『まりんこゆみ』1巻から4巻のネタバレ感想。「最前線」で配信中のギャグ漫画。作者は野上武志。原案はアナステーシア・モレノ。

このアナステーシアが元アメリカ海兵隊に所属していたそう。そこで当時のリアルエピソードが盛り込まれています。だからノンフィクション前提だと色々問題が生じるのか、作中では架空の国「アメリゴ」の設定にされてます。このレビュー記事ではややこしくなるだけなので、基本アメリカという前提で話を進めていきます。

ちなみに原案者・アナステーシアは今年7月に病気で亡くなっているそう。

あらすじ

主人公は南雲弓。元気だけが取り柄の女子高生…とはいっても、高校の卒業式を終えたばかり。しかしこれからの進路は全く決まっていないアンポンタン。

まりんこゆみ1巻 南雲弓
(1巻)
ただ夢はデッカく、まさかのアメリゴ合衆国の大統領(実際には外国出身の人間は大統領になれません)。そこで卒業旅行も兼ねてアメリゴへ行ったら、何故か海兵隊(マリーン)に入隊するハメに。果たして、南雲弓は海兵隊の過酷な訓練に耐えられるのか!?というストーリー。

まりんこゆみ1巻 リンダ・クロフォード
(1巻)
パイオツカイデーなリンダ・クロフォード、BL好きのドナキングなど個性的な仲間たちに囲まれ、基本的には和気あいあいとしたギャグ漫画。

だから漫画タイトルの『まりんこゆみ』は「マリーン娘(まりんこ)になった弓(ゆみ)ちゃん」という意味です。そのまんま。一応、南雲弓のことをアンポンタンと表現しましたが、のちのち日米の軍上層部同士の会談で通訳としての役目を担うことになります。お前天才だな+設定テキトーだな!っていう(笑)

海兵隊とは?

海兵隊は殴り込み部隊。しかもアメリカ大統領直属の部隊らしく、議会の承認を得ることをなく戦争に参加できる…もとい参加させられる。

例えば沖縄県に駐留してるアメリカ海兵隊は、イラク戦争に送り込まれてました。だから漫画内でもネタにされてますが、ちょくちょくアメリカ海兵隊が事件をよく起こして問題になります。戦地に送り込まれると極度のストレスに晒されて、いざ普通の生活に戻るとそういった反社会的に行動を取りがち。

まりんこゆみ3巻 女子隊員を狙う男たち
(3巻)
一応『まりんこゆみ』では主人公たちは女性キャラクターですが、実際にはとにかく女性隊員も少ない。どうしても悶々としたものが溜まりがち。実際どんなゴリラ女性でも絶世の美女に見えるとか。沖縄県に駐留してる海兵隊もプライベートではゲート2通りあたりで大爆発。結果その延長上で(略。これは日本の自衛隊でも言えますが、彼らが性犯罪に走るのも頷けます。後述しますが、訓練自体も理不尽。

マンガ内では「私の愛する海兵隊はこのようなヴァカは厳正に処分します!一人の兵のふるまいが日米同盟にかかわるんだ!」と書かれてありますが、実際は違います。そういったヴァカなアメリカ海兵隊は、その日米同盟で守られているのが現状でしょう。

理不尽な訓練に南雲弓は耐えられるのか!?

序盤は正式なアメリカ海兵隊員になるための訓練がメイン。いわば「ふるい落とし」。

まりんこゆみ2巻 トイレに行かせてください
(2巻)
訓練兵は何故か一日8Lの水を飲まされる。でもトイレになかなか行かせてもらえない。「トイレに行かせてください」と大声で何度も叫ばされて、膀胱がパンパンになるまで待ってから、ようやく許可をもらえる。戦場では呑気にトイレをしてるヒマがないから、ということ。特に女性にはキツイ。

まりんこゆみ2巻 武装して泳ぐ
(2巻)
武装した状態で泳がされるどころか、そこへ上官が水中から引っ張ってくる。日本だと海上保安庁の「海猿」が訓練でやってた記憶がありますが、これは女性ではなくても地獄。ライフル一丁だけでも3kgぐらいの重量があるそうですから。

まりんこゆみ2巻 ガス室
(2巻)
他にも催涙ガスが充満したガス室に、マスクも着用せずに入れられる。日本でも消防隊員が同じようにケムリに耐える訓練をやってた記憶。鼻づまりや涙が止まらない。画像は主人公・南雲弓が価値基準が壊れすぎて、訓練後に水で洗い流してスッキリしたのが快感で、更に涙を流してる場面。

まりんこゆみ2巻 銃剣
(2巻)
海兵隊員は前線へ送り込まれるとのことで、どんな訓練をしてるのかと思いきや、実は銃剣を扱ってみせたり意外に時代遅れっぽい一面も。

まりんこゆみ2巻 感動的な終わり方
(2巻)
とりあえずラストは感動的な感じで訓練は終了。晴れて正式にアメリカ海兵隊に所属することになります。全体的には、普段日本の自衛隊が行ってる訓練と変わらないのかなという印象。最近は自衛隊モノのマンガも多く、あくまでそれが「リアルな自衛隊」だと仮定したら…という話ですが。

例えば銃剣のクダリにしても、竹ヤリを持ってヤーと人形に突き刺してるのと同じで、マスコミがよく小バカにしてる北朝鮮と変わらない。「訓練のための訓練」という感じで、税金の無駄遣いっちゃ無駄遣い。ちなみに銃剣のクダリでは、主人公・南雲弓が跳ね返った人形に倒されます。弱ッ!(笑)

まりんこゆみ3巻 理不尽な仕打ち
(3巻)
まさに「THE理不尽」と呼べる訓練の数々で、果たしてただし正式な海兵隊員になったとしても、理不尽な仕打ちは変わりません。むしろ階級による違いが明確になって、良く言えばビシバシしごかれ、悪く言えば陰湿さがより増します。

まあ言っちゃ悪いですが、こんなんが日常的に横行してるんだから、軍人や海兵隊員、もっと言うなら警察官といった人たちに「まともなモラルや常識」が身についてるはずがないよなーと(笑)自分で命を絶っちゃう方も多いですが、精神的に弱かったからという理由で簡単には片付けられないでしょう。

アメリカ海兵隊あるある

まりんこゆみ2巻 トリビア
(2巻)
原案を考えてるアナステーシアは元海兵隊員ということで、トリビアが多め。多少大げさにネタっぽく書いてる部分もあるかも知れませんが、説明を読む限りは多分リアル。やはり女性は大変です。

海兵隊訓練所で支給されるメガネ(BCG)は耐久性が高く、かなり頑丈。でも別名が「避妊メガネ」。この理由はBCGをかけるとブサイクになるから男が寄ってこない。逆に海兵隊はそれだけ乱れてるってこと?(笑)

元武装偵察部隊のマーク・ハンクス三等准尉。現在は作戦部化学科に属するらしいんですが、何故か鼻が曲がってる。これは湾岸戦争時にパラシュート降下したものの、突風に煽られて1マイルも引きずられた結果。そういえば日本の自衛隊もパラシュート降下の訓練をしてますが、やはり戦争で人を殺すための訓練なんだなと。

沖縄県とアメリカ海兵隊

3巻4巻以降は「過酷な訓練が辛くてー(涙)」みたいなコメディータッチな展開が少なめ?現実に翻って考えてみると、どうしてもアメリカ海兵隊は沖縄県に駐留し続けています。だからそこに関する描写も増えて、政治色が強いとまでは言いませんが、キャラクターのドタバタっぷりは確実に減っている印象。

作中では「アメリカ海兵隊は沖縄県を守ってる」という主張が展開されてますが、理屈として説得力がない。まだ日本全体を守ってるという主張だったら分かりますが、特定の自治体だけを守る外国部隊がどこにあるのか?それに米兵の犯罪者は日本の警察が逮捕して、日本の裁判所が裁く権利がないわけです。

そもそも既に説明しましたが海兵隊「最前線へ送り込まれる部隊」にすぎない。しかも日本のためではなく、アメリカ大統領の理屈のみで動く。だからイラク戦争に派兵されてる。つまりアメリカ海兵隊は「何か」から「どこか」を守る組織ではなく、あくまで単なる攻撃部隊。

また沖縄県に駐留してる自衛隊に関する描写もあって、本土返還以来、彼らは肩身が狭かったそう。理由は沖縄戦(民間人を見捨てた日本軍)。でもそこに関する肝心の記述が乏しく、「昔の兵隊と今の兵隊は別」と言われても、唯一地上戦が展開された沖縄県民は納得しないでしょう。「沖縄県民斯ク戦ヘリ」と民間人にも戦うことを強要しておいて、だから沖縄県民の3分の1ぐらいは戦死してるわけで、何を言ってんのかなと。

こういう系統のマンガを描きたがる人の政治思想は何となく理解はできますが。米軍基地跡地に有害物質が大量に残されていたり、そういった負の側面を語らないと支持されにくい気もします。

(3巻)
そういえば沖縄にはアメリカの戦勝記念碑が建てられてるらしく、保守的な思想の方や保守政治家的にはオッケーなんでしょうか?たまに中国や韓国系の石碑がケシカラーンと圧力かける人たちがいますが。

総合評価

基本はコメディータッチ。女子キャラクターのセクシー描写も少し盛り込むことで悲惨さも軽減されてますが(画像は割愛)、まさに「理不尽」のオンパレード。レジーナ・デリンジャー二等軍曹は、トイレしてるだけで早く出ろよとドアをバンバン叩かれる。日本の自衛隊でも言えますが、いくら「国家を守る!」という美辞麗句を並べ立てても、まともな人材なんて集まらないよなーと。

1ページ完結型だから4コマより読みやすい。ストーリーものを描けないから4コマに走る人も多いんでしょうが、今後は1ページ完結タイプのマンガが増えそう。というか、個人的に増やして欲しいという意味を込めて、テンポ感は高評価に。そこそこ面白かったですが、価格は1000円とお高めなので全巻大人買いの評価は★3。

ちなみに『まりんこゆみ』最新5巻は来月11月11日に発売予定だそう。



◯展開★3◯テンポ★4.5
◯キャラ★4.5◯画力★3.5
◯全巻大人買い★3
◯おすすめ度…82点!!!!