『帝一の國』全14巻のネタバレ感想をレビュー。作者は古屋兎丸。掲載誌はジャンプスクエア。最初の一年間はジャンプSQ.19で連載してたそうですが、その後『帝一の國』はジャンプスクエアに移籍したらしい。出版社は集英社。ジャンルは少年コミックの学園漫画。

この『帝一の國』は少し前に完結したんですが、早くも2017年に実写映画が公開されることが決まってるらしい。主演は菅田将暉。なんていう読み方をするか分からなかったんですがググると「すだまさき」だそう。いやいや真ん中の「が」はどこ行ってん!(笑)

そこで「帝一の國は面白いかつまらないか、おすすめか」を考察してみました。


あらすじ物語 ストーリー内容

時代は昭和。舞台は海帝高校。東京都にある中高一貫の私立の男子校。海軍兵訓練学校として創設された海帝高校は、政財界に対して優秀な人材を数多く輩出していることでも知られる超名門校。

この海帝高校で生徒会長に選ばれると、日本一の国立大学・東都大学への入学が約束されているほどだった。生徒会長には様々な権限が付与されるなど、絶対的な地位を確立。この地位の格差や派閥は将来に渡るまで影響を及ぼし、将来の人脈作りという点でも重要だった

帝一の國1巻 赤場帝一
(帝一の國 1巻)
主人公は赤場帝一(あかば・ていいち)。海帝高校へ成績トップで入学するほどの秀才。この赤場帝一が会長選挙で敗れた父・譲介のかたきを討つため、海帝高校の生徒会長を目指す。帝一の名前も「海帝高校で一番になれ」という父の強い想いで命名されていることからも、まさに並々ならぬ執念が伺えます。

果たして赤場帝一は生徒会長になることができるのか?そして将来総理大臣になることはできるのか?生徒会長の座をめぐって繰り広げられる青臭き権力闘争の行方は?…という内容のストーリー。

ちなみにマンガタイトルは「帝一の国」ではありません。何故か簡単な方の「国」ではなく難しい方の旧字体です。時代が昭和という設定なので、その雰囲気感を出すためでしょうか。詳しい理由は不明。


選挙という血みどろの死闘

『帝一の國』のストーリーは、基本的に「選挙」を軸に展開されます。もはやメインは「選挙」しかないと言っても過言ではありません。だから『帝一の國』の内容は乏しいのかと思いきや、選挙期間中は、いや選挙前から命がけのナンデモアリの工作が横行する。

帝一の國6巻 氷室 買収工作
(帝一の國 6巻)
高校生のくせにまさかの露骨な買収。あらすじでも説明しましたが、生徒たちの親も海帝高校出身で、既に各業界で成功している強者エリートたちが大半。海帝高校に寄付した金額で生徒の地位も決まったりするぐらいですから、当然生徒たちはお金を持ってる。

有権者が数十万人単位に及ぶ国政レベルだと買収はほとんど意味が無いと思われますが、有権者が1000人も満たなければ意外と効果的な手段なんでしょう。ただネタバレしておくと、この買収工作は失敗します。からくりを説明されれば納得。

帝一の國2巻 氷室ローランド 非校民
(帝一の國 2巻)
生徒会長候補の氷室ローランドだと、ヤル気がない仲間に対して「戦う気がないなら自決しろよ!非校民が!」と罵る。「非国民」的なノリ。きっと「給食を欲しがりません勝つまでは」など弱小生徒たちは言わされている可能性もありそうです。

帝一の國5巻 赤場帝一の切腹
(帝一の國 5巻)
実際、主人公の赤場帝一は切腹を試みることもあるなど、ノリはやや古い。

帝一の國3巻 候補者を消す裏工作
(帝一の國 3巻)
他にも実力行使で出馬させないといった禁じ手にも走ります。選挙が始まってから勝負?ドアホウ!選挙が始まる前から勝負が始まっとんのじゃい。かのマリーアントワネットも「選挙で勝ちたい?だったら出馬させなければいいじゃない」と言っているじゃないですか。だから拉致監禁も当たり前。

画像は氷室ローランドが草壁という生徒を会長候補にさせないために指令を出した場面。ちなみに、この氷室ローランドの野望は「ヒムローランド」を建設すること。何やねんそれ。きっとヘンテコ野望ありきで付けられたキャラ名でありましょう(笑)

帝一の國5巻 帝一 氷室 裏切り
(帝一の國 5巻)
これまで綿密に手を取り合っていた仲間同士の裏切りも勃発。画像は主人公・赤場帝一が命がけで応援していた氷室ローランドを裏切る場面。裏切り者には当然の報いや粛清が待ち構えている。実際の政治の世界でも裏切り者が出世できたのは、東京都知事の小池百合子ぐらいでしょう(テキトー)。

果たして二人の間に何があったのか?そして赤場帝一の運命は?

帝一の國12巻 天照という宗教組織
(帝一の國 12巻)
そして選挙で確実に勝利するためには「特定の団体」に媚びを売ることも必須。画像は天照霊波救世教(あまてらすれいはきゅうせいきょう)という、いかにもウサン臭い信仰宗教団体の教祖の息子・高天原蒜山(たかまがはらひるぜん)。

創価学会をディスってるワケではないと思いますが、やはりそれなりの規模を持つ宗教団体は大規模な組織票を持っていることは言うまでもありません。現在の自民党が安定的に政権を維持できているのも、マスコミがアホしか働いてないからだけではなく、創価学会という強固な組織票もバックに付いているから。

帝一の國12巻 森園億人
(帝一の國 12巻)
画像の森園億人は普段は温厚な生徒会長なんですが、あまりに姑息な手段を講じた東郷菊馬陣営に対して怒りの涙を流す。

この生徒会長は次期生徒会長候補を選択することが可能。東郷菊馬は真っ先に候補から外されていたものの、森園億人の父親に対して間接的に圧力・脅迫をかけてきた。東郷を外すと父親が会社が倒産しかねないため、森園億人は父親のためにやむなく東郷を会長候補に選ぶ。

まさに選挙が始まる前から選挙は始まってる。ちなみに森園億人に圧力をかけたのは、前述の高天原蒜山。創価学会による集団ストーキングも真っ青であります。最終14巻のラストを新興宗教に対する皮肉も込められていたことが分かります。他にも敢えて言及は避けますが、薄っすらと作者の思想性も垣間見えます。

帝一の國5巻 赤場帝一の親父の背中毘沙門天の入れ墨
(帝一の國 5巻)
海帝高校の生徒たちは親も海帝高校出身であることが多いので、どうしても親同士の過去の因縁や背景も自分たち子供世代の選挙に影響してくる。前述の赤場帝一の裏切りも、実は帝一の父親と氷室ローランドの父親が犬猿の仲だったから。特に自民党などは世襲議員も多いですが、リアルの政治の世界でもこういったことは起きうるのでしょう。

もうクセしかない生徒たちがそれぞれの思惑と謀略と策略をぶつけあって、まさにドロドロの会長選挙が『帝一の國』では展開されます。「選挙」がテーマということで一見すると地味な作品に仕上がってるかと思いきや、『帝一の國』では露骨な選挙妨害や勢力の姑息なまでの取り込みなど、割りと要所要所でのドラマが見られます。

赤場帝一と白鳥美美子、そして大鷹弾の三角関係といった、学生らしい青臭い青春要素も描写することで、「本気の選挙」だけどどこか抜けている部分も本質的に残してる。そういったユルさが良い意味で堅苦しさを緩和してくれているので、『帝一の國』が少年コミック誌で割りと長期間連載できていた理由かも知れません。

バカバカしいっちゃバカバカしい工作も目立ちますが、そういった大げさなことを描くからベタな笑いを作れてるんだと思います。その笑いは幼稚そのものですが、それ故にメインの若い読者層も気兼ねなく笑えて、ストーリーやキャラクターなど共感や感情移入しやすい内容になっていたのかも知れない。


心の中の声がゲスいが一周回って名言?

『帝一の國』ではキャラクターが心の中で毒づく。これは最終回でも使われる演出なんですが、これが清々しいぐらいにゲスい。

帝一の國3巻 赤場帝一
(帝一の國 3巻)
例えば赤場帝一の「【正々堂々】という言葉は帝一辞典から削除済みだ」。清々しいぐらいにゲスすぎて面白い。状況を説明すると更にゲスいことが分かります。

画像は前述の草壁の出馬をどう取りやめさせるか謀議している場面を、ライバルの大鷹弾に聞かれていた。そこで大鷹弾は「男なら正々堂々と勝負をしろ」とふっかけられた直後に出た赤場帝一のセリフ。まさにゲスの極み・赤場。きっとベッキーだけはヌレヌレキュンキュンしてるはず。

最終的に氷室ローランドは生徒会長選に負けてしまうんですが、最後はなりふり構わず投票してもらおうと「泣き落とし」する。
帝一の國6巻 氷室ローランドの嗚咽 平気で靴を舐める
(帝一の國 6巻)
その時の心の中のセリフが「泣いて一票でも増えるならいくらでも泣いてやるわ!僕の涙は一兆円の価値があるのさ!!ははははは」。男の涙を最大限利用してくる。これを民進党の蓮舫が聞いていたら、きっとタピオカミルクティーでもブッカケられるはず。

当然この直後に氷室ローランドは負けるので、こんなに無様なセリフもないという。しかも氷室は靴を舐めようとしたり、この時の一挙手一投足は痛々しいレベルを越えてて笑えます。ちなみに氷室は選挙で負けた直後、屋上から飛び降りますが光明が機転を利かせたことで結果的に死亡・死去してません。

他にも次期生徒会長を目指す赤場帝一だと、二年生の票固めは成功していたものの一年生の票を取りこぼしていた状態だった。ましてや大鷹弾が生徒会長選挙に出馬することを決めたことで、赤場帝一の当選は危うい状態だった。
帝一の國10巻 赤場帝一の名言
(帝一の國 10巻)
そこで出た名言が「だがしかし僕は負けない!それが100%の確率ならば残りの0%を父親譲りの海帝魂でひっくり返してみせる!」。半ば根性論に近いセリフですが「0%でも勝ってやる」という意気込みは、いかにも少年漫画的な名言と言えるでしょう。

冒頭でも触れましたが、この『帝一の國』は2017年に実写映画化されることは決まってる。以上を見てみるときっと実写化はしやすい。ただこの笑いのノリをリアルでやれば「ダダスベリするか大ウケするか」の二択にハッキリ分かれると思うのでややリスキーか。

まだキャスト名すら公開されてない段階で面白いかつまらないか評価するのもどうかと思いますが、果たして『帝一の國』の実写映画が面白いかどうか観客はどう判断するんでしょうか?


BL描写にムフフ?

『帝一の國』は登場人物がほぼ全員オトコということもあってか、選挙とは全く関係ない変な描写がちょいちょい見られます。

帝一の國10巻 氷室と赤場帝一 BL描写
(帝一の國 10巻)
結論から言えば、いわゆるBL描写。もちろん政敵な…もとい性的な直接的描写はないもの、それを匂わす描写がそこかしこで見られます。きっと実写映画の菅田将暉もアッハンウッフンする可能性が(*´Д`)ハァハァ

例えばサバイバルゲームの最中に光明がお尻を狙われて「ああああ」と悶絶してみたり、他にも男子キャラクターのふんどし姿など、作者・古屋兎丸の趣味なのか性癖なのか知りませんが、好きな人は好きなBL描写ですが嫌いな人は嫌いだと思うので注意が必要です。特に作者・古屋兎丸の絵柄も独特ですから。


最終回は帝一が本当の総理大臣へ

ここからは『帝一の國』の最終話をネタバレするので注意。選挙がテーマということで、果たして最終回で赤場帝一は生徒会長になることができたのか?

帝一の國14巻 最終話
(帝一の國 14巻)
結論から言うと、今回の生徒会長選挙をキッカケに最終話で赤場帝一は数十年後総理大臣に就任することができます。人差し指のポージングは、きっとアメリカの大統領・オバマをモチーフにしてるに違いない。確かに昭和時代の数十年後は平成にあたるので違和感はないのか。

まさに最終回はベタすぎるオチ。良い意味で意外感はなく、妥当な終わり方。そういう意味ではつまらないかも知れない。じゃあ赤場帝一が生徒会長になれたかというと、否。

野々宮総理大臣が会長選挙に割り込んで、大鷹弾が自分のブレーンであり、また学費援助を申し出たのは自分だったことを暴露。そして息子・裕次郎の命令で学費の納付をストップさせてた不正も暴露。この告発を機に総理大臣辞職を発表。一人の父親として再び息子・裕次郎に向き合う。

一方、洗脳されていた光明も自身が残したニャンコちゃんテープで見事復活。つまりは高天原の詐欺的行為が発覚して、票が分散。東郷菊馬本人も赤場帝一に投票したことで、一票差で大鷹弾を上回る。
帝一の國14巻 最終回
(帝一の國 14巻)
だからこのままいけば赤場帝一の生徒会長就任は確実だったんですが、何故かそこで赤場帝一は自身の票を大鷹弾に入れる。つまり大鷹弾が生徒会長に選出される斜め上な展開へ。

じゃあ何故赤場帝一はわざわざ大鷹弾を「勝たせた」のか?この真相は『帝一の國』を是非読んで判断してみてください。『デスノート』のキラ並みの「計算通り」というゲスい赤場帝一の心の内が読み取れます(笑)

ただ強いて言えば、ラストの数十年後に描かれるのは主人公の赤場帝一だけ。

赤場帝一が総理大臣のままサラッと完結した方が余韻が残るってのはなんとなく理解できますが、大鷹弾や氷室ローランドなどは一切登場せずではさすがに寂しい。これだけ個性的なサブキャラクターが豊富に登場してるのですから、せめて白鳥美美子や榊原光明たちもその後がどうなったかラストで描いても良かった。

特に赤場帝一のサポート役として懸命に奮闘してた、「大事な伴侶」「もう一生離さない」とまで言わしめた光明についても一切登場しないのは違和感が残る終わり方。赤場帝一が総理大臣に就任した以上、ナントカ大臣など何かしらで関わってて欲しかった気はする。まあオッサン同士のキャッキャウフフと戯れる姿を想像するとなかなかキツい光景ですが(笑)


総合評価 評判 口コミ


『帝一の國』全14巻のネタバレ感想をまとめると、独特のやや劇画チックな絵柄さえ気にならなかったらそれなりにベタに笑えると思います。ストーリーも「生徒会長選挙」を軸に展開されるので非常にシンプル。良くも悪くも話が脱線することは少なく、誰にとっても読みやすいはず。

笑いのノリが合わないと辛いですが、それでも学園青春ドラマ要素や突拍子もないキャラクターや展開など比較的最後まで飽きさせないか。ただ『帝一の國』は基本的に同じネタが全14巻も続くようなもんなので間延び感や中だるみ感もゼロではないですが。

最後にまとめると「一風変わった漫画」を読みたい方には『帝一の國』をおすすめしてみます。高校の生徒会選挙という一点に絞って、ここまで連載を続けた漫画も未だかつて存在しないはず。政治や選挙の世界で言うところの、まさに「ワンイシュー」だけで戦った漫画

それ故に評価が分かれそうな感じもしますが、色んな漫画を読み飽きたわーと自負する方にこそ、新たなジャンルを開拓したいとウズウズしてる方にこそ『帝一の國』をおすすめしてみます。