『蒼天航路』全37巻のネタバレ感想。週刊モーニング(講談社)で連載されていた三国志マンガ。作者は王欣太。

あらすじ

メインは主に曹操孟徳。ほぼ生まれてから死ぬまでの「一つの人生」を描かれてる。だから言ってしまえば、曹操孟徳のエピソードもの。

最初は「お?」みたいに思ったものの、最終的には良い意味で裏切ってはくれなかった。曹操孟徳の人生を描いてるマンガらしいから、最初は一見ストーリーマンガだと思った。でも違った。基本的に1巻2巻で完結するショートエピソード的なマンガ。主にそこが期待外れだった部分。

曹操孟徳を簡単に説明しておくと、性格は『かなりの鬼畜』で知られてるらしい。とにかく一つ一つのエピソード自体が衝撃的に描かれてる。だから逸話や伝記モノとして読むとそこまで悪くない。

例えば、8巻では曹操孟徳は敵軍の死体を大量に川に捨てる。結果、大きな川の流れが止まるっていう。まさに村ごと町ごとの皆殺し。あの南京大ギャク殺も真っ青。劉備玄徳同様、読んでて自分も思わず震えた。

でも一方ではルール遵守の鬼。序盤は「法律順守」を扱ったエピソードが多め。宦官(かんがん)という自分より目上の高級官僚に対して、夜に出歩いた罪で思いっきりケツを百叩きして殺しちゃう。死んだと分かった時は、「それでよし!」と爽快な笑顔。皇族を利用して皇帝に近づいたり、もうメチャクチャ。

ちなみに曹操孟徳の息子も凄くて、31巻ではトラを握力だけで殺しちゃう。刃牙シリーズの花山薫も真っ青ですやん。

曹操孟徳という人物

ただこの蒼天航路というマンガのAmazonのレビューをチラッと読んだら、「曹操孟徳の意外な一面を知れた」というレビューがあった。どうやら曹操孟徳は鬼畜なだけじゃないらしい。超が付くほどの『リアリスト』みたい。

情に厚いエピソードも?
蒼天航路7巻/黄巾賊を仲間に引き入れる曹操孟徳
(7巻)
例えば、青州黄巾党という敵軍の民衆たちを仲間に引き入れる。この何年か前、曹操孟徳は黄巾の乱という農民一揆で、親世代の黄巾族を駆逐してる。敵すらも魅了する懐の大きさ?

ただ国を大きくするためには人口が必要だから。あくまで曹操孟徳は、現実的論理主義者らしい。
蒼天航路26巻/才能があれば不逞な輩でも重用する
(26巻)
「唯才!」と言って、才能があれば不逞な輩でも重用しちゃう曹操孟徳。つくづく理に基づいて動いてるらしく、上記の南京大虐殺ばりの出来事も根底には「裏の意図」があったとか。

リアリストが行き過ぎて、モラルは大事と教えてる儒教を邪魔だから弾圧したりする。ここらへんは現在の中国共産党と通じる部分もあるのかも。ただ26巻では華佗(かだ)という世界初の全身麻酔を行ったとされる医者は、記録として医術を文章に残したがらない。儒教も儒教で、どうかと思ったり。

蒼天航路13巻/袁紹本初を挑発する曹操孟徳
(13巻)
たまに袁紹本初という敵大将をお茶目に挑発したりする場面もあるが、やっぱり基本的には打算と恐怖政治のオンパレード。

女子会トークのような展開

ただ歴史モノのマンガとして読むと、かなり微妙。何故ならエピソードが『断片的』。前後の繋がりがどうなってるかが、あまり見えてこない。急にエピソードが終わったと思ったら、次の新しいエピソードが始まってる。気付いたら、知らない間に曹操孟徳もオジサン・老人に老いてる印象。

三国志をよく知らない状態で読むと、かなり辛い。歴史モノとして欲しい要素の「連続性」みたいなんが弱く、情報を無機質に寄せ集めただけの「学校の教科書」を読まされてるような苦痛を感じた。

言ってしまえば、『女子会』トーク。話がアッチ飛んだり、コッチ飛んだり、ちょっと男には付いていけない。曹操孟徳が生まれてから死ぬまでを描いてるマンガですが、壮大な人生という「一つの物語」を感じることはなかった。幼稚園児の粘土細工。ブサイクなカタマリをそのまま無造作に貼り合わせてるだけ。美しくない。

逆に言えば、100巻分ぐらいのボリュームでもっと入念に描けばまた別の評価になったかも。もしくは、もっとエピソードを絞って、10数巻ほどに短くまとめてくれればスッキリしたマンガになったはず。37巻というボリュームはムダに短く、ムダに長かった。

飽きっぽい作者の影響

23巻で書かれてるが、作者の王欣太は飽きやすくて、そもそもマンガ嫌いだそう。プロットは浮かんだ尻から飽きるんだそう。そのあとがきを読んで、「じゃあ辞めちまえよ」とさすがに笑った。

だから、マンガのテンションが持続しない。「良いかも?」とせっかく感じてきたエピソード。このまま盛り上がっていくのかと思いきや、いつの間にか終わってて次の展開が始まってる。その展開とは、もちろん歴史的な事実・戦いのこと。

ただ歴史をなぞってるだけ。とにかく曹操孟徳が死ぬまで描くことしか眼中にないマンガ。全体的にフワフワしてて、あまり『物語性』を強く感じることはない。エピソードエピソードは確かに面白い部分もたまにあるが、それは「セリフだけ」で誤魔化されてるだけ。上記の曹操孟徳のコマ画像を見てもらったら分かるけど。

豊富なアクション

あとセリフ回しだけではなく、迫力があるアクション描写も結構豊富だからそれで誤魔化されてる。これも一応褒めてるつもり。

蒼天航路28巻/アクション
(28巻)
例えばこんな感じで「筆致に力がある」とでも表現すればいいのかな。ただイマイチ誰が、何の戦で戦ってるのか分からないことが多い。

このマンガの場合、多くはひとしきり新しいキャラクター(歴史上の偉人)がブワッと登場して戦って、最後に「◯◯年△△が起きた」みたいに説明する。全然話の呑めり込めないままゴチャゴチャ始まって、後でドヤ顔でキメ顔で作者だけ自己満足的にスッキリ。

だから言えることが、三国志について何一つ知識が身に付かない。

蒼天航路で学んだこと

とりあえず蒼天航路を読んで分かったこと・頭に残ってることを挙げるなら、「董卓(とうたく)、呂布(りょふ)、関羽雲長(かんう・うんちょう)、張飛(ちょうひ)がメチャクチャ強い」「宦官(かんがん)という官僚になるには性器を切断する必要がある」ってことぐらい。

(8巻)
蒼天航路8巻/ブチギレ状態の呂布
呂布は強いだけではなく、頭がなかなかイカレてる。董卓という暴政君主の部下だったにも関わらず、裏切ってそいつの嫁を寝取る。しかも董卓を最期は斬り倒す。基本何も考えてない武神。ただ最終的には、為政者として民衆たちのことを考えてたとかどうとか。

蒼天航路36巻/関羽雲長
(36巻)
ほぼラストの後半に至っては、関羽無双すぎてヤヴァイ。もはや関羽しか登場しない。曹操どこ行ってんっていう。

他だと天下三分(三国志という思想)を唱えたのが、諸葛亮孔明(しょかつりょう・こうめい)ということぐらいか。この人名も結構聞いたことはあるが、いまいち理解できそうでできなかった。

総合評価

総合評価としては、あらかじめ三国志の知識を持ってる人が読めば…という感じ。結局最後まで「三国志とは何ぞや?」という問いに自分で答えを出すのは無理だった。だから無垢な状態でこれを読んで、じゃあ三国志というジャンルにハマるかと言うと微妙。どこがどう面白かったか?人気だったのか?を言語化するのは自分では難しい。

ただ三国志は「キャラクター性」がウケてるんだと個人的には感じた。登場してくる歴史上の人物が、とにかく個性が強い。逆に言えば、それ以上でもそれ以下でもないんだろうなーと。でもマンガとしてのクオリティーが高くなれば、まだまだ三国志マンガが伸びる余地がある裏返しでもあるとも同時に思う。

蒼天航路(1)
王欣太
講談社
2012-09-28

◯展開★3.5◯テンポ★2
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い…★3.5
◯78点!!!!