『ニーチェ先生 -コンビニにさとり世代の新人が舞い降りた-』2巻3巻のネタバレ感想。原作は松駒、作画はハシモト。月刊コミックジーン(角川書店)で連載中のギャグ漫画。ちなみに面白いかつまらないかの考察記事はアップ済み。


常連客にアダ名を付けるあるある

主人公は、仁井智慧(にいともはる)というコンビニ店員。ある仏教学部の大学生。やたら他人にシビアでクール。他人というかお客に対する言動がいちいち悟りきってる。そこで苗字の「にい」からアダ名が「ニーチェ先生」。だから、このマンガを一言で表現するとしたら「ニーチェ店員」と表現した方が分かりやすいか。

例えば、ニーチェ先生がどんな人間性か分かる発言を紹介すると、コンビニ店員では「常連客にアダ名を付けて楽しむ」という習慣があるそう。そこでもう一人の主人公・松駒という店員に「アダ名を付けてる常連客っているんですか?」と質問した。
ニーチェ先生2巻 仁井智慧ラインの工場
(2巻)
ただニーチェ先生のこたえが「ラインから流れ出てくる量産品の一つ一つに愛称をつける人がいますか?」と逆に聞き返す。お客を毎日大量に生産される缶詰か、それこそコンビニ弁当ぐらいにしか思ってない。ま、こんな人です。


華麗すぎるニーチェ先生の妙技

1巻のネタバレ感想でもニーチェ先生のセリフなどをレビューしたので割愛して、今回はニーチェ先生の華麗な技をレビュー。口先だけの青年かと思いきや、意外にも小手先が器用。

例えば、コンビニはなんでもござれ。雑誌や食べ物が売ってるだけじゃなくて、公共料金の支払いなども可能。今ではすっかり定着してるものの、店員さんの立場から考えると非常にメンドー。特に大量の領収書を持って来られたら時間がかかる。
ニーチェ先生2巻 仁井智慧の華麗すぎる技1
(2巻)
でもニーチェ先生の華麗な技をもってしたら、ものの数秒で処理することが可能。もうバトル漫画並みの百烈拳ならぬ、百烈ハンコ押し!お客様控えを引きちぎるのも一気!効果音が「ブチッ」ではなく「ブリッ」。どんだけの握力やねん。

他にも子供たちがアイスを大量に購入しようとした時も、アイスの形状からしてコロコロと転がって床に落ちそうになるものの
ニーチェ先生3巻 仁井智慧の華麗すぎる技2
(3巻)
そこをビニール袋を上手に使うことで、それらをファッサーと上へ舞い上げる。その間に袋口を広げて全て受け止める。まさにマンガの世界。でも商品を大切に扱ってるんだか扱ってないんだか不明。多分怒られる時は怒られます(笑)

ちなみにコンビニにも万引き犯がいるらしい。そこで編み出したニーチェ先生の技がすごい。コンビニの天井の四方の角には必ずミラーがありますが、そこに自分が作業してる写真をペタリと貼る。

つまり万引き犯の立場からは「今、店員は作業中だからパクる隙がある」と考える。そして実際に万引きをさせてから捕まえるという、まさかのアリジゴク方式のアイデア。ハニートラップならぬミラートラップ。ただ最初は一瞬「オー」と感心したんですが、いっそコッチを見てる写真を貼れば、それで抑止力になるやんけと思ってしまった(笑)


変人すぎるコンビニ店員たち

ニーチェ先生ゴリ押しのマンガかと思ったら、意外にも脇を固めるキャラクターは多いです。2巻からは柴田健(通称シバケン)という新キャラクターが登場。
ニーチェ先生2巻 柴田健1
(2巻)
この青年の発言からは、どう見ても裏社会と繋がってる。例えば立ち読みされないようにヒモで雑誌をくくると、何故か亀甲縛り。明らかに経歴が怪しいものの、誰もそこをツッコんで訊くものはいない。

だからかコンビニ店員に絡んでくるモンスター客に対しても、全く物怖じしない。
ニーチェ先生3巻 柴田健2くじはずれ
(3巻)
クジが外れまくると抗議に来た客に対しては、「こればかりは…お客様の日頃の行いが悪いとしか」とバッサリ。これは地味に反論しづらいかも。いちいち抗議に来ちゃう客が普段から行いが良いとは思えませんからね。

柴田健は作者のお好みなのか、ちょくちょく登場します。ただあまりにツッコミどころが多すぎて割愛。でもニーチェ先生は柴田健すら全く相手にしない。柴田健が少年ジャンプのONE PIECEを読んでないニーチェ先生を小馬鹿にする。
ニーチェ先生2巻 聖書のクダリ
(2巻)
でもニーチェ先生のそれに対する「え?聖書を読んだことがない?60億部も刷られているのに?」という反論がまさにぐうの音も出ない。敢えて言うなら、キリスト教徒が少ない日本では【60億部】という数字がどこまで意味を持つかは微妙ですが。

ちなみにONE PIECEの発行部数は【2億部】。これは聖書の30分の1。しかも新刊を発売するたびに400万部500万部を売り上げる。つまりONE PIECEは世界的な聖書をどんどん追い詰めてる。「ONE PIECEがガチでヤベーーー!」と同時に思っちゃいました。

また桐生というスーパーバイザーが登場。元々は松駒たちが働いているコンビニ店員だった。今では本部にまで出世。ただ「お客様は神様です!」を地で行くようなコンビニ社員。
ニーチェ先生2巻 桐生VS仁井智慧
(2巻)
だからニーチェ先生とは相容れない。「新興宗教の類いでしたらお断りします」ときっぱり。アルバイト店員に断る権利があるのか不明ですし、そもそもニーチェ先生は仏教学部。宗教性で言えば、どっこいどっこい?

ニーチェ先生3巻 接客五大用語
(2巻)
ちなみにニーチェ先生独自の接客五大用語が「すみやかにお帰りください」「当店では責任をおいかねます」「規則で決まっております」「まさかとは思いますが、お弁当を温めますか?」

一発目からアウト。「邪魔するでー」と客が店に入ってきたら、「邪魔するんやったら帰ってー」というよしもと新喜劇を地で行く。まさに無政府主義者ならぬ、無店員主義者。

ニーチェ先生の相方と呼べそうな松駒は、基本的にはツッコミ役。だから常識人かと思いきや、かなりどエライ性癖みたいなんを持ってる。
ニーチェ先生3巻 オッサン好きの松駒
(3巻)
それがオッサン好き。何に共感していいのか理解に苦しむ。しかも店長に「コンビニ店員は合法的にスーツ姿のオッサンと話せるから楽しいです」と暴露。結果シフトが減らされる。これを語ってる時の松駒の表情が割りとマジで危ない人。一見すると普通っぽいから尚怖い。松駒は「オッサンと小料理屋を開く」みたいなんが夢。もう怖い怖い怖い。

黒木珠子というFPSゲーム好きの女の子店員も登場。もちろんゲーム内の話ですが、銃火器類が好きらしい。そこで主人公・松駒が心を奪われる理由を訊いた。
ニーチェ先生3巻 黒木珠子
(3巻)
それに対する黒木珠子のこたえが「言葉が通じない相手でも、散弾は通じるの」。一体いつから広辞苑では「意思疎通」の意味が「致命傷を与える」に変わったんでしょうか?この理屈だと銃火器類じゃなくても、刃物類でもええやんけっていう(笑)

このコンビニ、変人ホイホイにも程があるやろ!!


総括

今回のレビューではキャラクターメインで書きましたが、コンビニの悲惨な労働状況もいっぱい描写されてます。24時間営業という無理が見えて、コンビニはまさにブラック企業の代表格。

だから主人公・松駒は長時間労働によるストレスで、バクバク食いまくって激太り。「どうやったら働かなくて済むか」を考えた挙句の果てに、コンビニが潰れることを妄想したり、「明太チーズ」を「変態チーズ」に聞き間違えたり、たかだかバイトに働かせ過ぎ。高校生がバイトの労働組合を作ったのも頷けます。

ちなみに、松駒は大学在学中に就活が決まらなかったから、フリーターとしてコンビニで働いてる。だからそこで間を見つけては就職面接に足を運ぶ。2巻ではコンビニから離れて、面接のクダリがあったりします。理不尽で意味のない質問があまりに多すぎることを揶揄ってます。賛同に近い笑いがあります。

ニーチェ先生2巻 渡利と就職模擬面接
(2巻)
直前には、渡利という年上のコンビニ店員と面接練習するんですが、コイツはポンコツのくせに悪徳面接官役がムダに板につきすぎ。松駒の「無職の先輩に言われたくない」という心のツッコミも笑った。

ちなみに同じく就活中で、同じく無残に散った友達からの「餃子に包まれたい」というメールも笑った。むしろアツアツで地獄。それだけ就活失敗の友達は自暴自棄ということかも知れませんが、「餃子に包まれたい」の考え出すと意味不のスパイラルに襲われる。

ニーチェ先生3巻 深夜の悪ノリ
(3巻)
たまにバカッターとかネットで炎上しますが、こういう店員の深夜の悪ノリぐらい許してやれよっていう(笑)