『新世紀エヴァンゲリオン』全14巻のネタバレ感想をレビュー。作者は貞本義行。掲載誌はヤングエース。出版社は角川書店。ジャンルは少年コミックのSFロボット漫画。

エヴァの時間軸がちょうど「2015年」という節目でもあるので、何となく漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』が面白いかつまらないか考察してみた。確か昨年2014年末ぐらいに完結したらしいですが、結論から書くとアニメ版より全然面白かった件。


あらすじ物語・ストーリー内容

時代は有史以来の大惨劇「セカンドインパクト」が起きて15年後の、西暦2015年。人々の生活は落ち着きを取り戻したかに見えたが、そんなさなか謎の巨大戦闘兵器「使徒」が襲来。

そこで人類はNERV(ねるふ)と呼ばれる組織を結成。
新世紀エヴァンゲリオン5巻 アクション
(5巻)
そして汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン(EVA)」を開発して対抗。そのパイロットである少年・碇シンジと、少女・綾波レイと惣流・アスカ・ラングレーの物語。彼らはチルドレンと呼ばれてる。


マンガ版とアニメ版との違い

気になるのが、肝心のストーリー。アニメ版のエヴァンゲリオンは最後ワケワカラン感じで終わった記憶だったので、特に期待はしてなかった。

先に答えを書くと、基本的にストーリーの軸はマンガ版もアニメ版も大きく変わらない。例えば、序盤だと葛城ミサトが自動車で碇シンジを迎えに来るなど、アニメ版とのエヴァンゲリオンと展開は同じ。

ただちょいちょい違う場面も多い。例えば、碇シンジの「逃げちゃダメだ」という有名なセリフは登場しない。綾波レイと屋台でラーメンを食べてるシーンなどもない。
新世紀エヴァンゲリオン10巻 BL
(10巻)
他にも、渚カヲルと碇シンジとBLチックな展開があったり、マンガ版とアニメ版は似てるようで似てない。

個人的にビビったのが、第3新東京市立第壱中学校の同級生である鈴原トウジ。フォースチルドレンとして選ばれるものの、アニメ版のエヴァンゲリオンでは目立った活躍はしなかったはず。

でもマンガ版エヴァでは主人公・碇シンジと戦う羽目になる。
新世紀エヴァンゲリオン6巻 鈴原トウジを握りつぶす碇シンジ
(6巻)
そして結果的に碇シンジの初号機が暴走して、鈴原トウジは握りつぶされてしまう。アニメ版は一回視聴したきりで記憶が定かではなかったものの、「こんな衝撃的なシーンあったっけ!?」と思わずビビった。


ストーリーを楽しむなら漫画版エヴァ

さっきも書きましたが、アニメ版のエヴァンゲリオンのストーリーは意味不明。「こりゃ何なんだ?」というイメージが強かったので、マンガ版も大して期待はしてなかった。

ただその不安とは反して、なかなかストーリーが面白かった。面白いというか、キャラクターの心情も含めて全体的に分かりやすかった。アニメ版はキャラもネチネチウジウジしてて、抽象的な表現も多く付いて行けなかった。

新世紀エヴァンゲリオン8巻 綾波レイの葛藤(碇シンジが好き)
(8巻)
例えば漫画版の綾波レイは、碇シンジと触れ合っていくことで好きになっていく。綾波レイは人造人間みたいなもんで、実は何人も何人も量産されてる。一度死ねば、また新しい綾波レイが生まれる。

新世紀エヴァンゲリオン10巻 綾波レイの葛藤
(10巻)
ある意味、心が空っぽだった綾波レイの中には、嫉妬や憎しみなど人間的な感情が芽生えだす。それがラストのオチに繋がる伏線・フリになってて、綾波レイというキャラが初めて「生き」て見えた。

アニメ版の渚カヲルは唐突に現れて、唐突に消えた印象が強かった。でもマンガ版の渚カヲルは加持リョウジが死亡直後の9巻ぐらいから登場。
新世紀エヴァンゲリオン11巻 渚カヲルの葛藤
(11巻)
主人公の碇シンジとガッツリ絡んで、綾波レイと同じく嫉妬心といった感情を抱く。実は渚カヲルも敵の使徒。だから碇シンジも「何故敵だったら仲良くしたんだよ!」みたいに怒る。そこが渚カヲルが最終的に選んだ選択にも繋がって、個人的には納得感があった。アニメ版の渚カヲルの行動は理解しがたい。


ATフィールドという心の壁

エヴァンゲリオンが発動する「ATフィールド」と呼ばれる防御。これは実は「心の壁」を現してる。だから主人公たちの年齢設定は、思春期真っ盛りの14歳前後。大人よりも子供の方が自分が傷つくことを恐れて、「他人への拒否感」は強い。

つまりエヴァンゲリオンのストーリーとしては、「大人への成長(子供からの脱却)」みたいなテーマが根幹にある。だからキャラクターがどういう心の葛藤や悩みを抱えてるかも重要。

でも前述の通り、綾波レイや渚カヲルといった不思議キャラクターの心理描写は比較的明確。
新世紀エヴァンゲリオン13巻 碇シンジのトラウマ
(13巻)
碇シンジであれば父親に捨てられたというトラウマや、鈴原トウジを握りつぶしたという負い目など、読者からすると悩んでるキッカケみたいなんがハッキリしてて分かりやすい。

最終的に綾波レイがラスボス的な展開になって、ATフィールドという心の壁が必要のない世界を作ろうとする。それがいわゆる人類補完計画。言っちゃえば、最近の作品で例えるとNARUTOのラストみたいなクダリ。

新世紀エヴァンゲリオン14巻 ラスト
(14巻)
ただ碇シンジはそれを乗り越える。自分が傷ついたとしても、また他人を傷つけたとしても、それでも人間と人間は理解し合うために触れ合わなきゃいけない。

最後碇シンジは綾波レイと手を取り合って、「つないだ手はいつか離れてしまうかもしれない。でも僕はもう一度君と手を繋ぎたいんだ」。綾波レイと碇シンジがお互いに恋心を抱いていたというフリも生きてくる。

マンガ版のエヴァンゲリオンのオチとしては、一度世界は潰れてしまうんですが、再び数千年後か数万年後にまた似たような近代文明が作り上げられる。

その地に碇シンジが再び立ってる。でも今度は将来に悩みながらも、ちゃんと「太陽がきっと行き先を照らしてくれるんだ。僕の未来は無限に広がっている」と前向きに生きていく。悠久のロマンも感じさせて、良い読後感を残す。

新世紀エヴァンゲリオン ケータイの進化(1巻と14巻)
(1巻と14巻比較)
一種パラレルワールド的でもあって、それを更に強調させるのが「ケータイ」というアイテム。1巻目ではパカパカ携帯(厳密にはパカパカ携帯が発売されるもっと前)だったんですが、最新14巻ではスマホ。似たような世界だけど明らかに違う、という印象作りに上手く利用できてる。


アニメに負けないアクション描写

じゃあマンガ版エヴァンゲリオンのストーリー以外はダメかと言えば、むしろ逆。アクション描写はアニメ版さながらの迫力。

新世紀エヴァンゲリオン5巻 アクション
(5巻)
冒頭にも貼りましたが、ATフィールドを使用して使徒からの攻撃を防いでる場面とかカッコいい。

新世紀エヴァンゲリオン9巻 アクション
(9巻)
渚カヲルが使徒の攻撃を利用して、空中に舞うシーンは華麗すぎ。

新世紀エヴァンゲリオン2巻 アクション
(2巻)
コマ割りもいちいち工夫されていて、まさに流れるような展開。

最近レビューした中では『サクラ大戦』や『風の谷のナウシカ』よりも、『エヴァンゲリオン』はアニメのクオリティーに近い。ただ後半になるにつれて、こういったアクション描写の量は目に見えて減る気がしますが。


総合評価 評判 口コミ


アニメ版『新世紀エヴァンゲリオン』はストーリーの意味がいまいち分からなかった。有名な「ありがとう」の連呼でチンプンカンプンな最終回がまさに典型。でも漫画版エヴァの方がストーリーがしっかりしてて面白かった。作品の完成度としては漫画の方が高い。エヴァンゲリオンという作品を語るには、この漫画版を読んで初めて語れると思います。

人類補完計画の説明など比較的理解しやすく、エヴァンゲリオンという世界観にもちゃんと溶け込めた。アニメ版ではキャラクターの心情が見えにくかったですが、不思議を超えた不思議キャラクター・綾波レイや渚カヲルの言動の目的は見えやすくて良かった。

ラストの最終回・結末は暴走した綾波レイたちが、次々と人間を溶かして消失させていく。ATフィールドという名の「心の壁」を壊すためには、その人物が好きだった異性に変身。例えば、惣流・アスカ・ラングレーだったら加持リョウジ冬月コウゾウだったら碇ユイといった具合。

でも綾波レイたちは碇ゲンドウだけは最後は溶かせなかった。何故なら、エヴァ初号機に乗り移っていた妻・碇ユイの魂が現れて、初めてそこで碇ゲンドウの孤独が埋まるから。それを傍らで見つめる綾波レイが切なかった。