『おやすみプンプン』全13巻のネタバレ感想をレビュー。作者は浅野いにお。掲載誌は週刊ビッグコミックスピリッツ。出版社は小学館。面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

おやすみプンプン1巻 デフォルメ
(1巻)
主人公は小野寺プンプン。1巻で登場した時は小学生なんですが、最終13巻には20台半ばぐらいまで成長してます。だから『おやすみプンプン』は、主人公・小野寺プンプンという一人の青年のめくるめく思春期を追ったマンガ。

ちなみにプンプンの見た目は鳥のようですが、完全なデフォルメ。演出。
おやすみプンプン11巻 実体
(11巻)
たまに「人間としての実体」が見えることもあるので、プンプンという名前も架空の名前。本当の実名はあるはずですが、最後までそれが明らかになることはありません。設定からして、かなりシュールっちゃシュール。

おやすみプンプン2巻 田中愛子
(2巻)
このプンプンが小学生の頃に、田中愛子という転校生に一目惚れしてしまう。初めてキスをしたりするんですが、小学生だから言うまでもなくピュアな関係性を築く。この小学生の時に得た鮮烈な記憶や経験が、これから迎えるプンプンの青春時代に良くも悪くも強く影を落とす。

おやすみプンプン10巻 田中愛子と遭遇
(10巻)
途中で田中愛子は引っ越し離れ離れになってしまうものの、20歳前後でプンプンは再び田中愛子と出会う。でも田中愛子の内面はズタボロ状態で、かつての面影はなかった。ただプンプン的には過去の鮮明な記憶に引きずられるように、田中愛子に寄り添うほど破滅的な結末へ向かっていく…みたいなストーリー。


プンプンのデフォルメ表情集

改めて補足しておくと、主人公・小野寺プンプンの見た目はデフォルメ。他のキャラクターは同じような鳥ではなく、しっかり人間として描かれてます。あくまで周囲の人間はプンプンを人間のように接してるので、プンプンの内面を視覚化してる以外の演出は考えにくいと思います。5巻だとプンプンの影だけは人間型だったりします。

おやすみプンプン5巻 デフォルメ
(5巻)
だからちょくちょくプンプンの見た目は変貌します。

おやすみプンプン10巻 デフォルメ
(10巻)
この見た目なんかは相当ヤバイ。『20世紀少年』の「ともだち」も目じゃない?

おやすみプンプン7巻 南条幸にホメられたとき
(7巻)
南条幸という漫画家志望のオンナにホメられた時は、それまではずっとツンケンした精神状態で「完全な三角形」だったのに、途端にプンプンは小学生時代のような鳥風デフォルメに戻ってしまう。そこそこ好きだった南条幸にホメられて心底嬉しかったのか、虚勢の脆さが笑えます。

個人的にはもっと変化しても良かった気がしますが、プンプンの外見はゆるキャラから極悪キャラまで様々。そこからプンプンの内面を読み取ることができます。

例えば、プンプンの身体全体がデフォルメされるパターンと、頭だけがデフォルメされるパターンに大別されます。後者ほど状況的に切羽詰まってることが多い印象ですが、それだけプンプンは「頭でっかち」に一つのことに視野が狭まってるキケンな状態を指してると考えられます。逃亡中は頭に鬼の角みたいなんが生えてます。


フツーってなんじゃらほい?

浅野いにおのマンガはそもそも論評しづらいですが、『おやすみプンプン』のテーマはおそらく「普通とは何か?」みたいなこと。1巻で晴海というプンプンの友達が言ったセリフなど、ちょいちょい「普通」というワードが登場します。

プンプンは自分のことを「ちっぽけな存在」と自嘲的に思ってるから、ああいう小鳥のようなルックスとして描かれてるはず。自信の無さも読み取れます。ただ一方では、悲劇的なヒーローを気取ってる節もあって、「自分は周囲の人間とは違う」という特別視してる側面もあるからこそ、周囲の人間とは見た目が明らかに違う。そこからは元々プンプンはフツーを疎ましく思ってる人間性も読み取れる気がします。

やはり発端は田中愛子。プンプンの小学生時代の夢も「宇宙を研究する学者になってみんなを宇宙にイジューさせること」だった。田中愛子は親の影響からか、将来人類は滅亡すると予言してた。他愛もない話ですが、田中愛子を守るためにプンプンはそこで学者の夢を抱くようになる。田中愛子にも「プンプンはウソつかないもんね?」と更に何度もダメ押しされる。

ただクラスで発表する時になって気恥ずかしさから、「普通のサラリーマンになって、普通の過程をきずくこと」と急に変えてしまう。だからプンプン的には田中愛子を口先だけでも守れなかった負い目もあってか、更に「普通」は一番忌むべき存在になった可能性があります。

おやすみプンプン10巻 普通を好む田中愛子
(10巻)
この田中愛子の場合、母親がカルトにハマってるのは大人になっても変わらず、毎日のようにしいたげられてる。そこで夜布団に横になりながら「普通でいいの。普通で…映画観てお茶して買い物して…うーうーうー」と唸る。後半のストーリーはプンプンが田中愛子を救うために、この母親を(省略。結果、二人は逃避行をするハメになる。

プンプンはどんどん年齢は重ねていくものの、頭の片隅には常に田中愛子の存在があった。だから時間がどんどん過ぎていくものの、プンプンの時間はずっと小学生で止まってた。だからプンプン的には「田中愛子を守る」という念願の夢が叶ったはずだった。

おやすみプンプン12巻 夢の中に南条幸
(12巻)
でも逃亡中、プンプンの夢に出てくるのは南条幸。南条幸と過ごした些細な幸せを疎ましく思ってたものの、思い出されるのはそればかりだった。「フツー」ではない状況に追い込まれることで、プンプンは「フツー」の有り難みや価値に気付く。

おやすみプンプン9巻 不動産屋のオッサンがタックルされる
(9巻)
プンプンに家を紹介してくれた不動産屋の宍戸というオッサンは、万引き犯に間違えられてラグビー男にタックルされる。そして下半身不随の障害を負ってしまう。

おやすみプンプン9巻 グッド・ヴァイブレーション 星川としき
(9巻)
星川としきは新興宗教の教祖。「グッド・ヴァイブレーション」が口癖の、5巻ぐらいからちょいちょい登場してる元ホームレス。プンプンが成長するのに合わせて、一般社会にどんどん拡大浸透していく。宗教としての方向性も危うくなっていって、最終的には…。

1巻でもプンプンの母親が旦那にフルボッコされるなど、普通に退屈な人生でも簡単に崩れてしまう危険が常に潜んでる。プンプンも基本的には「至ってフツーの生活」を送ってて、この漠然とした安心感に漠然とした鬱憤や不満を抱えてるものの、それらは実は貴重で「当たり前じゃない」幸せなんだよ…みたいなことを表現したいのかも。そうだとしたら、何となく古谷実の作風や意図に似てると思った。

ラストでプンプンは田中愛子に対して言う。「ちゃんと前に進んでる。それはそんなに難しいことじゃなかった」「驕らず、欲張らず、まじめに働いて、それで少しだけ誰かの役にたって、目の前にいる人が笑っていると、とても安心するんだ」。ここにマンガの全てが集約されてるのかなと。


総合評価 評判 口コミ


『おやすみプンプン 全13巻』のネタバレ考察をまとめると、かなり設定が奇をてらってるので漫画として面白いかは微妙か。そもそも浅野いにお作品自体がムニャムニャしてて、一貫して何を伝えたいのかはズバッと読者には届きません。つまらないとも言い切りませんが、だからといって爆発的に面白いこともありません。

そこで漫画の中で何を伝えたいのかを考察すると「普通に生きるありがたさ」みたいなんを言いたいのかも。つまらないと思える人生でも、その「何もない普通のこと」こそが一番幸せ。誰でもふとした弾みやキッカケで人生が転落することもある。

でも普通の人生を歩んでいれば、周りの仲間たちが支えてくれて再び普通の人生をやり直すことだってできる。実はみんな気付いてないだけで、ほとんどの人は既に「その普通の人生を送る」ことができてる。

主人公・プンプンも実際には普通の人生を歩んでいたワケですが、そこに気付かなかったのか気付こうとしなかったのか、敢えて普通から外れようと試みた。結果的に再び普通の人生を歩めているものの、そんなことをしなければ周囲も不幸にせずもっと幸せな人生を歩めていたはず。だから作品内では思春期特有にありがちな「破滅願望」を揶揄してるのかも。

ただ少し気になったのはラストの最終回。晴海という小学生時代の同級生が再び登場する。晴海は普通に大学を卒業して、普通に小学校の教師として働いてる晴海は、偶然プンプンと出会ってベンチに座ってお喋りする。でも晴海はプンプンの名前を最後まで思い出せない。そこで二人は奇妙なすれ違いや会話のズレ

でも田中愛子の事件はニュースになって、プンプン自体も逮捕もされてる。現在プンプンは執行猶予中のようですが、それでもネットニュースも見ない人がどれだけいるのか。必ずしもニュースで実名報道された可能性があるとは限りませんが、風の便りぐらいで。

ちなみに晴海というキャラクターはプンプンと再開する前に、小学校の同窓会へ参加してる。プンプンは同窓会には当然来てないわけですが、この『おやすみプンプン』をちょうど連載してる時に、作者・浅野いにおはTBS系情熱大陸に出演してた。ちょうど売れ始めた時期と重なってか、そこで浅野いにおも同窓会へ参加してた。ここらへんの経験も作品に活かされてる印象。