『マルドゥック・スクランブル』全7巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大今良時(おおいま・よしとき)。冲方丁が原作の同名小説をコミカライズしたものらしい。掲載誌は別冊少年マガジン。出版社は講談社。ジャンルは少年コミックのSFハードボイルド漫画。そういえば作画・大今良時の『聲の形』も7巻で終わりましたが、この巻数に何かこだわりでもあるんでしょうか。

とりあえず面白いマンガかつまらないか全巻まとめて考察してみた。


マルドュックではない

ちなみに最初に確認しておくと『マルドュック』ではないということ。タイトルにも書いてますが、正式名は『マルドゥック』。ずっと「ゥ」ではなく「ュ」だと思ってたのは内緒。

でも『ゥ』って言いづらくね?プロデューサーをプロデゥーサーとは言わないし書かない。てか、それは「デ」の場合か。とにかく少し注意。


あらすじ物語・ストーリー内容

舞台はマルドゥック市。カジノが栄えるなど華やかな都市だったが貧富の格差は激しかったため、その煌々と輝く光が作る影も濃かった。

主人公はルーン=バロット。娼婦として働らかされていた不遇な少女。まさにマルドゥック市が作り出す大きな影の中に暮らしていた。主人公・バロットを娼婦として雇っていたのが、全てのカジノを統括するシェル。ストーリーはバロットがシェルに殺されたところから始まる。

シェルはこれまでバロット以外にも複数の少女を殺めてきたため、警察から内々で捜査を受けていた。このシェルの捜査にあたっているのが捜査官「イースター」と人語を話せるネズミ型万能兵器「ウフコック」。

そこでカギとなるのが、「マルドゥック・スクランブル-09(オーナイン)」という法律。これは人命保護のためであれば、科学技術の移植が特別に許可される。そしてバロットはこの法律が適用され、イースターたちに救われ何とか命を取り留めた。

しかしバロットは引き換えに金属繊維で作られた人工皮膚を移植されるなど、ありとあらゆる科学技術の粋が移植されてしまった。その結果身体能力は格段に向上し、電子機器をハッキングできる能力が備わるようになった。いわゆる武装化。

マルデゥックスクランブル1巻 ウフコックとバロット
(1巻)
更にはネズミ型兵器・ウフコックと合体して、バロットの戦闘能力が大幅にアップ。そしてバロットはシェルの犯罪を暴くため、ウフコックたちと共にコンビとして捜査に動く。

つまり漫画タイトルの意味は「マルドゥック・スクランブル-09」という法律そのものなんですが、正確にはこの法律が適用されて武装化した主人公・バロットのことを意味していると思います。


アクション描写がかっこいい

だからこの『マルドゥック・スクランブル』では、アクション描写が派手に展開される。大今良時はこれがデビュー作だったはずですが、マンガ初連載とは思えないぐらい何もかもが上手い。

マルデゥックスクランブル4巻 アクション描写
(4巻)
バロットは最新の科学や機械を移植されたことでかなり運動能力が向上したので、余裕でドンパチやっちゃう。その動きの描写が「漫画の基本」という感じで上手い。視線移動がリズミカル。

マルデゥックスクランブル2巻 アクション描写
(2巻)
でもキャラクター同士のバトルだけじゃなくて、こういう遠くから俯瞰したようなハリウッド映画ばりの大味で迫力がある描写も描ける。海の中に突き落とされたゴボゴボなっちゃう場面とか、かなり描くのは難しいと思いますが、それを難なくこなしてる大今良時。

マルデゥックスクランブル5巻 ポーカー・アクション描写
(5巻)
ただいかにもドンパチ的なアクションだけじゃなくて、ちょっとしたカジノの場面でもいかんなく実力が発揮されてる。途中からカジノ編が始まるんですが、ストーリーの重要な場面なので、そういったアクション風味な見せ方は読者を惹きつける。

テーマ性のあるストーリー

ストーリーもテーマ性があって良い。

マルデゥックスクランブル3巻 狂気のバロット
(3巻)
バロットは不憫な生活を強いられてきた。だから弱者の気持ちが分かるかと思いきや、むしろ手に入れた圧倒的な力に酔いしれる。そして人をあやめることに快感すら覚えてしまってる。

マルデゥックスクランブル3巻 苦しむウフコック
(3巻)
ただ、バロットの武器として変身し手助けしてるネズミ型兵器・ウフコックは逆。もう人を殺したくはない。「我々は殺さない我々は殺されない我々は殺させない」がモットー。そこで二人に対立や葛藤が芽生えて、徐々に離れていく。

マルデゥックスクランブル4巻 バロット変わる
(4巻)
でもそれじゃあダメだとバロットは改心。いくら荒んで希望がない街でも、人間として忘れちゃいけないことは忘れちゃいけない。残酷な現実の中に立ち向かっていく強さや大事さ、また希望はいずれ生まれるということを伝えたいのかなと思った。

一応ストーリーとしては、ウフコックの元相棒であるディムズデイル・ボイルドとのバトルに収束していく。そのボイルドはウフコックを使いまくって人をころしまくった元エリート軍人。その過去があるからこそウフコックは人をあやめたくないと考えてる。ちなみにボイルドもマルドゥック法で眠れない身体に改造されてる。

ラストはそのボイルドが主人公バロットにウフコックを使わせて、自分をあやさせようとするんですがバロットは頑なに拒否。バロットがボイルドに殺されそうになった瞬間、何故か銃が発射。ボイルドが死に至る。
マルデゥックスクランブル7巻 オチ
(7巻)
バロットが銃の引き金を見ると、そこには何もない。つまりウフコックが自分の意志でバロットをあやめる。そこでボイルドも眠りにつけた。ウフコック自身が最後のケジメをつけて、イヤな思いは全部自分だけ被り現在の相棒であるバロットの心も救う。

オチも上手いこと落ちてて良かった。スッキリとした気持ちの良い終わり方だった。


グロ描写が多く注意が必要

でも少し注意したいのがグロ描写。一応少年コミックの部類に入ると思いますが、それを考えるとなおさらグロ描写が多い。

マルデゥックスクランブル2巻 グロ
(2巻)
序盤の方で登場してくる誘拐屋はヒドかった。自分があやめた人間の体の一部分を自分に移植してるような連中。戦闘能力的には弱いんですが、モブキャラの息子の前で母親を…的なこととか胸くそ悪いことこの上なし。

ストーリーのメインの大ボスはシェル。ボイルドはそのシェルに雇われていた傭兵という存在。シェルは記憶喪失で記憶が長続きしない。むしろ意図的に記憶を消してる。でもシェルの母親はキレイで、寝る前にいつも頭をなでて自分のことを愛してくれたことだけは覚えてる。

ただ後半でシェルの生い立ちが明らかになるんですが、これが切なくてなんとも言えない。
マルデゥックスクランブル7巻 グロ
(7巻)
実はそれは真っ赤な大嘘で、巨体の汚らしいオバハンに毎晩抱かれただけ。

考えてみるまでもなく、主人公バロットの設定からしてエグい。オクトーバー社の重鎮が少女たちをはべらせてる場面もヤバイ。女性漫画家のくせに、よくこういうことを描けるよなーと感心する。正直「うぇっ」となる内容も多いので注意。


総合評価 評判 口コミ


『マルドゥック・スクランブル 全巻』のネタバレ感想をまとめると、意外に面白い。

とにかく大今良時の漫画家としての潜在力の高さが分かります。デビュー作のくせにクオリティーがムダに高い。構図やアクションといった見せ方は秀逸。一般的に女性は空間把握能力に劣ってるそうですが、そういった一般論を見事にかき消すぐらいアクション描写がスゴい。

ストーリー展開も沖方丁の原作小説を自分のもののように理解して作っている感じがします。もはや、この『マルドゥック・スクランブル』は一つの別個の作品として評価もできるでしょう。全7巻というボリュームを考えると全巻大人買いしやすい。

ただもう少し厳しく採点するなら爆発力みたいなんは欲しいか。あとグロも悪趣味なぐらい多すぎるので、そこは好みも別れるはず。