『ニーチェ先生』1巻のネタバレ感想。原作は松駒、作画はハシモト。月刊コミックジーン(角川書店)で連載中のギャグ漫画。テイスト的には『坂本ですが?』に似てる。絵柄は『聖☆おにいさん』などを描いてる中村光に近い。いわゆる「ギャグ線が高い」って部類の面白さ。


仁井くんというさとり世代

舞台はコンビニ。主人公はその新人バイト店員の仁井智慧(にい・ともはる)。普段は仏教学部の大学生。ただ何故か『ニーチェ先生』と呼ばれる。

ニーチェ先生1巻/仁井智慧「神は死んだ」
理由は「お客様は神様だろ!」と詰め寄るクレーム客に対して、「神は死んだ」と無表情に言い放ったことがキッカケ。そのセリフが象徴するように、とにかく客を客と思わない姿勢が一貫してる。

新製品のコンビニパンが売れやすいように目立つ場所に、もう一人の主人公・松駒が並べてると、
ニーチェ先生1巻/仁井智慧2
天井から吊るした方が目につくし、話題性もあると思うのですが?」とポツリ。完全にお客様目線に立ってないセリフ。コンビニに訪れて、何でそんな運動会みたいなことをせなアカンねん。

松駒の幼なじみ・塩山楓が泥酔状態でやってくると、ニーチェ先生はお姫様抱っこして奥の事務所に連れていってやる…と少なくとも松駒は感心してた。
ニーチェ先生1巻/ダンボールに埋まる塩山楓
ただ実際は倉庫でダンボールが無造作にかけられてるだけ。客を客と思わないどころか、むしろ人間とすら認識してるかどうかすら怪しいレベル。

ニーチェ先生1巻/仁井智慧5
暴走族みたいな客が大勢訪れた時は、警察を真っ先に呼んで追い返す。ただその時のセリフが直接的すぎて、完璧にアウト。「来店する客を一人でも多く減らしたかっただけです」。客の種類とか基本的に関係ないっていう。


得体が知れないニーチェ先生

このニーチェ先生は、とにかく得体が知れない。一見文系ガリガリの真面目くんに見えるが、何故かロックバンド活動をやってる。しかも仏教学部だからか、全員袈裟。

またニーチェ先生はドラム担当。でも仏教的にポクポク叩くモノと言えば?そう木魚。それを激しくポクポク打ち鳴らしながら、半ば布教活動的にやってるっていう「シュール」にも程があるやろ。

ニーチェ先生1巻/仁井智慧4
このニーチェ先生の愛読誌が、何故か「マーガレット」。少女マンガがメチャクチャ好き。オマケページでは、雑誌コーナーを全部少女マンガにしちゃうっていう。趣味の押し付けが、がましい。

まさに掴(つか)みどころがなさすぎ。キャラクターとして高得点を挙げてもいいと思う。


松駒の秀逸なツッコミ

そして、そんなニーチェ先生のボケばかりが目立ちがちですが、実はツッコミがかなり秀逸。それが就職浪人1年生の松駒(まつこま)。既にある程度説明してますが、仕事はちょいポンコツのくせにツッコミがやたらと絶妙。

上記のニーチェ先生が泥酔した塩山をテキトーに介抱したクダリ。幼なじみがダンボールまみれになってるのを見てのツッコミが、「彼の中で酔っぱらいは基本的人権を有してないのかなって」。

最初ロックバンドに勤しむニーチェ先生を目の当たりにした時には、静かに扉を閉めるだけ。その後のクダリでも「私の知っている音楽の概念が音を立てて壊れ始めている」とか、一言一言がシンプルで的確。

他にもベテランのバイト店員・渡利に対して、ニーチェ先生が「渡利さんはクリスマスに限らず、年中無休で孤独じゃないですか」と毒舌を吐く。これだけでも結構笑えますが、松駒のツッコミが…
ニーチェ先生1巻/ツッコミ
「言葉の労災を申請してあげたい」

ボキャブラリーというかウィットに富んでて、だからと言って全面に出過ぎてない感じのツッコミ。松駒の大人しい地味なキャラクター性がそうさせてるんだろうが、結果ニーチェ先生だけのボケを際立たせてる。縁の下の力持ちとは、まさに彼のためにある言葉。

二人は絶妙のコンビ。ギャグ線が高いギャグマンガは他にもありますが、どうしても主人公のキャラクター性だけで成立してる笑いが多い。ボケたらボケっぱなしで、そのボケの後処理をしない。でも、この『ニーチェ先生』というギャグマンガはしっかりできてるのは評価したい。


コンビニあるある?

ニーチェ先生と松駒だけではなく、さり気ないコンビニあるあるネタも盛り込まれてる。

例えば、うまい棒系のお菓子を一個買うだけなのに、何故かブラックカードで購入する客がいる。松駒は思わず「闇社会系の人?」とビビる。多分作者の体験談っぽいネタの気がする。

ニーチェ先生1巻/コンビニあるある1
他にも「ペンギン100羽を用意する」という客がいたり、どんな仕事をしてんねん?と誰しもが興味津々。それだけコンビニには色んなお客が買い物しに来てるってことなんだと思う。本当コンビニってどこにでも立地してますからね。

気になる客だけではなく、ホッコリするお客もいる。
ニーチェ先生1巻/コンビニあるある3
アイスをガッツリ食べたい女の子が恥ずかしそうに「大きめのスプーンをください」と頼む姿を見て、思わず松駒の心も溶けていく。コンビニで働いたことがない人でも分かりやすいボケ・ネタというのも、ポイントが高し。


総括


『ニーチェ先生』1巻のネタバレ感想をまとめると、とにかく「キャラクターが面白い」ギャグマンガ。『坂本ですが?』などが好きな人にはオススメ。しかもニーチェ先生の独特のボケを、松駒というもう一人の主人公がしっかり処理をする。それが更にニーチェ先生のボケに爆発感を与えてる。

どうしてもキャラだけのギャグマンガは、やや読みづらさがあったり、読者を選ぶ傾向がある。でも実はちゃんとボケとツッコミが根底にあるので、むしろギャグマンガとしての『王道要素』が詰まってたりもする。だから、結構幅広くオススメできるかも知れないギャグマンガ。

あと接客業で働いてる人には、極めて溜飲が下がるマンガかも。本当ニーチェ先生はお客をお客と思ってないので、普段働いてても言えない・やれないことを平然としてくれる。だから理不尽な客にストレスを溜めてる店員さんは、思わずスッキリしたりするんじゃなかろうか。

ちなみに改めて面白いかつまらないか考察したレビューはおヒマな時にでも。