『告白 ~コンフェッション~』のネタバレ感想。原作は福本伸行、作画はかわぐちかいじ。ヤングマガジンアッパーズ(講談社)で連載されてたサスペンス漫画。原案(ネーム?)を福本伸行が考えたということでハラハラさせる展開になってます。

あらすじ

主人公は浅井。元J大学の山岳部で、現在は普通の社会人。その浅井が親友の石倉という同じ山岳部OBと共に、尾張の冬山登山するも遭難。

ただ親友の石倉は滑落で足を骨折し、瀕死の重傷。そこで必死に介抱してくれる浅井に対して、唐突な告白をする石倉。
告白 コンフェッション2 石倉の告白
それが同じく山岳部にいた、西田さゆりという女性を殺害したという過去。自分に命の危機が迫った状況だからこそ生まれた、心の底からの懺悔(ざんげ)。良心の呵責に苛まれていた石倉は、そこで初めて背負っていた十字架を降ろした。言っちゃえば単なる逃げですが。

ただ幸か不幸か、荒れていた天候がピタッとそこで止む。そして晴れ間から覗いた光の先に一軒の山小屋を見つける二人。
告白 コンフェッション3 石倉の殺意
でも喜び勇むのは浅井だけで、それに背負われた石倉の表情は一種思い詰めた表情。そうこのまま無事帰還してしまえば、石倉が犯した過ちを浅井が誰かにバラすかも知れない。石倉は秘密を守り通すために浅井を!?

冬山という究極の極寒の状況で生まれる福本伸行的サスペンスが待ってる。

主人公 浅井の被害妄想?

最初は石倉の殺意に気が付かない浅井。その二人のギャップ感は、先程貼った画像が如実に現してるはず。ただ石倉の不自然な言動を見るにつけ、徐々に疑心暗鬼に陥っていく浅井。

例えば、山小屋にあった電話が繋がってたので助けを求める石倉。
告白 コンフェッション6 浅井の疑心暗鬼
ただ石倉が警察か消防に通報した時、何故か「山小屋には一人だけしかいない」と通報してる。そこで浅井は「救助が来る時には山小屋の中一人になってる?つまり俺を…」みたいな発想を抱く。実際そうとしか思えない。

告白 コンフェッション8 浅井の疑心暗鬼
石倉が自分の背後に立っただけで心臓が止まりそうなぐらいビビる。普通生活しててもヌッと背後から誰か現れるとビビりますが、そんな比じゃないんでしょうね。

ただ自分が石倉に狙われてるというのは妄想?勘違い?と浅井は思うようになる。何故なら浅井を襲ってくる気配が一向に無いから。例えば前述の画像でも浅井をヤろうと思えばできたはず。チャンスという意味ではいくらでもあった。

そして安心しきった浅井は、置いてきたザックを取りに戻るため小屋を出ていく。ただ途中で酸素不足からか目眩がしたので、予定よりも速く小屋に戻ろうとする。そこでもしかしたら今一人でいる石倉が変なことを企んでいるかも…という考えに至る。

そこで窓からこっそり石倉の様子を覗こうとするんですが…
告白 コンフェッション10 石倉の優しさは実は…
逆に浅井はその様子を石倉に覗かれてた。そこで再び安心する浅井。何故なら「ずっと俺の帰りを心配して待っててくれてたんだ」と浅井は考えたから。

鬼気迫るどんでん返しの連続

ただその画像だと位置的に石倉のポジションがおかしい。もし浅井の帰りを待っていたとしたら、別に正面の立ち位置で待ってたらいい。実際、石倉は浅井に不意打ちするために、あんな場所で待ってた。でも予想外に早く浅いが帰ってきたので、敢えて心配して待っているふりをしただけ。

じゃあ何故石倉が浅井を襲わないかと言えば、冒頭でも書きましたが足に怪我を負ってる。骨折しただけではなく、凍傷で左足が完全に腐ってる状態。だから「確実に確実に…」という冷静沈着さが、浅井に対するすぐさまの凶行を留めてただけ。

そして、ようやく浅井は石倉が自分を襲ってこないワケに気付く。ここから徐々に展開は加速。

告白 コンフェッション11 高山病にかかる浅井
浅井が高山病にかかって、視力が一時的に低下。先ほどの小屋に戻ろうとした目眩は、まさにその兆候だった。つまり、このことが意味するのは「石倉の左足が動かないハンディキャップ」がなくなったということ。

石倉に気付かれるとガチでヤバいんですが、当然石倉は浅井の異変に気付く。
告白 コンフェッション12 迫ってくる石倉
そして安心しきって襲ってくる石倉の鬼気迫る表情がヤバい。この揺らめくライトがヤバい。片足を動かせないから大げさな動きになる。それだけ必死に追いかけてくる様が表現できてる。

これ以上書くとネタバレがすぎると思うので割愛しますが、この限られた密室内での展開の作り方が上手い。安心→ピンチ→安心→ピンチの連続にハラハラドキドキ。二人のヒリヒリした駆け引きに思わず手に汗握る。福本伸行マジック。そして、オチはまさかの結末を迎える。

告白 コンフェッション13 この言葉の意味
コミックの1ページ目に載ってる「聞いてしまったあいつが悪いのだ…」という言葉の意味の真相が分かる。実はこれは石倉のセリフではなかった。オチへの仕掛けが憎い。

総合評価

『告白 ~コンフェッション~』の一巻完結のコミックですが、ストーリーはテンポ良く読めて面白かった。この記事をレビューするために再び読み直したんですが、何回読んでも読み応えがあった。タイトルの意味や伏線が最後のオチで繋がった時の後味の悪さは最高。

おそらく福本伸行の絵柄ではここまで緊迫感は演出できていなかったはず。かわぐちかいじならではの空気感かも。もしかすると福本伸行は原作者の方が向いてるのかも知れない。とはいえ、福本伸行ファンではなくても一度は読んでおきたいサスペンス漫画。





◯展開…★5◯テンポ…★5
◯キャラ…★3.5◯画力…★3.5
◯大人買い…★5
◯おすすめ度…90点!!!!