『葛本さんちの四兄弟』全3巻のネタバレ感想。作者は木下聡志。ジャンプスクエア(集英社)で連載されてた超能力マンガ。

ただ3巻で終わったことからも分かるように、内容は陳腐以下。まさに「典型的な打ち切り漫画」だと思うので、一体何がダメだったのか理由を考察したいと思います。だから『葛本さんちの四兄弟』のレビューというより、マンガ作成の考察に近いかも。

新キャラクターを増殖させる理由

とにかく全てにおいて行き当たりばったりな漫画なんですが、その最たる例がキャラクターの増殖。

葛本さんちの四兄弟1巻キャラ増える2
(1巻)
タイトルから想像付くように、主人公たちは4兄弟。全員超能力者。でも二話目から思い出したかのように、新たに3姉妹が追加される。だったら最初から七兄妹とかにしとけや。まさに、行き当たりばったり。しかもみんな名前が覚えづらくて、とにかく萎える。

じゃあ何故、ついつい新キャラを増やしてしまうかと言えば、作者に『話の展開力』が圧倒的に不足してるから。展開させることができないから、新キャラを登場させてページを埋める。要するに安直な逃げ。他のマンガでも、何でいきなりコイツが登場したの?と分からないことが結構ありますが、まさにそんな状態。

ましてや展開力がないのに、どんどん新キャラクター・設定を追加させたらどうなるか?答えとしては、ストーリーの収拾がつかなくなる。仮に連載が少し長引いたとしても、あとあとの展開でいろいろ帳尻合わせができなくなって、結果マンガの寿命(打ち切り)を早めるだけ。

スランプに陥ったら簡単な逃げ道に流れたくなる気持ちも分かりますが、しっかり展開で苦悩することが実力を高めるはず。そもそも3巻4巻のボリュームで内容に挫折してるような漫画家は、自分の中の引き出しの数が圧倒的に少なすぎる。

タイトル=目的・方向性

またタイトルからして、読者を惹きつける要素が乏しい。

四兄弟だから何?ということに率直に尽きる。せめて9兄弟ぐらいだったら、大家族ものとして期待できそうですが、絶妙に中途半端。おそらく周りでも探せば、半径3キロ以内に1世帯ぐらい存在するレベル。そんなんをアピールして何になるの?タイトルだけを見てこれからどんな風に展開していくか、読者の誰一人も見当が付かないはず。

改めて、このマンガの設定を軽く説明しておくと、4人兄妹全員が超能力を使える。だったら、「超能力」というテーマをタイトルに盛り込めよって感じ。マンガの売りになるとしたら、まずそこやん。例えば「葛本4兄弟の超能力的日常」みたいなタイトルだったら、ラノベ風だし世界観も伝わってくる。どんな展開が繰り広げられるマンガかも、良い意味で予想できる。

敢えて参考にするなら、例えば『宇宙兄弟』。おそらく読者の大半は、宇宙飛行士の兄弟の話だと直感できる。他にもラノベ風に新たに作るなら、『葛本兄弟の因縁』もアリかも知れない。仲の悪い兄弟がバチバチ戦っていくマンガか、サスペンス風の展開が繰り広げられるのかもと容易に想像が付く。

だからタイトルを付けてる時点から、作者はビックリするぐらい何も考えてないことが分かる。

画力は月並みに見えますが…

マンガのテーマやキャラクターの多さ以外でも、気になったのが画力。一見すると月並みな画力に思えるんですが、描き慣れてない絵では下手くそさを一気に露呈。

葛本さんちの四兄弟1巻不自然な手
(1巻)
例えば主人公が必殺技を繰り出す場面ですが指なっが!

関節が5個ぐらいありそうで、ちょっとした心霊写真。また必殺技を繰り出す右手を左手で掴んで支えてるんですが、掴んでる感じが全然表現できてない。絶妙にヘタクソ。それまでの人生で好きな絵しか描いてこなかったタイプ。もし漫画家を目指すなら、嫌いな絵や苦手な絵でも逃げずに頑張って練習すべきという好例。

総合評価

ここまで何も考えてない漫画も珍しい。

葛本さんちの四兄弟1巻ケータイ
(1巻)
例えば忍者の敵が、何故かケータイを使用。この無意味なミスマッチ感。忍者だったら手紙とか使えよ。ケータイをわざわざ使うなら、もはや見た目が忍者である必要がないやん。マサイ族がケータイを華麗に使いこなしてるぐらいに意味不明。

葛本さんちの四兄弟3巻作者あとがき
(3巻)
作者がラストのあとがきで自白してますが、まさに見切り発車感がハンパない。「次はもっとちゃんと考えて漫画描く努力をします」というセリフには思わず笑っちゃった。そもそも何故デビューさせたんだ!?レベル?

もしこれからプロマンガ家を目指す人は『反面教師』として読んでみるのもアリ。どうしても面白い漫画だけを参考にしがちでしょうが、それより自分のレベルに近い打ち切り漫画を読んだ方が経験値がアップするかも。一体何をしたらダメなのか、また自分に何が足りないのかが現実感を持って体得できそう。

ただ改めてになりますが、もし漫画家になるのであれば、序盤に用意した数人のキャラクターで2巻3巻分ぐらいを余裕で消化できる『話の展開力』が欲しい。最低限それが備わってないと、いくら新キャラで突貫工事しようがすぐ潰れてしまう気がする。もし付け焼刃的な対応を取らざるを得なくなった場合、その時に自分に足りない「モノ」が何であるかは明白でしょう。


◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★2
◯70点!!!!