『ミュージアム』全3巻のネタバレ感想をレビュー。作者は巴亮介。掲載誌はヤングマガジン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックのサイコホラー漫画。

色んな意味で話題になったマンガですが、毎度のように面白いかつまらないかという考察したいと思います。ただ怖いというか、内容がエグいので閲覧注意。できるだけマシな画像を選択してますが、血みどろ系が苦手な方は見ない方が賢明です。


あらすじ物語・ストーリー内容

ミュージアム1巻 主人公 沢村久志
(1巻)
主人公は警視庁の刑事・沢村久志。ある日、猟奇的な殺 人事件の現場に立ち会う。あまりに凄惨な現場に誰もが言葉を失い、後輩刑事の西野は何度も吐いてしまった。

不思議なことに、この被害者の体内には一枚の紙が入っていた。「ドッグフードの刑」。何を意味しているかは、遺体を見れば一目瞭然だった。そして似たような被害者が次々と発見される。「母の痛みを知りましょうの刑」、「ずっと美しくの刑」、「均等の愛の刑」、「針千本のーますの刑」。

被害者の年齢も性別も職業も別々だったが、一点だけ彼らには共通点があった。それが幼女樹脂詰め事件の裁判を担当した「裁判員」だったこと。

ただこの犯人とされた大橋茂という被告は死刑判決を受けた直後、移送された警察病院内で自ら命を絶っていた。何故なら大橋茂が犯人と示す確実な物的証拠はなく、情況証拠しかなかった。つまりは犯人は大橋のかたきを討とうしているのか?

しかしこの共通点に気付いたとき、主人公・沢村久志は愕然とする。自分の妻もその裁判の裁判員を担当していたからである。だからといって容赦ない凶悪さは止まることはない。
ミュージアム2巻 後輩刑事・西野
(2巻)
ついには犯人の「カエル男」の毒牙は後輩刑事の西野にまで及ぶ。果たして沢村は妻の命を守ることはできるのか?犯人を捕まえることはできるのか?…みたいなストーリー。


究極のサイコホラー漫画

『ミュージアム』を一言で言えば、究極のサイコホラーマンガ。ジャンルはホラーというかサスペンスに近いと思いますが、ただただ怖い。

ミュージアム3巻 サイコホラー描写2
(3巻)
犯人のカエル男に監禁された主人公・沢村がからがら脱出してみせるんですが、ある巨大な冷蔵庫を開けるとまさかのバーン!敢えて表情をコチラに向けないのが良い。

このシーンだけでもかなり閲覧注意なんですが、沢村は監禁されていた部屋で犯人からハンバーガーを食べさせられてた。そして監禁部屋から「EAT」というパスワードを入力することで脱出した。敢えて多くは説明しませんが、点と点が嫌でも線に繋がってしまう。

ミュージアム3巻 サイコホラー描写1
(3巻)
冷蔵庫の扉を開ける直前、こういったシーンも描かれます。カミソリに毛髪がやたらと絡みついてる描写とか、この無意味なリアリティーはもう一体何なんだと…。もちろんここだけではなく、被害者がカエル男にやられるシーンは躊躇なく描かれます…。

ただエグいだけじゃなくて煽り方や演出力も抜群。

ミュージアム1巻 母の痛みを知りましょうの刑1
(1巻)
例えば、「母の痛みを知りましょうの刑」の被害者となった引きこもりのおデブちゃんだと、自分の部屋に犯人・カエル男が侵入してくる。最初は郵便屋と思って玄関を見つめてたんですが、玄関の鍵がゆっくり開く。さすがの引きこもりのプロも異変に気付く。徐々に追い詰められていくシーンが見もの。

ミュージアム2巻 カエル男
(2巻)
主人公・沢村刑事が「カエル男」を追い詰めるものの最終的に返り討ちに合うシーンも、影の使い方や舞い散る紙で「カエル男」の顔が隠れる演出も恐怖感を倍増させます。

あらすじにも貼った後輩刑事・西野が屋上から突き落とされるシーンも、作者・巴涼介の画力が高いからこそ全部を描かなくても怖い。表情や死体など、全体に緊張感やサイコ感がギンギンにみなぎってる。


最終回の名刺の秘密

でもいかんせん全3巻というボリュームからも分かるように、最終回の結末は尻すぼみ。「カエル男(霧島早苗)」の顔が早々に割れるので、実は真犯人が別にいるのではないか?と思ってたんですが、結局は「霧島早苗」というオチで残念でした。

もっと言えば「打ち切り臭」はぬぐえません。

ミュージアム3巻 僕らは親友と言う体で
(3巻)
打ち切りの根拠としては『僕らは親友と言う体で』という作者・巴涼介の読み切りマンガが掲載されてるから。こういったのが掲載される場合、1冊のコミックにまとめるだけのページ数が足りてない。この読み切り漫画もクオリティーが高くて面白いんですが、結論から書くと人気がなかったことになります。

でも個人的には面白いと思ったのに、何故?

ミュージアム3巻 フリーライターの名刺
(3巻)
その答えが、最終話に登場した新聞記者が持っていた名刺に暗号みたいなんが書かれてます。結論から言えば、この名刺には「あるURL」とそこからZIPファイルをダウンロードするための「キーワード(パスワード)」の2つが記載されてます。

URLは「http://www1.afxc.net/uploader/so/◯◯◯」なんですが、あまりネタバレしても面白くないので数字部分は割愛します。拡大しても判別できないと思うので実際に買ってね(笑)

自分もアレコレと悩んでしまったのでキーワードだけは書いておくと「museum」になります。ファイルの開け方が知らない方は「ZIP 解凍」でテキトーにググってください。2年後もまだリンクが生きていたことに驚きました。

ZIPファイルの秘密 作者のコメント

じゃあ、そこには何が同梱されていてるかといえば「巴涼介の暴露」。要するに、あまりに凄惨な内容にヤンマガ編集部から「待った」がかかったそう。一瞬負け惜しみに聞こえなくもないですが、内容の濃さを考えたらそれがウソではないことは明白です。

編集者的には「後味が悪くないように」という配慮もあったのかも知れませんが、最初からぶっ飛んでる内容の漫画。でもそういうつまらない配慮こそが、逆に後味を一番悪くさせてるというオチ。ヤンマガ編集部は一体何をしたかったのか?という話。

でも少し編集者を擁護しておくと、おそらく作者・巴涼介の筆致力やぶっ飛び力を侮ってたんだと思います。物語を作る力や画力など、原稿ができあがる度に編集者の想像を余裕で超えてきた連続で、良くも悪くも手に負えなくなったんだと思います(笑)

それぐらい陰惨な内容の漫画。強いて言えば、ヤングマガジンに拾われてしまったことが不幸の始まりか。最初からぶっ飛んでる内容なんだから、最後までぶっ飛んだ内容のまま完結させて欲しかった。

ちなみにURLを記載しないなど煽ってみましたが、作者コメント以外では簡単なオマケ画像が同梱されてるだけですので注意。ぶっちゃけ大して面白いものは入ってないです。どうせなら作者自身が本当に描きたかったオチの展開を入れてて欲しかったです。


総合評価・評判・口コミ


『ミュージアム 全3巻』の感想としては、一言ヤバイ。映画「セブン」を彷彿とさせる…いや、それを簡単に超えてくるポテンシャルがありました。最初ヤンマガで一話目を偶然読んだ時は思わず「キタ━━(゚∀゚)━━!!」と心の中で叫んだほど。

ただいかんせん内容が良すぎたために、かえって規制がかかってしまった不幸。それがひたすら残念です。一体どういう「超バッドエンディング」が待っていたんでしょうか。

ミュージアム3巻 エンディング
(3巻)
作者も抵抗したのか、最終ページの「the end」の文字に斜線が入ってるように思えます。ZIPファイルをコソッとアップロードするぐらいですから、「俺自身はこんな結末望んでねーよ」とでも言いたげです。

とはいえ結末に不満があるものの、サイコサスペンス or サイコホラーとしては全体的にレベルが高いです。吐き気を催したい or 鳥肌を勃たせたいという方はそれでも満足できるはず。ボリュームも3巻しかないので購入しても損はしないでしょう。