『描かないマンガ家』全7巻のネタバレ感想をレビュー。作者はえりちん。掲載誌はヤングアニマル。出版社は白泉社。ジャンルは青年コミックの漫画家漫画。絶賛AmazonのKindleでもダウンロード購入・無料で試し読みが可能です。

特に今のタイミングでレビューしたくなった理由はありませんが、何となく『描かないマンガ家』全7巻まとめて面白いのかつまらないのか考察してみました。購入の参考にしてみてください。『描かないマンガ家』最終話については後半にレビュー。


描かないマンガ家のあらすじ物語 ストーリー内容

主人公は26歳の渡部勇大。大学を中退して現在マンガ専門学校に通っている、いわゆる漫画家志望の青年。他は20歳前後と若い生徒たちも多く、周囲からは「ナベさん」などと呼ばれてる。

ただマンガ家としての能力はからっきしにも関わらず、態度だけはすっかり一人前。ペンネームも既に考えていて、それが「器根田刃(きねだやいば)」。明らかにつまらなさそうな臭いがプンプン。ちなみに以降、主人公名は渡部勇大ではなく器根田刃で統一。

描かないマンガ家1巻 あらすじ アルバイトの面接
(描かないマンガ家 1巻)
まだ自分の中だけで留めてるならまだしも、ブックオフらしき古本屋でアルバイトしてる時などにも、既に周囲に自分がマンガ家であるかのように吹聴する痛い奴だった。だから口癖も「プロは甘くない」。

描かないマンガ家1巻 あらすじ アルバイトの面接2
(描かないマンガ家 1巻)
もちろん気分はプロ漫画家ってことで「オレが命を削って描いた作品を中古で流すだとぉ!?」と、発売されてもいない自分の漫画コミックが中古店で流通してる光景を妄想して激おこ状態。アルバイトする前にいろいろと気付けただろうし、他人の漫画やったらいいんかいと。

でも、まだまだ器根田刃の質の悪さはこんなもんじゃなかった。同じマンガ専門学校から小沢という男が、誰よりもいち早くプロデビューを果たす。この男と飲みに行ってる時も高慢な態度を取り続け、小沢の画力はまだまだ足りないと酷評する。

描かないマンガ家1巻 あらすじ 小沢
(描かないマンガ家 1巻)
ただ小沢は反論することなく、「自分が想像した物が下手なりにも形になっていくのは楽しい」とマンガ家として歩むべき道を真摯に見つめるが、視線の先は器根田刃よりはるか遠く先。意外と売れてるマンガ家は人格者が多いらしい。

さすがに器根田刃もクズとはいえ同じ漫画家を志す者同士、どうやら下のコマを見る限りはなにかしら触発されたような雰囲気。

描かないマンガ家1巻 あらすじ 器根田刃
(描かないマンガ家 1巻)
しかしながら、そこは器根田刃。漫画を描くことはなく、真っ先に自分のブログをカタカタと更新。そう改めて説明するまでもなく、『描かないマンガ家』はまさにタイトル通りの内容。「漫画を全く描かない男・器根田刃」の物語である。

描かないマンガ家2巻 あらすじ 器根田刃 編集者
(描かないマンガ家 2巻)
学校にマンガ編集者が出張してくれたときですら、まさかの長々としたプロットを披露するだけ!!!プロ・アマ問わず、つまらない漫画にありがちな設定だけゴチャゴチャパターンの典型例。

果たして、主人公・器根田刃はプロ漫画家デビューすることはできるのか?いや、そもそも漫画を少しでも描く日は来るのかッッッ?!


器根田刃のクズすぎる言い訳集

とにかく主人公・器根田刃がクズ。「怠慢」や「なまけ」「現実逃避」と表現した方が正確なのかも知れませんが、ある意味、そこが『描かないマンガ家』のメインになりそう。まさに言い訳のオンパレード。

描かないマンガ家1巻 クズ 器根田刃 アシスタント
(描かないマンガ家 1巻)
例えば、器根田刃は絶対に漫画家のアシスタントにならない。理由は「アシスタントは2年以上やると漫画家になれない」という迷信を信じてるから。確かにくすぶってる感はなくはないですが、それでも「実戦から得られる経験値」は多いらしい。

描かないマンガ家1巻 クズ 初恋の藤井
(描かないマンガ家 1巻)
また初恋の人と遭遇して恋愛漫画を描こうとインスピレーションが来た時は「肖像権の侵害」を理由に漫画を描くのを止める。身近な人だから…ということを理由に描けないなら、かなり漫画作りが制約されそうです。

あまりにマンガ原稿を描かなさすぎて(周囲から評価を受けなさすぎて)、器根田刃のプライドや自信はまさにプロクラス。「自分は投稿さえしたら連載される」と思い込む始末。

描かないマンガ家3巻 クズ 器根田刃
(描かないマンガ家 3巻)
だから「26歳までにジャンプで連載する」という目標を掲げてた器根田刃は、27歳の誕生日を目の前にして、すっかり少年ジャンプ作家入りしてる気分。

でも漫画家に限らず、勉強やスポーツ・恋愛でも「挑戦すれば既に成功したも同然」と思い込んでる奴は世の中に多そう。自分もブラック芸能事務所レプロエンタテイメント所属の新垣結衣に告白すれば、本気で結婚できるんじゃないかと思ってます。

描かないマンガ家3巻 クズ 帝塚先生の墓の前
(描かないマンガ家 3巻)
器根田刃の不遜さは留まることを知らず、はてには手塚治虫と思しき墓の前で「嫉妬でジタバタさせる作品を描いてみせますよ」と勝手に杯を返す。天国の手塚治虫からしたら「え?おまえ誰?」と必死で頭をジタバタもたげさせるだけでしょう。

他にも一切漫画を描いてないくせにスランプに陥ったり、新連載漫画の内容が自分のアイデアをパクったと騒いでみたり、しかも一周回って「原作者として嬉しい」と歓喜してみたものの、その新連載漫画がすぐ打ち切りになるという。


無精卵はいくらなんでもヒドすぎるよ、おっかさん

もちろん周囲は器根田刃は無能だと気付いてるものの、器根田刃は意に介さず。

描かないマンガ家3巻 クズ のあん
(描かないマンガ家 3巻)
でもたまに根拠のない自信に勇気付けられる人もいる。画像はのあんというメンヘラ漫画家志望者。ただ「絵も下手でなんの武器が無くても一心不乱に漫画に突き進むその気持ち心の底から尊敬します」とホメ言葉なのに、なぜか辛辣。

さすがにここまで言われたら自分の才能の無さに気付きそうなもんですが、器根田刃は年中現実逃避というトリップ状態だから気付かない、何故か器根田刃は色んな女性にモテる。最たる例が枝野カンナという、きっと中村光あたりをモチーフにした売れっ子女性漫画家。

描かないマンガ家4巻 枝野先生
(描かないマンガ家 4巻)
その時も器根田刃はプライドから「同業者やライバルと付き合わない主義」と最初拒否するものの、枝野カンナは「あたしもだよ」と言ってキスを交わす。このまま二人は付き合うものの、この意味は言うまでもなく「枝野カンナはハナから器根田刃を相手にしてない」ということ。

当然枝野カンナの意図を読み取れないのが器根田刃センセー。一方、枝野カンナは終始器根田刃は冗談を言ってると思い込んでる。結果、悲劇が生まれる。

描かないマンガ家4巻 枝野先生2
(描かないマンガ家 4巻)
器根田刃が少年ジャンプ一の売れっ子漫画家を超えると豪語すると、その元カノでもある枝野カンナは「そんなの無理に決まってんじゃん!そんなの待ってたら二人とも老衰で死んじゃうってー」と笑顔で笑われる。一瞬にったじゅんのHマンガを彷彿とさせます。

描かないマンガ家5巻 無精卵
(描かないマンガ家 5巻)
そして挙句の果てには器根田刃を「無精卵」扱い。無精卵の意味は、受精できない卵のこと。つまり「お前の夢はどうあがいても一生叶うことはない」と暗にディスってる。こんな感じで『描かないマンガ家』の後半は、徐々に器根田刃はライフゼロよ状態が続きます。


クズだけど、意外に多い名言シーン

ただ器根田刃はクズはクズなんですが、言ってること自体は意外と正論。もはや名言の域に達する勢い。

描かないマンガ家1巻 名言 岡田 器根田刃
(描かないマンガ家 1巻)
元漫画家志望でOLだった岡田に対して、器根田刃は「好きなことで失敗したら立ち直れないって?オレなら失敗したらそれをネタに漫画を描くだけよ」と一言。確かに漫画家は失敗も話のネタになる。どうしてもエッセイ系が多いですが。

描かないマンガ家1巻 名言 山の中で遭難
(描かないマンガ家 1巻)
だから山の中で自分が遭難した時も、「この壮絶な体験を本にするまでは絶対に死ねないという作家の性がエネルギーとなり生還へと導くんだ」と生への渇望を強くにじませる。

え?もちろん器根田刃はこの経験をネタにすることも、その後も漫画を一度も描いてませんよ。そんなん当たり前じゃないっすか!やだなーもう(笑)

描かないマンガ家2巻 名言 枕営業
(描かないマンガ家 2巻)
前述の岡田がうさんくさい編集者に無理やり枕営業させられそうになった時には、ヒーローのように助け出して「デビューするために編集と寝ることだけは絶対に許さない」とバッサリ。優しくもあり厳しくもある態度は、まさに男の鑑。

アイドルや声優だけではなく、マンガ業界にも実際にリアルであるんでしょう。キッカケは何でもいいとはいえ、それでも最初のデビューすら実力で掴み取れない人間が長期連載・人気漫画を作ることなど不可能。でもヤングジャンプのように編集者の権力があれば、アイドルだって抱けますからね…うらy…けしからん話です。

描かないマンガ家5巻 マンガ専門学校の暗部
(描かないマンガ家 5巻)
『描かないマンガ家』は実際のマンガ業界でありそうなネタをベースにしてる節も強く、マンガ専門学校に対しても「就職率100%なんてウソっぱちだ!」とマンガ専門学校の闇もバッサリ。さすが器根田刃、ムダに知識だけは豊富。

描かないマンガ家2巻 名言 三井 デリヘル
(描かないマンガ家 2巻)
他にも三井という会社で働きながら漫画家を目指すものの、金銭的な理由でデリヘルをやってる女に対しては、わざわざ自分が予約して「オレが買ったこの90分をお前にくれてやるから、今すぐ漫画を描いてみせろ」と一言。男なら一度は言ってみたいセリフ。

描かないマンガ家4巻 名言 長妻悩み
(描かないマンガ家 4巻)
そして、いち早くプロデビューする長妻という女が持ち込みで悩んでいると、器根田刃は一言。「雑誌や出版社は一つじゃない。必要ならば裏切りと言われても、オレだったらジャンプも切り捨てる」とキリリ。マンガ編集者もピンきり。もし全員有能なら出版不況なんて起きてませんからね。

え?だから器根田刃は一度も漫画の原稿を描いたことはありませんって(笑)


ラスト最終回の結末はどうなった?

ということで『描かないマンガ家』のラスト最終回のネタバレ。ネタバレが嫌な方はスルー推奨。

描かないマンガ家6巻 最終回
(描かないマンガ家 6巻)
当然、一切漫画を描いてない器根田刃は周囲からどんどん置いていかれる。気が付けば「雑魚だった知り合いがことごとく結果を出している」現実に思わずわなわなと震える。『描かないマンガ家』は全7巻しかありませんが、いつの間にか時間が数ヶ月数年経過してることもあって、努力した人間が一定の結果を残すのは当然といえば当然の流れ。

描かないマンガ家6巻 最終回 羽田
(描かないマンガ家 6巻)
かつてトレースパクリで漫画業界から半ば追放された羽田という男ですら、着々とプロデビューへの道を歩んでる。それにも関わらず、器根田刃は相変わらずペンすら握ろうとしてない状況に対して、羽田も思わず「先輩は人に助言するだけですよね」とバッサリ。

さすがに色んな現実が見えてきた器根田刃。つまりは残酷な現実にようやく打ちのめされ始める。気付けば30歳を超えていた。しかし枝野カンナや小沢などの助けや助言などもあり、遅ればせながら真剣に漫画に向き合う器根田刃。

そしてコツコツとマンガを描き初めて7年後。

描かないマンガ家7巻 最終回 器根田刃
(描かないマンガ家 7巻)
ついに器根田刃は本名の「渡部勇大」として、ようやく一冊のコミックを発売することができた。つまりは漫画家プロデビュー。決して売れっ子でも人気でもない世間から見たら三流漫画家。それでも今の現実に満足する「渡部勇大」。何故なら大好きなマンガを仕事にできてるから。

そして「渡部勇大」の傍らには触手マニアだった山井真琴。さすがに長妻とは結婚しなかった模様。長妻や小沢、かつてトレパクした羽田も再び中塚として人気作家として既に定着。プロ漫画家としての「渡部勇大」の漫画家としての日々はささやかながらも続いていく…という、ややしんみりしたオチ。

だから序盤こそギャグ展開っぽく始まってますが、完結間近の展開は『描かないマンガ家』は良くも悪くもシリアス調。

描かないマンガ家5巻 長妻 ランキング
(描かないマンガ家 5巻)
さすがに「描かない」という前提だと展開を作れなかったのか、後半はプロデビューした長妻のクダリも多め。

画像は世にはびこる「おすすめ漫画ランキング」系の雑誌を手にして、長妻の作品も名前に挙がったものの、逆に名指しで特定の作品より面白くないと批判されてるように感じる場面。意外と実際の漫画家も意外と気にするんでしょうか?

ちなみに自分も「ガチでおすすめの面白い漫画ランキングBEST100」を作ってるので、あとで良かったら御覧くださいませませ。漫画「東京グール」のどこが面白いのか考察記事トヨタ・C-HRとホンダ・ヴェゼルの比較記事も良かったらどうぞ。


描かないマンガ家 全7巻の総合評価 評判 口コミ


『描かないマンガ家』全7巻のネタバレ感想をまとめると、漫画家マンガとしてはそこそこ面白い

ただ、これが連載していたタイミングを考えると『バクマン。』に便乗しました以上でも以下でもないかなぁ。個人的にはクズはクズのまま終わらせて欲しかった。さすがに器根田刃ぐらいのクズだったら、惨めに野垂れ死ぬのがお似合い。帝塚先生のお墓の前で自害とかすれば(ry。

それっぽく無難に完結してるものの、それまで一切何の努力も成長も見せなかったクズが結局商業誌デビューできましたってのは、やはりご都合主義的なオチとしか思えない。せいぜい山井真琴のアシスタントとして奮闘してる程度のオチでも十分だったはず。

仮に成功の結末を持ってくるなら、どうやって器根田刃が「渡部勇大」に成長するまでの過程こそもう少し描くべきでした。もう少し完結するまでに好感が持てるキャラに仕上げてほしかった気がする。

あと更に言えば、器根田刃はただ痛いだけ(痛い発言を紹介してるだけ)のキャラで終わってしまってる。器根田刃に直接的な天罰が下ることが少なく、読後感としてあまり溜飲が下がらない。『ドラえもん』ののび太のようにポンコツキャラクターは、やはり都度都度痛い目に合わないとマンガ的には面白くない。痛い目に合うから同情心も生まれる。

『描かないマンガ家』は漫才でいえばボケたらボケっぱなしでツッコミが不在な状態。だからギャグとしてやや尻切れトンボの中途半端感もあります。