『青春離婚』のネタバレ感想。作者は紅玉いづき。最前線 (星海社)というサイトで配信されてた青春恋愛漫画。「青春離婚は面白いのか?」を考察してみました。


あらすじ

主人公は高校1年生の佐古野郁美(さこの・いくみ)。人見知り激しい根暗な女の子。入学したばかりということで周りに友達もおらず不安だらけ。誰かに話しかけるなんてことはできない。

青春離婚13P
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そして最初の自己紹介の時に、自分の真後ろに座っていた男子・佐古野灯馬(さこの・とうま)が同じ苗字だと知る。お互い珍しい苗字だったので担任の教師からは「親戚か?」「夫婦みたいだな」などからかわれる。

でもこれがキッカケで二人の距離が急速に縮まる。周囲からは二人が夫婦扱いされたりするものの、変に否定すると却って怪しいのでお互いに強く否定することはなかった。ただ結果として二人は微妙な関係が続いて、気付いた時には一種の「仮面夫婦」みたいな関係になってる。


距離感の縮め方が素敵

とりあえず前提として、佐古野灯馬も佐古野郁美も両思い。だから夫婦扱いされても拒否しない。ただお互いにそれをハッキリと表には出さない。

でも、奥手で根暗な佐古野郁美に対して、佐古野灯馬は自分から積極的に話しかけたりしてアプローチする。ただ佐古野灯馬も所詮は高校生だから恋愛経験も知れてるので、最終的な一線を超える勇気はない。だからいつまでも「冗談っぽい」仮面夫婦の関係が続いてる。

その佐古野灯馬の距離感の詰め方が素敵。例えば、「夫婦はデートしません」「(ノート)キレイだよ」というセリフをサラッと言い放ったり、強引ではないけど確実に自分の思いを遠回しに伝える。
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他にも「最近、奥さんが冷たい…な」とボソッと言ってみたり、冗談のトーンではない。

物語はスマホアプリを共同制作する中で、更に距離感が近くなっていく。まさに二人だけの秘密。
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クラスメイトにからかわれても、思わず指でシーとやってみる佐古野灯馬。二人だけの秘密感がヤバイ。むしろイケメンすぎへんか?という感じも。

オチも素敵

ただそのスマホアプリがキッカケで、二人の仲は急激に悪化する。佐古野郁美としては二人だけの秘密だったのが、灯馬はオープンソース化しちゃった。また佐古野郁美の親が離婚して苗字が変わったことで、それがとどめを刺すカタチで、二人の見せかけの夫婦関係が終わる。

ただ帰りのバスの中で、そのスマホアプリを見る郁美。そこには自分が作ったキャラクターが「いつも ありがとう。ずっと、好きでした。」の文字。そこで二人が両思いだったことを知る郁美。

最後は「灯馬さん、私達はきっと今日この日に離婚するのだ。」「そうしてまた最初から始めるのだ。」「青春を。恋を。」で終わる。結構後味が悪い喪失感が残るかと思いきや、後日談を含めて、後を引くようなまとめ方で読後感は良かった。


総合評価

『青春離婚』の感想としては、これぞ「高校生の恋愛」というピュアで清純さに満ちた内容で割りと面白い。

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肩書きだけで満足出来てるピュアさが初々しくて素敵。心が洗われる。また異性と少し砕けた会話するだけで何かを得た感じになれる年齢だからこそ、二人の関係性が歯がゆくてもどかしい。

ただ後日談を読むと、好きな人には自分の思いを素直に伝えられないのは、別に年齢を経ても変わらない。だからこそ、大人になっても青春は始められるという示唆も含まれてるのかも知れない。作者・紅玉いづきの絵こそ下手くそですが「ピュア」をしっかり表現できてるマンガで割りと面白い。