『実は私は』 1巻から16巻のネタバレ感想をレビュー。作者は増田英二。掲載誌は少年チャンピオン。出版社は秋田書店。ジャンルは少年コミックの青春ラブコメ漫画。今回も面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は黒峰朝陽(くろみねあさひ)。なんてことはない普通の男子高校生なんですが、とにかく隠し事ができない性格。表情で全てがバレてしまうので、友達からは「アナザル(穴の空いたザル)」と呼ばれることもある。

この黒峰朝陽が好きな女子生徒が白神葉子(しらがみようこ)。見た目はクールな美人。いつも無表情で無口。友達も一人もいないらしいが、それでも学校にはいち早く登校して、何故か誰よりも遅く下校している謎の多き美人。

ある日、黒峰朝陽は白神葉子に告白しようと決意する。誰よりも遅く下校するということは、放課後は必ず教室にいるということ。
実は私は1巻 白神葉子
(実は私は 1巻)
そして黒峰朝陽が意を決して教室のドアを開けると、そこには巨大な羽を伸ばしている白神葉子の姿ッッ!!ちっちゃいコウモリもパタパタと飛んでるー!!

実は白神葉子は吸血鬼。父親も同じく吸血鬼で、「誰にもバレない」ことを条件に学校に通わせてもらっていた。果たして黒峰朝陽は白神葉子の秘密を守ることができるのか?人間との吸血鬼の恋愛が成立するのか?みたいなマンガです。


登場人物は多いものの渋滞せず

ただ秘密を持ってるのは、ヒロインの白神葉子だけじゃない。それが一人や二人ではなく、ほとんど全員が秘密を持ってる。

実は私は14巻 登場人物 キャラ表
(14巻)
キャラクターは現地点でこれぐらいに増殖するんですが、肩書を見ると「宇宙人」や「未来人」やら「堕天使」やら「サキュバス」やら色んな属性がいすぎ。まさに色んな意味で全員集合なラブコメ漫画(笑)

実は私は8巻 表紙
(8巻)
だからあとでコミックスの表紙を見てもらったら分かりますが、こんな感じで全員が人差し指で「しー」のポーズをしてます。「みんな私の秘密を喋っちゃダメよ」的な意味なんですが、アイデアや発想がシンプルで割りと好き。漫画の表紙(装丁)だけを扱ってるようなブログがありますが、これは取り上げないんでしょうか、はてさて。

実は私は6巻 藍澤渚 告白後も逃げる
(6巻)
例えば、藍澤渚(あいざわなぎさ)だと宇宙人。宇宙人とは言ってもタコ型タイプではなく、めちゃめちゃミクロ。学校生活を送ってる普段時は、見た目が同じのロボットに乗り込んでる。

実は私は5巻 紫々戸獅穂
(5巻)
紫々戸獅穂(ししどしほ)はオオカミ女。丸っこいものを見るとオオカミ男・紫々戸獅狼(ししどしろう)に変身する。ただ基本的なベースは単なる痴女なので、痴女ってる最中に変身して大惨事がよく起きる(笑)

絵柄や雰囲気が似てるのでパット見はゴチャゴチャしてるんですが、実はそこまでゴチャゴチャしない。各々の登場人物がしっかり描き分けされてるので、読んでても混乱しない。それぞれの言動が色んな意味でヒドいんですが、こんなにキャラクターが豊富に登場する割に渋滞してないのはすごい。


王道ドタバタコメディーの応酬

『実は私は』を一言でまとめると、あらすじでは若干シリアスっぽく説明しましたが、王道のドタバタコメディー。キャラクターの個性がそのまま笑いに繋がってる、ゴリゴリのギャグ漫画。キャラクターの多さを含めて、まさにテンヤワンヤなドタバタな笑いが展開されます。

笑いはシンプルで王道。誰でも受け入れられる。笑いのイロハを理解してるので、ノリ良し、テンポ良し、間良し、スカシ良し。間断なく笑いをぶっ込んでくるのでテンポ感もGood。ギャグ漫画として評価すると全体的にレベルは高い。

実は私は13巻 藍澤渚
(13巻)
ツッコミも冴えてて、緩急の使い方が上手い。

実は私は9巻 紅本明里の犠牲者
(9巻)
アイテムの使い方も上手い。

実は私は4巻 黄龍院凛
(4巻)
例えば、黄龍院凛(きりゅういんりん)は未来人。眷属とか難しい言葉を使ったり、巨大なドラゴンに乗ってくるなど、もはや未来人の域を超えてる雰囲気。

実は私は6巻 黄龍院凛の住まい
(6巻)
ただそのドラゴンがタイムマシン兼住居。しかも家賃が月6.7万円と時間移動をできることを考えたら、相当な格安物件。レオパレスもビックリ。

実は私は7巻 銀華恋
(7巻)
銀華恋(しろがねかれん)は堕天使で不良ぶってるんですが、実はやっぱり良い人。願いことを簡単に叶えてくれるんですが、その代償が「ありがとう」の一言だけ。

こんな風に属性やギャップ感を活かした笑いが多め。


紅本明里という中年オンナ

ただ実は吸血鬼や悪魔といった属性ではなく、普通の人間の方がキャラとしてパンチが効いてたりします。

実は私は16巻 紅本明里
(16巻)
例えば、紅本明里はこれでも担任教師。決して悪魔とかではありません。とにかくオトコにモテない元ヤンキー。それをこじらせすぎるとこうなるらしい(笑)

学生時代はホレる相手が毎回不良高校の番長。そこで告白のために高校に乗り込むものの、毎回フラれる。そしてフラれた腹いせに100近くの不良高校が壊滅した逸話を持ってる。

実は私は9巻 紅本明里
(9巻)
モテないだけあって女子力をアップさせる方向もズレてて、何故かメイド喫茶で花嫁修業してる。そこへ主人公の黒峰朝陽たちが偶然遊びに来る。紅本明里がバイトしてるとは当然知らなかったんですが、あまりの恐怖の光景に誰も振り返れない。

実は私は9巻 紅本明里の犠牲者
(9巻)
ちなみに前述のメガネとツノの画像は、このクダリの出来事です。紅本明里をメガネの岡田と悪魔兼校長兼高祖母の紅本茜がからかいすぎて、ボコボコにされてしまったというオチになります。逆によくメガネだけ無事だったな!

実は私は15巻 紅本明里1
(15巻)
ある時はヒーローショーの主役をやって、まさか子供たちから未来の旦那さんを探そうとする。

実は私は15巻 紅本明里2
(15巻)
もちろん子供たちはこんな表情。泣ける!

ちなみに、これもやはり高祖母の紅本茜のあくどいイタズラで、キグルミの中身は紅本先生ではありません。それにしても「中年だー!中年が出たぞー!おばさーん、こっち向いてー!」という歓声が泣けます。


オンナ好きの嶋田はBL好き?

個人的に面白いキャラクターが嶋田。主人公・黒峰朝陽の同級生で、やはり同じく普通の人間なんですが、とにかく女性に目がない。もはやゲスの極み乙女以上にゲスい。色んな女性に声をかけるんですが、そこで悲しいすれ違いが度々起きる。

『実は私は』には色んな秘密を抱えた登場人物が登場するんですが、中には紫々戸獅穂のように性別が変わるキャラもいる。他だと藍澤渚の兄・藍澤涼がいる。やはり宇宙人なんですが、渚とは違って性別が異なる「人間の女性」に入ってる。

実は私は8巻 嶋田と藍澤涼
(8巻)
だから嶋田が必死にアプローチしてるんですが、状況を知ってる黒峰朝陽だけは「死に急ぐんじゃない!嶋ぁぁぁー!!」と絶叫。乗ってるロボットの性別は女性なので、ギリギリ問題ないような気もしますが(笑)

ただ緑苑坂弓という女教師はアウト。何故なら、やはり元々は白神源二郎という吸血鬼。もといヒロイン・白神葉子のパパだから。しかも白神源二郎は5m級の巨人。
実は私は12巻 嶋田と緑苑坂弓
(12巻)
だから緑苑坂に抱きついても、なんか顔面に抱きついたみたいになってるぅーー!!確かに理屈的にはそうだけど!これはなかなか笑えました。意外に奇をてらったキャラより、案外普通のキャラの方が面白かったりしますが、まさに嶋田はそんな感じ。


ラブコメとしては物足りない

ただ『実は私は』のジャンルはラブコメに位置付けてますが、いかんせんラブの部分が弱い。もはやギャグにしか比重が置かれていないと言ってもいいぐらい。少年チャンピオンだからラブストーリーを作るノウハウがないのかも知れませんが、とにかくボケ倒す。

実は私は15巻 白神 シリアス展開?1
(15巻)
例えば、こんな風にシリアスな展開が発生したとしても、

実は私は15巻 白神 シリアス展開?2
(15巻)
ほぼ全てが笑いで終わってしまう。ちなみに画像は「白神葉子が吸血鬼としてどんどん覚醒し始めてしまったのか?」というストーリーの根幹に関わってくる重要な部分に思えますが、次の笑いに繋がるための前フリにしか利用されてない。

少しネタバレしておくと、黒峰朝陽と白神葉子が正式に付き合った後も、二人の間には恋人らしいやり取りがほとんどない。胸キュン的な部分が皆無に等しいので余韻がほとんど残らない。前述のように面白くないことはないんですが、どうしても読後感に物足りなさを感じるのも事実かな。

実は私は16巻 紅本明里と桜田
(16巻)
現地点での最新刊でようやく紅本明里と桜田のクダリを「まともなラブストーリー」として読めたぐらい。少年ジャンプで連載してる『ニセコイ』は何やかんや言われますが、このマンガを読むと改めてその面白さも再発見できる気がします。

総じてレベルが高い漫画だからこそ「ギャグ以外の要素」が欲しかった。恋愛描写は小休止・箸休めとして働いて、一つ一つボケを中和してくれる効果も生む。そのことが結果的にギャグ漫画としての寿命を伸ばすことにも繋がるはず。


総合評価・評判・口コミ


『実は私は』の感想をまとめると、意外に面白かった。

やや古臭い絵柄と意味不明なマンガタイトルから食わず嫌いで敬遠してましたが、読み始めると案外グイグイ読めちゃう。笑いにハズレが少なく、登場人物も個性的で豊富でキャラクターも濃い。ハードルを下げて読んだこともあって面白かった。純粋なギャグ漫画としては高く評価されていいと思います。

でもあくまで「ギャグ漫画として面白い」ということ。一話完結のオムニバス形式なので非常に読みやすいんですが、悪く言えばストーリー性に欠ける。だからドタバタコメディー一辺倒な展開に単調さを感じます。

またこれだけボケの応酬を展開されると、読者は休むヒマを与えてくれないので正直読んでて疲れる。リアルタイムで読んでると毎週飽きないかも知れませんが、一冊でまとめてコミックで読むとすぐお腹いっぱいになる。それだけ「つまらない」と感じるのも早いか。

いかんせんラブストーリーの部分がやはり弱すぎます。だから漫画としての深みやギャップ感に欠け、全体的に後を引くような面白さは少なく、読み応えという点では弱い。完全な男子向けの内容に仕上がってて、女性読者の取りこぼしが多いと推察されるのはもったいないです。

ただストーリー性がない分だけアニメ化はしやすそう。ラブな部分が弱いからこそ小さい子供で見れるかも。一話一話には爆発力があるので、それなりに人気は出そう。『妖怪ウォッチ』みたいなゲームも流行ってるので、こういう設定はアリなのかなと。

ちなみに「時間軸」が設定されてるらしい。だから学園漫画にありがちな「時間が永遠にストップ」してるワケではないので、多分東京オリンピックぐらいまでには完結してそうです。