『キングダム』1巻から40巻までのネタバレ感想をまとめてレビュー。作者は原泰久。掲載誌はヤングジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミックの中国の始皇帝を扱った歴史漫画。

現在発売されてるのは40巻ということで、ちょうど良い区切りだから「キングダムは面白いか面白くないか」を考察してみました。


キングダムのあらすじ物語・ストーリー内容

時は紀元前245年。日本がまだ弥生時代だった頃。中国には秦(しん)という大国があった。

キングダム5巻 政
(『キングダム』5巻)
主人公は秦国の第31代目の王である嬴政(えいせい)。後に中華統一を果たす、始皇帝。幼少期は趙という別の国で育つものの、国王が亡くなったため秦国へ連れ戻されて、わずか13歳で秦国の王となる。色々と家庭の事情が複雑らしい。

『キングダム』を一言で言うと、この嬴政が各国の武将たちを倒して秦国を中華ナンバーワンの国へ成り上がらせるみたいなストーリー。

当時の中国を説明しておくと、秦国を含めて主に7カ国が勢力拡大に凌ぎを削っていたそう。秦以外だと、魏、趙、斉、楚、韓、燕の6カ国。秦国はこの中だと大国の部類に入ってて、領土の広さ的には楚あたりが強め。『キングダム』がどこまで史実に忠実に描かれてるかは知りませんが、現在までのストーリーとしては秦国は主に趙や魏あたりとメインに交戦してる印象。


政(始皇帝)のキャラクターが良い

まずは主人公である政(始皇帝)のキャラクターが力強い。言動であったりセリフであったり、基本的にブレがないので読者としては安心して読めます。

キングダム31巻 咸陽での戦い・政2 民兵を奮起
(『キングダム』31巻)
例えば、咸陽・蕞での戦いでは秦国は、合従軍という複数の国が徒党を組んだ敵に苦しめられる。そこを政が民衆たちを奮い立たせることで、何とか合従軍の猛攻を凌ぎきる。政は武力がないものの、言葉で相手を説き伏せるところは、まさに為政者としての実力を最大限発揮した場面。この後の始皇帝が徐々に成長していく過程も『キングダム』の見所の一つ。

キングダム40巻 政
(『キングダム』40巻)
40巻目の段階では、政が呂不韋相手に「どちらが王に相応しいか?何を以って戦争を食い止めることができるのか?」を力強く語る場面はグッと来ました。

ちなみに実際の始皇帝(嬴政)はかなりのドエスだったらしい。横山光輝の漫画だったか忘れましたが、とことん暴虐の限りを尽くしたそう。だから政のキャラクターとは真逆とも思えるので、『キングダム』ではどう折り合いを付けるのかと疑問でしたが、39巻40巻を読む限りは「光」という表現を使うことで上手に整合性を取れたのかなと思いました。一方でロウアイを容赦なく処刑するなど、政の鬼畜性が早くも垣間見られた巻でもありましたが(笑)

キングダム18巻 信
(『キングダム』18巻)
ちなみに『キングダム』にはもう一人主人公がいて、それが政の下で働く信(しん)。いわばW主人公という設定を取ってます。画像は敵国の民間人をいたぶる同じ秦国の兵士に対してブチ切れてる場面。この信も始皇帝と同様に言葉に力強さがありますが、基本的には戦場で戦う武将の一人。

だから個人的にW主人公の漫画は意外にビミョーだったりするんですが、『キングダム』ではお互いの役割がしっかり住み分けができてる。政は為政者として権力闘争を勝ち上がり、信は武将として戦場で名を挙げる。だから二人の主人公が一つのロマンに向かって、相乗効果のように更に熱いキャラクターとして成立させることができてます。


王騎や呂不韋など個性的な登場人物たち

主人公の政や信以外でも、かなり個性的な武将たちが揃ってます。

キングダム10巻 王騎
(『キングダム』10巻)
例えば、最たる例が王騎(おうき)。秦国六大将軍の一人の猛将。「秦の怪鳥」と恐れられ、その異名が中国大陸に広く名が轟いてるぐらい強い。でも何故かオネエ言葉を炸裂。それ故に更に不気味。

キングダム15巻 王騎の一振り一閃
(『キングダム』15巻)
この王騎は戦場で武器を一振りするだけで敵が一瞬で壊滅。『KINGDOM』ではこの王騎クラスのバケモノ武将は他にもたくさん登場するんですが、簡単にスパスパと真っ二つされていくモブ兵士たちが哀れで仕方がない(笑)

他にも秦国だと、王騎の部下だった騰(とう)。武将として強いだけじゃなくて、ひょうひょうとしてる性格のギャップ感が素敵。桓騎(かんき)は敵の鎧をまとって潜入して、敵大将の首を打ち取るなど、常識にとらわれない感じが面白い。王翦(おうせん)はマスクを被って謎だらけ。

ただ敵の武将も負けず劣らず面白い。

キングダム16巻 李牧
(『キングダム』16巻)
例えば、趙の李牧(りぼく)。武力はからっきしっぽいですが、頭脳明晰で最終的に王騎を追い詰めて倒す。また趙軍の三大天の一人である龐煖(ほうけん)は、大木を一振りでスパスパ切っちゃう怪力の持ち主。前述の王騎も真っ青。

キングダム21巻 廉頗・元趙の三大天の一人
(『キングダム』21巻)
魏の廉頗(れんぱ)もめちゃめちゃ強い。元々は龐煖と同じく、趙軍の三大天の一人だったんですが、理不尽な理由で更迭された結果、魏に亡命したという過去を持つ。この背景からだけでも、当時の中国では凄まじい権力闘争があったことが見受けられます。この魏軍だと呉慶もビジュアルバンド系で個性的。

ただ主人公・政(始皇帝)に立ちはだかる敵は趙や魏といった外国ばかりではなく、同じ秦国にもいる。
キングダム18巻 呂不韋
(『キングダム』18巻)
その代表格が呂不韋(りょふい)。元々は商人だったんですが、政の母親の皇太后に付け入るなどして、秦国の中で成り上がっていった異色の過去を持つ。厳密には武将(武人)ではなく文官ですが、嬴政(始皇帝)を引きずり下ろして自分が秦国の王になろうと目論む。

だから裏で何度もクーデターを起こしてるトンデモないヤツですが、決してホコロビを見せないので政としては追い落とすことができない。この呂不韋と嬴政の権力闘争も見ものです。ちなみに『キングダム』40巻でようやく二人の争いに決着が尽きます。


迫力のアクション描写と戦場で繰り広げる権謀術数

これらは見た目からして個性的な武将たちでありますが、当然、戦場で戦う以上は兵士を何千人何万人と動かす必要があります。つまり「チームとしての戦略」も必要になってきます。いわゆる孫子に代表される「兵法」とも呼ばれるやつ。特に『三国志』といった中国歴史ものでは、ある意味必須とも言えるアイテム。

この戦略や戦術においても各武将たちの個性が如実に現れる。例えば前述の李牧はゴリゴリの戦略家。秦国であれば、河了貂や昌平君がそれにあたります。

蒙武 キングダム公式ガイドブック 英傑列記
(キングダム公式ガイドブック 英傑列記)
一方で戦略性を一切度外視した一点突破型の戦略を取る武将もいて、その代表格が蒙武(もうぶ)。

とにかく目の前にいる敵をなぎ倒していくこと以外は考えてない。もし自分が蒙武の部下だったら心配しかしないわけですが、それを補って余りあるほどの武力の持ち主。頭脳派の李牧も苦戦した。ちなみに蒙武は王騎の死を目の前にして、「攻め一辺倒ではない円熟味の増した勇将へと成長」します。

こういった戦場で展開されていく各武将たちの戦術も『キングダム』の見所です。

キングダム19巻 王賁
(『キングダム』19巻)
もちろん戦場で展開されるアクション描写も派手。画像は秦国の王賁(おうほん)。

キングダム37巻 アクション描写
(『キングダム』37巻)
ただアクション描写というより、戦場における「一瞬の死闘性や気迫」を切り取ってる感じ。コマの連続で躍動感を演出するというより、一コマ自体が与えるインパクトや力強さに重きが置かれてます。

キングダム30巻 麃公の最期・龐煖との戦い
(『キングダム』30巻)
だから、趙軍の龐煖と秦国の麃公(ひょうこう)との戦いは壮絶でした。まさに「男と男の美学がぶつかり合う」という泥臭い各々の気迫が描写されてる。つまり全体的に躍動感があるというより、緻密に線が細かく描かれていて迫力がある、と表現した方が正しい気がします。


セリフの文字や吹き出しが小さい

『キングダム』ではアクション描写が迫力たっぷりと書いたばかりですが、意外にセリフの文字が小さいのが気になるところ。

キングダム29巻 小さいセリフ
(『キングダム』29巻)
例えば画像の場面だと、呂不韋が「さすが儂の蒙武だ」と笑ってることに対して、呂不韋の部下が「ごもっともワハハ」とリアクションを返してる。でも、この部下の吹き出しが異様に小さい。だから必然的に文字も小さくせざるを得ない。

でもストーリーの流れ上、これが必然性があるセリフとは思えない。言っちゃえば、わざわざ書く必要がない。こういうのが意外に多い。

前述の通り、アクション描写の「迫力」は豪快な筆致が生み出してるというより、実は繊細な描き込みの多さによって達成してる部分があるので、作者・原泰久も意外に繊細。あとがきを読んでも、文章をギチっと詰め込むタイプ。そこら辺が影響してるんだろうと思いますが、もっと吹き出しを大きくしないと読むのがしんどい。

きっと原泰久的には吹き出しを大きくし過ぎると、せっかく描いた絵が消えてしまうので心理的に吹き出しは大きくしにくいのかも知れませんが、セリフを手書きで描き込むといった手法もあるはず。原泰久もオッサンだと思うので分かってくれると思いますが、もう少し読み手のことも考えて欲しい部分もあります。


キングダムの総合評価・評判・口コミ


『キングダム』が面白いかつまらないかネタバレ考察をまとめると、ジャンルは歴史漫画でこそありますが、そこまで決して堅苦しいもんでもないので誰にとっても読みやすい。また上手いことバトル漫画的な要素も取り込んでるので、意外にすいすい読み進められて面白い。ただし文字の小ささや武将の名前の覚えづらさを除けばですが。

『キングダム』のストーリー展開も「戦(いくさ)」ごとですので、信たちが率いる秦国がしっかり最後まで敵の武将を倒すところまで描かれる。『キングダム』では変にストーリーが脱線することも、変に出し惜しみ的に展開を引っ張ったりすることも少ない。だから読後感としては気持ち良く終わることが多く、ここらへんが王道バトル漫画を彷彿とさせる部分の一つなのかも知れません。

キングダム16巻 王騎の死に様・天下の大将軍
(『キングダム』16巻)
「戦場で儚く散っていく男(武将)たちの美学」と「政と信の中華統一という壮大なロマン」が上手いこと融合されていて、これが特にオッサン読者を魅了しているんだと思います。画像は王騎の死に際。

この記事ではあくまで40巻までしか読んでない上での評価ですが、おそらく今後も『キングダム』の勢いが落ちる可能性は少なく安定して面白い展開が維持される気がします。作者・原泰久が嬴政こと始皇帝の物語をどこまで描くつもりかは知りませんが、『キングダム』は100巻まで連載が続く可能性は十分あり得ると思います。