『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』全13巻のネタバレ感想をレビュー。作者は北尾トロ(原案)と松橋犬輔。掲載誌はコミックバンチ。出版社は新潮社。ジャンルは青年コミックのエッセイルポ漫画。AmazonのKindleや楽天などでもダウンロード・試し読みが可能です。

裁判長ここは懲役4年でどうすか1巻 取材
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
ざっくり言うと、リアル裁判を傍聴した北尾トロ原作の著書をコミカライズした漫画。ただ、その原作の発行部数は70万部だか80万部超えと大人気。随分前に『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』が実写ドラマ化もされたらしい。

そこで今更感はありますが、『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』全巻まとめて面白いかおすすめか考察してみました。結論から書くと割りと面白くて、つい先日ランキング化した「ガチで面白いおすすめ漫画100選」にも選びました。


あらすじ物語 ストーリー内容


主人公は北尾太郎。28歳のしがないサラリーマン。業務用エアコンの営業マンをしている北尾太郎は、毎月、霞が関の裁判所のエアコンのメンテナンスを行うのが日課だった。そのため裁判に関するウワサや情報をよく耳にしていた。

そのためどこか内心興味を抱いていた北尾太郎は、ある日ふと交通事故裁判(業務上過失致死罪の裁判)を覗いてみる。裁判と聞くと「つまらないイメージ」しかなかったが、実際は違った。

裁判長ここは懲役4年でどうすか1巻 あらすじ 交通事故加害者
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
何故なら、被告人の男はまさかの「ドクロマークの服装」を着用。思わず北尾太郎は「全然反省してないやんけ」と心の中でツッコミ。誰が見ても誠意を感じさせない雰囲気から、北尾太郎は全くの第三者なのに何故か冷や汗。

ただ被害者とされるバイクのドライバーは信号無視をしてた。また被告人がスピードを出した時間帯も、基本的に自動車の通行量が少ない早朝。確かに被告人に同情の余地を残す部分があるものの、やはり「不注意は僕だけの責任じゃない」という空気がプンプン。

裁判長ここは懲役4年でどうすか1巻 あらすじ 交通事故加害者2
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
もちろん、その原因はやはりドクロマークの服装。北尾太郎からしてみたら「誠ニ申シ訳なナク思ッテマス」とドクロマークが機械的に事務的に話してるようにしか聞こえない。当然、裁判の結果はシロート目からも明らかに思えた。

裁判長ここは懲役4年でどうすか1巻 あらすじ 交通事故加害者3
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
でも実は被告人は不器用なだけだった。単に深刻な反省を示す態度を表に出せない、不器用な今時の青年がそこにはいた。被告人は裁判後に被害者遺族に対して、必死に駆け寄って深々と頭を下げる。ドクロマークに別に悪意はなかった。

裁判では反省を演技で示すものもいれば、その逆もいる。自分はスズキ・ジムニーのフルモデルチェンジ情報などを扱った自動車ブログ「くるまン」も絶賛運営してることもあって特に思いますが、交通事故は起こしたくても起こすものじゃない。最近でこそ重大な人身事故は減少しますが、それでも誰にでも裁判所に立つ可能性はある。

無反省の被告人の態度振る舞いがどう判決に影響するのか。亡くなった被害者や遺族の人生も含めて、目の前で一人の人生が決まっていく緊張感。テレビではろくに報じられない、弁護士の一挙手一投足、検察官のギリギリと被告人を追い詰める論法、その両者の丁々発止の法廷バトル。

それらを野次馬根性で楽しめる面白さが裁判にはあった。そして主人公・北尾太郎は裁判の傍聴に完全にハマってしまう。まさに法廷で繰り広げられる様々な人間ドラマのトリコになってしまい、それからは次々と他の裁判も傍聴。

だから『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』はリアル裁判をモチーフにした内容の漫画になります。


何故「懲役4年」というタイトルなのか?


作中で語られていたかは覚えてませんが、何故『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』というタイトルなのか。もっと言えば、何故「懲役4年」である必要があるのか?別に懲役2年でも8年でもいい。大げさに煽るのであれば懲役30年だっていいはず。

個人的に推察すると「執行猶予が付くのが懲役3年まで」だから。ニュースで見聞きする「執行猶予」は、実は懲役4年以降の刑では与えることができない。例えば「懲役10年執行猶予3年」みたいな判決は出せない。

だから求刑4年は刑務所に入るか入らないかの、ちょうど境界線とも呼べる求刑の重さ。まさに「人生の分かれ道」みたいなんを表現した漫画タイトルだと思われます。


ガチ裁判の中身をそのまま漫画化


ガチ裁判をネタにしてるだけあって、まさに「事実は小説より奇なり」と思わせるエピソードがてんこもり。

裁判長ここは懲役4年でどうすか3巻 100kg以上の覚醒剤
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 3巻)
例えば、ヤクザが被告人のケース。やはりというか、まさかというか傍聴席はヤクザさんたちで満員。でもよく見ると、黒いスーツとカジュアルなスーツの二種類がいる。

実は被告人は新潮組・組長で、100kg以上のシャブを密輸したという罪で逮捕起訴された。ただ新潮組は番地組傘下の小さい組。当然そんな大罪を犯すことはできるわけがなく、シャブもその番地組の組長から命令されただけ。

だから黒いスーツは新潮組の組員で、裁判そのものの印象を良くしようとスーツで決め込んでる。逆にラフな格好(?)の番地組は、新潮組が下手なことをしゃべらないように圧力をかけてる。

もちろん新潮組の組長は仁義を重んじて何もしゃべらず。結果、何も裁判では明らかにされず。まさに「仁義あり戦い」。テレビのニュース番組では報じられませんが、きっとリアルの裁判は強面ヤクザさんたちが傍聴席に集結しているのでしょう。警察は何をやってるんだって話ですが(笑)

裁判長ここは懲役4年でどうすか4巻 窃盗 居座る
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
他にも画像の窃盗犯のケースは笑った。見た目のうさんくささから、主人公・北尾も「完全に現行犯だ」と決めつけ。

でも、この被告人は実際かなりすごい。何故なら部屋に押し入って物色してると、被害者とばったり遭遇。フツーであれば逃げればいいものの、この被告人はそのまま逃げずにプカプカとタバコを吸い出す。そして何本も被害者にタバコを要求する(笑)

そして弁護士はまさかの無罪を主張する。この理由はしっかりあって、そのヒントが画像の被告人が必死に無言を貫いてること。この弁護士の手法には思わずナルホドとうなってしまった。まあ現行犯逮捕ということで、さすがに裁判の結果は有罪でしたが(笑)

裁判長ここは懲役4年でどうすか5巻 ロリ1
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 5巻)
他にも児童ナンチャラという裁判の被告。出会い喫茶で年齢を偽った中学一年生をゲット。「ビンゴ」じゃねーよ。YouTubeでいうとピンキーの妹あたりか。

男は最終的にパコパコするものの、男の態度に怖くなって警察に逃げ込んで事件発覚という典型的なオチ。こういうケースは多分お互いに黙ってたら、事件が明るみに出ることはほとんどないはず。でも何故明るみに出るのかと言えば、やはり男が少女を諦めきれずにストーカーまがいの行為に走ってしまうからっぽい。

そのことが分かるのが弁護士が被告にした最後から分かる。弁護士はいかに被告人のロリ男が反省してるかを伝えるために、「なぜ少女と一生会わないと言えるんですか?」と訊く。フツーは「これ以上傷付けたくないから」などと答えるべき。でも男は…

裁判長ここは懲役4年でどうすか5巻 ロリ2
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 5巻)
彼女を愛しているからです!!」と紅潮しながら高らかに宣言する。極論すると愛したから犯罪なわけです。これを言い換えると「彼女とパコパコしたいからです」みたいなもん。絶対こいつロリ欲を我慢できねーだろというオチ(笑)

裁判長ここは懲役4年でどうすか13巻 下着ドロ
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 13巻)
他にも下着ドロボーの被告など、どうしても面白い裁判ということでやや下刑の犯罪が多めか。

裁判長ここは懲役4年でどうすか5巻 女優
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 5巻)
大人向けの女優がスカウトマンの彼氏を「ゴーカン」で告訴したケース。何がすごいのかといえば、彼氏以外と複数でHしてたにも関わらず、彼氏だけを訴えた。

もう少し具体的にネタバレしておくと、複数でプレイした後に彼女が恥ずかしがると、彼氏は「やってるの見てもらってナンボでしょ」と彼女をモノのように扱った。愛情が憎しみに変わった瞬間。そして彼氏だけを告訴した。怖いというか悲しいというか。どんな判決が下ったのかは割愛。

裁判長ここは懲役4年でどうすか3巻 主婦売春
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 3巻)
実は女性の被告もいる。画像は主婦売春で起訴された美人。ちなみに自分や他人に危害を加えないように基本は女性の被告はノーブラ。これを聞いた瞬間、今度小向美奈子や酒井法子が起訴されたら、絶対傍聴することを固く決意しました!!

裁判長ここは懲役4年でどうすか13巻 大人の玩具
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 13巻)
個人的に面白かったのが「大人向けの玩具」でチカンを働いたオッサン。前科5犯の強者。女性検察官が「何故持ち歩いていたんですか」と問い詰めると、「私は肩コリがひどくて」と真顔で応答する。まさにキングオブキングス(笑)

また犯罪をおかしたかもしれない被告人もいれば、情状証人もいる。被告人の罪を軽くするために、どれだけ被告人は良い人なのか、またこれから再犯を犯さないのか擁護してくれる人。主に情状証人をやるのは家族や友人、仕事仲間。

ただカエルの子はカエルではないですが、子供が子供なら親も親。何度も再犯して収監されてる娘の情状証人の母親がひどい。

裁判長ここは懲役4年でどうすか5巻 情状証人
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 5巻)
普通は具体的にどう更生させるかなどを主張する必要があるんですが、ある母親は「この子はもともといい子だからッッ!」と裁判所で泣きわめく。もともと良い子なら、何度も再犯をおかしてないだろと誰もがツッコミを入れたことでしょう。


地味な裁判が面白い理由


今更ですが、主人公・北尾太郎は作者・北尾トロの名前をモジッてる。実際の北尾トロの年齢は60代とかなりの乖離があるので、厳密にはエッセイ漫画ではない。原作の著書からして裁判に書かれてない主観や想像も多く入っていて、社会派ルポとは少し性質が異なるらしい。

つまり『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』はリアル裁判のエピソードをモチーフにしつつも、実際には「フィクション要素」でコーティングされてる。でも、それゆえにしっかりドラマ仕立てに脚色されてることでストーリーとして読みやすく、物語として面白い。

裁判長ここは懲役4年でどうすか4巻 自殺幇助
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 4巻)
例えば、妻のジサツを手助けした罪で起訴された夫の裁判。いわゆる心中。この被告と妻が共に歩んできた・愛し合ってきた過去が情感たっぷりに描写される。それ故に裁判にまで至ってしまった結末が切ない。

当然、被告は心の底から愛し合った妻が亡き今、もう生きる目的はない。裁判長や傍聴人の誰もが後追いは止めてほしいと願う。でも弁護士が妻が被告に残したフリガナ付きの手紙を読むと状況は一変。

そこで被告が涙ながらに「ジサツはしません。妻の墓を守っていくことが、これから私が一生をかけてやっていくべきこと」と妻の死を前向きにとらえたことで、裁判所は涙に包まれる。きっと「リアルな描写」だけを重視したら、こういう展開は作れない。

裁判長ここは懲役4年でどうすか13巻 見え方
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 13巻)
果たして被告人は悪人なのか善人なのか、何か深い動機があって犯行に及んだのか、はたまた単なる遊び目的の短絡的な犯行なのか。こういう見せ方を変える手法は、リアルのノンフィクションだと不可能。


トツカとフジサワのコロし愛


裁判長ここは懲役4年でどうすか1巻 トツカとフジサワ
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 1巻)
フジサワとトツカの裁判はかなり衝撃的。できそこないのヤンキー・フジサワと根暗男・トツカの友情がねじれにねじれて、ある女性に凶刃が向かっていくという事件。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』では基本的に被告人を特定できないように匿名で描かれるものの、多分調べたらどんな事件が出てくるかも。それぐらい特殊な事件内容。

裁判長ここは懲役4年でどうすか2巻 トツカとフジサワ
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 2巻)
もう少しネタバレしておくと、フジサワが全ての罪をトツカになすりつける。実際トツカに「友情」を名目に全ての犯行を行わせる。法律的には実行した本人より、その命令を下した主犯格が一番罪が重くなる。だから必死にフジサワはごまかす。

裁判長ここは懲役4年でどうすか2巻 トツカとフジサワ2
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 2巻)
トツカは唯一できた友達・フジサワのために黙秘を貫いていたものの、あるフジサワの行動を境に全てを白状する。まさにドラマ仕立てで読まされる。最終的にフジサワは自分の過ちに気付き、ようやく刑に服することを受け入れる。

裁判長ここは懲役4年でどうすか3巻 トツカとフジサワ
(裁判長 ここは懲役4年でどうすか 3巻)
ただ裁判官がとどめを刺すように「実に卑劣である」と断罪した場面が強烈。ハゲのくせに生意気なぐらい迫力があって、ややもすると高圧的。だからこそ溜飲を下げてくれる。作者目線でしっかり脚色してるからこそなせる。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』の序盤で起きた裁判なので、もしかすると無料で試し読みできる可能性が高いので、興味があれば機会を逃さず是非一度読んでみてください。


総合評価 評判 口コミ


裁判長!ここは懲役4年でどうすか 1
北尾トロ
コアミックス
2017-02-10


『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』全13巻の考察をまとめると、フィクションとノンフィクションが絶妙なバランスで成立してるからこそ読み物として面白い。堅苦しそうなテーマではあるものの、最後まで難なくあっという間に読める。

万引きといった小さな事件から凶悪事件まで多種多様な裁判を描写。被告がどう裁判中に更生していくかなど展開は幅広い。まさに裁判とは人生であり、生き様を写す鏡。良くも悪くも、人間の人生は面白いと思わせてくれる内容。

裁判を最初から最後まで深掘りして描かれるので、テレビや雑誌などでは知れない情報もたくさんあるので、完全なノンフィクションではなかったとしても学ぶべき点も多い。落ち目の新聞にこそ載せて欲しいような漫画。