『乙嫁語り』1巻から8巻のネタバレ感想をレビュー。作者は森薫。掲載誌はハルタ。出版社は角川書店。ジャンルは少年コミックの歴史漫画あたりか。このレビュー記事では乙嫁語りが面白いかつまらないかの考察をしてやろうと思います。

ちなみに作者・森薫は性欲の神様・岡田斗司夫にお持ち帰りされそうになったぐらい、めちゃめちゃ美人らしい。


乙嫁語りのあらすじ物語・ストーリー内容

舞台は19世紀の中央アジア・カスピ海周辺にあった、とある地方都市。

乙嫁語り1巻 アミルとカルルク
(乙嫁語り 1巻)
カルルク・エイホンとアミル・ハルガルが結婚し、一緒に二人で暮らし始めたところから物語は始まります。カルルクは12歳、アミルは20歳という年齢ではありますが、中央アジアに限らず当時ではありふれた話。当然12歳の女の子が結婚することも当たり前だったとか、全くうらやm…ゴホンゴホン…けしからん話です。

ちなみに辞書で引くと、乙嫁とは「若いお嫁さん」という意味らしい。他にも乙嫁には「弟の嫁(弟嫁)」という意味も含まれているそうですが、この『乙嫁語り』では前者の意味で使われているはず。つまり花嫁であるアミル・ハルガルのことを指していると考えられます。

ただ『乙嫁語り』は一応この二人に焦点が当たってる漫画なんですが、他にも色んな若い女の子キャラクターが登場します。だから乙嫁は別にアミルでは限ってはおらず、どちらかと言えば「中央アジアにいた乙嫁たち」というフワッとしたニュアンスの漫画と考えた方が正しい。ストーリー性はあるっちゃあるし、ないっちゃない感じなので、そこら辺は漠然と捉えてください。


刺繍など模様の描き込みがすごい

『乙嫁語り』の醍醐味としては、作者・森薫が描く緻密な刺繍の数々。この模様が実に精緻で繊細で、ずっと眺めていると視力が奪われてしまいそうな勢い。

乙嫁語り8巻 刺繍 パリヤのクシ入れ
(乙嫁語り 8巻)
例えばパリヤという女の子が作ったクシ入れだと、こんな刺繍のデザイン。画像は圧縮して汚くしてあるので、実際に目の当たりにしたらこんな程度ではありません。

乙嫁語り8巻 刺繍 パリヤ
(乙嫁語り 8巻)
まだアイテム一つであれば誰でも頑張れそうな感じですが、色んな布地や衣服に大量の刺繍が施されている場面は圧巻。こちらも画像を圧縮してあるので、実際にはもっと刺繍はキレイに見えます。

乙嫁語り5巻 刺繍 ライラとレイリ
(乙嫁語り 5巻)
ライラとレイリという浅黒い少女たちでは、こんな感じの刺繍が施されています。もちろん衣服を着用すれば、デザインは立体的に模様が変わりますが、そういった部分も違和感なく表現されている気がします。

乙嫁語り1巻 刺繍 アミルとカルルク
(乙嫁語り 1巻)
冒頭で紹介したアミルとカルルクが楽しそうに睦まじく過ごしている場面だと、絨毯の刺繍だけではなく、水入れといった陶器にも細かいデザインが刻み込まれています。

乙嫁語り7巻 シーリーン 美しい描き込み
(乙嫁語り 7巻)
以上は貼った画像の多くは扉絵ばかりでしたが、もちろん普通の場面から作者・森薫の描き込みは全開フルスロットル状態。画像はシーリーンというお胸がないチッパイ女子。


中央アジアという異世界感

ただこういった演出は功罪も多くて、どうしても画力の押し売りで終わってしまってることも少なくありません。でも『乙嫁語り』の場合は、まさに中央アジアという世界観・設定だからこそ、その演出が違和感がなく成立できてる。

実際イスラムといった文化圏では、細かい刺繍や派手なデザインが施されたモノが多い。そういった国々だからこそ変に説得力が増す。むしろ緻密な描き込み(刺繍デザイン)こそが、『乙嫁語り』という世界観を下支えしているとさえ言ってもいいぐらい。

乙嫁語り2巻 木漏れ日の空気感
(乙嫁語り 1巻)
こういった部屋に差し込む木漏れ日の中、一人寂しく佇むアミル。そこには大量の刺繍。どこかホコリ臭さを感じさせるものの、ありふれた日常に存在する刺繍だからこそ価値があって、何となく漂わせる「ありふれた生活感」もステキ。

乙嫁語り7巻 中央アジアの世界観
(乙嫁語り 7巻)
イスラム圏だと地理的にヨーロッパと近いせいか、例えば建物にはどこか近代テイストさもあって、のどやかに流れる時間や空気感が甘美ですらあります。「(ヨーロッパ+アジア)÷2」という方程式は、いかにも女子が好きそうなイメージ。

乙嫁語り8巻 中央アジア 幻想的な世界観
(乙嫁語り 8巻)
シーリーンとアニスのクダリでは、作者・森薫の丁寧な描き込みも手伝って、ありふれた日常感に絶妙に「幻想感」もマッチさせてくれて、まさに女性読者を惹きつけると思います。セリフは一切ない場面ですが、何とも言えない余韻を与えてくれます。

乙嫁語り1巻 狩りアクション描写
(乙嫁語り 1巻)
中央アジアということで放牧や狩猟が盛ん。割りとこういった雄々しいアクション描写も豊富だったりします。

日本人にとって馴染みの薄い「中央アジア」だからこそ、その幻想的な世界観に容易に酔いしれることができる。その心地良い異質は、特に今までにない「非日常感」を与えてくれる。一方で、土着的な宗教観は日本人との親和性は高く、異世界に誘ってくれるハードルは意外に低い。

だからあらすじでも書きましたが、特定のキャラクターがどうこうってことよりも、中央アジアに生きた新妻たちの「人生」や「生活」を幅広く切り取ってる感じのマンガです。変にストーリー性がないからこそ、素直に画力(刺繍デザイン)を楽しめる。


女体の神秘もまた美しい

『乙嫁語り』に登場する新妻たちは、みんな程よくふくよかで、そしてモッチリした体型。作者・森薫は女性ということで、きっと自分の身体を参考にしてるに違いない。

乙嫁語り2巻 アミルの女体
(乙嫁語り 2巻)
アミルだとこんな感じ。

乙嫁語り7巻 アニスの女体
(乙嫁語り 7巻)
アニスだとこんな感じ。実際のマンガではもう少し際どいシーンが登場します。

例えばアミルの年齢は20歳なものの「年上のお姉さん感」をムンムンに漂わせている。眠りにつくカルルクの頭を撫でながら、「早く大きくなるといいね」と心の中でつぶやく。まさに「母性」が体現されていて、女性読者でもきっと嫌悪感なく見れる…いや、むしろ女性読者の方こそ見入ってしまう身体かも知れません。

何故なら、艶めかしくモッチリとした肌は細かい刺繍との対比を意識して描かれていて、お互いが更に映える演出や仕掛けとして巧みに利用してる。だから別段変な意味はなくそこに見入ってしまいます。また「神秘性」という点でも中央アジアという世界観と妙にリンクさせているのかも知れません。


乙嫁語りの総合評価・評判・口コミ


『乙嫁語り』の考察レビューをまとめると、まずエグすぎるほどに描き込まれた刺繍に目が奪われます。刺繍だけではなく背景や衣類のデザインも含めて、もはやそれらには「森薫の執念」に近いものを感じさせます。でもその執念こそが美しい。

だからといってキャラクターは写実的ではなく、むしろホッコリとした乙嫁キャラたちにどこか癒やされる。たまに血なまぐさい事件も起きますが、それでもその時代を強く生き抜こうとする乙嫁たちの姿勢には時として活力をもらえます。ストーリー性こそ強くはないですが、それでも雰囲気だけで読まされてしまうパワーがあります。

正直男読者としては。この『乙嫁語り』が面白いかどうかをそこまで強く判断・断言することはできません。何故なら女体が登場するものの、内容は女性向けだから。もちろん女性とは言っても「面白い」の基準は人それぞれでしょうが、逆に言えば、この感想記事で貼った画像にピピンと来た女性読者なら買って損をしたと感じる人は少ないでしょう。

ちなみに自分のレビューで満足できた経験は少ないんですが、この『乙嫁語り』の感想は少しだけ自信があります。三つの見出しでしっかりマンガ全体を的確に表現して、文章も過不足なく適度なボリュームでまとめられた気がします。それでいてほとんど内容をネタバレをしてない。もう言うことなし!!…とたまには自画自賛してみました(笑)