況を説明しておくと、よつばはとーちゃんのためにラーメンを一人で買いに来た。そこで他のお客に頼んで蛍光灯を取ってきてもらう。その結果がアレ。つまりTHE二度手間。普通に高い位置の商品を取ってもらえばいいだけなんですが、そこまで頭が回らない(笑)

よつばと10巻 黙って手を拭く
(よつばと 10巻)
とーちゃんと一緒に料理を楽しんでる時は、しれっと汚れた自分の手をとーちゃんの服で拭く。さり気なさがハンパない。とーちゃんもきっと気付いてると思うんですが、いつもの日常なのか余裕でスルー。その関係性にホッコリして面白い。


斜め上すぎる言動が可愛い

よつばはリアルなキャラクターであるが故に、子供特有の斜め上すぎる発言も面白くて笑えます。

例えば、よつばはとーちゃんが用意した二人分のエクレアを勝手に一人で全部食べてしまう。大人でもエクレアは美味しいので、幼児が一度手を付けると止められません。そこで綾瀬家の母親に「何でお父さんのも食べちゃったの?」と少し責められる。

よつばと6巻 冷静な発言 エクレア
(よつばと 6巻)
でもよつばは「子供って食いしん坊だから」と、まさかの言い訳。お前が食ったんだろっていう。そこは一般化しちゃったらダメだぞ。「男って浮気する生き物だから」と自民党の乙武さんが言い訳してるようなもん。

よつばと10巻 意味不明の発言
(よつばと 10巻)
ジャンボから動物図鑑をプレゼントされたんですが、そこにシールが付録として付いてた。それを見てよつばは「はー、これはたすかる」。…え?何に?言葉の使い方やチョイスが独特すぎる(笑)

よつばと2巻 女子供はやらない
(よつばと 2巻)
隣家の綾瀬恵那の部屋に侵入して、「動くな!ノンストップ!」と水鉄砲を構える。いや、どっちやねん!直後によつばは「女と子供はやらない」と捨てゼリフを吐くんですが、そのルールも見事に破ってくれてる。言葉の意味!!

ちなみに画像はドラマの影響を受けて、よつばが殺し屋風を装ってる場面。

よつばと1巻 意味不明の発言
(よつばと 1巻)
とーちゃんと一緒にデパートへ行った時は、よつはば商品の自転車を乗り回してとーちゃんにガツン!で何を言うかと思ったら、「あぶなかったー」。いやガッツリ事故が起きてますけど?(笑)

よつばと7巻 表情 発熱で牧場中止
(よつばと 7巻)
前から楽しみにしてた牧場行きが、その当日の朝に突然よつばが発熱してしまって行けなくなる。この事実を知らされた時は、維新の会の野々村議員ばりの号泣。まあ泣いてるというか絶叫してるだけ。時代が時代なら、ただの雨乞い。

まさによつばは予測不能と言えるんですが、だからといってカオスすぎて理解できないってことはない。語彙が少ないが故のトンチンカンな言動あんおで、むしろ「子供ゆえの合理性」みたいなんあって納得感すらあります。だからしっかり「子供の面白さ」として成立してて思わず笑みがこぼれてしまう。


自由すぎる暴言

一方で、よつばは暴言もポンポンと吐く。

ある時みんなで海に行こうとしたものの、時期は夏の終わり。当然クラゲが大量発生して危ない。そこでとーちゃんは中止を決定。それを聞いたよつばは案の定、大号泣。綾瀬風香が気を利かせて「私とおえかきしようか?」と優しく提案してくれるものの…
よつばと5巻 暴言 海は行かないと言われて
(よつばと 5巻)
そんなことしてなんになる!?」と全否定。んなこと言い出したら、海に行ってどうなんの?って話ですけどね。

よつばと3巻 暴挙 動物を殴る
(よつばと 3巻)
そしてよつばは、ちょいちょい動物にケンカを売る。ヤギのアゴに見事なクリーンヒット。

画像は子ヤギにエサを上げようとしたものの、大人のヤギが横取りしたので鉄拳制裁をかましてる場面。一応理由としては筋が通ってます。

よつばと3巻 暴言
(よつばと 3巻)
知らないお婆ちゃんに対しても「ばあちゃんはまだ生きてるの?」と、まさかの「死ね」発言(笑)

一応説明しておくと、時期は「お盆」。とーちゃんからは「死んだおばーちゃんたちが帰ってくる日」と教えられてたので、こういう質問が出た。100%幽霊ではないと言い切れませんからね(笑)


大人たちとの絶妙な距離感が良い

特に『よつばと!』が面白いのは、周囲の大人たちとの関係性。絶妙な距離感がステキ。

よつばと1巻 ジャンボなど大人との距離感
(よつばと 1巻)
ジャンボに頭をブンブンされても、よつばは「やめろー」と言いつつも表情は笑顔。

よつばと3巻 大人とのノリ
(よつばと 3巻)
綾瀬家に遊びに行くと、普段は仕事でいない父親がいた。それを見た瞬間、よつばは「敵か!?味方か!?」と叫ぶ。そうすると長女・綾瀬あさぎは「敵よ!やっつけろ!」と悪ノリ。

よつばと12巻 大人との距離感
(よつばと 12巻)
父親を含めて、周囲の大人たちもアホ。だからといって大人たちの性格がガキ・子供っぽいってことではなく、よつばたちを楽しませるために「はしゃいでる感」があるのでイライラせず安心して見れる。

敢えて子供目線を合わせてあげてる感じが良い。でも冷めた感じの上から目線ってことではなく、赤ちゃん言葉のようなことでもなく、本気で子供と向き合ってる「真摯(しんし)さ」みたいなんがあって良い。

こういった周囲の大人がいるおかげか、とーちゃんが子育てに気負ってないのが良い。よつばに対しては本気で向き合ってるけど、どこか力が抜けている部分もあってギスギス感がない。放置子といった批判も一部であるようですが、「子育ての正しいあり方」みたいなんを教えてくれている気がします。またみんなの中で育っていく様子に「愛されてる感」があって涙が出そうになる。


やんだとの掛け合いが笑える

特にとーちゃんの後輩の「やんだ(安田)」というキャラクターが絶品。20代のチャラそうなサラリーマンなんですが、とにかくよつばに絡んでいく。逆によつばも自分と同レベルと思ってるのか、やんだにやたらと絡んでいく。

よつばと5巻 やんだ2
(よつばと 5巻)
よつばが「アイスクリームいいだろー!!ほしいか!?」と嬉しそうに見せつけると、やんだは躊躇なくガプッ。

直前にあったクダリを少し説明しておくと、やんだが初めて家にやって来た。この後もやんだは昼飯を食べにちょいちょいやって来るんですが、この時は美味しそうなカップラーメンを食べ出す。よつばはカップラーメンが大好きなので物欲しそうに見ていると、やんだは「カップラーメンが好きなのか?でも、あーげない」とからかった。

だからよつばは画像のように同じことをして仕返ししようとしたんですが、そりゃあそんなこれ見よがしにアイスクリームを突き付けたら食われてしまうわな(笑)

ましてや、よつばとしては「欲しいか?」と聞いてしまった手前、やんだの行為も責められない。そこでよつばは再びやり返す。やんだにかかってきた電話に対して「あほー」を連呼。電話も切ってしまう(笑)

もちろん黙ってないのが、やんだ。よつばの家の電話にかけて、「とーちゃんが料理中だから、よつばがでないと」と電話を取らせるように誘導する。
よつばと5巻 やんだ3
(よつばと 5巻)
そして、それをよつばが取った瞬間に「あほー」を連呼。やはりやんだの方が一枚上手で、大人の知恵に幼児は勝てません(笑)

よつばと7巻 やんだ
(よつばと 7巻)
個人的に面白かったのが、高速道路の通行券を取ろうとしたよつばに対して、やんだが何回も「あああーー!!(それは取っちゃダメなヤツなのに)」みたいな感じでダマそうとする。考えてみたら幼児は世の中に生まれ出て、たった4年5年。知らないことの方が多い。つまりそれだけ「からかい甲斐」がある。

こういう子供をおちょくる楽しさは随所にあって、例えば6巻だと自転車のサドルを取ってしまった、よつばは「壊れた」と思って震える。そこでヒゲモジャの店主に「大変だー壊しちゃったかなー」と煽られると、よつばは「違う…勝手に…自動的に…」と半泣きしたのは面白かった。

前にYouTubeで観た動画で面白かったのは、オープンカーに乗せた幼児に対してルーフを開閉してみせる。その瞬間、やんだと同じようなリアクションをしたパパ。そうしたら幼児は恐怖に覚えた表情を浮かべるという内容。アレには笑った。例えばパソコンを起動させたり、みたいなことをやっても面白いかも。

こんな風に子供と同じ目線でやんだが騒ぐからこそ、「よつば」というキャラクターがはねる。子供同士の絡みでは、絶対にこんな風にはいかないはず。やんだは好きな女の子をイジメてしまう悪ガキ男子的な位置付けなのか、よつばの魅力や面白さを引き出している。

よつばと11巻 やんだ
(よつばと 11巻)
ただ何事もやりすぎると嫌われます。やんだがコチョコチョしまくると、思わずよつばは「やめんか!!」と割りとマジトーンで激怒。ジャンボのときとは大違い。これ普通はお爺ちゃんが孫に言うセリフー!(笑)

よつばと7巻 表情 やんだ
(よつばと 7巻)
だから二人は仲が良いとは言いつつ、基本的にやんだは普通に嫌われてる。一緒に牧場に行こうぜと誘った時は、シンプルに「NO」とよつばに清々しいほど拒否される。ただ何故に英語ッ!?

よつばと9巻 やんだ
(よつばと 9巻)
そして人形のジュラルミンには「やんだ、後で、泣かす」と脅迫される始末。怖えええ!!!一体何をして泣かせてくれるんでしょうか?(笑)


総合評価・評判・口コミ

よつばと! コミック 1-13巻セット (電撃コミックス)
あずまきよひこ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2015-11-27

『よつばと!』の感想をまとめると、まさに「子供という無邪気」を見事に体現させてるマンガ。よつばのリアクションがいちいちリアルで面白い。『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけほどの狙ってる感はないので、大げさな言動も素直に受け入れられる。

「仕事で疲れた時に癒されている」という『こち亀』の作者・秋本治の言葉が象徴するように読者はホッコリさせられる。どうしても日常マンガはハッキリと好き嫌いが分かれそうなジャンルですが、子供(よつば)という共通価値観を用いれば「万人受けする面白さ」を作り上げることも可能なんだと思います。

冒頭で「よつばとの海外発行部数は200万部超え」と書きましたが、やはり「子供の可愛らしさや面白さ」は万国共通の価値観。『よつばと!』は言語の壁を超える面白さがあることが、まさに数字としても現れているんではないでしょうか?

だから一見すると幼児向けやオタク向けの内容かと思いきや、実は『よつばと!』は大人向けのマンガ。特に現在子育て中の親御さんや既に子供が巣立ったご年配の方々など、子育て経験があるがゆえに癒される度合いは強いのではないでしょうか。世の中のママさんも思わず納得してしまう描写力や切り取り力があります。

どうしても毎日子育てをしているとイライラすることも多いと思われますが、この『よつばと!』にはもっと子供とテキトーに向き合っていいのかも…と思わせてくれる良い意味での「ゆるさ」があります。よつばで笑うことでストレスも少し解消されて、そして「よつばという子供」を客観視することで、一歩退いて自分のお子さんとも向き合えるようになるのかも?