キングダム』38巻のネタバレ感想。作者は原泰久。ヤングジャンプ(集英社)で連載中の歴史漫画。いわゆる秦の始皇帝(政)を主人公とした、中国歴史もの。だから舞台は秦という国。また主人公は始皇帝以外には、それを支える信という架空の少年兵士がいます。


信は五千人将へ

チョヨウで将軍・騰や王賁とともに、主人公・信が魏を撃破した続き。魏の将軍・呉鳳明や、魏火龍という中ボス連中を前巻37巻では倒しました。

この功績が認められて、主人公・信と王賁はこの38巻で5千人将にランクアップします。騰曰く、「五千はただの踏み段にあらず」「五千人将の目を通してこそ将軍の存在がいかなるか見えてくる」。

そして、秦国では新たな問題が勃発。政の母親である太后が自分たちだけの国を勝手に建国。ましてや、ロウアイという今で言うところの加藤鷹的な男と共に。だから、新しい国名もロウアイからもじった「アイ国」。秦国は後の始皇帝となる政以外に、呂不韋と太后の勢力が3グループいた。いわゆる太后は政敵。

しかも、息子である政が「加冠の儀」という秦国の皇帝としてようやく認められるイベントを行うタイミングで、秦国(咸陽)に攻め入ろうとする…みたいな感じの展開。


太后の変遷と嫉妬が無様で愛しい?

この38巻ではとにかく太后(始皇帝の母親)がメイン。

キングダム38巻 太后1
最初の太后は、こんな風にウブな美少女だった。「邯鄲(かんたん)の宝石」と表現されるぐらい輝いてた。でも呂不韋という男に出会ってからは一変。呂不韋は秦国の中でも、政治的なパワーを持つ一大勢力の長。

キングダム38巻 太后2
まさに魔女に進化。口がデカくなりすぎやろwww
おそらく色んなブツを咥えこんでここまで成長したんだと思います(TдT)

この太后は前述のように、ブツが大きいのだけが取り柄のロウアイと共に「アイ国」を建国。だから36巻か37巻では、ただのアバズレのようにしか描かれない。でも実際は違ってる。
キングダム38巻 太后3
ロウアイとの鬼気迫る行為の最中も、実は太后は泣いてる。呂不韋にフラれたことに対する自暴自棄から、こういった行為に走ってる節もある。ちょっとした不良の女子高生か!とツッコミたくなりますが、この涙に少し胸キュン。個人的にいきなり女性に号泣されたら立ちませんけどね。

だからアイ国の建国も、呂不韋に対する当て付けに近いものもある。お前がいなくてもこの国でロウアイという下賎な男と共に幸せになってやる的な。言っちゃえば、BBAの醜い嫉妬。
キングダム38巻 呂不韋
でも、そのアイ国に乗り込んで呂不韋は言う。「ワシは変わらずずっとそなたを愛している」と太后に揺さぶりをかける。実際、呂不韋は太后のことが好きだったようですが、そういった恋心よりも自分の野望を優先させる男。

そして呂不韋の策略と謀略に太后がまんまとハマる。どんどん戦の道へと突き進んでいく。


戦争が始まるリアリティー

これまでのキングダムといえば、超人的な偉人たちが超人的に戦争をおっ始めてた気がしますが、今回の太后は至って平凡といえば平凡。

いや太后は正確には権謀術数にはある程度長けてはいそうですが、精◯をかけた性欲には好戦的でも、生死をかけた戦争には消極的。特にロウアイとの間に子供が産まれたということもあって。また、少なくとも、ロウアイに至っては凡庸な人間。

だからこそ、アイ国が秦国と戦いを始めるまでの過程が現在にも通じるものがありそう。

アイ国は急増で建国した故に脆さもはらんでた。一応急拡大して他国も無視できない存在にはなっていたものの、アイ国には色んな国からのスパイが紛れ込んでいた。そこで凡庸なロウアイを担ぎあげて、どんどん自分たちの思惑通りに動くように操っていく。頃合いを見ては戦争をするように煽り立てていく。結果、秦国にダメージを与えることができたら、周辺の国は喜ぶ。

キングダム38巻 呂不韋VS太后
そして、この秦国との戦いを始めるようトドメをさしたのが、やはり呂不韋。太后とロウアイは不適切な関係だったので、二人の間に産まれた子供の存在は必死に隠してた。いわゆる隠し子。でもそれが秦国にバレたことで、主人公・始皇帝(政)などは激怒。今にも「アイ国の攻め入ってくるぞ!その前に秦国を潰せ!」とアイ国に潜ませたスパイを使って、ロウアイを煽り立てた。

最も愛した女性をも利用する呂不韋の冷淡さ。呂不韋の目的としては、太后とその息子である政(始皇帝)を潰し合わせることで、彼らの血を根絶やしにする。そこで救世主のようにして現れた自分が秦国の皇帝に成り上がろうという計算。発想が常人離れしてて笑う。

キングダム38巻 太后4
太后は太后で、「加冠の儀」になってようやくハメられたことに気付く。その時には既にアイ国の軍隊を秦国内(咸陽)に送り込んでいるので、もう止めるに止められない。だから最愛の呂不韋を返り討ちしてやろうと覚悟を決めた表情が切ない。最期まで哀れなBBA、それが太后。

またアイ国は軍隊も烏合の衆の集まりなので、思い通りに統率できない。結果、もうめちゃめちゃなことが秦国の中で起きる…というところで最新39巻に繋がります。


総括


戦争を始めざるを得ない状況に追い込まれていく、抗えない流れに巻き込まれていく「無能な政治家」の様を見ていると、戦前の日本…今後の日本を彷彿とさせるんではないでしょうか。身の程知らずの政治家や為政者が踊らされていく過程は比較的丁寧に描かれてた。

キングダム38巻 ロウアイ
最初こそ無能なロウアイは戦争に及び腰だったものの、戦争が本格的に始まってから、ようやく決意が固まる。一見カッコ良く描写されてるものの、ただ単に雰囲気に呑まれてるだけ。最終的には「フワッ」とした気持ちの高ぶりに誤魔化されて、戦争に歯止めが効かない。これはおそらく実際の戦争でも似たようなことが言えそう。

太后BBAの嫉妬、その太后BBAにホレた平凡な男が守ろうとする決意、その太后BBAの感情を利用して戦を煽る呂不韋の打算、戦争は「人間の感情」で起こすものなんだなーと。だからこそ戦争は止められそうなものですが、同時に人間は昔から成長してないことも痛感。