『トリコ』1巻から37巻のネタバレ感想をレビュー。作者は島袋光年。少年ジャンプ(集英社)で連載中のグルメバトル漫画。この『トリコ』は映画化やゲーム化もされるなど人気作品。そこでトリコは面白いか つまらないかを考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

世はグルメ時代。美食屋と呼ばれるハンターが世界中を駆け巡り、様々な食材を集めていた。主人公は美食屋四天王の一人・トリコ。つまり漫画タイトル『トリコ』は主人公の名前。

トリコ6巻 ジュエルミート
(トリコ 6巻)
グルメ漫画ということで食べてる場面を見てみると、意外に美味しそう。画像の食材はジュエルミート。

ただ食材とは言っても基本的にはモンスターなので、腕っ節が強くなければ美食屋は務まらない。だから基本的な展開はトリコがバンバンと敵を倒していく感じで、グルメ漫画というテイストは残しつつもバトル描写が多く占めるようなマンガ。

またトリコには料理人・小松が同行して、この小松がトリコが捕まえた食材を調理する。つまり『トリコ』はW主人公なんですが、上手いこと役割が分かれてて絶妙に成立させてます。このトリコが人生のフルコースメニューを探し求めて旅をするストーリー。

もう少しツッコんであらすじをネタバレしておくと、アカシアという美食神が考えたフルコースの食材を探す旅が始まります。アカシアのフルコースの中でも最上級の食材が「GOD」。このGODを巡って、世界中の組織(IGOや美食會など)を巻き込んだ壮大なバトルを展開中。

トリコ3巻 ブルーニトロ・GTロボ
(トリコ 3巻)
ブルーニトロ(序盤はGTロボという名前)という存在がストーリーのカギを握っています。果たしてニトロにはどういう目的があって、アカシアのフルコースを狙うのか?


ジャンプ的な王道バトル漫画

『トリコ』をざっくり言うと、いかにもジャンプ的な王道バトル漫画。例えば、栄養豊富な食材を食べることでパワーアップしてみたり、モンスターの程よいインフレもあったりします。特定のお宝を探すという設定からして、典型的なゴールの作り方。

トリコ6巻 釘パンチ・バトル描写
(トリコ 6巻)
バトル描写はこんな感じ。画像はトリコの必殺技・釘パンチを繰り出してる最中。

トリコ33巻 バトル描写
(トリコ 33巻)
グルメ細胞同士のガチンコバトルはこんな感じ。

トリコ19巻 美食會
(トリコ 19巻)
美食會にいる敵キャラクターも個性的。

左上のトミーロッドは一見するとオカマ系ですが、肉弾戦だけでもトリコたちと対等に渡り合える。しいて例えるならフリーザ系。そのくせ体内に大量の強力な虫を飼ってる。全ての虫の捕獲レベルを全部足したら、余裕で世界一強いヤツのはず。

トリコ7巻 グリンパーチ
(トリコ 7巻)
個人的に好きだったキャラクターはグリンパーチ。ストローで毒物もなんでも吸って食べちゃう。

トリコ28巻 三虎 ハングリートング
(トリコ 28巻)
美食會のトップ・三虎はグルメ漫画だけあって、舌を縦横無尽に操る。画像のハングリートングは物体だけではなく、空間すら食べてしまう。ハングリートングが通った軌道上は真空状になり、ハングリースペースとしてそこに触れたものを次々と食らっていく。まさに最強すぎるトラップとしても使える。

トリコ26巻 節乃
(トリコ 26巻)
敵だけではなく、節乃というBBAなど味方キャラクターも魅力的。次郎というジジイも無意味に強かったりして、個人的には好きです。

ヒロインなしが唯一の欠点ぐらいで、雰囲気的には『ドラゴンボール』みたいなんを想像すれば早いかも。必殺技設定なども男子読者は大好物?


グルメ界編以降は微妙

ただ『トリコ』が面白いのはストーリーの中盤ぐらいまで。具体的な巻数を挙げると30巻ぐらい。

ここまでの話は美食會との対立がメイン。前述の三虎やグリンパーチといった敵キャラクターとトリコたちが戦います。でも美食會との戦いが終わって、そこからはグルメ界に移動してアカシアのフルコースを探す旅が始まる。

ちなみに『トリコ』の世界観を説明しておくと、人間界とグルメ界に分かれてる。人間界は安全だけど食材があまり美味しくない。グルメ界は危険だけど美味い食材に溢れてる。ストーリーにも密接に関わってくる設定なんですが、一言で言うと「出し惜しみ」がすぎる。

例えば、30巻の初っ端から訳分かんない。「時は経って…」みたいなクダリから始まるんですが、何故か人間界からグルメ界へ突入するのではなく、既にグルメ界で過ごしてるトリコが人間界へリターンする。しかも一巻分まるまる消費して描かれたので、リアルタイムで読んでた時は「はよ!グルメ界に行けや」と何度思ったことか。

『トリコ』ではグルメ界という世界を散々出し惜しみしてたので、丁寧に扱いたいのか、ぞんざいな扱いをしたかったのか意味不明でした。

トリコ37巻 NEO・ジョア
(トリコ 37巻)
美食會とも対立する「NEO」という組織が新たな敵となるんですが、もったいつけてくる割にあまり登場してこない。

トリコ34巻 猿王バンビーナ
(トリコ 34巻)
代わりにトリコたちが戦うのが、アカシアのフルコースの食材であるモンスターたち。画像はどこぞの神社にもパクられた猿王バンビーナ。先程は魅力的な敵キャラクターが多いと書きましたが、正直モンスターばっかりだと面白くない。何故ならドラマが生まれにくいから。

そもそもトリコ以外の四天王にはココ、サニー、ゼブラがいて、結構序盤の方から仲間として旅を共にするんですが、このメンツはグルメ界編以降も変化なし。せめてかつては敵だった美食會のキャラクターが仲間に入れば展開に新鮮味も生まれますが、さすがに面白味に欠けて全体的に二番煎じ感が禁じえません。焼き直しもいいところ。2016年1月現在、ようやくスタージュンあたりが仲間になりそうな気配ですが…。

トリコ32巻 グルメ細胞・青鬼
(トリコ 32巻)
前述でも説明しましたが「グルメ細胞」という設定もイマイチ不明。グルメ細胞は『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドのような、体内に住んでる魔物のようなものだと思います。あまりに強力なので暴走することもありますが、このグルメ細胞を使いこなすことでかなり強化できる模様。

でもこのグルメ細胞に関してもやはり出し惜しみ感がハンパなくて、バトルの最中に使ってみたり使わなかったり扱いが曖昧。一体どうしたいのか?また特別の修行を経ることもなく、キャラクターがシレッとグルメ細胞を扱えるようになってたり、バトル漫画としては活きそうな設定ですが全く活きてない。

先に色んな設定を作りこみすぎて、それに縛られてる感じ。考えた設定を変に大事にしすぎてる感じ。その結果、こっちが欲しいタイミングでボールが渡ってこない。グルメ界編でも期待感は持たせてくれる箇所はあるものの、展開の作り方がこんなに下手だったっけ?みたいなオチも多い。


インフレが明白すぎて、逆にショボい

あと『トリコ』の一番気になる部分が「捕獲レベル」。名前からも分かりますが、モンスターを捕獲(倒す)するために必要な戦闘力のこと。このレベルが上がれば上がるほど、トリコといった美食屋たちが捕獲(倒す)するのは困難になります。

トリコ37巻 レオタイガーの捕獲レベル3980
(トリコ 37巻)
2016年1月現在の最新刊だとレオタイガーというモンスターの捕獲レベルが3980。かなりレベルが高いんですが、それでもこの直後にすぐ倒されてしまいます。
トリコ1巻 ガララワニの捕獲レベル8

(トリコ 1巻)
そこで1巻に登場したモンスターを思い出してみると、まさかの一桁。画像のガララワニは捕獲レベル8なんですが、「いつぶりだオイ…オレにケンカ売る獲物なんてよ…」というトリコのセリフからも分かりますが、ガララワニはかなり強敵かのように描かれてます。

トリコ1巻 バロンタイガーの捕獲レベル3
(トリコ 1巻)
バロンタイガーに至っては、たったの捕獲レベル3ですからね。フリーザ風に言えば、「たったの戦闘力3か…ゴミめ」といったところ。

もちろん1巻と比較するのは極端な気もしますが、美食會編までは、グリンパーチのペット・ジャックエレファントの捕獲レベルが85、食材メロウコーラのサラマンダースフィンクスの捕獲レベルが92、14巻の蠍魔牛の捕獲レベルは53など2桁レベルで収まってた。

それがグルメ界編に突入した途端、いきなり4桁レベル。いくらトリコやココたちが成長したとはいえ、さすがにインフレがすぎる。あまりに数字が巨大化しすぎると、逆に「強さや凄さ」も感覚的に理解しづらい。『ドラゴンボール』が途中からスカウターが消えたのも、これが要因でしょう。

また全部に数値化しちゃうと色々と矛盾も生まれやすい。このブログでも昔はマンガに点数を付けてたんですが、コメントで「点数に説得力がない」と指摘されたので止めました。自分でも薄々気付いてたこともありますが、それだけ客観的に採点するのは意外に難しい。

つまり点数表記(捕獲レベル)という設定があることで、「敵の強さの信頼性」を自ら損なっちゃってる。また数値化しちゃうと「レベル5がレベル10に勝つ」ような大ドンデン返しみたいな展開を描きにくい。もし勝っちゃったら、何のためのレベル設定なんだって話ですから。ドラえもんでいうと、のび太が出来杉君に勝つようなことがあるから面白いわけで、強さの基準はある程度曖昧なぐらいで良いのかも。


総合評価・評判・口コミ


『トリコ』は中盤ぐらいまでは基本的に面白いです。ただグルメ界編以降は微妙。

もちろん面白くないとまでは言い切りませんが、グーンと期待させられた分を除外してもやや肩透かし感は否めません。展開を煽る割に、その前フリを最後まで描ききらないこともしばしば。現地点での最新37巻だと次郎がブチ切れた直後、まるまる一巻分登場してこない場面などが好例。2014年2015年以降の少年ジャンプでの掲載順位が芳しくないのも、そういうのが一因のはず。

作者・島袋光年は色んな設定を考えるのが楽しいんでしょうが、実際説明がウルサイと思うことも多い、おそらくそれが「出し惜しみ」に繋がってるのかも。グルメ風に喩えるなら、「お腹が減ったタイミングで料理を提供」できてない。下手に空腹になりすぎたり、下手に小腹を満たした状態でメインディッシュを出されたところで、読者は適切な満腹感を得ることはないでしょう。