『うなぎ鬼』全3巻のネタバレ感想をレビュー。作者は落合佑介。高田侑の同名小説をコミカライズ化した漫画。掲載誌はヤングキングアワーズ。出版社は少年画報社。うなぎ鬼という漫画が面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は倉見。ギャンブル好きで借金漬けの日々。今にも破産まっしぐらの33歳。ただ性格は気弱だったものの、ガタイの良さと強面のルックスを気に入られ、「千脇(ちわき)」という某金融会社の社長に拾われる。そして倉見は持ち前の強面を生かして、取り立て屋としての日々を送っていた。

しかしある日、社長の千脇から「今夜、50キロ60キロのコンテナを運ぶだけで一人15万円の報酬がもらえる」という謎の仕事を依頼される。どこへ運ぶのかというと、千脇の実弟が働く「マルヨシ水産」という会社。うなぎを養殖していた。下見を兼ねて連れて行かれる倉見。

うなぎ鬼1巻 黒牟
(1巻)
ただマルヨシ水産は「黒牟(くろむ)」と呼ばれる街にあったが、そこは明らかに異質な空間だった。電信柱こそ立っているがそれは傾き、辺りには腐臭がただよい、およそ人間が住む場所とは思えなかった。

うなぎ鬼1巻 マルヨシ水産
(1巻)
そこで働く従業員・信吉や秀さん、山木などは更に胡散臭かった。しかし社長の千脇は深々と頭を下げて「今日の夜…例の…」と丁重にお願いをする。何故「フツー」の50キロ60キロのコンテナを運ぶだけで、また処分するだけで社長はここまでしなければいけないのか。明らかな違和感。

そこで倉見は社長のある言葉が頭をよぎる。「うなぎってのはタンパク質ならなんでも食っちまうそうだ…なんでもだぜ」。つまり、それは人間の肉体でも?倉見は嫌な妄想だけが湧き上がるものの、自分が信頼する社長・千脇に限ってそんな犯罪には手を染めてないはずと冷静に努めようとする。

うなぎ鬼1巻 コンテナの中身
(1巻)
しかし、いざ決行という時間。倉見はコンテナを目の前にして激しい後悔に襲われた。何故ならやはり「箱の中身がたとえうなぎの餌だったとしても、それは生きてはいないことだけは確か」だったから。

果たして倉見は一体何を運ぼうとしているのか?今まさに倉見の運命が大きな闇に呑み込まれようとしていた。


サスペンスミステリーとして上質

あらすじ通り、最初は「サイコサスペンス」の要素が強い。マルヨシ水産の胡散臭い登場人物たちの存在が輪をかけて、奇想天外な人間の処理方法の信ぴょう性を高めていく。

でも「うなぎが人間を食っている」というのは常識的に考えれば有りえない…はず。ただ主人公・倉見は気弱な性格だからこそ思い込もうとすればするほど、どんどん溢れ出てくる疑惑の闇に絡み取られていく。

同僚の富田の存在も手伝って「胡散臭すぎる事実」であるが故にどんどん現実味を帯びていく。展開の煽り方がベタだけど上手くて、そこにハラハラさせられる。じゃあサイコがサイコのまま進んでいくかと思いきや、実は違う。

うなぎ鬼2巻 ミキ
(2巻)
途中で「ミキ」という謎の女が登場する。このミキがミステリーへと変換させる触媒としての役割を果たす。見た目が可愛らしくて、いかにも男心をくすぐってくれるブリっ子。自分も地味にツボりました。でも実際はお金大好きのアバズレ。

うなぎ鬼3巻 ブチ切れる倉見
(3巻)
このミキに主人公・倉見がダマされることで豹変。ずっと仲良くメールしていたと思ったら、自分の登録名がまさかの「ぶた」。倉見の表情が狂気に満ちててヤバすぎ。そして最終的にはミキを殺めてしまう。

そこで頼ったのが社長・千脇。そしてミキの死体をどうしたかといえば…あまりネタバレしない方が良いと思うのでそこは割愛。倉見は罪悪感にさいなまれて茫然自失。社長に一時的に匿われて、そこで目にしたのが「鬼なるか人なるか心眼の有るか無きか」という掛け軸。まるで自分のことを指しているかのように思われた。

うなぎ鬼3巻 死んだはずのミキからメール
(3巻)
一週間ぶりに外出の許可を得て街中を歩いていると、死んだはずのミキからのメール。え?何故?まさか幽霊?いや幽霊なら倉見の目の前に現れるはず。じゃあ誰なのか?またその目的は?

うなぎ鬼3巻 ミキは黒牟出身
(3巻)
そして同僚の富田から「ミキは黒牟出身」という事実を知らされる。これが一体何を意味しているのか?

よくよく考えたら何となく分かるんですが、話のテンポ感がそれをさせない。この直後に富田が不審な死を遂げるなど、後半にかけて一気にミステリーサスペンスが加速する。長い前フリも活きてて、伏線の張り方も自然で上手い。良い意味で読者の期待を裏切ってくれます。


ラストの最終回はこんな結末

前述のクダリを少しネタバレしておくと、結果的にミキを殺めた罰を受ける主人公・倉見。それでもなんとか事なきを得る。そして最終話では倉見はハッピーエンドを迎える雰囲気。

うなぎ鬼3巻 犯人来訪
(3巻)
でもラストのオチは、まさかの意外な展開。犯人の名前は敢えてネタバレせずに伏せておきます。一件落着と思わせておいての、最後の「ズドン」。まさにどんでん返しの結末に、読後感はゾワーッとした嫌な余韻が残ります。そのまま軽いハッピーエンドのまま終わればいいやんと思っちゃいますが、主人公・倉見の罪の重さを考えたらこの完結のさせ方も致し方なしか。

また前述の社長の「鬼なるか人なるか心眼の有るか無きか」という言葉もここで更に活きてくる。思わず自分の人生を色々と振り返りたくもなりますが、ミステリー要素に話が触れたかと思ったところに最後の最後で再び「サイコ感」を持って来る演出も憎い。


総合評価・評判・口コミ


『うなぎ鬼』のネタバレ感想をまとめると、素直に読み物として面白い部類に入ると評価できます。「謎のうなぎ養殖場」を舞台に一人の男が転落していく人生にハラハラ。読者は飽きずに最後まで楽しませてもらえます。

原作を丁寧に描いてるのか多少読まされてる感もありますが、そこまでテンポ感は悪くない。その反面としてストーリーの完成度は高いので、小説を読んでいる迫力や緊張感と変わらない。全三巻というボリュームですが、それなりに読後感も充実してる。絵もクセがありそうで意外にクセはないので、割りと幅広くおすすめできる気がします。

うなぎ鬼1巻 黒牟
(1巻)
実写ドラマ化もありだと思いますが、割りと部落差別を助長させる表現や設定があるので難しそうか。「いかにもやってそうな地域」と想起させるとしたら、そこに根底にあるのは差別意識。もちろん参考にした具体的な街はないそうですが、それでも問題になる可能性は高そうです。

ま、その前にウナギ養殖業者が怒ってくるか(笑)