『孤独のグルメ』2巻のネタバレ感想。原作は久住昌之、作画は谷口ジロー。週刊スパで超不定期で掲載してるグルメ漫画。テレビ東京で実写ドラマ化(主演・松重豊)もされてて、これが2015年12月現在第5シーズンまで放送中。下手すると『相棒』並に続編化されそうな勢い。

Amazon 2015年間大賞 孤独のグルメ2巻
そして一番驚いたのが、Amazonの2015年コミック年間売上ランキングで、この『孤独のグルメ』が堂々の2位!ちなみに3位が『ONE PIECE』77巻。4位5位が『進撃の巨人』。ただのさえない中年オヤジ・井之頭五郎がルフィと超大型巨人に勝っちゃったよッ!!これぞジャパニーズ下克上だよッッッ!!!

しかも『孤独のグルメ』2巻が発売されたのは数カ月前ですので、順位以上に『孤独のグルメ』に勢いがあったことが読み取れます。やはりコミックの売上を伸ばすには、コミック自体の知名度を上げるのが最善策。その中でもお手軽なネット広告を出稿する以外では、実写化やアニメ化が一番効果的な手法だと言えそうです。広告(表紙や一部のコマ)だけでは面白いか面白くないか判別しづらいですからね。

ちなみにサイバーマンデーってことでAmazon年間コミックランキングが発表されたんですが、『孤独のグルメ』を超えた1位は『新世紀エヴァンゲリオン』の最終14巻。その『新世紀エヴァンゲリオン』全14巻のネタバレ感想は既にレビュー済み。

とりあえず「孤独のグルメは面白いか?つまらないか?」をレビューしてみました。


井之頭五郎のさり気ない自問自答が面白い

『孤独のグルメ』の実写ドラマを視聴してる方は既に知ってると思いますが、この漫画の醍醐味は主人公・井之頭五郎の「自問自答」にあります。ちなみに『孤独のグルメ』を軽く説明しておくと、井之頭五郎が一人で寂しく飯を食ってるだけのグルメ漫画。

孤独のグルメ2巻 ペルー料理1 井之頭五郎のコメント
(『孤独のグルメ』2巻)
例えばペルー料理店に足を運んだ時は、「このタマネギ、箸休めを超えた箸休めだ」といったセリフがツボりました。箸休めが箸休めを超えちゃったら、もうただの主食系になっちゃうような気がしますが(笑)

この後、意外にペルー料理が美味すぎて、井之頭五郎は「がぜん親ペルー派になってきた」とテンションが上がるんですが、「がぜん」が表現として良い意味で引っかかる。そもそも料理ごときで反◯◯といったイデオロギーが生まれるなら、がぜんイギリスがピンチになっちゃうっていう(笑)

ハンバーグステーキのクダリでは繊維の街・日暮里に行く。腹ペコ状態の井之頭五郎は急いでお店を探す。ただ繊維に関するお店が林立して、あまり目ぼしい飲食店が見当たらずに少し苛々する井之頭五郎。

孤独のグルメ2巻 ハンバーグステーキ1 井之頭五郎のコメント
(『孤独のグルメ』2巻)
そこで見つけたのが、「寿司とパスタ」を出してる飲食店。「うーん空腹が逆なでされる」と怪訝そうな表情を浮かべる井之頭五郎ですが、こういった独特の表現も面白い。確かに酢飯とミートソースを口の中で一緒に想像しただけで、空腹はへそを曲げてどっかへ逃げそう。ちなみにこの後、「Furikake」という店名の服屋さんを見つけて、井之頭五郎は更にブチ切れます(笑)

またお茶漬けをウリにしてる居酒屋さんに足を運んだ時は、いささか敷居が高いっぽい雰囲気で困惑する井之頭五郎。その時は小津安二郎の映画を観た影響で、お茶漬けだけをサラサラと食べたかったものの、それだけを頼むのは忍びない。そこで井之頭五郎はどういった料理を注文しようか考えあぐねてる状態。

孤独のグルメ2巻 お茶漬け屋さん1 井之頭五郎のコメント
(『孤独のグルメ』2巻)
そこで出たセリフが、「落ち着け 慌てるんじゃない 一見さん」と自分を心の中で落ち着かせる。「まだあわてるような時間じゃない」という定番のセリフを彷彿とさせますが、いちいち表現が大げさ。こういった一人で自分だけの表現を楽しんでる「秘密基地感」みたいなのが独特で面白い。


お茶目な言い回しが面白い

この井之頭五郎ですが、ちょいちょいお茶目な一面を見せてくれる。

例えば、冷やし中華のクダリ。この店の店員が冷やし中華のことを「アイス」と独特のネーミングを使って呼んでた。
孤独のグルメ2巻 冷やし中華とラーメン2 井之頭五郎のお茶目
(『孤独のグルメ』2巻)
それを聞いた井之頭五郎が「あはっ、オモシロすぎるぞ、この店」と思わずニマニマ。中年オヤジが言い放つ「あはっ」の攻撃力たるやハンパない。そもそも、そんなに面白いってほどでもなくね?(笑)

同じく冷やし中華のクダリでは、やたらと優柔不断ぶりを発揮する井之頭五郎。学生時代に何度か通った美味いラーメン屋を発見したものの、すごい行列が並んでた。
孤独のグルメ2巻 冷やし中華とラーメン1 井之頭五郎の優柔不断
(『孤独のグルメ』2巻)
だから井之頭五郎は「並んでまで食べるもんじゃないし…」と一瞬諦めたものの、「でも…あそこのラーメンの焦がしネギが美味かったんだよなー」と記憶が蘇って再び迷う。ただそれでも「ま…いいや」と今度こそ完全に諦めたかと思った次の瞬間、「しかし こうなるとラーメン食べなきゃ収まりが悪い」と往生際の悪さを全開。

ただ一言。しち面倒臭ーーーー!!女子の買い物かッ!!!この『孤独のグルメ』2巻では、世の中で一番しょうもない右往左往を垣間見た気がしました。

またピザのクダリでは、「メキシコのタバスコをビシビシかけて、アメリカのコカ・コーラで食べるのが日本流だい」とテンションが上がる井之頭五郎。このセリフでは語尾がまさかの「だい」。多分、子役の鈴木福君ぐらいの男の子でも使わない。無邪気にも程がある。

煮込み定食屋のクダリだと、仕事先の人に世田谷区駒沢公園付近で美味しいお店を訊く井之頭五郎。その仕事先の人は「そこお酒が置いてないんだよね」と申し訳なさそうに言う。
孤独のグルメ2巻 煮込み定食屋1 井之頭五郎の親父ギャグ
(『孤独のグルメ』2巻)
でも井之頭五郎は「アルコール…なくてけっこうコケコッコー」と嬉しそうな表情。久々に聞いたわ!っていうぐらいの懐かしいダジャレ。ちなみに井之頭五郎は食にうるさい割に、お酒が飲めない。可愛いなーコイツ(笑)

そして東京大学にある地下の学食へ行ったクダリだと、ここはやたらと場所が入り組んでて複雑らしい。
孤独のグルメ2巻 東京大学2 地獄のミサワ風に迷う井之頭五郎
(『孤独のグルメ』2巻)
そこでウロウロと迷ってる時の井之頭五郎の表情が、ちょっとした地獄のミサワ。「もぉかんべんしてよぉ」という言い方が完全にオネエ。いや、これまでのトータルを考えたら、井之頭五郎はオネエと表現しても差し支えないでしょう(笑)

ちなみにこの後、苦労して注文した料理の組み合わせが最強すぎて、このあと井之頭五郎は「これを一発で組み合わせた俺 胴上げもんだな」と自画自賛して、大満足のまま夏目漱石の三四郎池を満喫して帰ります。


自虐的すぎる井之頭五郎が面白い

実写版『孤独のグルメ』だと主演・松重豊の演技も相まってか、基本的に悲壮感はありません。ただ漫画版『孤独のグルメ』だと少し悲壮感が漂います。

例えば、東京大学にある学食のクダリでは、やたらと自分を卑下する。前述の通り、そこは構造というか場所がムダに複雑らしい。そこで東大生が分かりやすく描いたであろう地図が貼り出されてるものの、それを理解できない井之頭五郎。だからウロウロ迷って困惑してた。

でも初めての場所に行けば、誰しもこんな状況に陥ることはあります。巨大な建物は言うまでもなく、東京にある駅構内なんて最たる例でしょう。だから別に恥ずかしいことではありません。

ただ井之頭五郎は「東大生とは頭脳が違うんだな。脳のCPUが。俺の脳味噌の性能って、電卓程度の気がしてきた」と悲しそうにポツリ。お前卑屈すぎッッ!!!そこまで自分を貶めなくてもいいですやん!!今どき電卓って(笑)

また冷やし中華とラーメンのクダリでは、井之頭五郎は冷やし中華を先に食べるものの、どうやら汁気が足りない。そこでラーメンを追加で注文する。実は最初はラーメンを食べようとしていたものの、井之頭五郎は直前で方向転換してた。つまり状況としては、最初からラーメンを頼んどきゃ良かったやんという状態。

孤独のグルメ2巻 冷やし中華とラーメン4 井之頭五郎のお茶目
(『孤独のグルメ』2巻)
そこで思わず井之頭五郎は「はは…またやってしまった」と鏡に写る自分に苦笑い。この失敗エピソードを共有できる友達や知り合いがいないから、ついには鏡に自分の同意を求める。ちょっとしたナルシストっぷりも相まって、思わず目頭に少し熱いものがたぎってきます(笑)

孤独のグルメ2巻 お茶漬け屋さん2 井之頭五郎の表情
(『孤独のグルメ』2巻)
お茶漬け屋さんのクダリでスルメを食べてる時の井之頭五郎の表情も軽くアへ顔。特に悪意や他意はない変顔かと思われますが、誰もツッコんでくれる相手がいないので、こういった表情一つでもやけに哀愁を誘います。


総合評価

孤独のグルメ2
久住 昌之
扶桑社
2015-09-27

『孤独のグルメ』が面白いとか面白くないとか少し評価しづらいが、なんだか変な魅力はあります。その魅力の源泉が、井之頭五郎という主人公のキャラクター性にあります。既に面白い部分はレビューしましたが、ちょっとした「共感」も実はある。

例えば、この2巻だと「俺は並んで食べるのが嫌いというより、食べている時に後ろで誰かが待っているという状態が嫌なんだ」という井之頭五郎の考え方には思わず自分は共感してしまいました。誰か待ってる人がいたら早く食べなきゃいけないみたいな義務感が生まれて、料理に集中できない。この延長線上で井之頭五郎は、他の人と一緒にご飯も食べずに「孤独飯」を貫いてるんだと考えられます。もちろん井之頭五郎ほど徹底すると人間性に問題があります(笑)

変化球的な寂しい笑いだけじゃなく、こういった部分もあるから、普段はマンガを買わないようなオッサン読者も購入してるんだと思います。実写ドラマから入った『孤独のグルメ』ファンでも、マンガ版は全く異なる面白さがあるのでおすすめできます。

ちなみに『孤独のグルメ』2巻では、お茶漬けをウリにしてる居酒屋さんのクダリで井之頭五郎が見ず知らずの横暴なオッサンにケンカを売ったり、ペルー料理では元カノの小雪が登場したり、謎多き井之頭五郎の過去が少しだけ垣間見れます。

だから物語としては完結しておらず、もしかすると『孤独のグルメ』3巻が発売する可能性もありますが、おそらく5年後10年後先ぐらいかも知れません。