『王狼』のネタバレ感想。原作は『北斗の拳』の武論尊。作画は『ベルセルク』の三浦建太郎。だから結構派手なアクションも満載。20年以上前に、月刊アニマルハウス(現ヤングアニマル)で連載されてたSF歴史マンガ。

ざっくり「義経=チンギス・ハーン説」を題材にした歴史ファンタジーもの。

アクションあり!

三浦建太郎が『ベルセルク』を連載し始めた頃に、ちょうど同時並行して描かれてた作品。だからベルセルクとテイスト的には同じで、主人公イバは荒々しいオトコ。

王狼1巻アクション2
とにかく剣を振り回す!

王狼1巻アクション1
イバは剣道の名手だから敵だってズバーン!

荒唐無稽だがロマンあり!

順序は少し逆になりましたが、あらすじを説明しておくと主人公・イバは日本の歴史学者。シルクロードを調査してる最中に忽然と姿を消した。イバの彼女である京子が捜索のためにシルクロードまで追いかけると、何故か京子がタイムスリップ。800年以上前の中国大陸へ。そして、そこには奴隷兵士として戦うイバの姿が…というSFチックなストーリー。

800年前の中国大陸といえば、モンゴル帝国が隆盛を誇っていたころ。もちろんモンゴル帝国の国王といえば、チンギス・ハーン。ただし、このマンガが発売された当時はジンギス・カンと呼ばれていたようで、作中では全て「ジンギス・カン」という表記が使われてます。ちなみに現在では更に改名されてチンギス・カンと呼ぶのが一般的だとか。この記事では便宜上、チンギス・ハーンという表記で統一します。

王狼1巻源義経=チンギス・ハーン
そして、そのチンギス・ハーンが実は源義経だったということが明らかになる。源義経が敗れた衣川の戦いは1189年、チンギス・ハーンがモンゴルで台頭し出したのが1190年前後。時期的には符合する部分があるっぽい。

王狼1巻武蔵坊弁慶
源義経の部下だった武蔵坊弁慶だって登場するぜよ!

だからストーリーの設定としては荒唐無稽っちゃ荒唐無稽。

人間ドラマあり!

ただ源義経の王に君臨する決意、王としてのプライド、イバと武蔵坊弁慶の友情、そして主君源義経に対する忠義との間で揺れる葛藤。イバの京子へに対する愛情。そういう色んな人間ドラマが、しっかり垣間見れる。

イバは源義経を倒して、尚且つちょうどグッドタイミングでタイムスリップの渦が発生。ただイバは悩む。もし自分がここで戻れば、歴史が変わる。未来で日本という国が、果たして存在するのかどうか分からない。そうすると自分の愛する妻の未来だって危うい。

そこでイバはモンゴル帝国に残り、自分がチンギス・ハーンとして生きることを決意。
王狼1巻主人公イバの息子がフビライ・ハン
そして息子をフビライ・ハンと名付け、日本にいつか帰すことを決意する。

だから物語的には、フビライ・ハンが主人公イバの息子。元寇は日本を攻め入るためではなく、実は二人の愛の結晶が祖国に戻ろうとしてただけ。事実が分からないだけに、ロマンも馳せる。

王狼1巻13悠久の物語、時を越えた

そして最後はイバが愛用してた剣道のお面のペンダントが、チンギス・ハーンの遺品として日本で展示される場面で完結。歴史は連綿と繋がってる事実に「壮大さ」を感じ、でもその根幹には愛する妻への「想い」がある。その対比やギャップ感が上手い終わり方。

でも唯一ツッコむとしたら、ラストのイバVS源義経戦でイバが「俺には剣道がある」と吠えるんですが、最後は思いっきりジャンプして源義経を倒す。「え?剣道ってジャンプしたっけ?」と地味に笑った。

総合評価

海外でチンギス・ハーンが源義経だったということを主張したら笑われるでしょうが、フィクション的には面白い。ものすごくコンパクトにキレイに1巻でちゃんと完結してて、めっちゃ読みやすい。読後感もそれなりに色んなもんが残る。

さすがに絵柄は古いものの、20年以上経った今でも内容は色褪せない。ガチガチの歴史漫画として読むとやや失敗するが、エンタメ作品としては面白い。歴史漫画に興味なくても是非…って感じか。

そういえばカバーには「巨匠と新鋭の最強コンビが放つ」と謳われてて笑った。当時から巨匠扱いされてる武論尊が今でも現役で活躍してるとかヤバすぎ。


◯展開★4◯テンポ★4.5
◯キャラ★4◯画力★4
◯88点!!!!