『ムダヅモ無き改革』全16巻のネタバレ感想。作者は大和田秀樹(Owada Hideki)。近代麻雀(竹書房)で連載してた麻雀漫画。おそらく既に完結してるはず。この記事では『ムダヅモ無き改革』が面白いか面白くないかをメインにレビューしたいと思います。


あらすじ


ムダヅモ無き改革1巻 小泉ジュンイチロー
(『ムダヅモ無き改革』1巻)
主人公は小泉ジュンイチロー。第89代日本国内閣総理大臣。一応、下の名前が「ジュンイチロー」とボヤかしてるんですが、日本国総理大臣という肩書を使ってる時点で何の意味をなしてないのはご愛嬌。この記事では面倒くさいので、「小泉純一郎」でいきます。

ムダヅモ無き改革2巻 金将軍
(『ムダヅモ無き改革』2巻)
この小泉純一郎が金正日総書記といった各国の首脳たちと権力をめぐって麻雀バトルを繰り広げるみたいなストーリー。1話目ではアメリカのジョージ・ブッシュ大統領が登場したり、世界の為政者、歴史上の人物たちが勢揃いのマンガ。だから漫画タイトルの「ムダヅモ無き改革」とは、小泉純一郎が進めていた「聖域なき構造改革」のことをパロってるんだと思います。

ただ2008年頃から連載が始まっただけあって、金正日はとっくに亡くなってることからも分かりますが、今から見ると意外に登場人物が古い。絶賛テロで炎上中のフランスも現在でこそ大統領はオランドですが、当時はサルコジでした。また数年後になれば、おそらく大統領は変わってるでしょう。

そもそも2008年当時ですら、小泉純一郎が総理大臣の一線から退いて数年。つまり最初から意外に「タイムリーさ」に欠けてると言えます。


カオスすぎる麻雀バトル&展開が面白い?

『ムダヅモ無き改革』は基本的に色んな意味でカオス。特に麻雀バトルからしてクレイジー。

ムダヅモ無き改革16巻 真田VS小泉
(『ムダヅモ無き改革』16巻)
もはや普通にバトル漫画。

先にネタバレしておくと、画像は最終的に小泉純一郎と第二の主人公・真田二佐が戦う。途中から小泉純一郎が倒されて、主人公が入れ替わる。いろいろと権利的な問題でもあったかは不明。そして小泉純一郎が再び現れた時は、身体が改造されて悪役として再登場する。

ムダヅモ無き改革16巻 バトル描写
(『ムダヅモ無き改革』16巻)
小泉純一郎は超絶的なジャンプから、麻雀牌を腕からババーンと繰り出す!もはや何のマンガか分からない。

必殺技もなかなかクレイジー。その最たる例が「轟盲牌(ごうもうぱい)」。小泉純一郎の必殺技で、麻雀牌を指の摩擦力だけで、牌のガラを消して白牌(パイパン)に仕上げる。いわゆるイカサマ行為。普通の麻雀漫画だったら、いかにバレないかに苦心するんですが、『ムダヅモ無き改革』ではこれを堂々とやっちゃう!

ムダヅモ無き改革13巻 ダライ・ラマ「チェンジ・ザ・ワールド」
(『ムダヅモ無き改革』13巻)
ダライラマ猊下の必殺技「チェンジ・ザ・ワールド」は、見えない腕を繰り出して麻雀牌をどんどんすり替えていく。真田二佐も「おお!見る見る牌が変わってゆく!」じゃねーよ!チベット自治区もいつか独立できるとこんな風にいいですね(棒読み)。

ついには麻雀牌自体にイカサマを仕掛けるヤツも。それがウクライナの元首相・ティモシェンコ。ウクライナと言えば、チェルノブイリ原発事故があった場所(厳密にはロシアから独立する前の話)。
ムダヅモ無き改革2巻 ティモシェンコのプルトニウム牌
(『ムダヅモ無き改革』2巻)
だから麻雀牌がプルトニウム製。これをFUKUSIMA出身の政治家にやらせてたら、きっと大炎上してるでしょう(笑)

ムダヅモ無き改革5巻 アシモ
(『ムダヅモ無き改革』5巻)
他にもホンダのアシモだって麻雀を打っちゃいます!The Power of Dreams!!

ムダヅモ無き改革5巻 宇宙へ行く小泉純一郎
(『ムダヅモ無き改革』5巻)
果てには、舞台を月に移して麻雀バトル。小泉純一郎も宇宙へGO! 『アルマゲドン』のブルース・ウィリスを彷彿…みたいな展開が待ってます。


大和田秀樹はナチス好き?民主党大嫌い?

ちなみに自分はFC2ブログの方でも『ムダヅモ無き改革』をレビュー済み。この時は作者・大和田秀樹が「ナチスをマンセーしてんじゃね?」みたいなことを書いたらちょっと荒れました(笑)

ムダヅモ無き改革3巻 ナチス
(『ムダヅモ無き改革』3巻)
例えば、ナチスのルーデルやスコルツェニーといった歴史上の人物がやたらと美形。

ムダヅモ無き改革5巻 ヒトラーとロンメル元帥
(『ムダヅモ無き改革』5巻)
ヒトラーとロンメル元帥のクダリは、何故か感動モノ風。

ムダヅモ無き改革4巻 ベネディクト16世 VS ヒトラー
(『ムダヅモ無き改革』4巻)
ちなみにローマ教皇のベネディクト16世(Benedict XVI)とアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)を戦わせちゃったりしてます。さすがにネトウヨは世界の非常識だぜー!ふぅぅ~!

ムダヅモ無き改革7巻 鳩山総理
(『ムダヅモ無き改革』7巻)
最近ネトウヨに包囲されて、ボコボコにされかけた元総理の鳩山由紀夫はこんな感じ。まだこれでもマシな方の画像を選択してます(笑)

ムダヅモ無き改革8巻 レンホー
(『ムダヅモ無き改革』8巻)
蓮舫に至っては、ちょっとした美形のゴリラ。蓮舫には一応子供もいる母親らしい。きっと女性的には出産してる時ぐらいにしか、こんなに息んだりしないはず(笑)

この『ムダヅモ無き改革』が連載してた時期は、ちょうど民主党政権時代だったことも重なって、むしろ民主党政権に変わりそうだったから大和田秀樹が始めた連載かも知れませんが、このあたりの展開は大和田秀樹の憎悪めいたもんを読み取れる内容になってます。

作者・大和田秀樹は良くも悪くもデフォルメが上手い漫画家ですので、モロに自分の好みや意図がキャラクターデザインに反映されちゃう。だから『ムダヅモ無き改革』の信者さんは必死に否定されてたんですが、この違いを見れば一目瞭然でしょう。


ネトウヨ読者は共産国家批判に満足?

だから『ムダヅモ無き改革』は、一見すると「ネトウヨさんにとっては面白いマンガ」とも言えます。

ただ10巻以降は共産主義国家批判に終始。例えば、ポルポトや毛沢東、レーニンといったお歴々が勢揃い。確かに左巻き批判という点でネトウヨ御用達と言えなくもないですが、さすがにチョイスとしては渋すぎる印象。基本的に韓国や中国を叩ければいいだけなので、基本的に共産主義がどうとかは興味ないはず。

もし現在蔓延ってるネトウヨ読者に媚びるのであれば、韓国のパククネや李明博、李承晩あたりを敵にした方が無難でしょう。でも『ムダヅモ無き改革』では、こういった面々は一切登場しません。例えば、ネトウヨが大好きな河野洋平といった日本の政治家も登場しませんし、むしろ絶妙にネトウヨを刺激するツボを外してる。

逆に左巻きの人々からしても、ポルポトや毛沢東が批判されたところで痛くも痒くもない。作者・大和田秀樹が日和って批判されにくい人物に逃げたのかも知れませんが、要するに「読者があんまピンと来ない歴史上の人物」が増えた印象。だから『ムダヅモ無き改革』を読み終えても、意外に溜飲が下がる読者…もといネトウヨが少ない気はした。

これに関連して言うと、『ムダヅモ無き改革』のラストは小泉純一郎がカッコ良い感じで終わってます。そして『ムダヅモ無き改革』最終16巻が発売されたのが、今年2015年10月頃。ただ今現在において、小泉純一郎を支持してる層とは一体どういった層なのか?そもそも「自民党をぶっ潰す」と言って人気が出た人ですから、どちらかと言えば「反自民党的」な立ち位置とも言えます。

ましてや小泉純一郎は最近「反原発の志士」として活動しておられますので、そう考えると作者・大和田秀樹の政治的スタンスも2016年に突入しようとする現在ではやや不明瞭に見えます。更に言うとマンガ全体に漂う「時代遅れ感」も甚だしい。

やはり「溜飲が下がる」という点で『ムダヅモ無き改革』は不発気味と言えるでしょう。そもそも漫画タイトルで「改革」を謳っておきながら、「革命」批判をしてるのもなかなか滑稽ですが。


総合評価

最近、過激なネトウヨ本が発売されて社会問題化してますが、基本的にはそういった類いのマンガ。むしろ先駆け的な作品。ただ最近の過激なネトウヨ本と比較すると、『ムダヅモ無き改革』は意外に内容は突き抜けてるように見えて突き抜けてない。

あくまで『ムダヅモ無き改革』をハチャメチャな麻雀バトル漫画のみとして読むなら問題ないんでしょうが、途中から真田二佐という架空のキャラが主人公になるなど、現実のディスりという点では「誰が得してるのか?損してるのか?」が不明瞭になります。だからネトウヨ目線で評価するとしたら、途中の民主党批判以外を除くとそこまで面白くないと言えます。

そういえば最終16巻のアマゾンレビューで「時事ネタや風刺要素が減って微妙」という意見がありました。
ムダヅモ無き改革15巻 尖閣ネタ
(『ムダヅモ無き改革』15巻)
確かに尖閣諸島問題ネタを、最終話に至るまでタイトルで使ってます。

ただ何故かネオ中華ソビエト共和国の戦艦が沈んだ場面で大団円で『ムダヅモ無き改革』は完結を迎える。さも尖閣諸島問題は無事完結したみたいなオチ。でも安倍政権になってからも毎日のように中国漁船は散々侵入してるわけです。

そこをスルーしちゃってる時点で、いかにも「民主党の売国はNG、自民党の売国はOK」という典型的なネトウヨだと自白してるようなもん。単に『ムダヅモ無き改革』で大和田秀樹は民主党叩きをしたかっただけで、大和田秀樹に所詮舌鋒の鋭さがあるわけではありません。

そもそも冒頭でも触れましたが、『ムダヅモ無き改革』の連載が始まった時からして、既に主人公の小泉純一郎は総理大臣を退いて数年経ってる状態。例えば橋下徹の維新が登場するわけでもなく、「ムダヅモ無き改革に風刺ネタが満載だった」という認識自体が的外れでしょう。

またネオ中華ソビエト共和国が倒された日時が「2012年12月17日」。そして安倍自民党が衆院総選挙で勝利した投票日が「2012年12月16日」。明らかに民主党ディスりの意図が込められてるわけですが、それでも民主党の面々が登場しないのでモヤッとする。結果的にミンス相手にすら日和ったのか知りませんが、こういった最後っ屁的な幼稚な演出が作者・大和田秀樹の浅はかさを更に露呈させただけだったのかなと

ムダヅモ無き改革1巻 安倍シンゾー
(『ムダヅモ無き改革』1巻)
ちなみに麻生太郎は頻繁に登場するのに、何故安倍ちゃんが登場しないのかと思ってたら、1巻目でとっくに亡くなってました(笑)