『中間管理録トネガワ』1巻2巻のネタバレ感想。原作は荻原天晴、作画は橋本智広と三好智樹。福本伸行の『カイジシリーズ』のスピンオフ漫画。月刊ヤングマガジンで連載中。

ちなみに何故こんなに作者の名前が多く連ねてるのかは、自分の予想も込めて後述します。


あらすじ

『カイジ』シリーズで主人公・カイジを追い詰める存在が、帝愛グループという企業。日本最強を誇る金融コンツェルン。

中間管理録トネガワ1巻 帝愛会長 兵藤和尊
(中間管理録トネガワ 1巻)
この帝愛グループの会長・兵藤和尊がとにかく極悪非道。自分たちが抱える債務者同士で命を懸けたゲームをやらせて、その阿鼻叫喚地獄を楽しんでいる。本編では現在『賭博堕天録カイジ ワンポーカー編』で、この兵藤和尊の息子・兵藤和也とカイジが絶賛戦ってる最中。

ただ迷惑を被っているのは、債務者たちだけではない。当然、兵藤和尊の下で働く社員や部下たち。
中間管理録トネガワ1巻 利根川幸雄
(中間管理録トネガワ 1巻)
とりわけ兵藤の側近中の側近である利根川幸雄。最高幹部という肩書ではありますが、兵藤和尊の使い走り状態。だから兵藤の突然の行動で「週末のゴルフが…パァ…」なんてことも度々。

最高幹部という肩書を「中間管理職」と呼ぶかは正直微妙なところだと思いますが、この利根川幸雄の上にも下にも気を使わなければいけない、まさに世の課長部長クラスが抱える悲哀がコミカルに描かれたギャグ漫画になってます。


部下の名前を覚えるのは大変だ

新プロジェクトを始めることとなった利根川幸雄。ただ部下たちは全員グラサン+黒服という出で立ちで無個性も甚だしい。そこで自分が管理統率しやすいように、1人1人自己紹介をしてもらう。リアルでもそうですが、人の名前を覚えるのって意外に大変。

中間管理録トネガワ1巻 利根川幸雄の苦悩1
(中間管理録トネガワ 1巻)
でも初っ端から難解な苗字の黒服が登場。「佐衛門三郎」ってなんだよ。利根川も思わず「なんと面倒臭い苗字」と怒りで震える。しかも下の名前が「二郎」。そこは「◯郎」以外で来いよ。利根川は最初「え?今二人いなかったか?」というリアクションをするんですが、まさに頷けます。

中間管理録トネガワ1巻 利根川幸雄の苦悩2
(中間管理録トネガワ 1巻)
そして続いての難関が「◯崎」被り。って、別になんてことはないんじゃね?そんなこと言ったら「宮崎」や「高崎」とかもアウトになってしまう。

中間管理録トネガワ1巻 利根川幸雄の苦悩3
(中間管理録トネガワ 1巻)
ただ利根川は数々の死闘をくぐり抜けてきた猛者。優秀さ故に、ちょっとした異変に気付いてしまう。些細な違いだからこそ起きる混同!弘法も筆の誤り!猿も木から落ちる!なのだッッッ!

最終的に荻野(おぎの)と萩尾(はぎお)が登場して利根川にトドメをさします。確かに荻原健司、萩原聖人…とか、どう読めばいいかすぐ分かりづらい。つくづく帝愛グループに水野真紀、水野美紀、酒井美紀、坂井真紀が就職してなくて良かったなと思います。


部下にヨイショしまっせ

利根川といえば自分の有能さを鼻にかけたタイプで、プライドが高いイメージ。ただ中間管理職という立場は、下の部下があくせく働いてくれてようやく仕事が回る。だから利根川は部下へ割と気を使う。

例えば企画会議で空気が張り詰めていると、部下がアイデアを提案しやすいように褒めちぎる。ある漫画編集者のブログを読んだら、新人漫画家や漫画家の卵はホメた方が良いらしい。「いきなり妙案が出たな」「悪魔的発想」「卓抜奇抜」などなど絶賛すると、もはや部下たちは口々にアイデアを叫ぶ状態。

中間管理録トネガワ1巻 聖徳太子か ユーモアという潤滑油
(中間管理録トネガワ 1巻)
それを少し見かねた利根川が「ワシャ、聖徳太子か!」とツッコミを入れる。そうすると部下がドッと湧く。「よしっ!掴んだ流れ!錆び付いていた車輪にさしこんだ、ユーモアという潤滑油!」と利根川がほくそ笑む。お調子者のクラスメイトかってぐらいテンションが上がる。

中間管理録トネガワ2巻 利根川幸雄 ただの校長先生
(中間管理録トネガワ 2巻)
部下の一人がインフルエンザに罹ると、利根川は「今からでも予防接種を受けに行こう」と提案。見た目の風貌を含めると、ただの小学校の校長先生にしか見えません。

中間管理録トネガワ1巻 焼き土下座強制機1
(中間管理録トネガワ 1巻)
そして自腹で高級肉を買って、部下のためにバーベキューを開いてくれたりもする。ちなみに、画像は焼き土下座専用の鉄板。利根川はトラウマが再燃しないのか!?と疑問に思いますが、時間軸的にはカイジと対戦する前ですので問題なし。とはいえ、ここで自分も焼かれるとは露程にも思ってないでしょう(笑)

まさに圧倒的気配り!!!部下に対する圧倒的愛!!

中間管理録トネガワ1巻 焼き土下座強制機2
(中間管理録トネガワ 1巻)
ただ土下座強制機はまさかのトング掛け。あれ?利根川は最高幹部のくせに意外に無知?

中間管理録トネガワ1巻 パワポに驚く利根川幸雄 限定ジャンケン
(中間管理録トネガワ 1巻)
それを更に印象付けるシーンが、前述の佐衛門三郎が企画提案する場面。まず内容がどうこうよりもパワーポイントで作ってることに驚く。え?そこ?w

ちなみにこのクダリでは『賭博黙示録カイジ』編のエスポワールで繰り広げられた「限定ジャンケン」が生み出される過程が描かれてます。


兵藤和尊イジり

利根川だけではなく、会長・兵藤和尊イジりも色々とヒドい。

中間管理録トネガワ1巻 兵藤和尊はおじいちゃん
(中間管理録トネガワ 1巻)
夜10時を過ぎるとウトウトとすぐ眠る。『カイジ』シリーズでは夜の場面も結構多かったよなーとか思いつつ、その眠りこける兵藤和尊を見た利根川は「おじいちゃん」呼ばわり。兵藤和尊に途端に親近感が湧いてしまう不思議。

中間管理録トネガワ2巻 兵藤和尊1
(中間管理録トネガワ 2巻)
インターネットでは、まさかのHIKAKINを観てたー!!YouTubeは幼児から老人まで愛される動画サイトです!

中間管理録トネガワ2巻 兵藤和尊のスキンケア
(中間管理録トネガワ 2巻)
そして、まさかの風呂あがりの顔パック!!夜10時には就寝してしまうジジイのくせに、OLばりのきめ細やかなスキンケア!!そりゃあ気持ちも若く保っていられます。

中間管理録トネガワ2巻 福岡出張1
(中間管理録トネガワ 2巻)
挙句の果てにヨガ。これ完全にOLですやん。丸の内や大手町を闊歩してる、バリバリのOLさんですやん。しかも部下である利根川に不安だから訊いてくるなんて、まさに律儀な女子ですやん。ちなみにこのクダリは「利根川が福岡出張へ行く」という話。福岡行の新幹線の中で兵藤和尊から電話があった。

中間管理録トネガワ2巻 福岡出張2
(中間管理録トネガワ 2巻)
ただそれ故にトンネルに入る度に電波が途絶えてしまう。最近はトンネルに入ってもケータイは繋がるそうですが、利根川が洒落っ気を出して「会長の腰痛が悪化して歩けなくなっても、私は一向に構いません。何故なら私が会長の杖の代わりになるからです」とボケようとする。

でもタイミングが悪く、前半部分の「会長の腰痛が悪化して歩けなくなっても、私は一向に構いません」で電波が切れてしまったもんだから、さあ大変。兵藤和尊的には「さっさと死んでくれ」と部下に言われたようなもんでブチ切れ。利根川は弁解しようにもトンネルの連続。東海道新幹線は割合的にトンネルの数は少ないそうですが…。

中間管理録トネガワ2巻 福岡出張3
(中間管理録トネガワ 2巻)
そしてトンネルを抜けて利根川は決死のリダイアルを繰り返すものの、兵藤和尊はまさかの着信拒否。メンタル女子かッッ!

トネガワだけではなくヒョウドウの意外な一面も見れるスピンオフ漫画となってます。


スタッフOBの反乱?

ラストは冒頭でも触れましたが、何故作者の数が多いのか。改めて見てみると、原作が荻原天晴、作画が橋本智広と三好智樹。内容を考えると、そこまでの人数を必要とするとは思えません。

中間管理職トネガワ 佐藤秀峰
(佐藤秀峰 Facebook)
そこで漫画家・佐藤秀峰のFacebookにヒントらしい投稿がありました。佐藤秀峰は福本伸行のアシスタントで血反吐を吐くぐらい酷使されていたことで有名らしい。

それによると「本家の作家さんのスタッフとOBスタッフが共謀し、編集部と本家作家さんを欺き作品を制作し、雑誌にまで掲載されてしまった」とのこと。つまり本家カイジで作画してたスタッフなんだから、そりゃあキャラはソックリだよねって話。いや、むしろスピンオフどころか本家本元ですやんということ。誰がOBなのか現役なのかは分かりませんが、少なくとも上記3名は「福本伸行の元スタッフ」であることが推察できます。

もちろん具体名は一切書かれていませんが、「現在連載中の有名漫画タイトルのスピンオフで、本物をさも完コピしてるのではないかと話題になっている」という内容を察すると、ほぼほぼ『カイジ』シリーズのスピンオフである『中間管理録トネガワ』以外に可能性としては低いのかなと自分は思ってます。

ただ、もし『中間管理録トネガワ』のことを指していると仮定してですが、佐藤秀峰の書いてあることに腑に落ちない部分もあります。それが福本伸行(本家の作家)が激怒しているとしたら、何故作品の許可を出しているのか?という点。これほど矛盾してることもありません。

中間管理録トネガワ1巻 描き下ろし パクリデザイン
(中間管理録トネガワ 1巻)
ましてや、福本伸行は1巻では『中間管理録トネガワ』の描き下ろし漫画を掲載してる。画像を少し説明しておくと、帝愛グループの新しいロゴデザインを考えようという流れで、会長・兵藤が提案したデザインがまさかの東京パクリンピック!!確かに「帝愛」は「T」ですけどね(笑)

そもそも福本伸行が激怒しているという事実が不明瞭。Facebookの投稿を読むと、佐藤秀峰は直接本人の作家から聞いた話ではなく、あくまで「本家の作家さんに近しい方」から聞いた又聞き話。佐藤秀峰がウソを付いてるとは思えませんが、どこまで信ぴょう性があるかは不明。

中間管理録トネガワ1巻 大人の判断 まさに福本伸行がそれ?
(中間管理録トネガワ 1巻)
仮に心情的には激怒してても人気が出ると儲けは福本伸行にも入るでしょうから、作中の表現を使うとまさに福本伸行の「大人の判断」ってヤツでしょうか。はてさて。


総合評価


『中間管理録トネガワ』の感想としては、カイジファンのみならず、世の中の少し社会的地位がある中高年サラリーマンも思わずクスッと来るような内容かも。ひたすら会社のために尽力するものの、それが一向に報われない利根川が悲哀に満ちあふれれて切ない。さすがに兵藤ほど理不尽な上司も少なそうですが、リアル社会の縮図が詰まってます。

ただ面白さとは反して、意外に制作現場周辺は『カイジ』さながらの謀略や打算がドロドロと渦巻いてそうな漫画です。「首謀者のOBスタッフに次の仕事の依頼が来ることはありません」と佐藤秀峰は語ってますが、荻原天晴、橋本智広、三好智樹に次の仕事は来るんでしょうか(゚A゚;)ザワザワ