『恋は雨上がりのように』1巻から4巻のネタバレ感想をレビュー。作者は眉月じゅん。掲載誌は月刊!スピリッツ。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックの恋愛青春漫画。とりあえず面白いか面白くないかを考察してみた。


恋は雨上がりのように あらすじ物語・ストーリー内容

橘あきらは17歳の高校二年生。高身長で美人。あるファミレスでアルバイトしていたが、そのファミレスの雇われ店長・近藤正巳(45歳)のことが好きだった。近藤正巳は加齢臭を漂わせ、頭には10円ハゲ。これほど「不釣り合い」という表現は似合う二人はいない。

じゃあ何故、美人女子高生・橘あきらが中年のオッサン・近藤正巳に恋心を抱くようになったか?

半年ほど前にケガで陸上部を引退することになった橘あきら。特にすることもなく学校から帰宅していると雨。雨宿りのためにふと立ち寄ったファミレス。ボーッと雨が止むのを待っていた。
恋は雨上がりのように1巻 好きになるキッカケ
(恋は雨上がりのように 1巻)
そこで当時から店長だった近藤正巳が現れて、「ただ雨が止むのを待っているだけじゃつまらないでしょう」とコーヒーをサービスしてくれる。小粋な手品を見せてミルクのコーヒーフレッシュをだして、「きっとすぐ止みますよ」と笑顔で去っていく。橘あきらがそのコーヒーを飲み終えて店を出る頃には、雨が止んで太陽が顔を覗かせていた。

近藤正巳の優しさだけではなく、ちょっとした手品が自分の心を象徴する雨を止ませた魔法のように写り、橘あきらの中に恋心やトキメキが芽生えた。まさに恋は雨上がりのように、突然訪れた。

恋は雨上がりのように1巻 橘あきらの視線光線
(恋は雨上がりのように 1巻)
ただ橘あきらは基本的に無表情。いわゆるクールビューティー。視線で店長に「好き」ということをアピールしてみるものの、近藤正巳は思わず「そんなに睨まないでくれよ」と一言。心の中では「まるでゴミでも見るような目だったな…」と半泣き状態。

果たして、正反対の二人の恋愛は成就するのか、この恋はどういう結末を迎えるのか…みたいな展開。


橘あきらが可愛い・かわいい

この漫画のヒロインである、橘あきらが可愛い。個人的にモデル体型の長身美人が好きだってのもありますが、これぞツンデレ!っていうキャラクター。作者・眉月じゅんが意図して、橘あきらをそういったキャラに仕立てたかは分かりませんが。

店長・近藤が飼ってるハムスターの話題で、ある日、店内が盛り上がる。いつもはスルーされがちな店長も、この時ばかりは話題の中心。それを見て橘あきらが嫉妬心を抱く。
恋は雨上がりのように3巻 橘あきらの嫉妬
(恋は雨上がりのように 3巻)
そして、「これからハムスターのことは、全部あたしに聞いて下さい」とキリリッ。橘あきらの心情としては、それだけみんなと盛り上がれるなら、私とだけワイワイお話しましょうよ的なこと。店長と接点を持ちたいあまりに…ってことですが、逆にハムスター知識にどんだけ自信があんねんと言いたくなります。

この直後のページに橘あきらのテレ顔が来るのも良いです。「わ、わたし、めっちゃ大胆なこと言うたやん」的なことだと思われます。

恋は雨上がりのように2巻 顔が近い橘あきら
(恋は雨上がりのように 2巻)
店長・近藤をジッと見つめすぎるあまり、気が付くとあと10cm程度まで近付く。田舎のドヤンキーか。

恋は雨上がりのように1巻 橘あきらのツンデレ
(恋は雨上がりのように 1巻)
不意に後ろから店長・近藤が現れた場面では、ビックリしつつも自分の嬉しい表情を隠すために、思わずコブシを握りしめる橘あきら。近藤は「なぐられんのか?」と心の中でドキドキ。何故、橘あきらが嬉しい表情を浮かべたかというと、店長がバツイチだったという事実と今まで知らなかった店長の新たな一面を知れたことに対する喜びからだと思われます。

橘あきらの「純粋一途だけど、不器用」っていう残念すぎる感じが上手に表現されてます。2巻だと橘あきらの無表情がほぼ4コマ連続で続くんですが、5コマ目で照れ顔が来る。そこにハッキリと店長の存在は描かれないものの、明らかに「いた」ことが分かります。

強引な押しのおかげもあって、あるとき店長とデートすることが決まる。今時の女子高生には珍しく(?)、その予定を手帳に書き込む。
恋は雨上がりのように2巻 橘あきらのリアクション
(恋は雨上がりのように 2巻)
そして橘あきらは家で一人でいる時に、それをマジマジ見ながら噛みしめるように喜ぶ仕草も可愛らしい。「家の中」という究極のプライベート空間で、これが描かれてるのがまた良いんだと思います。

橘あきらが店長をデートに誘うクダリ。店長・近藤は普段「俺」が一人称なんですが、その時だけ「僕は…」という一人称を使う。
恋は雨上がりのように2巻 橘あきらの笑顔
(恋は雨上がりのように 2巻)
それを聞いた橘あきらは無邪気に笑う表情が可愛らしい。いつも店長のことを見てるからこそ、すぐ気付けた変化でもあります。ギャップ感にツボったのもあるんでしょうが、好きな人相手だからこそ笑いのハードルが下がるってのもあります。

あらすじでも触れましたが、橘あきらは陸上部をケガで引退した。アキレス腱が断裂したのか、大きな手術跡がある。バイト中にちょっとしたことで痛みが再発。店長に病院に連れて行ってもらう。
恋は雨上がりのように1巻 ペディキュア1
(恋は雨上がりのように 2巻)
でも店長に傷を見られたくないのか、靴下を脱ぎたがらない橘あきらが可愛い。実際には、足の爪にペデュキュアを塗ってなかったのが理由。どこで乙女心、炸裂させてんねん。

どうしてもツンデレキャラクターはセリフを使って肉付けしがちですが、橘あきらはセリフに頼らず仕草だけでしっかり表現されてます。巷のツンデレキャラは多くが病的。それが笑いに繋がっても、肝心の萌えとは程遠いのが現状。でも橘あきらは自然。不器用だけど真っ直ぐで一途な恋心に、素直に好感が持てます。


オッサン店長・近藤のもどかしさに共感?

近藤というオッサン店長が切ない。美人の女子高生にグイグイ言い寄られてくるものの、もちろん世間的・法的な理由から拒む。

ただ3巻だと「なんだか うれしいと感じることが増えた気がする…俺自身、何も変わってないのに」といったセリフからも分かりますが、内心はグラグラと揺れる。もちろん性的な理由ではなく、橘あきらと接する度に過去の青春時代がどんどん蘇ってくる。

店長・近藤正巳はデートまでしてますが、一線を越えるという踏ん切りが付かない。この理由は、言い寄ってくる橘あきらに対して、2巻の「僕はカラッポの中年だ」と返したセリフからも分かりますが、店長・近藤の自信の無さにある。

近藤は小説家の夢があったものの挫折。しかも大学時代の旧友(九条ちひろ)は小説家として大成功してるので、なおさら現実という壁に打ちのめされてる。妻とは離婚してることも含めて、案外強いコンプレックスを内心で抱えてる。だからこそ、いきなり「美人女子高生に好かれる」という事実を目の前にしても、途中で夢を放り投げたオッサンが大胆な行動を取れるはずがない。

でも、意外に世の中はこんなオッサンが多いはず。むしろ「一般的な中年男性は自信を持ってない」とまで言ってもいいぐらいなんです。だからこそ情けないオッサン・近藤に対して、羨ましさ以上に一種の共感を芽生える中年読者も多そう。

恋は雨上がりのように4巻 近藤正巳の青春
(恋は雨上がりのように 4巻)
「近藤正巳」の中の色あせたノスタルジーが「橘あきら」という触媒を通して、グングンと色鮮やかに発色していく。みずみずしい若さが、中年店長をグイグイと無遠慮に引っ張っていく。橘あきらの猪突猛進っぷりも含めて、若者の良さは肉体の張りとかじゃない。

個人的に女子高生はいろいろとアレなので、女子大生ぐらいをお願いしたいところですが(*´Д`)ハァハァ


恋は雨上がりのように 総合評価 評判 口コミ


『恋は雨上がりのように』は設定的にロリ向けっぽいと感じる女性読者もいそうですが、むしろ実は甘酸っぱい青春要素が強い。橘あきらはキャラクターだけ見ても面白いですが、彼女の不器用だけど一直線な性格が近藤の、また読者の過去の青春時代を想起させる道具にきっちり仕上がってる。

「恋愛に踏み出せない=夢に踏み出せない」ことが上手くリンクできてて、「あんときはこうしとけばよかった…」と後悔が湧き上がると同時に、「中年でも今から頑張っても良くね?」と同時にポジティブに前向きになれるような内容でもあります。もちろん近藤はすぐハッキリと前向きになるわけではありませんが、何ともいえないウジウジ感やグジグジ感がまた青春っぽくて良かったりします。

一般的に「若者と接すると精神的に気持ちが若くなる」と言われますが、まさにその言葉を体現させたような青春漫画です。つまらないってことはありません。

ちなみに『恋は雨上がりのように』は2018年3月に完結済み。もし興味がある方は「恋は雨上がりのように 最終回・最終話 ネタバレ感想まとめ」を参照してください。ネタバレが嫌いな方はスルー推奨。店長と橘あきらは果たして付き合うことはできたのか?