『恐怖の双一シリーズ-棺桶-』のネタバレ感想。作者は伊藤潤二。月刊ハロウィンで連載してたホラー漫画。

あらすじ

棺桶1 双一
伊藤潤二作品の中ではそこそこ有名・定番キャラクターかもしれない「双一」という小学生キャラクターがメインになってる漫画。だから何となく察する読者さんは察すれると思いますが、若干…というか大幅にコメディーテイストも入ってたりします。

救いようがない双一が愛おしい?

とにかく双一は救いようがない。見た目がキモい上、不気味に登場する。そして呪いを誰かにかけてみたり、終始それっぽい怖い発言を吐く。

だから初見の読者さんは「双一には何か特殊能力でもあるの?」と思ってしまうんですが、一切そんな能力がない。ひたすら「ふふふ」とニタニタしてるだけ。お前は自民党の福田康夫か。

ジョロウグモの死骸を姉・さゆりに対して「うぇ~い」って近づけて嫌がらせをするものの、
棺桶2 ジョロウグモに驚く双一
兄・公一に払いのけられて、そのジョロウグモが逆に自分の顔にひっつく。そしたら双一がめっちゃ驚く。ちょっとした新たなジョジョポーズ。双一もガマンしてるだけで、実は蜘蛛が苦手。このイタズラにかけるムダな根性。

そこまで蜘蛛が苦手なのに、今度はワクワクさんも顔負けの巨大な蜘蛛のキグルミを作る。丸太を竹馬のように乗りこなして、同級生を襲う。どんだけ筋力あんねんって感じですが、最終的には森を管理するオッサンに捕まる。
棺桶3 命乞いをする双一
ただオッサンが気性が荒すぎて、双一は必死に命乞い。「おかーちゃーん助けてくれー」とは、さすがに情けない。だから双一はアホで抜けてる、イタズラ好きの男の子。

結果的にその場面は兄・公一に救ってもらう。でもことごとく注意されてばっかりなので、仕返しとばかりに兄・公一に嫌がらせ。それがポルターガイスト。兄の部屋で次々と物が浮いたりする。もちろん、そのポルターガイストの犯人は双一。
棺桶5 ポルターガイストの質が低い双一
でも小細工がしょぼすぎてバレバレ。いや、どちらかと言えば少し大掛かりか。むしろ兄が何故弟がこんな工作してるのに気付かなかった?的な。それにしてもフスマを開けた瞬間の、二人の無言の間が何とも言えない(笑)

この直後に兄・公一はこれじゃあ受験勉強が捗らないってことで、自分の部屋にマトリョーシカ的な四層構造の簡易部屋を作ってもらう。これがかなりシュール。「ドアがどんどん小さくなっていく」と最終的に辿り着いた部屋がめっちゃ狭い(笑)

そこで双一と一悶着あるんですが、なかなかアドベンチャーチックで不思議と読ませられました。

オチが色々とフザけてる

以上のことだけを読むと、『棺桶』というマンガはただのコメディー。でも一応怖い話もあります。

例えば漫画タイトルと同じ「棺桶」という回。この話は双一の祖父が死んじゃう。生前に祖父は「自分が作った棺桶に入って死にたい」と言ってた。その延長線上で双一も自分の棺桶(ドラキュラ風)を祖父に作ってもらうものの、その道半ばで祖父が亡くなっちゃう。

棺桶8 棺桶・双一の祖父
でも孫思いの祖父はそのことが未練だったので、まさかの復活。双一のために棺桶を再び作り続ける。

棺桶9 棺桶・双一の祖父
この時の「邪魔するなー!」的な感じで祖父が襲ってくる場面がヤバイwwwでも冷静に見てみると、ちょっと笑顔。

ただオチがヒドい。双一が満足のいく棺桶ができるまで、祖父はひたすら棺桶を作らされ続ける。双一さえ満足がいけば立派に成仏できるらしいんですが、物置部屋には棺桶だけが埋まっていく。一体これは何なんだとw

また「噂」という回では、不気味なファッションモデルが写ったポスターが話題になる。
棺桶11「噂」ファッションモデル
それがこのポスター。双一の祖父ばりに怖えー!つか顔が長えー!モブキャラの妹はこれを見て一週間寝込んだそう。思わず納得するぐらい不気味。一応、口紅の広告らしいですが、化粧品会社は一体何を思って彼女を起用したんでしょうか?

そして、この不気味なポスターを巧みに利用したのが、主人公・双一。このモデルの女が口裂け女ばりに「私キレイ?」と下校帰りの小学生たちに訊いてくる。でも何も答えずにいると、「お前たちを食ってやる」と叫びながらいきなり襲ってくる…というウワサを双一が学校中に広めた。つまりウソの話。

それもひとえに自分を小馬鹿にした(と勝手に双一が思ってるだけ)「谷山まどか」という女子生徒を陥れるため。他にもドロ沼に入るとキレイになるというウワサも流すと、案の定谷山まどかがドロ沼にスク水姿で入水ならぬ入ドロ。

でも、そのドロ沼に例のモデルが既に入ってて、まさかの双一を襲ってくる。だから双一がウソだと思って流したウワサが、実はガチだったというオチ。ただこれ自体は特に問題がないものの、唯一逃げることができた「谷山まどか」がヒドい。
棺桶12「噂」ファッションモデル
双一くんがどうなったか分からない…だって私は今逃げてる最中なんだもの…無事だといいけど…」と、何故か逃げながらも自分と双一が置かれてる状況を冷静に解説・分析。そもそも一目瞭然の状況なので、敢えて説明されるまでもない情報。「…なんだもの」という表現が、いかにも間が抜けてる。

あと「無事だといいけど…」と女の子は言ってますが、他人事感がハンパない。仮に無事自分が逃げ帰ったとしても、警察に通報する気がサラサラないですからね。「私は一切悪くないのよ」という、いかにも女子的な反応。

ちなみに『闇の声』シリーズで明らかになりますが、双一はしっかり生きてる模様。

総合評価


双一のキャラクターが色んな意味で怖い。将来どんな大人に成長するか想像しただけで怖い。むしろ自分がこんな子供を産んでしまったらと想像しただけで吐き気。

伊藤潤二作品はどうしてもホラーで怖すぎというイメージがありますが、この『棺桶』はコメディー要素もあるので比較的誰でも読めるかも知れません。ただ逆に言うと、ホラー漫画としての評価は少し難しいか。

伊藤潤二のホラー作品は意外にレビューしてる人が少ないのか、不思議と検索などからの流入が多いのでレビューしてみた。特に夏頃になるとやはり興味を持つ方が増えるんでしょうか。

恐怖の双一シリーズ 棺桶
伊藤 潤二
朝日ソノラマ
1995-09-20


◯展開★3◯テンポ★3.5
◯キャラ★4◯画力★4
◯おすすめ度…80点!!!!