『刻刻』全8巻のネタバレ感想をレビュー。作者は堀尾省太。掲載誌はモーニング・ツー。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックのSFサスペンス漫画。ちなみにマンガタイトルは「刻々」ではありません。自分も何度か間違えたことは内緒。

刻刻が面白いかつまらないマンガを考察してみた


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公たちは、どこにでもある平凡な家庭・佑河(ゆかわ)家の面々。そこへ突如としてカルト宗教団体・真純実愛会の魔の手が迫り、甥っ子・真がさらわれる。

ただ祖父がまさか時間を止めて、一家総出で真純実愛会を追い詰めるという展開。最初はちょっとよく分からん漫画ですが、とにかく時間を止める能力「止界術(しかいじゅつ)」を巡る攻防が起きる。


描写力が謎の世界観を構築

刻刻2巻 止界に留めるクラゲ
(3巻)
止界術を発動してる最中に動けるのは、クラゲと呼ばれる思念体が身体の中に留まってる者のみ。このクラゲが身体の中から離れると、自分の身体も止まってしまう。このクラゲの描写がスゴい。

刻刻3巻 カスリニ
(3巻)
そして止界術の空間を支配してるのが、カスリニ(神ノ離忍)と呼ばれる謎の存在。この描写も緻密で、リアルにこんな奴が存在してそうな佇まい。

刻刻6巻 止界から追い出す石
(6巻)
止界術では全ての流れや動きが止まるので、物体は落ちることなくその位置に留まり続ける。宇宙空間ではないですが、手抜き感や隙が一切なく描かれてて、「時間が止まった世界」を見事に表現してる。


日常生活で展開される緊迫感

時間を止めるというSF要素を組み込むと、どうしても仰々しい派手な設定を求めがち。いかにも有り得ない異世界へ突入してみたりとか、世界観を意味もなく広く見せたがる。

ただ『刻刻』では、まさに半径1km2kmの日常生活の範囲内でストーリーが展開。GANTZの中盤ぐらいまでに世界観はやや似てる。
刻刻7巻 日常生活で展開
(7巻)
佐河という真純実愛会の教祖がラスボスなんですが、どっかの家の子供部屋で対峙した場面はヤバい。誰しもが見慣れた空間だからこそ、強烈な違和感を残してくれる。

もちろん一方では時間が止まってると言っても、飯を食わないとお腹が減る。
刻刻6巻 日常生活で展開するシュールな光景
(6巻)
どこぞの一家団欒の風景に溶け込む、二人のカルト信者たちという光景はまさにシュール。ご飯を食べてる家族の一瞬を切り取った感が絶妙で、ムダすぎる描写力はこういうところでも生きてる。

嫌なリアリティーしか無い。


テンポ感は悪くない

ただ緻密に描写しがちな漫画の傾向として、そこばかりに集中しすぎて展開にテンポ感がなかったりする。でもこの『刻刻』は一つ一つのセリフなどにムダがなくて、そこそこテンポ感がある展開。全8巻という手頃なボリュームも手伝って結構サラッと読めた。

刻刻6巻 佐河と潮見のテンポ感ある心理描写
(6巻)
例えばキャラクターの心理描写にムダがない。またセリフもコマにギューッと詰め込まず、ちゃんと会話のラリーになってて、視線移動が楽。

刻刻6巻 コマ割りのテンポ感
(6巻)
またコマ割り一つでも映像的で、ポンポンと勝手に視線が移動してくれて展開にのめり込む。


不可解な世界観を受け入れるワケ

意味が分からない漫画。最初から全く説明なしで、いきなり本題に入る。知らん情報がバンバン登場する。ただその割に、そんな不可解な世界観をすんなり受け入れられる。

その理由は、ストーリーに一本の大きな軸・テーマがあるから。手塚治虫も言ってますが、細かく枝葉だけが分かれてるだけで、本筋が見えない漫画はダメ。

この『刻刻』は、「時間を止める(止界術)」という大きなテーマが根底にある。だから小難しくて造語がムダに多いにも関わらず、読みやすい漫画だった理由はそこ。

また敵の真純実愛会には、間島という女がいる。その間島は昔、止界術に家族が飲まれて離れ離れになる。ただ間島の家族は実は止界術の中で生きてて、
刻刻4巻 数十年ぶりに兄と遭遇する間島
(4巻)
それが十何年かぶりに遭遇するみたいなドラマチックな展開もあって、「止界術」という設定を最大限拡張して、最小限コンパクトにまとめてある。場所や舞台もコロコロと場面転換を行わないので、意味のない膨らみもなくプロットとしては実にキレイにまとまってある。


総合評価・評判・口コミ


『刻刻』のネタバレ感想をまとめると、何とも言えない面白さがありました。個人的には今まで出会ったことがない漫画。「時間を止める」というテーマ一つで、ここまで世界観を作り上げた漫画はかつてないでしょう。

どうしても平凡な漫画家だと、最初の方かラストの方で後付け的に言葉で説明しがち。でも漫画を読み進めるだけで、『刻刻』はちゃんと頭に残る。ストーリーにしっかり溶け込ませる凄さ。

オチも意外や意外にハッピーエンド。やや拍子抜けしたものの、そこまで読後感は悪くなく余韻が残って面白かった。間島が潮見に放ったセリフに説得力があって、それなりには納得。風呂敷を少し広げすぎた感もあったので、それを考えるとキレイにはまとまった。今頃、佐河は何を思ってるのかニマニマ。

刻刻4巻 樹里 アクション描写
(4巻)
地味にアクション描写も多いので、きっと実写映画など映像化しても面白いはず。

漫画でもここまで人間の想像や空想を表現できるんだという驚きと、今までにありそうでなかった新しい価値観を提供してくれた。『刻刻』は死ぬまでに一度は読んでおいて損はしない面白い漫画。