『火葬場のない町に鐘が鳴る時』1巻から5巻のネタバレ感想。原案者は碧海景、作者は和夏弘雨。掲載誌はヤングマガジン海賊版で配信中。出版社は講談社。同名小説をコミカライズした内容。

累計発行部数が2016年2月の段階で14万4444部を突破するなど意外に人気作。またこの漫画をアイドル・乃木坂46の生駒里奈という女の子が好きらしい。「秋元先生…イコマちゃんとエッチがしたいです(スラムダンクの三井寿風)」。

ということで今回も面白いかどうかの考察してみたいと思います。ただ結論から書いておくと「面白くない」ので9割強以上は辛口レビューになるので注意。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は卯月勇人。両親の都合で人口6千人あまりの山奥にある小さい町・みとず町へ引っ越すこととなる。実は卯月勇人はみとず町で育った。およそ10年ぶりの故郷に、卯月勇人は少し期待に胸がふくらんだ。

特に咲(さき)という幼なじみとの再開に心を高鳴らせた。そして10年ぶりに再開した咲に涙した矢先、鳩時計が不吉な時間を知らせた。みとず町はかつてと違って、夕方6時を過ぎると町には不思議なチャイム(鐘)が鳴るようになる。この音を聞いたら夜明けまで町へ出てはいけない。

火葬場のない町に鐘が鳴る時1巻 咲 冥奴様
(1巻)
何故なら冥奴様が襲ってくるから。

火葬場のない町に鐘が鳴る時3巻 冥奴様
(3巻)
冥奴様とは三途洲山に棲みつく魔物。良い子は冥奴様に守られて、悪い子は冥奴様に食べられる。そういう迷信を聞かされて育った卯月勇人だったが、今まさに現実の恐怖となって襲ってきた。

果たして卯月勇人たちは逃げ切れることはできるのか?そもそも冥奴様とは何なのか?


冥奴さまが意外に弱い

基本的にツッコミどころ満載。前述のあらすじの通り、みとず町は夕方6時以降は冥奴様が現れて襲ってくる。命の危険に晒されるからから住民は誰も出歩かない。当然冥奴様の戦闘力は強いと容易に推察されます。

火葬場のない町に鐘が鳴る時2巻 咲
(2巻)
ただヒロイン・咲の回し蹴りで撃破できちゃう。冥奴様、弱ええええーーー!!!(笑)

火葬場のない町に鐘が鳴る時2巻 カーテンで逃げきれる
(2巻)
そして挙句の果てには、カーテンをピシャっと閉めて、鍵をかけただけで撃退できてしまう。変態のオッサンさんでも、そこまで諦めは早くないぞ(笑)

しかも、この窓ガラスがいかにも貧弱。冥奴様が町中で徘徊しているという設定にも関わらず、何の強化もされてない。ましてや冥奴様がバンと窓ガラスに体当たりっぽいことをしてるのに、何のヒビすら入らない。猫や犬が体当たりしただけでも下手すりゃガラスは割れるぞ。


緊張感に欠ける展開

展開の煽り方はベタ。これ自体は問題ないと思いますが、やたらと緊張感を無くす言動が目立つ。

火葬場のない町に鐘が鳴る時3巻 説明口調
(3巻)
例えば、説明口調が多い。主人公・卯月勇人が冥奴に襲われそうになったものの、なんとか持っていたドライバーで対抗することで事なきを得る。ただ「ドライバーを取り出すのが一瞬でも遅かったらやられてた…」とわざわざ説明してくれるんですが、うん、見りゃ分かるよ(笑)

火葬場のない町に鐘が鳴る時4巻 線香の匂いは分かる
(4巻)
その後も何度か冥奴に襲われそうになる卯月。そこへ謎のオジサン・冬雨静考が助けに来てくれる。何かしらの煙を発生させて冥奴の動きを封じてくれた。

そこで卯月は「そうか、この煙はおじさんが発生させた毒ガスか何か?」と推察する。ただ毒ガスやったら、お前も既にアウトやろ(笑)

しかもこの煙の正体をネタバレしておくと、まさかの「線香」。青雲~それは~ふれあいのこころ~幸せの青い雲~♪ってやつ。じゃあ真っ先に気付けよ。線香ほど独特な匂いをしたもんはないですわ(笑)

火葬場のない町に鐘が鳴る時4巻 冬雨静考 緊張感がない
(4巻)
この冬雨静考というオジサンもツッコミどころ満載で、その線香に着火しようとする時に100円ライターが付かない。危機感を煽る展開としてはベタ。ただまさかのジッポライターも所持してて、すぐ線香に着火できる。じゃあこのクダリは必要だった!!??(笑)

火葬場のない町に鐘が鳴る時1巻 卯月勇人と咲1
(1巻)
1巻でも主人公・卯月勇人が咲の家に逃げこむ。そこで冥奴様が苦手とする「小豆(あずき)」をまくように頼まれる。ただドアを開けた瞬間に冥奴様に腕を掴まれる。なんとか小豆をまいたことで事なきを得た。そんな玄関先での一幕。

別にこの場面自体はそこまで悪くありません。でも次のシーンがヒドい。

火葬場のない町に鐘が鳴る時1巻 卯月勇人と咲2
(1巻)
命からがら助かった卯月に対して、料理を作っていた咲が驚いて戻ってくる。そして何を言うかと思えば「ゴハンできたわよ!早く来なさい!」。え?今そこ?もっと心配すべきところが他になかったの?(´・ω・`)

しかも咲は料理を作っておらず、単にカップラーメンを探してただけ。十中八九、咲が料理を作っている時間を設けることで、卯月と冥奴様が一対一で対峙させる展開を作りたかったワケです。それにしてはあからさまに稚拙。

また一番下のコマを見てもらったら分かるように、割りと大きめの鉄筋コンクリート製のマンション。冒頭でも説明したように、みとず町の人口はたった6000人。しかも山奥に位置してる、ほぼほぼ村。まだ6世帯ぐらいしか住めない2階建ての木造アパート程度だったらいざしらず、誰がそんなクソ田舎にマンションを建てるねんと…。


みとず町に対するツッコミどころ

そこでみとず町や設定に対するツッコミどころを列挙してみた。

まず冥奴様が発生し始める「夕方6時」という時間帯。ヒロイン咲は卯月に対して、冥奴様を説明する時に「治安が悪い町で夜中に出歩いたら危ない」と説明する。この理屈自体は理解できるんですが、夕方6時ってまだまだ普通に明るいぞ。

だから恐怖感を煽るという点では意外とイマイチな上、そもそも夕方6時はバリバリみんな働いてる時間帯。夕方6時で全ての活動が停止してしまったら、それこそ町として機能するワケがない。もう「郷に入れば郷に従え」とかってそんなレベルじゃない

つまり、みとず町ではまともな日常生活を送れない。じゃあ何故住民たちは引っ越ししようとしないのか。原発立地自治体とかだったらいざ知らず、みとず町民がそこに留まるメリットが皆無に近い。米軍基地だったら「アメリカ海兵隊=冥奴様」という解釈もできますが、全員が全員近隣住民を攻撃してくるワケではありません。橋下徹風に言えば、フーゾクにお金も落としてくれるでしょう。

しかも4巻を読むと、みとず町にはかつて「奥三途洲(おくみとず)」という地域があった。いわゆる被差別部落みたいな所。みとず町へ合併されると同時に差別は解消されたものの、結果的に奥三途洲の住民はその場所を去った。この奥三途洲がストーリーにも関係してくるようですが、それと同じようなノリでみとず町から引っ越せよって話(笑)

ここまで来たら、逆に何故昼間はしっかり町として機能しているのかが不思議。みとず町に引っ越してきた理由も、父親の転勤。そんな何もないド田舎に何で?父親が謎の失踪するなど、ここはストーリーの核心部分にある程度は関係してそうですが。


冥奴様の正体を考察

最後に冥奴様の正体を考察しておきます。

おそらく結論的には「土葬された人間の遺体」だと思われます。線香の匂いで動きが弱まることからも明らかか。みとず町は「火葬場がない」ので、これまではずっと死者を土葬していた。だから漫画タイトルも「火葬場のない町(≒土葬)」。

ただ主人公・卯月が町を離れている間に状況は変化。土葬が条例で禁止されて、火葬が義務化されてしまう。その結果、みとず町で亡くなった死者は一度火葬場のある町へ運ばれて、そこで焼かれて骨として町へ再び戻ってくる。

でも言い伝えでは、死者を火葬すると冥奴様の怒りに触れるとされる。もっと言うと、みとず町そのものが滅びてしまうとか。言ってしまえば、冥奴様はゾンビのような存在。仮にそうだとしたら、なおさら住民たちはみとず町から出て行かないのか不思議でたまりません。

だから『アイアムアヒーロー(ビッグコミックスピリッツ)』や『進撃の巨人(別冊少年マガジン)』からパクってるとしか思えない設定も目立ちます。主人公・卯月勇人は冥奴様に噛まれたことで冥奴様と似たような力を得たり、冥奴様の身体には一撃死させる急所・弱点があったりなど、これらの作品が同時期に連載されてることもあって、さすがに既視感やデジャブ感は拭えません。


総合評価・口コミ・評判


『火葬場のない町に鐘が鳴る時』の感想をまとめると、やはり「つまらない」です。「結論ありき」で後から理屈や設定をねじ込んでるので、全体的に無理くり感が強すぎる。ストーリー展開に関しても、緊迫感を煽れてるようで煽れない。

冥奴様に関しても先程は「弱い」と書きましたが、やはり橋の欄干の下にへばりついて主人公たちを襲ってくるなど驚異的な身体能力を見せることもある。それがカーテンを閉めただけで撃退できてしまう。まさに場当たり的。

もっと言うと世界観の作り方が下手。冥奴様の存在をさも常識のように咲や山神は話してるんですが、実は条例で火葬が義務化されたのは半年ほど前。割りと最近。逆にその半年間で何故みとず町は滅びていないのか、住民の人口は激減しないのか…などツッコミどころがとにかく多い。

そもそも法律を超越した謎の怪物・冥奴様と対峙してるのに、そこで「法律に従う」という設定を持ち込むと途端に興ざめしてしまう。法律を超越しちゃうから怖いワケで、だったら法律の力で、警察の力で冥奴様を駆逐しろやって話。読者を冷静にさせる部分を持ってきたらアウト。

でも『王様のゲーム』シリーズあたりを面白いと思えるなら買っても損はしないか。原作小説も同じくエブリスタで配信されてるそうなので系統的にはそれに近い。「素晴らしいベタ」と「未熟な技術やテクニック」と併せ持つ点で、絶妙に悪い意味で面白い。口コミで評判になっていたとしても、冒頭でも書いたアイドル・生駒里奈も然り、おそらく年齢的には10代の読者が多めか。