『からくりサーカス』全43巻のネタバレ感想をレビュー。作者は藤田和日郎(ふじた・かずひろ)。今まで「わびろう」と読んでたのは内緒。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックのバトル漫画。

最近読んだ・読み終わったので、今更ですが『からくりサーカス』とかいうマンガが面白いか、つまらないか考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は3人。内容的にはかなり複雑。

一人目は小学5年生の才賀勝(さいが・まさる)。お金持ちの御曹司。ただ父親が亡くなったことで、莫大な遺産を相続。ヒロインは、その才賀勝を守るエレオノール。そして、屈強な19歳の加藤鳴海(かとう・なるみ)。他人を笑わせないと死んでしまう病気「ゾナハ病」に罹患。

ただ厳密には、この3人ではない。もっと時代は遡(さかのぼ)って、国境すら超えて、この3人の先祖が抱えてる執念や悲恋や過去が綿々と続いているストーリー。

からくりサーカス27巻フランシーヌ
(27巻)
舞台は200年前の中国。フランシーヌという貧しい少女がいた。この女性を巡る壮絶な戦いを繰り広げたのが、白銀と白金という兄弟。弟の白金はフランシーヌを愛していたんですが、横から結果的に兄・白銀に奪われてしまう。

からくりサーカス27巻兄とフランシーヌを恨む白金
(27巻)
ストーリーの肝はこの『憎悪』一点のみ。愛する兄・白銀がフランシーヌの最愛の彼氏だったからこそショックは大きくて、弟・白金が暗黒面に陥ってしまう。「僕はもう…笑わない」というセリフがシンプルに強烈。

つまり世界中に「ゾナハ病」を撒き散らした張本人は白金であり、『からくりサーカス』のラスボス。この「数百年前の悲恋」を軸に物語が展開していきます。


弟・白金の壮絶な執念が気持ち悪い、切ない、泣ける

だから、弟である白金の執念がとにかくエゲツナイ。錬金術を駆使することで、永遠に近い命を得る。厳密には他人の身体に白金の記憶を移動させて、いわば乗り移っていく感じ。

そこで白金はどうするかと言えば、フラれたフランシーヌの生まれ変わりと恋仲になろうとする。それがアンジェリーナであり、冒頭で紹介したエレオノール。この執念がえげつないし、吐き気がするし、切なすぎる。この計画が何度も破綻しつつ、何度も繰り返される。

そして200年後、冒頭でこれまた紹介した才賀勝に繋がる。父親が亡くなって莫大な遺産を想像したと書きましたが、
からくりサーカス26巻才賀勝に乗り移ろうとする白金
(26巻)
実は、その父親ってのが白金。エレオノールに自分(才賀勝)を守らせることで、徐々に恋仲に発展という計画。

からくりサーカス27巻才賀勝に乗り移った白金
(27巻)
だから、最終的に白金に乗り移られる才賀勝?という展開も。

ただ一方、兄・白銀は死亡してしまうものの、その意志や痕跡も受け継がれていく。それが才賀勝の養祖父にあたる、才賀正二。白銀が作ったカラクリ人形を作る技術など、様々な教えを乞う。
からくりサーカス24巻才賀正二とアンジェリーナ
(24巻)
才賀正二はフランシーヌと瓜二つのアンジェリーナと結婚。弟・白金はディーン・メーストルという人間だった時、そのアンジェリーナの幼少期とパートナーとして働いてた。そうやって恋を成就させようとしてた。

だから兄・白銀はフランシーヌと恋仲になる運命で、弟・白金はフランシーヌと失恋する運命。まさに残酷なDNA。主人公の才賀勝は白金のDNAを引き継ぎ、加藤鳴海は白銀のDNAを引き継ぐ。ラストは、まさに想像通りのオチ。

連綿と壮大に繋がっていく執念と恋。この『からくりサーカス』というストーリーの醍醐味。


熱い名言・名場面が泣ける

からくりサーカス27巻才賀勝のセリフ
(27巻)
主人公・才賀勝のセリフも熱い。もはや名言に言い換えてもいいでしょう。「なんでみんな幸せになれないのさあ?」というセリフは、勝の人間性がもろに現れている名場面。

からくりサーカス32巻才賀勝のセリフ
(32巻)
幸せが似合わない人なんて、いない」というのも、まさに名言でしょう。藤田和日郎は周りくどいストーリーを作りますが、セリフはストレートすぎるぐらいストレート。「夢はいつか必ず叶う」などグッと来る名言が多い。

からくりサーカス最終43巻 しろがねとナルミ
(最終43巻)
ちなみに最終回をネタバレしておくと、才賀勝は白金の失恋DNAを引き継ぎつつも、最後は加藤鳴海(ナルミ)にエレオノールを譲る。最終巻だとマサルとナルミが二人が背中合わせで戦う場面も名シーンだったと言えるでしょう。マサルだけは背中合わせの相手がナルミだと気付いてる。でもエレオノールと一緒にさせるため、自分だけ犠牲になることを決意して気付かせないように動く。

こういう実直なキャラクターだからこそ全員が幸せになる方法を才賀勝は選択できた。もちろん序盤で加藤鳴海との友情を醸成してたことも手伝って、失恋DNAの負の連鎖を引きちぎれた最終話の完結シーンも名場面と言えるでしょう。


キャラクターの関係性が複雑

ただ反面として、あらすじでも書いたようにキャラクターの関係性がかなり複雑。

からくりサーカス26巻白金=才賀貞義1
(26巻)
例えば実はアイツはコイツだった…みたいな演出が多い。例えばラスボスの失恋クソ野郎・白金は、ディーン・メーストル・才賀貞義・フェイスレスの合計3人になりすましてる。また完全になりすましてなくても、その系譜を受け継いでいたというパターンもある。それがあまりに多すぎて、ちょっと理解するのが大変。

からくりサーカス・フランシーヌの系譜Wikipedia
Wikipediaを読むと「よーまとめたな…」と思わず感心しましたが、白金が片思いしてたフランシーヌだけでもこれだけの繋がりがある。これは視覚的にまとめてくれてるので分かりやすいですが、この関係性をマンガを読みながら把握していかなきゃいけない。正直「小学生読者とか大丈夫?」と訊きたくなるレベル。

しかも時間軸は現在から過去、その過去から更に過去といった具合に、時代もアチコチ頻繁に飛び回る。それこそが藤田和日郎作品の醍醐味・真骨頂と言えますが、今回の『からくりサーカス』は読者として付いていくのが大変。自分も偉そうにレビューを考察してますが、まだ完全に把握できた自信がない。このネタバレ感想記事でも間違って記載してる情報もあるかも。

そして、相変わらずフワッとしたワードも多い。「しろがね」というキーワードがあるんですが、これもいろいろ存在。『うしおととら』でも共通したけど、特別な固有名詞が少なくて分かりづらい。作者の藤田和日郎が必死こいて考えた内容だからこそ、それを一瞬で理解するのは不可能。


自動人形を使ったバトルは不発

『うしおととら』や『月光条例』でも言えるけど、アクション描写は良い。

からくりサーカス23巻自動人形
(23巻)
からくり人形(自動人形)を操ることで敵と戦う。ここだけ見ると結構期待できちゃうんですが、バトル漫画的な要素はそこまでない。少年サンデー全般に言えますが「必殺技」に対する意識が不足気味。

『からくりサーカス』はストーリーがメインとはいえ、「自動人形」という設定が抜群だっただけにもう少し活かせなかったものか。こういったバトル描写があるだけで、読者はたとえストーリーに付いていけなくても漫画そのものは読める。良く悪くも「上手な普通のアクション」の域止まりだったのは残念。


壮大ゆえに最後まで読めない?

作者・藤田和日郎が描くマンガは内容自体面白いものの、やたら長ったらしい。この『からくりサーカス』は特に長かった。読めないまま途中で挫折した人も多いでしょう。

ストーリーが壮大に作りこまれてるが故に、いつまでも展開がたたみきれない。もちろん描いてる作者・藤田和日郎が一番大変だったと思いますが、これを読んでて「うわ…まだ続くの?」と何度か感じなかったと言えばウソになります。辛辣なことを言うと、全体的にテンポ感や充実感が欠ける

既に30巻台半ばぐらいで、白金や白銀の過去などおおよその設定は出切ってた印象。それにも関わらず、以降の10巻分ぐらいはグズグズ続いて展開が回りくどかった。『ワンピース』などもムダに長いですが、一つ一つのエピソードは長くて10巻分程度のボリューム程度に収まってる。その一つ一つのエピソードを連結させることで、最後の秘宝ワンピースをゲットするという大オチに繋げてる。

でも、この『からくりサーカス』の場合、一つのエピソードがまるまる43巻分あると言っていい。もう少し要所要所で大きな区切りが欲しい。だから最後の最後で完結した最終話まで読まないと、読後感が一切得られない。良くも悪くも期待通りの結末だっただけに、さすがにオチを勿体つけすぎ。

もっとコンパクトにまとまらなかったのか疑問。正直ここまで長かったら、さすがに読んでる内に冷めていく部分が少なからずある。中規模のオチ(適度な充実感)があるからこそ、読者は継続的に読めるんだと思います。


総合評価・評判・口コミ


『からくりサーカス 全巻』のネタバレ感想をまとめると、クオリティーだけ考えると名作の部類に入るでしょう。

ここまで惨めで悲しいラスボス・フェイスレスは存在しない。まさに誰にも愛されない男の悲哀。ニュースを騒がす大きな凶行に走った犯人も、きっとこんな感じの男のはず。だからこそフェイスレスを嫌いになれない自分もいます。

ラストの最終話でフェイスレスは才賀勝を助ける。そして一人になった時(正確にはグリュポンもいるが)に、ようやく「僕が間違っていたよ。銀兄さん」とポツリ。その時の何とも言えない表情に胸がギュッと締め付けられる。最後の最後まで素直になれない姿勢や性格に涙が出てくる。

ただ少年ジャンプだったら10巻も経たない内に打ち切りコースかも。良くも悪くも、少年サンデーだからこそ連載できてるマンガであり、マンガ家。それが作者・藤田和日郎の良さなんですが、『からくりサーカス』はあまりに自由にやらせてる分だけここまでダラダラ続いてしまった印象も否めません。

プロットがグチャグチャってわけではないですが、さすがに長過ぎる。風呂敷を広げすぎたと言ったら語弊があるが、ストーリーが良かっただけにもっと小気味の良さやテンポ感も欲しかった。また読み直したいかと思うと、ちょっと躊躇しちゃうボリューム。

良くも悪くも手軽には読めない名作漫画。「挑戦」したい方は是非どうぞ。