『ニセコイ』全25巻のネタバレ感想をレビュー。作者は古味直志。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。Amazonのキンドルでも絶賛ダウンロード可能です。

この『ニセコイ』の連載が始まったのは2012年ですが、つい先日2016年夏に完結。連載期間は4年程度と標準的な期間でしたが、それでも『ニセコイ』の累計発行部数は1000万部を超えた人気マンガ作品と言えます。

ニセコイ19巻 チアガール姿 登場人物
(ニセコイ 19巻)
『ニセコイ』のジャンルは少年コミックのラブコメ漫画ということもあって可愛らしい女の子の登場人物が多め。やはり「女の子は可愛く、男の娘はカッコ良く」という基本が発行部数を伸ばしやすいセオリー。それでもラブコメというジャンルを考えると『ニセコイ』の発行部数は驚異的と言えるでしょう。

そこで『ニセコイ』が最終25巻もようやく発売されたので、さっそく「ニセコイが面白いかつまらないマンガだったのか」を考察してみました。何かと批判されていた最終回や何故噛ませ犬の小野寺小咲が選択されなかった理由についても後半の方で考察してます(ってこれ軽いネタバレか)。

ちなみに、この『ニセコイ』全25巻のレビューをアップしたのは9月後半。『ニセコイ』最終25巻が発売されたのは10月頭でタイムラグがあるものの、リアルタイムで少年ジャンプを読んでたので内容的には問題ナッシング。

ただ『ニセコイ』最終回のレビューだけは最終25巻以降でいいやとずっと放置してたので、とりあえず簡単に最終回について一ヶ月遅れで今更ながら追記してきます。え?放置してた理由?もちろんシンプルに「忘れてた」だけですよ( ゚∀゚)アハハ八八


ニセコイのあらすじ物語 ストーリー内容

主人公は一条楽(いちじょう・らく)。一見するとどこにでもいる普通の高校生だが、実は親が「集英組」という893さん。しかし一畳楽はケンカはからっきしだったため、893を継ぐ気はサラサラなかった。そのため将来の夢も安定の公務員。

当然親が893ということもあってか女性にもモテたことはなく、小野寺小咲(おのでらこさき)という優しい性格の幼馴染に片思いを抱いていた。そんな時、アメリカから転校してきた美少女・桐崎千棘(きりさきちとげ)と出会ったことで運命は一変する。

桐崎千棘は一条楽と同じく、親がギャング「ビーハイブ」のボスという娘だった。しかも集英組とビーハイブは抗争が激化しつつあったので、893の父親がギャングとの融和を図るため、息子の一条楽とギャングのボスの娘である桐崎千棘と付き合わせることにした。それを知らされた893とギャングの部下たちは大喜び。抗争なんてどこ吹く風。

そして血みどろの抗争を避けるため、一条楽と桐崎千棘の「ニセモノの恋愛」が始まる。ただ桐崎千棘は美少女はあったが、小野寺小咲とは正反対のガサツな性格だったので二人の相性は最悪。いつもケンカばかり。一条楽が好きな小野寺小咲と付き合うという目標(本当の恋)が遠ざかるばかり。

ニセコイ1巻 ザクシャインラブ
(ニセコイ 1巻)
また事態を複雑にさせるのが一条楽が持っているペンダントの存在。一条楽は10年前に天駒高原(てんくこうげん)という場所で、謎の少女と「再会したら結婚する」という約束をしていた。このペンダントを開けるためには、その少女に預けたカギが必要だった。

しかも、この運命のカギと思しきカギを桐崎千棘だけではなく、小野寺小咲も所持していた。つまりは究極の三角関係が始まる。果たして運命の結末は?一体謎の少女とは誰なのか?はたまた別の女の子と愛を誓い合ったのか?…みたいな内容のストーリー。


ザクシャインラブの意味

最終話については後述しますが、一条楽と謎の少女(桐崎千棘?小野寺小咲?)が別れ際に交わしたセリフが「ザクシャインラブ」。また鍵となる絵本タイトルにも使われている言葉。だから『ニセコイ』の中では重要なキーワード

この「ザクシャインラブ」という絵本の筆者は、一条楽の母親。もともとはロミオとジュリエットをモチーフにいたこともあって悲劇的な完結を考えていたものの、これ嫌で一条楽が勝手にハッピーエンドに書き換えてしまった。でも結果的にハッピーエンドに書き換えたことで、一条楽の母親はこの絵本が大ブレーク。そして、このことが運命の女の子との出会いにも繋がったらしい。

ポーランドにあるトゥムスキ橋にある伝説(欄干に錠を付けてカギを川に投げ入れると二人は永遠に結ばれる)をモチーフにストーリーを作ったので、一条楽の母親はタイトルにもポーランド語も使いたかった。

そこでお手軽に翻訳サイトを使ったは良かったものの、当時は(今もじゃね?)の翻訳レベルや精度は低かった。そのため「愛を永遠に」とポーランド語に翻訳したつもりが「Zawsze in Love」と間違って翻訳されてしまったのが事の顛末。実際のポーランド語では「Zawsze w mitosci」と書くのが正しいらしい。だから「ザク・シャイン・ラブ」みたいに、ガンダムに関係してそうな意味はありません。


桐崎千棘など登場人物の女の子たちが可愛らしい

ニセコイ19巻 チアガール姿 登場人物
(ニセコイ 19巻)
『ニセコイ』の魅力というか面白い部分がやはり「女の子キャラクター」と言えます。冒頭の画像を再び貼っておくと皆可愛らしい。右から桐崎千棘、小野寺姉妹、左の三人が上から鶫誠士郎、橘万里花、宮本るり。

一見すると見分けが付きにくい絵柄で、いかにも少女マンガテイストな雰囲気ですが、それぞれのキャラクターは個性的なので普通に読んでる限りは戸惑うことはない。この登場人物たちの表情がとにかく豊か。

ニセコイ8巻 小野寺小咲 特別な義理
(ニセコイ 8巻)
例えば、小野寺小咲の照れ顔。主人公・一条楽にバレンタインデーの日に義理チョコを渡すシーンですが、小野寺は恥ずかしいので「ちょっとだけ特別な義理です」と一言付け添える。義理に特別とか一般とかあんのー?!(笑)

ニセコイ15巻 小野寺小咲 表情
(ニセコイ 15巻)
またある時の小野寺小咲は、一条楽のことを照れ隠しでポコポコ叩いてくる場面。いろいろ狙いすぎてる感はアリアリですが、まあ漫画なのでコレぐらいでちょうどいいんだろうと思います。

ニセコイ15巻 小野寺小咲 宮本るり 表情 奏倉羽
(ニセコイ 15巻)
画像は小野寺小咲と宮本るりが衝撃的な事実を聞いてしまった時の表情。オタクマンガにありがちな表現っぽいですが、無難に面白いっちゃ面白い。

ニセコイ17巻 ラッキースケベ 小野寺小咲
(ニセコイ 17巻)
基本的に作者・古味直志の画力は乏しいので、あんまりラッキースケベな展開は少ないですが、たまーに画像のような描写もあります。小野寺小咲が露天風呂に入ろうとした瞬間、そこが混浴風呂だと気付かずにかち合ってしまった場面。

その時の小野寺小咲の表情が、まさに時間が止まったスタープラチナ状態。でも一条楽もそこまでガビーンとしなくてもいいやんという。あまりに驚愕しすぎて絶体絶命のピンチ的な嫌悪感すら匂わす表情やん。もう少し喜びの表情も入れてほしかったところ。

ニセコイ19巻 小野寺春 表情
(ニセコイ 19巻)
この小野寺小咲の妹・春は性格が真反対で若干イヤなヤツなんですが、それが表情にもよく現れています。小野寺春が初めて登場した『ニセコイ』9巻ではもっと酷い表情があるものの、それは小野寺春の名誉のためにも割愛しときます(笑)

ニセコイ12巻 桐崎千棘 表情
(ニセコイ 12巻)
またもう一人のメインヒロイン・桐崎千棘の表情も笑えます。画像は手紙で一条楽に好きという気持ちを伝えようと軽く考えるものの、あまりの恥ずかしさに手紙を破ってしまう場面。何故か毎回叫び声が「ほにゃー」。狙いすぎてる感はありますが「良し」としましょう。

ニセコイ18巻 橘万里花 表情 千棘転校
(ニセコイ 18巻)
脇を固めるサブキャラクターで印象的な登場人物が橘万里花(たちばなまりか)。やはり一条楽のことが大好きでザクシャインラブの候補の一人なんですが、表情を見ても分かるようにの性格は若干難あり。桐崎千棘が転校する話が持ち上がると「寂しくなるわ」と言いつつも、表情が勝ち誇る。

ニセコイ8巻 橘万里花 バレンタイン
(ニセコイ 8巻)
この橘万里花はバレンタインデーに一条楽の等身大チョコを作ってくるなど強引。天井にゴリゴリ当たりまくりで、一条楽を大事にしてんだかしてないんだか。『ニセコイ』21巻には結婚指輪型のチョコも作ってくるなど、橘万里花の精神状態はやや黄色信号。実際に橘万里花の体調は…おっとネタバレは控えましょう。

この橘万里花は『ニセコイ』のキャラクター人気投票で、通称「千葉県のYさん」という方がめちゃめちゃ投票しまくってたキャラ。それでランキング2位に踊り出るなど漫画外ではちょっとしたチートキャラ。病的なキャラには病的な読者がファンになるんでしょうか…とか書いたら怒られるか(笑)

ニセコイ22巻 橘万里花 表情
(ニセコイ 22巻)
だから橘万里花は完全なお笑いキャラなんですが、この終盤の泣きそうな表情にはグッと来ました。主にコメディー路線だけかと思いきや、こういったシリアスな表情でもしっかりキュンキュンできる

可愛らしい表情からのデフォルメ表情、そしてデフォルメ表情からのシリアス表情。これら怒涛のギャップ感の連続が魅力的なキャラクターを生み、それが読者を引きつける『ニセコイ』の面白要素だったのかも知れない。


一条楽のかっこいい名言集

『ニセコイ』は女の子キャラクターに目が行きがちなんですが、それを支える主人公・一条楽がかっこいい名言を吐きまくり。え?お前は893の息子やで?というツッコミを何度したことか。いやあまりに名言吐きまくりで、その893設定を忘れてしまうほど。

例えば、一条楽と桐崎千棘が定期デートしている最中、桐崎千棘がたまたまエイプリルフールだったから「500人体制でビーハイブが監視してる」とウソを付く。そこで偽の恋人同士だとバレないように一条楽は孤軍奮闘する。その姿がおかしい桐崎千棘だったものの、 あまりに積極的に接してくるのでフンギャーと興奮しまくりでつい一条楽を投げ飛ばす。

ニセコイ9巻 一条楽 名言
(ニセコイ 9巻)
それに対して一条楽は「不安なのか?お前はニセモノの恋人だけど、もし何かあってもちゃんとオレが守ってやっから安心しろって」とニコリ。やだ、何サラッと歯に浮くセリフを吐いてくれちゃってんの、やだもう…これじゃあホンモノの恋人になるしかないじゃない…(*μ_μ)

他の名言だと、奏倉羽(かなくらゆい)という女教師は一条楽の幼馴染。教師だから当然年上なんですが、実は両親を過労で亡くすなど不遇な人生を歩んできた。それでも一条楽に会いたいがために中国マフィアを統率するなど孤軍奮闘。

何故中国マフィアから日本の女教師になったんだなど細かいツッコミはスルーするとして、周囲から大事な人が消えるのが怖くて、どうしても奏倉羽は一人で何でも抱えて一人で頑張るクセが付いてしまった。そしてある日倒れてしまう。それに対して一条楽がズバッと名言を吐く。

ニセコイ17巻 一条楽 名言
(ニセコイ 17巻)
もう一人で頑張ろうとするなよ。家族なんだから重い荷物を持つときは、一緒に持ちたいんだ。これから何があってもオレとの繋がりは失くならないから絶対一人にはしない」。あまーーい!!小沢さーん!例えは全く浮かばないけどとにかく甘いよー!

ニセコイ18巻 一条楽 名言
(ニセコイ 18巻)
画像はクロードに無理やり転校させられそうになった桐崎千棘。一条楽はクロードに対して、「今まで千棘がどれだけ周りと仲良くなるために努力したか分かってんのか?あんたにこいつの未来を語る資格はねぇ!こいつの未来はこいつのもんだ!」と一喝する場面。

最終回のクダリでも後述しますが、こういった名言を見ていくと一条楽は桐崎千棘に対してのそれが多い印象。『ニセコイ』7巻だとリップを新しくした桐崎千棘が全然気付いてくれなくてモヤモヤしてると、最後のオチで一条楽が「んなもん気付いたって、わざわざ似合ってるなんて男が言わねーだろフツー」とツンデレっぷりを発揮したりもします。

他にも『ニセコイ』10巻だと記憶喪失になった一条楽は、性格も更に素直で優しくなる。そこで献身的に接してくれる桐崎千棘に対して、「桐崎さんみたいな人に優しくされたら誰だって好きになってしまいそう」と遠回しに大好きアピール。

『ニセコイ』16巻の名言だと、ノンビーリ王国の王女がやってきた場面。見た目が瓜二つの桐崎千棘と入れ替わる。そこで一条楽をからかってやろうと試みるんですが、それに対して簡単に見破った一条楽が一言言う。「アホ。んなもん一発で分かるわ。オレがお前とどんだけ一緒にいると思ってんだよ」。

あま、あま、あま、あまままままままーーーーい!!!!!

こういった名言やセリフをサラッとシレッと吐くので、一条楽はまさに「ナチュラル女たらし」と言えるでしょう。いや、もはや歩く生殖器と言ってもない過言ではありません。さすがに全てネタバレしてしまうのは気が引けるので避けますが、自分が名言候補にピックアップしただけでもあと4個5個ほど残ってます。

ニセコイ23巻 舞子集 宮本るり
(ニセコイ 23巻)
ひょうひょうとしてる舞子集といった脇を固める男子キャラクターも、場面場面では地味に冴える。一条楽の見た目がイケメンかどうかはさておき、女子でもキュンキュンできる要素も実は散りばめられているので意外と女性読者にもおすすめできるのかなーと思います。


ニセコイの最終回の結末は一体誰?

最後は賛否両論があった『ニセコイ』の最終回のネタバレ。果たして一条楽は誰を選んだのか?もっと言えば、桐崎千棘と小野寺小咲のどちらを選んだのか?

主人公・一条楽は運命の女の子と結婚の約束を果たした「天駒高原」に向かう。そこには小野寺小咲と桐崎千棘たちも記憶を辿るためにやって来た。そして3人は全ての記憶を思い出す。

一条楽が運命の女の子と約束をした岩に「一条楽と小野寺小咲」の相合い傘が刻み込まれていた。つまり運命の女の子は桐崎千棘ではなく、小野寺小咲だった。「やっぱりニセモノじゃん」と泣き崩れる桐崎千棘。

一方、小野寺小咲は喜んでいるのかと思いきや、実は当時の記憶では「本来カギは桐崎千棘が最初に持っていた」事実を思い出す。桐崎千棘が譲ってくれるカタチで、結果的に小咲と一条楽がくっついただけに過ぎない。小野寺小咲は当時も今も変わらぬ桐崎千棘の優しさに泣き崩れる。

ニセコイ25巻 最終話 一条楽 小野寺小咲
(ニセコイ 25巻)
そして一条楽に告白するものの玉砕。中学の頃からずっと小野寺小咲のことが好きだったものの、既に一条楽の頭の中には桐崎千棘のことしかなかった。

当然、次に告白するのは一条楽の番。「口は悪いし、いつもケンカばっかで正直最初は大嫌いだった。でもしばらく一緒にいるうちに、いつの間にか気付いたら好きになってた」と桐崎千棘に告白。「あんたがずっと探してた女の子じゃないんだよ?ニセモノだけどそれでもいいの?」と桐崎千棘が返答すると、一条楽は笑顔で「ああ、お前がいいんだ」。

ニセコイ25巻 最終話 一条楽 桐崎千棘 キス
(ニセコイ 25巻)
つまりは最終的には桐崎千棘と恋が成就したのである。そして桐崎千棘はアメリカへ帰国、一条楽は大学進学を目指すなどそれぞれの道を歩むが、数年後、社会人になった二人は日本で結婚式を挙げる。その直前に運命の場所「天駒高原」で再び出会った二人は再会のキス。これから二人は新たな人生を歩む…みたいな終わり方。


何故ラストに小野寺小咲は選ばれなかったのかを徹底考察した

つまり『ニセコイ』のオチではみんなだいすき「小野寺小咲が選ばれなかった事実」を意味しています。この一条楽のラストの選択に対して、「ドラクエ5でビアンカかフローラを選ぶ時に、ルドマン選ぶぐらい意味不明である」と誰かは目から我慢汁を流しながら慟哭したらしい。

思わずそんな名言も出てしまうぐらいに、『ニセコイ』の最終話は一部ネットで大荒れしたそう。作者・古味直志に対して「漫画家辞めろ」「ひどい事件だった」というコメントも一部で散見。この阿鼻叫喚地獄っぷりに思わず鼻水が盛大に吹き出たのは内緒ですが、確かに実際の『ニセコイ』の掲載順位も後半のラストにかけて露骨に下がった記憶があります。ニセコイ読者の多くは小咲エンドを確信していたのかも知れない。

でも一条楽の選択が本当に意味不明だったのか?要は小野寺小咲という不憫な女の子が何故選ばれなかったのかを考察してみたいと思います。もう面倒だから結論から先に書いてしまうと、小野寺小咲が選ばれなくて当然の流れだったと思います。

ニセコイ23巻 小野寺は好みな女に過ぎない
(ニセコイ 23巻)
何故なら一条楽のセリフを借りれば「小野寺小咲は好みの女の子でしかなかった」から。もちろん三次元のリアルでも女子は可愛い方が良いに決まってる。ただリアルの恋愛事情でも言えますが、別に「好みの異性 or 理想の異性=好きになる or 付き合う」わけではない。

一条楽の小野寺小咲への思いは、所詮はファンがアイドルに対して「かわええな~」と抱く感情以上でも以下でもなかったということ。ましてや実際のアイドルでも必ずしも「顔の良さが全て」ではないことが分かります。

例えばAKB48で一番人気は性欲メスゴリラの指原莉乃が不動のトップではないですか。それに比べて見た目も貞操の固さも指原より上回っているであろう渡辺麻友は何度対戦しても指原莉乃に勝ててない。

それこそ不動産で例えるなら桐崎千棘は古びた2DKマンション、小野寺小咲は新築のデザイナーズマンション。どちらの方が使い勝手が良いか。自分は自動車ブログ「くるまン。」も運営してるのでクルマで例えるなら、桐崎千棘がトヨタのミニバン車・ノアヴォクシー、小野寺小咲はGT-R。

昔から欲しい夢があったとしても、結局現実的に選択するのは「使いやすい商品」になるはず。これは恋愛においても同じ。それこそ実際に付き合うとなった場合、桐崎千棘(性欲メスゴリラの指原莉乃)と小野寺小咲(しゃくれ前髪女の渡辺麻友)のどちらと一緒にいて楽しいのか想像してごらんなさい。ちなみにオレは手越祐也のカキタレ鼻ニンニクさんでありますYO!

また一条楽との接点が多かったのは桐崎千棘。『ニセコイ』21巻だと橘万里花が母親に強制連行されたとき、助けに行くか迷ってる一条楽に対して、桐崎千棘は「らしくない!困った人がいたら脊髄反射で助けるのが、いつものあんた!」とバンと背中を叩く。

前述の名言のクダリを合わせて読んでもらえると助かりますが、結局こういったお互い励まし合う場面が小野寺小咲にどれだけあったのか?一条楽は色んな女性キャラクターに対してヒーロー面してるわけですが、特に小野寺小咲に対してはとりわけ少なかった。それだけ一条楽にとって桐崎千棘の方がより身近な存在だった。選択しないはずがない。

そもそもゴリラの何が悪いのか。ゴリラだからこそ可愛く見えることもある。イケメンゴリラがいていいなら、美少女ゴリラがいたっていいじゃないか!!


ニセコイがニセコイで完結するために

確かに小野寺小咲は約束の女の子(本命)だった。本命と成就することは決して奇をてらってるわけではなく、むしろ恋愛漫画の結末としては王道と言えます。

ただこの漫画はあくまで『ニセコイ』。偽物の恋がメインテーマのラブコメ。もし小野寺小咲との恋愛が成就してしまったら、それは単なる「ガチコイ(マジコイ)」のストーリーとして完結してしまう。小咲エンドはやはり邪道の結末。

「偽恋(ニセコイ)」が「本気恋(マジコイ)」に変換されて完結するからこそ面白い。桐崎千棘が運命の人ではなかったからこそそこに芽生えた恋に価値があり、また演出として効果的に生きてくる。ニセの恋に真実の愛が埋まっていたというテーマこそが、この『ニセコイ』の醍醐味。

だからオチとしては実にキレイかつセオリー通りの結末を持ってきたと言えます。むしろ小野寺小咲を選択する必然性はやはり皆無に等しいとまで言える。まだ王道でベタすぎるオチという理由で批判する理由は分かりますが、それこそ小野寺小咲が選択されていたら「陳腐でつまらないラブコメ漫画」として後世に語り継がれていたことでしょう。

マジカルパティシエ小咲ちゃん4巻 最終話
(マジカルパティシエ小咲ちゃん 4巻 最終話)
ちなみにスピンオフ漫画『マジカルパティシエ小咲ちゃん(全4巻)』の最終回では小野寺小咲が一条楽と結ばれる。もし『ニセコイ』の結末でも小野寺小咲が選ばれていたとしたら、まさに最終回のオチがダブってしまうので漫画的にこれほどヒドい話もない。

だからこの『ニセコイ』のスピンオフが発売されてた時点で、もう小咲エンドの可能性がなかったと言えます。むしろ順番的には報われない小野寺小咲を救うために発売されたと言っても過言ではないか。


ニセコイに隠された伏線まとめ

そこで『ニセコイ』に隠されていた伏線や前フリについて軽くまとめてみました。
ニセコイ14巻 奏倉羽 前フリ 伏線
(ニセコイ 14巻)
例えば、奏倉羽が「約束の相手が誰か分かったら、その人のことを好きになるの?」と一条楽に語りかけてるシーン。これを漫画的な解釈をしたら「一条楽は本命の相手・運命の少女は好きにならないよね?」と暗示してるに等しい。これほど露骨な伏線もなかった。

例えば『ニセコイ』23巻でも、一条楽と桐崎千棘が定期デートをするものの、ちょっとしたことでケンカ別れして別行動を取る。ただ一条楽は行くところ行くところ、全てに桐崎千棘がいる。そこで二人はケンカしたことも忘れて大笑いして仲直り。

最終25巻付近でも桐崎千棘がアメリカに逃げ戻った時にも不意に何度も遭遇しかけるなど、偶然に何度も出会うような現象を「運命の赤い糸」と呼ばずになんと呼ぶのか。他にも20巻でも小野寺小咲のことを想っていても、一条楽の頭をよぎるのは何故か桐崎千棘の顔。

ラストまでの展開は多少慌てた感はあるのかも知れませんが、それでも普通に読んでたら桐崎千棘ENDは明らかであり、それを証明する伏線が『ニセコイ』内ではそこかしこに散りばめられています。少なくともルドマン(舞子集あたり)が選ばれた最終回ではないことは明らかでしょう。


最終話や橘万里花などへのツッコミ

ただ強いて最終話に至るまでの展開にツッコミを入れるとしたら、一条楽と小野寺小咲を一度付き合わせておいた方が良かったかも知れない。

リアルでも実際に付き合ってみると全然違うことってありますが、小野寺小咲は性格が内向的で、どうしても一条楽は気を使ってしまう。お互いに関係がギクシャクするばかりで、小野寺小咲と付き合っている最中も常に一条楽の頭にあるのは桐崎千棘の顔。

そして小野寺小咲をこっぴどく振ってしまう or 振られてしまう…という流れがあった上での桐崎千棘で選択していたら、ラストの結末に抱く読者の納得感も違ったかも知れません。ただそういう紆余曲折を描いてしまうと最終話がキレイにオチないか。

ニセコイ25巻 最終話 一条楽 893
(ニセコイ 25巻 最終話)
893やマフィアというキャラ設定も不要だった気がする。最終話を更にネタバレしておくと、一条楽は893をそのまま継いで、なおかつ同時に公務員として働き出す。でも、さすがにこのトンデモないオチには笑ってしまいました。

一条楽はこのまま893として生活して、桐崎千棘との二人の幸せな未来が本気で待っていると思っているのか。桐崎千棘のことを想っているからこそ893を廃業して公務員になるべきでした。かつての組員たちにまっとうな職を就かせるためにハローワークの職員として働くなんてオチも良かったでしょう。

あと確かに魅力的なキャラクターは多いと思うんですが、敢えて批判的なことも書いておくと橘万里花や奏倉羽などはあくまで「一条楽の初恋候補(ザクシャインラブの候補)」として登場する。でも最終的にザクシャインラブの候補は結局は桐崎千棘と小野寺小咲の二者択一に絞られるのは明々白々。

だから「初恋候補」として無理やり色んな登場人物をストーリーに絡めてきたとしても、どうしても展開を引っ張ろうとムダに勿体つけた感じしか与えない。決して橘万里花といったキャラクターがダメなわけではないものの、間延び感やイライラ感もゼロではなかったのかなと。


ニセコイ 全25巻 総合評価 評判 口コミ


『ニセコイ 全25巻』のネタバレ感想・考察をまとめると、ラブコメ漫画としては無難に面白い。キャラクターや展開力はそつなくレベルが高いので、笑いあり、キュンキュンあり、ために泣けるなど割りと飽きさせない。いずれ『ニセコイ』が実写映画化・ドラマ化される可能性もありうると思います。

最終的な結末はどうあれ、結果的にここまで多くのファンを引きつけたのは、作者・古味直志の展開力やキャラクター作りの上手さがあったから。桐崎千棘や小野寺小咲が魅力的なキャラクターだったとしたら、それは結局ひとえに『ニセコイ』が面白い漫画だったからに他なりません。

フツーはハーレム物以外だと、男主人公がどんな女の子と付き合うかなんて男読者は興味ない。嫉妬心も混じってどうでもいいとすら思う。でも個性的な登場人物の女の子たちが一条楽をめぐって競い合うことで、結果的にさながらバトル漫画の強さ議論のような盛り上がりを見せたのではないか。

まさに「少年漫画+少女コミック」を絶妙に融合させた珍しいラブコメ漫画と言えます。ラブコメ好きなら一度は『ニセコイ』を読んでおいて損はしないでしょう。