『走馬灯株式会社』全10巻のネタバレ感想。作者は菅原敬太。漫画アクション(双葉社)で連載してたサスペンス漫画。

あらすじ

走馬灯株式会社に迷い込んだ人は、自分の人生が産まれてから現在に至るまでを収録されたDVDを観ることが可能。ただ走馬灯株式会社は唐突に現れ、また時空を飛び越え、人生に悩んだ人々の前に現れる。

走馬灯株式会社の当主であるメガネ美人・神沼に迎え入れられた人々は、一体自分の人生を振り返って何を思うのか。また自分の人生に関わった、親しい他人の人生を観ることも可能。果たして、他人から見た自分の人生は素晴らしいのか。

つまり「走馬灯」というテーマではありつつも、ざっくり言うと「過去の人生」。それを振り返ることで数々のサスペンス展開が発生するという漫画。だからそのDVDを観たからといって死ぬわけじゃない。あくまで「これまでの人生を一時的に振り返る」というのが厳密なテーマ。

小気味よいオムニバスにハマる!

あくまで基本的に主人公は存在しない。色んな過去を背負った人間が時折に現れて、というオムニバス形式の漫画だから毎回登場人物が異なる。走馬灯株式会社に迷い込んだ人が人生を振り返ることで、自分が知らなかった事実がどんどん明るみになって誰かを追い詰めたり、逆に追い詰められたりする。

このオムニバスが小気味よい。ストーリーもしっかりしてて、キャラクターも立ってる。そして後味が最高に悪い。それが余韻として後を引くので、読後感としては結構読み応えがあったと思わせる。

走馬灯株式会社2巻10話1
例えば2巻10話の関隆宏という男の話。28歳の結婚適齢期ということで、婚約者を連れて実家に帰る。関隆宏の「母親」はシングルマザー。女手一つで関隆宏を育ててきた。そのためお互い子離れ親離れできてないフシもあるものの仲が良い親子。

そして関隆宏が久しぶりに故郷をブラブラ散歩していると、そこで走馬灯株式会社が現れる。興味本位も手伝って自分の人生を恐る恐る観てみる。
走馬灯株式会社2巻10話2
ただ赤ちゃんの頃に目の前にいたのは、母親ではない見知らぬ女性。しかも「和也くん」という隆宏とは異なる名前で自分を呼ぶ。「何これ?」と思ってビデオを再生していくと、衝撃の事実が明らかになる。

実は自分が母親だと思っていた「母親」が、その画像の実母から自分を誘拐してた。しかも「母親」は子供が産めない体だから彼氏から捨てられるんですが、その彼氏と画像の実母が結婚出産。その子供が関隆宏。

だから「母親」の関隆宏に対する執念がハンパない。数年間は何事もなく関隆宏を育てていた「母親」だったが、最終的に実母に発見されて追い詰められる。でも「母親」は全然へこたれない。
走馬灯株式会社2巻10話4
それどころか最終的には納屋で…Ω\ζ°)チーン

しかもこの光景は関隆宏が幼い頃に見てたものの、あまりに衝撃的な光景だったからか、これは女性の幽霊だったと記憶の中では思い込んでる。だから納屋に入るのにはトラウマがあった。それを走馬灯株式会社のおかげで、「母親」の凶行を今になって知ることになる。

じゃあ関隆宏がどうしたのか?「母親」の過去を追及するのかと思いきや、それでも自分を女手一つで自分を育ててくれた優しい「母親」であることに違いはない。
走馬灯株式会社2巻10話5
そこで「母親」のヒミツは自分だけが黙っておこうと固く決意する。え?凶悪な犯罪者を野放しに?と思わずモヤモヤしつつも、このまま親子愛というキレイな終わり方をするかと思ったら、まだ展開が待ってる。

そもそも関隆宏が実家に帰った理由は「結婚」を報告するから。ただ前述のように「母親」の関隆宏に対する執念はえげつない。じゃあそこから導き出される結論としては、今度は婚約者が毒牙に?!実母を手にかけた時に「母親」は仏壇に紙人形を置いてた。

走馬灯株式会社2巻10話6
だから仏壇には新たな紙人形が置かれてる?というオチで終わる。「死」をペラペラな紙人形で表現するのが怖い。関隆宏としても多分「母親」を追及することはないはずだから、このまま何事もなかったかのように平常な生活が繰り返されると想像しただけも恐怖。

走馬灯株式会社5巻45話1
(5巻45話)
他にも自分が産まれた瞬間の映像を使って、今にも出産しそうな彼女を助けるといった場面など、展開の作り方が上手い。「過去を振り返る」という設定だけだとワンパターンになりがちかと思いきや、バリエーションに富んだ展開で面白い。

大オチが救われない

基本的に主人公はいない漫画と書いたんですが、一応メインキャラクターは存在。
走馬灯株式会社5巻39話1
(5巻39話)
それが探偵・澄川と、その助手である羽宮理乃という女性。喜島という男から「走馬灯株式会社を探してくれ」という依頼を受けたところからストーリーが始まる。この話が最終10巻の大オチに繋がっていく。

ちなみにこの喜島は走馬灯株式会社で、愚かにも自分の人生のDVDディスクを壊して天涯孤独の身になってしまう。当然ディスクを壊したら、周囲の人間の記憶からは自分という存在が消えてしまう。

でも走馬灯株式会社を探そうと思っても、都合よく現れてくれるわけじゃない。二人が途方に暮れていると、羽宮理乃が走馬灯株式会社に偶然遭遇。そこで半ば強制的に自分の人生を振り返るんですが、実は羽宮理乃が子供時代にトンデモナイことをやらかしていたことに気付く。

走馬灯株式会社5巻43話1
(5巻43話)
そこで潜入捜査も兼ねて、なんと走馬灯株式会社に入社。この二人の人生がどうなるのか?というのを最後の最後で持ってきてる。

ただ後味が悪い。前述のように救われないオチが多いからこそ、最後だけはみんなハッピーエンドで終わって欲しかった。羽宮理乃はずっと澄川のことが大好きだったものの、澄川はその好意に全く気付かず。でも全てを恩返しするかのように、
走馬灯株式会社10巻89話1
(10巻89話)
自分の記憶60年分を使って、羽宮理乃が現実世界に戻ってフツーに暮らしていけるように計らう。

でも澄川の年齢は36歳。だから記憶をとどめておくことができなくなる。しかもそこまで澄川が自己犠牲を払ってしまうと、羽宮理乃は罪悪感に押しつぶされてしまう。だから羽宮理乃の記憶の中から、自分(澄川)という存在を完全に消してしまう。

お互いが愛し合ってるからこそ多大な自己犠牲を払ったのに、お互いの記憶が一切ない。澄川は羽宮理乃の人生をずっと眺めてるものの、映像の女性が誰であるかは分かってない。それがひたすら切ない。羽宮理乃だけは幸せそうな人生をこれから歩みそうなものの、でもそれが果たして救われたと言ってもいいのかという疑問。正直、個人的には微妙。

総合評価

数話で完結するオムニバスは面白いんですが、澄川と理乃のクダリのように長編ものとなると、やや展開を引っ張りすぎた感じはする。テンポ感という点でも気になって、ためた割にオチがモヤッとさせられたので点数は少しだけ下げてみた。

それでも旧ブログでは一巻ずつ感想を書いてたぐらいなので、何気におすすめ漫画。絵柄の古くささなどから期待せずに読み始めましたが、意外にも掘り出し物だった。数話単位でまとまったストーリーはコンパクトなものの、しっかり読み応えがあった。10巻というボリューム感も考えると、全巻大人買いでは★5。



◯展開…★4.5◯テンポ…★5
◯キャラ…★4◯画力…★3
◯全巻大人買い…★5
◯おすすめ度…85点!!!!