『聲の形(こえのかたち)』全7巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大今良時。掲載誌は少年マガジン。出版社は講談社。で連載してた漫画。最近どうやら劇場アニメ化が決まったらしい。FC2の「すごないマンガがすごい」では5巻までレビューしてたんですが、この記事では一気に全巻まとめて面白いかつまらないか考察してみた。

ちなみに漫画タイトルは「声の形」ではありません。何故こんな難しい方の漢字にしたのか分かりませんが改めて「声の形」ではありません。でも普通だと「声の形」で検索しちゃうよね?(笑)


あらすじ物語・ストーリー内容

聲の形1巻 石田将也
(1巻)
主人公はノリだけで生きる小学生・石田将也。退屈だけが最大の敵。ただ島田や広瀬といった親友と少しギクシャクしがちでモヤモヤしていた。そんなある日、転校生がやってくる。

聲の形1巻 西宮硝子
(1巻)
それが西宮硝子という耳が聞こえない女の子。いわゆる佐村河内のガチバージョン。そして石田将也的には「これで退屈な日々が終わる」とガッツポーズ。西宮が付けている補聴器を壊したり、クラスメイト全員を巻き込んで石田は壮絶なイジメを始める。

1巻の多くはそれに費やされるんですが結局イジメが発覚して問題になって、最終的に石田将也が一人で全部責任を背負わされる。そしてイジメの標的が西宮硝子から石田将也へ移ってしまう。まさに自業自得。ただ西宮は転校してしまって、石田へのイジメはずっと高校生になるまで続いた。

その頃の石田は誰も信用できない。周囲の人間に対して、顔にバツマークが付くようになった。それだけ最初から誰とも仲良くならないように防衛本能が無意識的に働いた。もちろんキッカケは自分が始めた西宮へのイジメ。

この不合理をぶつける相手は誰もおらず、石田は自責の念だけが膨らみ人生に絶望。自分の命を断つことを決意。そして最後に西宮硝子にだけは謝罪しようと決意。ただいざ西宮硝子を目の前にしてしまうと、自分が行った過去のイジメが走馬灯のように蘇って、「このまま逝ってはダメだ、まだまだ自分には罰が足りない」と思い至る。

聲の形2巻 罰が足りない
(2巻)
そして贖罪の意味も兼ねて、西宮硝子と友達になって再び自分の人生に向き合う…みたいなストーリー。


健気すぎる西宮硝子に胸が詰まる

ヒロイン・西宮硝子がとにかく健気。イジメられても、自分が障害者でも、常に笑顔で気丈に振る舞おうとする。石田将也が代わりにイジメられた時も、落書きされた石田将也の机を朝一番に登校して消してあげてた。

聲の形7巻 西宮硝子の表情
(7巻)
ルックスというか表情や仕草が可愛らしい。喋れない分だけ、リアクションが比較的分かりやすい。作者・大今良時の画力のなせるワザなんでしょうが、それがまた更に西宮硝子の健気さを強調してくれる。

聲の形6巻 西宮硝子の表情
(6巻)
基本的にイジメられてても明るく振る舞う西宮硝子ですが、やっぱり精神的にはズタボロ。この時の切実な表情が胸をエグリます。手話とセットというのがまた良い。

聲の形6巻 西宮硝子の世界
(6巻)
考えてみると、西宮硝子が生きてる世界はこんな世界。周りがいくら楽しそうに喋っていても、その内容まではハッキリ聞き取れない。普通なら書いちゃいけないよね?みたいな部分まで意外に踏み込んでエグるように描写されてる。

聲の形5巻 不幸を全部背負い込む
(5巻)
また石田将也へイジメの標的が移った時も罪悪感を感じてたのか、石田将也が西宮硝子へ謝罪したかったように、西宮硝子も実は石田将也へ謝罪したかった。落書きされた石田将也の机を毎日のように拭いてあげてたのも、その現れ。画像は自主制作映画を作ろうとしてたものの、植野や永束、川井、佐原などと仲違いした直後の場面。

西宮硝子は自分が障害者であることも含めて、全部の不幸を自分で背負いたがる節がある。逆に障害者であるが故に、そこに周りが上手く行かないことの原因を求めたがる節がある。西宮硝子的には、別に罰やお仕置きを望んでない。ひたすら周りやみんなが幸せになったら、それでいいと思ってる感じの、ホンマにええ娘。

母親は変にプライドがあって手話を覚えようとしなかったり、西宮硝子の周囲には自分の意志を伝えられる人が少なかった。結果的にイジメっ子だった石田将也が、その役割を担うことになります。

聲の形7巻 再び生きようとする二人
(7巻)
そして石田将也が西宮硝子を導くカタチで、二人は再び生きようと人生を前向きに捉えるストーリー。というかオチ。基本的には暗いっちゃ暗い(胸が切なくなるっちゃ切なくなる)マンガなんですが、一応最後の結末はポジティブなオチを迎えて完結します。


クズキャラも実は良い人?

逆に西宮硝子以外のキャラクターは、マジでクズみたいなんが多い。

ストーリーを少しネタバレしておくと西宮硝子は全てに悲観して、5巻6巻のちょうど間にマンションから飛び降りようとする。結果的に石田将也が助けてくれるものの、石田将也が逆にマンションから落ちて意識不明の状態がしばらく続く。

植野という情緒不安定丸出しの勝ち気な女の子は、石田将也のことが大好き。だから西宮硝子が直接突き落としたわけではないとはいえ、やはり西宮硝子のことを許せない。

そこで植野は「悲劇のヒロインやるなら自分の尻をぬぐってからにしろよ!」と思いっきり西宮を殴る。障害者相手でも別け隔てなく接してるという好意的な解釈もできますが、さすがにコイツの場合は度が過ぎてる。それ以前から特に石田将也に対しては感情表現が下手クソなので、見てるコッチがひたすらイライラ。

最終的に植野は西宮硝子の母親と取っ組み合いのケンカをするんですが、この西宮硝子の母親もなかなか勝ち気。ツンケンしまくり。でもその理由は4巻で、西宮の亡くなった祖母が明らかにしてくれる。

西宮硝子は産まれたときから耳が聞こえない。そこで父親の両親たちが罵詈雑言。「ダマサれたんだよ。君がこんな子を産むなんて聞いてない」「因果応報。硝子が前世で悪いことをしたに違いない」「親子揃って世間知らず」とか、よくこんなセリフを思いつくよなーと感心するほど。

聲の形4巻 西宮硝子の母親の表情
(4巻)
このときの西宮硝子の母親の怒りと呆れと悔しさに満ちた、なんとも言えない表情に胸がエグられます。

他にもイジメが発生した時の担任も、なかなかのクズ。1巻では西宮硝子が耳が聞こえない理由を石田将也が「耳にお経を書き忘れたんだよ」と冗談で答えたことに対して、思わず吹き出す。口ではそれっぽい注意をするものの、内心では西宮硝子のことはどうでも良くて、平穏無事に仕事をこなせればいいや、ってなタイプ。

聲の形5巻 元担任1
(5巻)
だから高校生になった石田将也が再び映画撮影のために小学校に戻ってきた時も、石田将也と真柴のことを平気で「愚か者」呼ばわり。画像がびしょ濡れなのは、「あのクラスはハズレくじだった」という発言を聞いた真柴に水をぶっ掛けられる。真柴も元イジメられっ子だった。

聲の形5巻 元担任2
(5巻)
やっぱり腐った性根は変わってなかったのかと思いきや、実は手話を読み取れる元担任。1巻では手話を覚えようと主張した女教師に対して、「自分がやるより先に生徒に覚えさせようとするなんて恥ずかしいと思いませんか?」と元担任は非難してた。

基本的な本質は変わってないようですが、元担任もクズはクズなりに西宮硝子を救えなかった罪悪感を感じてて、影では手話を習ってた気配がある。元担任は偏差値至上主義っぽい側面もこの場面で見せてるので、プライドだけは人並み以上に高そう。このプライドが邪魔して自分の方から歩み寄れないだけなのかも。いわば前述の植野タイプ。

だから嫌いになれるキャラクターも多いんですが、それ故に西宮硝子というキャラクターが輝く仕組みになってるのかも。良くも悪くも、作者・大今良時は深みがあるキャラクター作りが上手い。


最終話はこんな結末で完結

『声の形』は5巻6巻の段階だとまだまだ続くと思ってたんですが、意外に早く7巻目で完結。それだけ最終7巻では急ぎ足で終わってます。それだけ終わり方はしっくり来ないというか、あんまりテンポの良い結末ではないかも。

具体的にネタバレしておくと、前述の石田将也が西宮硝子に対して「生きるの手伝ってほしい」と泣きながら心情を吐露する場面。これは西宮を助けるためにマンションから落下した石田。ずっと植物状態が続いたものの意識を取り戻して、最初に出た言葉がそれ。

場面としてはかなりクライマックスと言えそうですが、実は完全なオチに至るまでそこから150ページ以上ある。最後のオチは高校を卒業してから2年後の成人式。別に「成人を迎える=子供時代からの卒業=イジメがあった過去からの決別」みたいなんを意味していたりするのかなーと思ったりしますが、このタイムラグが効果的に生かされてない気がしました。

そもそも高校卒業からの2年間は、西宮にしろ石田にしろ各々が各々の人生を歩んでるわけです。じゃあ石田将也の「生きるの手伝ってほしい」というセリフは何だったのか?と軽く問い詰めたくなる。時間軸が一気に2年後へ飛ぶ以上、見た目の変化でもあればキャラクターの成長も読み取れますが、そういうのもなかったので残念でした。


総合評価・評判・口コミ


『聲の形(声の形)全巻』のネタバレ感想をまとめると、なんとも言えない。直接的なグロ表現はないものの、イジメや障害者をテーマに扱ってる漫画なので目を背けたくなる or 胸が詰まる描写が多め。正直むかつく感情や胸くそ悪くなるはず。

結局ラストこそ前向きな感じに完結してるしてるし、途中コメディータッチな展開もありますが、イジメてた連中を倒した所で何も解消されないのは主人公・石田が何より証明してる。だから良くも悪くももやもや感はあって、基本的にズーンと沈むような読後感が余韻として残る。

でも、西宮硝子のコロコロと変わる表情が可愛らしい。『マルドゥック・スクランブル』も然り、作者・大今良時の作品はズーンと来るようなマンガが多いので、もっとシンプルに爽やかで王道チックな内容も読んでみたい。本当に画力も高くて、何をやらせてもすごいマンガ家。しかもまだ20代っぽいらしく、こんな大今良時と結婚してー!!