『恐之本』1巻のネタバレ感想。作者は高港基資。「恐怖体験」という雑誌などで掲載されてたホラー漫画。おそらく読者の体験談をベースにしてそう。1話完結のオムニバスということで「あらすじ」というものは基本的にありません。おそらく夏まっただ中。最新7巻も今月24日に発売されるということでレビュー。

墜落

一話完結のオムニバスということで、自分が個人的に震えた回を列挙してみます。

まずは「墜落」。飛び降りして命を絶つ人が多い名所で、冗談でカメラをぶら下げて投下する。それに撮影された映像を観た学生の話。
恐之本1巻 墜落2
この学生はその日から、上空から飛び降りる霊を頻繁に見るようになる。例えば、ボールを拾おうとした瞬間に影がフワッと見える。今までありそうでなかった、この発想力が意外に珍味で好きだった。

授業を受けてる最中に地面にビッチャンビッチャン色んな人間が落ちてくる。グロい描写なので画像は割愛。これが見えてるのは自分だけだから、この苦痛を誰とも共感できない。どんどん追い詰められた学生は…というオチはいかにもという最期。

顔を見るな

次は「顔を見るな」という話。男が大学の願書を出すために、ある場所で証明写真を撮影しようとしたものの先客がいて、寒空の下でずっと終わるのを待つ。ただ一向に出てくる気配がないので、しびれを切らしてカーテンをシャッ…誰もそこにはいなかった。

でも、そこで撮影した証明写真には年配女性の幽霊がガッツリ写ってた。その日から男は写真を撮影する度に、この年配女性の幽霊が映るようになる。
恐之本1巻 顔を見るな
従姉妹の結婚式の披露宴にもまさかの登場。ただ画像が小さくて見づらい。これには理由があって、写真に同時に写ってる人数が多いから。実は人数が減る度に、どんどん男の元に近づいてくる。

恐之本1巻 顔を見るな2
だから彼女と一緒に写った時には、年配女性の幽霊の顔がほぼ鮮明に写る。これ一人でいるときに写真を撮影したら、もっと言えば勝手に撮影されたらヤバイやん…
恐之本1巻 顔を見るな3
と思ったら、男の友達が冗談半分でカメラを向けてレンズを覗くと、男にしがみつく年配女性の幽霊が!Σ(゚∀゚ノ)ノキャー

実在する人間の方が恐怖?

幽霊や悪霊の類が多いのかと思いきや、ホラー漫画は実は「人間の怖さ」を描いてることも多い。それは『恐之本』というホラー漫画も同じ。

その中で個人的にエグいと思ったのが「指きりげんまん嘘ついたら」。ある女子大生の話。ストーカーが頻繁に手紙を送りつけてくるものの、その女子大生は全てスルー。あまりのしつこさに実家に戻る。

ただある日を境に、毎朝玄関先に肉片が落ちてるようになる。これなんなんだろうと父親が警察に、それらを持って行くとあることに気付く。全部をつなぎ合わせると「一本の指」だった。そして女子大生は叔父さんの学生アパートに逃げる。

そして何事も無く数ヶ月が経ち、そろそろ安心し始めた女子大生が寝起きのまま洗面台へ向かうと…
恐之本1巻 指きりげんまん
かつて見たのと同じ肉片がカガミにびっしり張り付いてる!ちょっと軽く蓮コラを思い出す。

恐之本1巻 指きりげんまん2
そして驚くヒマもなく、部屋の外でストーカーが窓ガラスを叩いて迫ってくる!Σ(゚∀゚ノ)ノキャー
このときの手を見ると指がない。

総合評価

ホラー漫画としてはなかなか悪くなかった。『恐之本』はあまり知名度が高くない気がしますが、想像したよりは引きこまれた。

恐之本1巻 安い車
「安い車」を読み終えた後だと、日産エルグランドの中古車とか買えねー!普通だったら車種名をごまかしそうなもんですがwでも怖い話ばかりではなく「地域共通夢」だと感動的なオチだったりする。

ただ3巻以降はやや展開というかオチが狙いすぎてる感じはした。この一線を超えちゃうとリアリティーなくなっちゃうよなーという話も多々。この1巻でも「駐在所」という話のオチだと、死んだはずの両親がゾンビとして復活して、息子がそれを平然と受け入れているという終わり方。その直前で終わってたらまだ怖いままだったんですが、下手にその先までバカ丁寧に書いちゃうと…。

作者・高港基資の展開の作り方がやや甘いと感じさせるのが、この1巻から他にも既にある。そこで前述のオススメした回を冷徹に分析してみると、実はツッコミどころが。

例えば「指きりげんまん嘘ついたら」だと、カガミに肉片を張り付けてるということは、ストーカーが部屋に入れたということ。だったら、再び何故部屋の外に出たのか?という疑問が湧きます。そもそも肉片をカガミに細かく張り付けるより、まず女子大生本人をおそえよという話。めちゃめちゃ周りくどいやん。「顔を見るな」だと、何故男が大人数でいると幽霊のオバハンが離れていくのか。ただの恥ずかしがり屋さん?w

内容はホラー漫画として悪くないものの、要所要所で見せる詰めの甘さやキレのなさは少し気になりました。読者を怖がらせようと欲をかきすぎなのかも知れない。変にツッコミどころを作ってしまうと却って怖くなくなる可能性も高くなる。

ただ怖い絵を描くのは上手いので、全体的にはやや採点は高めにしてみました。

恐之本 / 壱 (SGコミックス)
高港基資
少年画報社
2014-10-17


◯展開…★4◯テンポ…★5
◯キャラ…★3◯画力…★3.5
◯全巻大人買い…★4
◯おすすめ度…83点!!!!