『ニーチェ先生-コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた-』が笑えるか、つまらないか考察レビューを書いてみた。作者は松駒(原作)とハシモト(作画)。掲載誌は月刊コミックジーン。出版社は角川書店。ジャンルは青年コミックの仕事漫画。

最近Huluで『ニーチェ先生』が実写ドラマ化されて、そこそこスマッシュヒットだとか。元AKB系の「乳はないけど足は太い」でお馴染みの松井玲奈が出演中。昨年2015年の時点で『ニーチェ先生』の発行部数が100万部突破してるらしく、割りと人気漫画。


あらすじ物語・ストーリー内容

『ニーチェ先生』の舞台はコンビニ「777(スリーセブン)」。そのコンビニに主人公・仁井智彗(にい・ともはる)が新人アルバイトとして働き始めたところからストーリーは始まります。

でも、この仁井智彗(にいくん)は普段は仏教学部の大学生なんですが、実はとんでもないヤツだった。何故なら、「お客様は神様だろー!」とクレームを入れてくるお客に対して、「神は死んだ」と返答した。天皇が人間宣言した以来の衝撃。

「神が死んだ」の意味としては、「人生とは不条理だが神には頼るな!自分自身の手で頑張れ!どんな運命も愛そうぜ」的なことらしい。ドイツの哲学者・フリードリヒ・ニーチェが残した言葉として知られてます。だから仁井智彗がさもニーチェのような「俺はお客になんて媚びないんだぜ!」という横柄な接客方法に同僚のコンビニ店員が翻弄されつつも、ときたま溜飲が下がるようなギャグ漫画。

だから漫画タイトルは『ニーチェすぎる店員』と考えた方が分かりやすいかも。何故「先生」かは不明。

ちなみに、もう一人主人公がいて、その名前が松駒。つまり原作者の松駒と同じ名前。だから原作者自身の体験をそのままネタにして漫画化してるんだと思います。多分現在でも原作者・松駒はコンビニでアルバイトしてるのかも。意外に悲惨で自虐的なネタも多くて、笑うのに忍びないと感じることも。それはまた後述。


仁井智彗のドエスすぎる名言集

仁井智彗は具体的にどんな悪態をお客様につくのか?

ニーチェ先生3巻 仁井智彗 時給は上がらない
(ニーチェ先生 3巻)
当然、愛想笑いすら持ち合わせていません。酔っ払ったお客がいっぱい商品を買って「このお店に儲けさせちゃうな」と上機嫌。でも仁井智彗は「お客様がいくら買われようと僕の時給はビタ一文変わりません」とピシャリ。そこは「あはは…そうですね(棒読み)」とテキトーにあしらっとけよ!

ニーチェ先生1巻 ゴミが一つも残らないように掃除
(ニーチェ先生 1巻)
まだ悪態をつくだけだったらマシなんですが、ある時は実力行使だってやっちゃいます。「ゴミが一つも残らないように掃除した」と供述してるんですが、神様どころからお客をゴミ扱い。

これは同じコンビニ店員仲間にも及ぶ。ある時、体調不良のまま出勤した松駒。結果的にインフルエンザだったことが分かる。ただ松駒を発信源として、インフルエンザは周囲の店員へ拡大。インフルエンザ明けに出勤した松駒に対して、仁井智彗は「病原体を保有して出勤なんてバイオテロもいいところです(4巻)」。仲間の体調なんてハナから興味はありません。

2巻では柴田にONE PIECEを読んだことがないことをからかわれる仁井は『ONE PIECE』を読んだことがない。そこで柴田に「2億部も売れてるのに?」と驚かれる。でも仁井はすかさず「聖書を読んだこと無いんですか?60億部も刷られているのに?」。たかだか一漫画に世界的な宗教をぶつけてきたらアカン。

4巻では傘を忘れた客が「何で持って追いかけてこないんだよ」と無理難題クレームをつけてきたことに対して、仁井智彗は「なにも品性までお忘れにならなくても」とピシャリ。

コンビニでは20歳以上か疑わしいタバコ購入者には年齢確認が必要。ある時、松駒はそんなお客に対して年齢確認をしようとするとものの渋られる。そこで仁井智彗は「年齢確認に応じる【大人】な対応ができないお客様に売る必要はありません」とピシャリ。

あれ?これ正論じゃね?と思わせることも多いので、それが仁井智彗がただ「イヤなヤツ」で終わってないのも人気の理由かも知れません。

ニーチェ先生2巻 子供に優しい仁井
(ニーチェ先生 2巻)
だから意外にも、子供には優しかったりする仁井智彗。子供が焦げたクッキーを作ってきてくれたんですが、あまりに真っ黒焦げ。ただそれを仁井智彗は「火が通っているのは明白で、安全性の高い食品といえますね」。

ニーチェ先生2巻 仁井智彗 公共料金支払いの処理方法
(ニーチェ先生 2巻)
大量の公共料金の領収書だって一気にハンコをポンポンポーン!これぞ千手観音!お店の控えを切り離す瞬間もムダにスタイリッシュ!

ニーチェ先生3巻 仁井智彗の袋の入れ方
(ニーチェ先生 3巻)
子供たちが大量に購入したアイスも、華麗に袋の中へバスバスバス!おそらく探せば宝塚歌劇団にこういうシーンがあったはず!!


仁井以外のサブキャラクターもクレイジー

ただ仁井智彗以外のサブキャラクターも、なかなかクレイジー。

例えば、塩山という女。仁井智彗のことが大好きな謎の女。きっと傲慢な接客姿勢に惚れたのかも。確か実写ドラマだと元SKEの松井玲奈が演じてた気がします。
ニーチェ先生3巻 塩山
(ニーチェ先生 3巻)
でも愛情が常軌を逸しすぎて、コンビニおでんをそのまま両手で受け止めようとする。何故「おでんの汁=仁井智彗の愛」と解釈されたのか不明ですが、塩山の前世はおそらくダチョウ倶楽部。

他にも仁井智彗が捨てたであろうお弁当箱をゴミ箱から漁って、「ごはんつぶ の・こ・っ・て・る・ゾ」と心トキメかせる。このブサ顔がキモすぎてキモすぎて。松井玲奈も仕事選ばなきゃー!

ニーチェ先生4巻 柴田は裏社会の人間?
(ニーチェ先生 4巻)
一見すると好青年の柴田は、絶対裏社会の人間としか思えない行動をしばしば取る。画像はゲーセンでバイオハザード的なゲームをやってんですが、オモチャのライフル銃を握って「あれ?重さの再現は難しいのかな?」とポツリ。せめて重さを知ってたとしても、ピストルみたいな短銃だろ。お前はどこのイスラム国だ。

黒木珠子はバイオハザード的なゲームのマニアすぎて、「言葉が通じない相手でも散弾は通じるの…これ凄いじゃないですか」という謎の言葉を残したり、他には渡利は貧乏すぎたり。こんな感じでキャラクターは多く登場するんですが、それでもキャラ同士の渋滞が少ないのは評価。

ちなみに主人公というか作者というか、松駒も一見まともそうな青年に見えますが、1巻でオッサンの新聞配達員に優しい言葉をかけられてからオッサン愛が目覚める。でも、これが割りとガチで気持ち悪いレベル。松駒が繰り広げる妄想も正視に耐えない。まさに誰得?

ニーチェ先生3巻 松駒のTwitter
(ニーチェ先生 3巻)
原作者の松駒もTwitter(あとがき)でオッサン愛について語ってるんですが、やはり本気で何を言ってるのか分からない。「原宿がkawaiiの発信地なら、新橋はossanの中心地として丁重に扱うべきです」。おいおい、こりゃ完全にお手上げだぜ~┐(^o^)┌アハハ

こんな風にコンビニ「777」はろくでもないヤツしか働いてないんですが、これも仕方ない。何故なら、最近のような大寒波が襲ってきたとき、松駒は思わず「臨時休業」に違いないと喜ぶんですが、
ニーチェ先生4巻 松駒 コンビニは重労働
(ニーチェ先生 4巻)
オーナー店長からは「一時間前に出勤して雪かきお願いね!」と平然と要求される。松駒が握りしめたスマートフォンからは血が滴り落ちたそう。コンビニに底辺社会を垣間見た気がしますが、そりゃあ普通の人間は777に働きに来ません。もう店長からしてお茶目なクズ。未来ある若者たち逃げてー!!!


コンビニあるある

原作者・松駒が今もコンビニで働いてるってことで(多分)、おそらくレジ打ちの最中にでも思い付いたであろう「コンビニあるある」ネタも多め。きっと現役のコンビニ店員もニンマリできるに違いありません。

ニーチェ先生3巻 深夜の悪乗り
(ニーチェ先生 3巻)
例えば、深夜の悪ノリが最たる例。もしTwitterにこの写真をアップロードしたら、100%炎上すること間違いなし。でもアイスは開封してないのでギリセーフ!?w

ニーチェ先生2巻 ビニール傘の販売
(ニーチェ先生 2巻)
急に雨が降ってくるとビニール傘が売れるわけですが、その時の松駒の気持ちが古き好きRPGの武器屋。コンビニ店員の方でも、実際こんな妄想した人はいそう。でもビニール傘は意外に攻撃力が高いので、リアルで人に使うのは止めましょう。

ニーチェ先生1巻 コンビニあるある
(ニーチェ先生 1巻)
他にも見た目が可愛らしいのに、意外にアイスをガッツリ食いたいから大きめのスプーンを欲しがるお客が来たりすると、松駒の心は思わずホッコリ。

コンビニで働いてなくてもよく聞く話が、コンビニ店員は常連客にアダ名を付けてるそう。こんなんを訊くと客の立場としては変なものが買えなくなるんですが、あるとき松駒が仁井智彗に「お客にどんなアダ名を付けてますか?」と尋ねる。そうすると仁井智彗は「松駒さんは工場のラインから延々と流れてくる量産品の一つ一つに愛称を付けてるんですか?」とポツリ。思わず震える松駒。やはりニーチェ先生は別格です。

ニーチェ先生2巻 仁井智彗がお客に付けたあだ名
(ニーチェ先生 2巻)
でも仁井智彗が唯一お客に付けたアダ名が、コロッケを執拗に買い求めてくるお客に対して「コロ助」。あの懐かしのメロディーというか歌を知ってる人が、今の10代20代にどれだけいるんでしょうか。

他にも国民健康保険料の支払額などから世帯構成を把握したりみたいな描写もありますが、それはきっと仁井智彗だけw


総合評価・評判・口コミ


『ニーチェ先生』の構成は1ページ完結のオムニバスなので、4コマ漫画などと同様にネタ自体は多め。だから若干ダレる部分もあります。ボケの応酬ばかりでは読み疲れるので「息抜き」になる部分は欲しいところですが、それでも一つ一つのネタやボケは濃い。

とにかくニーチェ先生こと仁井智彗のキャラクターが良い。たまにズバッと吐く正論もキャラのアクセントに繋がっている気がします。脇を固める登場人物もパンチが効いたキャラばかり。お客の理不尽さも含めて、一体コンビニの労働環境はどうにかならんのか?という苦笑に近い笑いもあります。

トータルこの考察記事をまとめると、基本的に『ニーチェ先生』は面白い漫画と言えます。