『プルートゥ(PLUTO)』全8巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌はビッグコミックオリジナル。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックのSF近未来漫画。作者は浦沢直樹。いわゆる手塚治虫原作の『鉄腕アトム』のスピンオフなんですが、累計発行部数で850万部を突破したらしい。

最近『プルートゥ』の舞台化も決まった模様。背景にCGを投影させる「プロジェクションマッピング」を取り入れた派手な舞台になるんだとか。アトム役が森山未來。主人公のゲジヒト役がドラマ「相棒」でお馴染みだった寺脇康文。天馬博士が柄本明。そしてウランがまさかの永作博美。いろいろ無理ないか?(笑)

とりあえず『プルートゥ』面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

世界最高水準のロボット7体の物語。第39次中央アジア紛争に平和維持軍として参加するなど、一体だけでも大量破壊兵器クラスの軍事力を持つ。

Pluto1巻ゲジヒト
(1巻)
主人公はその中の一人ゲジヒト。ドイツでユーロポールの特別捜査官として働いてる。ロボット法なるもんがあって、人権と市民権がある。ロボットにも家族がいたりする。一方ロボットはロボットで、人間を絶対傷つけないようにプログラムされてる。

ただ次々と世界最高水準のロボットたちが破壊される事件が発生。その犯人がアブラー博士によって開発された最強ロボット・プルートゥ。アブラー博士の息子・サハドの人格が中に入ってる。これを主人公・ゲジヒトが追い詰めていく展開。

Pluto2巻ブランドの最期・走馬灯のように家族
(2巻)
世界最高水準のロボットの一人・ブランドが破壊された時には、自分が過ごしていた家族の画像が走馬灯のように流れる。直前に戦ったプルートゥに関する情報をゲジヒトやアトムに送信しようとするものの、家族との思い出が邪魔をして送信できない。

ロボットの人工知能が人間に近づけば近づくほど、それはある意味ロボットとしては「不完全」に近づいていく。実際、初めて人間を殺害したブラウ1589の人工知能はむしろ最高性能だった。果たして、ロボットに心は宿るのか?というのが大きなテーマの漫画。


憎悪が作った憎悪の塊・プルートゥ

Pluto8巻アブラーも天馬博士が作る
(8巻)
実はプルートゥを作ったアブラー博士は、アトムも作成した天馬博士が作ったロボット。もっと言えば、アブラー博士が死ぬ直前の遺言を天馬博士が受け継いだ。ただ高性能すぎて自分がロボットであることに気付いてない。

アブラー博士は60億人以上の人間の人格を詰め込んで生まれた、とにかく超高性能。ただ当初は高性能すぎたが故に、却って起動しなかった。それだけ複雑すぎた。
Pluto5巻怒りの感情をプログラムすることで動く
(5巻)
そこで天馬博士がどうしたかと言えば、怒りや憎しみといった「負の感情」をプログラムすることで起動できた。ある意味、人間の本質こそ「怒りや憎悪」といった感情と言える。

まさに憎悪の塊・アブラー博士が作った、憎悪のみで動くプルートゥを誰が倒せるのか?


憎しみからは何も生まれない

最終的にゲジヒトも殺される。アトムも高性能すぎたが故に、起動しなくなる。そこで天馬博士は、アトムに対しても「負の感情」プログラムを追加。
Pluto8巻プルートに対して怒りに燃えるアトム
(8巻)
結果、アトムも憎悪に支配されてプルートをボコボコにしちゃう。

ただそこで記憶の回路から思い出されるのが、ゲジヒトの最後の言葉。

Pluto8巻ゲジヒト「憎しみからは何も生まれない」
(8巻)
「憎しみからは何も生まれない」。

プルートゥにとどめを刺すことを留まるアトム。一方でプルートゥはプルートゥで、優しかったサハドの人間的な面が蘇る。ゲジヒトの「愛」が、「憎悪」に対して打ち勝つ。
Pluto8巻涙を流すアトムとプルート
(8巻)
二人は号泣、慟哭にくれる。ロボットなのに人間の感情が、涙となって現れる。最終的にアブラー博士が暴走して反陽子爆弾で地球を滅ぼそうとするも、プルートゥ…もといサハドが自らを犠牲にして地球を救う。そしてラストの最終話でアトムが言う。

「博士…憎しみがなくなる日は来ますか?」


浦沢直樹作品としてはまとまったオチ

『PLUTO』のストーリー中盤ぐらいまでは退屈。いかにも浦沢直樹的な風呂敷の広げ方が一方的に描かれてて面白いんだか面白くないんだか微妙なところ。

…というか少し脱線しますが、浦沢直樹最新作の『ビリーバット』はヒドい。全く意味が分からない。下山事件の謎を追求していくのかと思いきや、アインシュタインやらザビエルとか登場して話の軸が見えてこない。なんなんでしょうかアレは。

あと『PLITO』のアクション描写もいまいち微妙。全体的に動きに変化がない。会話にしても何にしても、似たような同じコマが連続しがち。きっと作者に意図はあるんでしょうが退屈。あと文字が小さいので読みづらい。

ただそれでも最終回やラストの結末は比較的まとまってました。だから割りと若干の不満は感じつつも、まさに「終わりよければ全てよし」と思わせてくれるような完結のさせ方。オチも示唆に富んでて、読後感は余韻が引くものとなっています。おそらく作者・浦沢直樹の意図通りの最終話を迎えられたと思うので、そういった意味でもそこまで辛口にレビューするほどではありませんでした。


総合評価・評判・口コミ

『PLUTO(プルートゥ)』のネタバレ感想をまとめると、意外と作品としてまとまっててまぁまぁ面白い。どうしても途中は「読まされてる」感が強いのでつまらないと感じなくないですが、浦沢直樹作品にありがちな「モヤッ」としたまま完結することはない。割りと素晴らしい最終回を迎えた感じで読後感は意外に悪くはありません。巻数も少ないので、まとめ買いもしやすいはず。

ロボットに心は宿るのか?」というテーマは一貫してて示唆にも富んでる。最後までちゃんと読めば、それなりに考えさせられることも多い。最近ソフトバンクが発売した高性能ロボットがいますが、ああいうのを見ると近い将来日本でも同じ結末が起きるのか?

ちなみにゲジヒトが主役でストーリーは進むものの、最後は何故かアトムが締める。ずっとアトムは脇役に徹するのかなーと思ってたので、やや違和感は残った。ただ来年から始まる舞台の主役はアトム(森山未來)だそうなので、その点では違和感はなく観れそう。