『うしおととら』全33巻のネタバレ感想をレビュー。作者は藤田和日郎。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックの妖怪バトル漫画。1990年代の初め頃から連載されてたので結構古い作品ですが文庫版(全18巻)が発売されたり、最近また完全版が発売されたらしい。またアニメ化も始まるなど息が長い人気作品。

実際一つ一つのフリが壮大で心が揺さぶられる・響く展開が多め。絵柄の古臭さも含めて好みが分かれそうですが、無骨だけどなかなか楽しめる漫画に仕上がってる。そこで今更ですが面白い漫画かつまらないか考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

うしおととら1巻/潮と虎
(1巻)
タイトルの『うしおととら』の意味は、そのまんま。主人公の蒼月潮(あおつき・うしお)という少年と虎(とら)という妖怪から来てる。この潮はお寺の住職の子供だったんですが、ある日秘密の蔵にたまたま入ると封印されてた大妖怪・とらを発見。そしてひょんなことから500年ぶりに虎を復活させてしまう。

うしおととら9巻/潮
(9巻)
とらを封印してたヤリが「獣の槍」。どんな妖怪も駆逐できる最強のヤリ。これを引き抜くことで封印が解かれたんですが、何故かこの獣の槍を潮が扱えた。封印が解けたらトンズラを決め込んでたとらは誤算。

うしおととら9巻/潮と虎コメディータッチ
(9巻)
結果、とらは潮に頭が上がらない生活を送る。潮は熱く真っ直ぐ、正義感溢れる少年。とらは悪態をつくものの、実は潮が好きというツンデレ。普段はツンケン悪口とか言うくせに、性根は優しい。潮はいかにも主人公主人公してて、とらはとらで潮を引き立てるキャラに仕上がってる。

最初はバチバチといがみ合う二人だったが、徐々に友情が芽生え出す。そしていつの間にか凸凹コンビが穴ぼこが見事に合致してて、絶妙なコンビプレイを生む。たまに魅せるコメディータッチな二人のやり取りには思わずほっこり。そんな人間と妖怪の垣根を超えた友情に胸熱で泣けるような内容となっています。


白面の者(九尾)

うしおととら30巻/白面の者
(30巻)
この二人の主人公が戦うラスボスが、『白面の者』。ざっくり言うと、NARUTOでも登場するような「九尾」。ある意味、そういう類いのマンガの先駆者的な感じだろうか。

2000年以上前の中国大陸で生まれる白面の者だったが、それを恐れて日本にやってくる。そして、そのまま日本の地脈に巣食って、あわや日本沈没。ただ、そこで潮の先祖がそのまま地下深くに封印。そして2000年後の現在、その封印が解かれそうになって日本が再び沈没の危機!?的な展開。

うしおととら23巻/白面の者
(23巻)
ただ唯一、恐れるのがとらも封印してた「獣の槍」。それで対抗して戦う潮ととら。


タイムスリップという仕掛け

2000年前の出来事が発端だから、当時を再現するためにちょいちょいタイムスリップする。ここが結構ミソ。「現在と過去との因縁」が効果的に描かれてて、ある部分とある部分が繋がった時に芽生える感情は気持ちが良い。歴史マンガにこそあってほしい連綿と繋がる「何か」が、そこにはある。

うしおととら23巻/潮とギリョウ
(23巻)
例えば、「獣の槍」は白面の者に妹・ジエメイを殺された兄・ギリョウが恨み骨髄で作り上げた。その恩讐が恐ろしいほど込められてる。だから白面の者然り、どんな妖怪も駆逐できる。

うしおととら31巻/シャガクシャ
(31巻)
その白面の者は、インドのシャガクシャという男から白面の者が生まれる。シャガクシャは最愛の女性が殺された復讐心を芽生えさせ、それを糧に白面の者が誕生。つまり、白面の者は「人間の負の感情」を餌に強くなる。

それを潮や虎が見たことで、ギリョウよろしくそんな感情で立ち向かってもダメだということに気付く。
うしおととら33巻/うしおととら
(33巻)
結果ラストは二人の友情パワーで倒すオチは、シンプルで爽快。いかにも少年マンガ的で読後感の良さは言うまでもない。それは決して初期のONE PIECEに引けをとらない。

ちなみに、そのシャガクシャが「とら」。獣の槍を使った人間は。代々そんな風貌の字伏(あざふせ)というバケモノに変わる。その初めの人間。

後付け設定っぽいっちゃっぽいんですが、それがキャラとキャラとの『壮絶な因縁』を描き出してる。それが結果「ストーリーの深さ・壮大さ」を生み出し、良いスパイスを与えてる。

作者の藤田和日郎は、そういった「過去に遡る」演出をメチャクチャ多用する。この『うしおととら』以降の、『からくりサーカス』でも当然見られて、『月光条例』のクオリティーは極まってる印象。まだまだうしおととらは雑な部分も散見するが、先の先を見通した仕掛けやフリは見事で、藤田和日郎作品を週刊誌で毎週見られるのは何気にスゴいこと。


心を揺さぶる名場面が泣ける

そういったストーリーに用いる小細工だけではなく、このマンガの根底に流れてるのは『熱さ』。ラストの展開も然り、潮と虎の友情物語然り、読んでて何か心が揺さぶられることも多い。

「白面の者(九尾)を倒す」という大きなストーリーの軸はあるものの、その間にちょいちょい「雑魚妖怪を倒す」というオムニバスの展開も挟む。例えば、飛行機を乗っ取る衾(ふすま)や霧の妖怪・シュムナなど。基本的に白面の者の手下の妖怪であることも多いんですが。

その中でも泣かせるエピソードもある。

例えば、20巻に登場するさとり。敢えて詳しく説明するまでもなく、心の中が読める妖怪。ある時、失明した子供と仲良くなる。目が見えないからこそ、仲良くなれたんでしょう。

その子供を助けるために、さとりはどうしたか。色んな人間から目ん玉を引き千切ってくる。この描写はなかなかエゲツナイんですが、ただ普通に手術をすればその子供の目は治る。
うしおととら20巻/さとり
(20巻)
それを気付かずに、さとりは人間を襲いまくってた。この時のさとりの描写は切ない。

ただ問題点もあって、それがオムニバスの話数が少し多い。もう少し減らしてコンパクトなストーリーにした方が、マンガ全体のテンポが更に生まれた気がする。またオムニバスが多いということは、同時にモブキャラも多いということ。紙面が限られてる現状、余計な描写は無用。★5キャラに評価してないのは、それが理由。最終的に白面の者を倒すためにみんな集結…っていうのはあるけど。


基本的にちょいダサいデザイン

ただ致命的な問題もあって、この「うしおととら」というマンガは全体的にダサい。

例えば絵柄。画像を見れば何となく分ってると思いますが。これは90年代初頭から後半にかけてのマンガだから…という訳ではない。作者・藤田和日郎の絵柄は、現在でもこんな感じ。良くも悪くも、完成されきってる。

他にもネーミングセンス。「獣の槍」というラスボス白面の者を倒す重要な武器。ハッキリ言って、センスのカケラもない。読み始めは、いずれもっとカッコいい固有名詞が付くんだろうなーと思ってたが、いくら待っても変わらず。物語のキーとなる部分は、しっかりビシッと決まる呼び名が欲しい。サンデー系マンガ全般にも通じるが、決めワードが疎か気味。

うしおととら29巻/武装化した潮と虎
(29巻)
絵柄がダサいってことは必殺技・奥の手のデザインも非常にダサい。後半にかけて、主人公たちの潮と虎は武装化するんですがこんな感じ。虎の顔の上にもう一個顔とか要る?っていう。ただ「古き良き少年コミック」として読むと、その古臭さは却って絶妙にマッチしているという解釈も可能か。


総合評価・評判・口コミ


『うしおととら 全巻』のネタバレ感想をまとめると、いろいろ批判もしましたが「読ませる漫画」で面白い。キャラクターや展開、名セリフにシンプルな熱さがある。うしおととらの熱い友情は、少年誌に必要な要素をほぼ全て満たしている。

とはいえ、相当先のオチまで考えた伏線や前フリなどストーリー作りは綿密。しっかり物語が完成されてる。最終回のラストも白面の者が最後になりたかった存在が「赤ちゃん」という完結・結末も、何か良い。この作品以降の藤田和日郎作品にも通じるマンガとしてのクオリティーの高さ。それらが毎週提供されていた事実は『感服』の一言。

ただ後半の批判にも繋がりますが、少年マンガとして考えた場合は絵柄のダサさはやっぱりキツい。自分も小学生か中学生の頃に友達に勧められたんですが、実際絵柄のダサさがネックで読まなかった。「何故少年誌で連載してるんや?」と詰問したくなるぐらい若い読者を寄せ付けない絵柄。『進撃の巨人』も絵柄も大概ですがそれなりに売れてるので、思ったほど影響もないのかも知れないですが、それでもキャラクターなどを視覚的にカッコ良く描く努力は必要。

でも絵柄はダサいとは言え、画力はそこそこ高い。しっかり「情報を伝える」力が高い。読んでて「これはどんな状況?」と困惑することは薄い。それがマンガ全体のテンポ感の良さにも、ある程度寄与してる。アクション描写もそれなりにカッコいい。

◯展開★5◯テンポ★4
◯キャラ★4.5◯画力★4
◯全巻大人買い…★5
◯92点!!!!