『男たち』全2巻のネタバレ感想。作者はちばてつや。モーニング(講談社)で連載されてた漫画。2014年にちばてつやが文化功労者に選ばれたことを記念して、旧ブログでレビューした記事。

あらすじ

主人公は、新一というエリートサラリーマン。会社から転勤を命じられて、田舎から上京せざるを得なくなった。そこで頼ったのが東京に住む叔父・一色留次(いっしきとめじ)。彫金師で生計を立ててる、通称ダルマ。ただ性格は極めて粗暴で、とことんテキトー。

男たち1巻叔父ダルマ
(1巻)
例えば毎晩毎晩、仲間たちと麻雀に明け暮れてる。その中でもダルマはリーダー的な存在で、気に喰わないことがあるとすぐ暴力。新一の母親が送ってくれてた荷物を勝手に自分のモノとして使ってたり、上京したばかりの新一から万札を抜いたり、むちゃくちゃ。

その仲間もノミ屋をやってたり胡散臭い連中ばっか。性格や態度もガサツで、ダルマに負けないぐらいチャランポラン。新一曰く、「とても人間がすむ場所じゃありませんよ」。

だから日常的に金銭的にモメることも当たり前。その中でも倉橋というノミ屋が莫大な借金を背負う。
男たち1巻倉橋
(1巻)
そこでタケちゃんという取り立て屋とのクダリもハチャメチャすぎる。

最終的に倉橋は、いわゆるタコ部屋労働送り。ただそこは極寒の地で、いかにも悪徳業者が運営してる。壮絶なイジメも受けた結果、倉橋は肉体的精神的に疲弊しまくる。
男たち2巻倉橋
(2巻)
でも、チャランポランで粗暴な叔父ダルマが助けに行く。男気も見せれてくれて熱い。

個性的な男たち

叔父ダルマ然り、それぞれのキャラクターが個性的。特に主人公は新一はいかにも清廉潔白な性格で、その描写の対比が結構面白い。

新一はエリートサラリーマンだからといって、結構ナヨナヨしてるかと思いきや、自己主張はしっかりする。最初麻雀に熱中して、一向に新一の部屋に案内してくれないダルマ。
男たち1巻新一が激怒
(1巻)
それに痺れを切らして、激昂する新一。思わず胡散臭いダルマの仲間たちも、一瞬止まる。

ダルマの仲間たちはテキトー。だから共同トイレでタバコを吸っては、そこら辺に捨てる。でも新一は我慢ならない。
男たち1巻神経質な新一
(1巻)
だから空き缶を用意して、母親のように「吸い殻はちゃんと捨てましょう」と注意。それにタジタジするダルマの仲間たち。このギャップ感が面白い。

他にも、オカマのツネというキャラがいる(一応男w)。新一に対して恋心を抱いてるんですが、決して叶わないそれが切ない。最終的に新一はロンドン支店へ異動を命じられる。新一を見送るクダリでダルマの仲間たちといい感じに別れて、新一はやっとまともな人生を歩める雰囲気。

ただオカマのツネだけは新一が乗ってる飛行機にコッソリ乗りこんでる。まさに時限爆弾。また新一に悲惨な生活が待ってるっていう終わり方が、良い感じに後を引く。

総合評価

作者ちばてつやが「人間くさい男たちを描いちゃった漫画」と述べてるように、まさに「THE下町の男たち」という無骨でチャランポランなキャラクターが登場。だからこそ一人一人のキャラに味があって、最近の漫画には「ないモノ」が詰まってる。80年代に連載してた漫画らしく、その雰囲気もまた味があって良いかも。

ちなみにラストの新一が乗った飛行機が飛び立つコマで、飛行機の煙が文字っぽい。これが何を意味してるか、微妙にモヤモヤして仕方がない。

男たち (1) (ちばてつや全集)
ちば てつや
ホーム社
1996-11

◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯大人買い★4
◯82点!!!!