『モンクロチョウ』全3巻のネタバレ感想。作者は日暮キノコ。ヤングマガジン(講談社)で連載してた青春漫画。ちなみに作者名は「ひぐらしきのこ」と読むそう。そして性別はオンナらしい。


あらすじ

モンクロチョウ1巻 岡部正也
(モンクロチョウ 1巻)
主人公は岡部正也。私立唐草学園に通う高校2年生。中高一貫の男子校だったが、周囲の友達はみんなヤリチソばかり。そこで付いた異名が「モテ高」。でも岡部正也だけはピュアすぎるDT。とにかく女性が苦手だった。

モンクロチョウ1巻 白石桃子
(モンクロチョウ 1巻)
その理由は幼なじみの白石桃子。幼い頃から発育が良かった。それ故に岡部正也は桃子と接する度にドギマギ。身体だけは大人に成長していく桃子に対して、無意識に拒絶反応を示す。それが結果的に「女性全般に対する苦手意識」に繋がった。

ただ白石桃子は高校生になっても体型は変わらず。いわゆる、おデブちゃん。岡部正也は周囲の友達が友達なだけに、少なくとも「自分は白石桃子より大人」という自負があった。それゆえに白石桃子と一緒にいると妙な安心感を得た。

モンクロチョウ1巻 白石桃子2
(モンクロチョウ 1巻)
でもある日、白石桃子からこんなことを尋ねられる。実は百歩も二百歩も岡部正也より先に進んでいた白石桃子。

モンクロチョウ1巻 新堂
(モンクロチョウ 1巻)
愕然とする岡部正也だったが、しかも白石桃子は岡部正也の友達・新堂のハ゜イズリ要員だったことが発覚!果たして岡部正也の運命は!?男としての自尊心はどうなるのか!?…みたいな展開。


誰が可哀想なの?

結論から書くと、話の軸がよく分かりません。もっと言うと「誰が可哀想なのか?」。

例えば、主人公・岡部正也は女の子が極度に苦手だったので、そのままDTの状態で悶々とくすぶるのかと思いきや、白石桃子で自暴自棄的にDT喪失。そして高田リサというイケてる女子とフレンドな関係になって毎日のようにパコりまくる。高田リサは「とりあえずヤれる女」という設定。

モンクロチョウ2巻 白石桃子が読者モデル
(モンクロチョウ 2巻)
一方、白石桃子は痩せて読者モデルとして活躍。消極的だったのに積極的な性格へ一変。

モンクロチョウ2巻 桃子の足舐め要員
(モンクロチョウ 1巻)
新堂との関係も逆転して、白石桃子は女王様みたく振る舞うようになる。岡部正也は高田リサとパコパコしまくって強気になってたものの、この新生・白石桃子を目の前にしてタジタジ。

モンクロチョウ2巻 悪魔のささやき
(モンクロチョウ 2巻)
黒い蝶(これが漫画タイトルのモンクロチョウ?)が現れて「その程度で変われたと思ってんの?(ニヤリ」と挑発してくる。劣等感の塊だった岡部正也は何も変わってなかった、みたいな展開。

モンクロチョウ2巻 憂鬱な岡部将也
(モンクロチョウ 2巻)
ただ岡部正也は自信喪失の表情を浮かべてるものの、隣りにいる高田リサはめっちゃ可愛い。普通に考えたら岡部正也は勝ち組にしか思えない。もしそういう展開に持って行きたかったのであれば、高田リサはブスキャラにしなきゃダメ。岡部正也が何故卑屈に感じるか分からない上、読者は岡部正也に同情なんてできるわけがない。

白石桃子に関しても、見掛けこそ華やかに変わったものの、内面の奥底にはデブだった頃の自分が常に顔を覗かせてる。結局、見た目がいくら変わっても白石桃子は白石桃子で劣等感の塊だった、みたいなことを描こうとしてる雰囲気。

でも白石桃子の性格がいけ好かないのに変わりはなく、簡単にハ゜イズリ要員になっちゃう残念なオンナに変わりはなく、やっぱりキャラクターに感情移入できない。最後の最後まで岡部正也のことは好きにならないし、5年後を描いたラストでは白石桃子はどこかの男と結婚して、しれっと赤ちゃんを身ごもってる。

岡部正也にヤリ捨てされた高田リサや、岡部正也の友情ごっこの犠牲になった山口学など、そういったキャラクターにこそ感情移入できそうな余地があるんですが、コチラはサブキャラクターということであっさりフェードアウト。

つまるところ、どのキャラクターの「可哀想」を描くのかが定まってない。


総合評価


『モンクロチョウ』の感想としては、最初リアルタイムでチラッと読んだ時はなんとなく面白くなりそうな空気や気配がありましたが、なんか気付いたらソッコー打ち切りにされてました。それを象徴するように結果的には何も結実することはなく、読後感としても何もスッキリしない。要はそんなに面白くはありません。

作者・日暮キノコが女性ということもあるんでしょうが、主人公・岡部正也の「モテなさっぷり」を貫けてない。もっと言うと、DTを喪失させた時点でアウト。非モテ男からしたらそこが絶対的なゴールなわけですから、それを序盤で消化してしまったら他に何を描くの?って話。

また白石桃子のことを「岡部正也が好きになった唯一のオンナ」という位置付けで描きたいようですが、高田リサをガンガンに抱きまくっておいてそれはない。せめて高田リサで勃たなくなったみたいな描写でもあれば別ですが、いくら最後の方で岡部正也が自分の純情っぷりを貫いたように見せかけても、さすがに説得力もクソもない。

そもそも、こんなにヤリまくってる高校生たちはおらんでしょっていう。もしいるなら、そのカラオケボックスを今すぐ教えなさい!(●`ε´●)

だから『モンクロチョウ』は全体的にリアリティが欠けるので、実際にこんな高校生がいたとしても非モテ男は感情移入はできない。だからと言って、リア充読者が共感できる内容とも思えない。青春要素もなければ、純愛要素もない。具体的にどういう読者がどういう反応するか見えづらく、まさに誰得。

ちなみに作者・日暮キノコはほぼ同時期に連載してた『喰う寝るふたり住むふたり』は発行部数が70万部突破してるので、何だかんだで才能がある漫画家さんなんだと思われます。