『いぬやしき』5巻のネタバレ感想。作者は奥浩哉。イブニング(講談社)で連載中のSF漫画。これまでのあらすじは獅子神ヒロが警察に捕まりそうになったものの、渡辺しおんという同級生に助けられた直後から。


母親の死

ずっと渡辺しおんの家に住まわせてもらってた獅子神ヒロ。渡辺の祖母も優しく、詳しいことを聞かれることもなく、衣食住だけは確保されてた。ただ状況的には悪化していく一方。

獅子神が大好きだった母親には、マスコミがこぞって取材の攻勢をかけてくる。テレビでは泣きながらインタビューに応える母親に対して、何もできずに獅子神は涙を流すだけ。インターネットでも「犯罪者の親」というレッテルが貼られて、自分の母親の悪口が書かれまくり。

あまりのマスコミの取材の多さに精神的に耐えられなくなったのか、母親は失踪。それをテレビを観て知った獅子神は、思わず安堵。どこか遠くの友人や知り合い宅へ逃げただけだと思った。ただ獅子神はやはり幼稚というか、普通は最悪の状況を想像するもの。

いぬやしき5巻 獅子神の母の死
(5巻)
案の定、母親は亡くなってた。それを獅子神が大好きなお笑い番組に流れたニューステロップで知る。それまでヘラヘラ笑ってただけに、このギャップ感はえげつない。

ちなみに画像の芸人はバナナマン日村にしか見えませんが、まさにバナナマン日村。他にはバカリズムの偽善者のような笑顔も描かれてます(笑)


2ちゃんねらーの無様っぷりがハンパない

その後、獅子神は母を死に追いやったマスコミの取材陣を襲撃。まさか犯人が自分たちの目の前に現れるとは思ってなかったので、慌てふためきつつ一方的に倒れていく姿は妙にリアル。

いぬやしき5巻 対2ちゃんねらー1
(5巻)
自分の家の住所をマスコミにリークしたのが、実は近所に住んでた2ちゃんねらー。これを2ちゃんねるを閲覧してた獅子神が知る。ちなみにメールの宛先がフジテレビ。漫画家にどんだけ嫌われてんねん!フジテレビ!(笑)

いぬやしき5巻 対2ちゃんねらー4
(5巻)
そして獅子神と「見つけた…今いく」と書き込んで、>>2から順に書き込んでいったヤツを片っ端から◯していく。ここだけ見たらホラーですが、とにかく獅子神の追い詰め方がヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!

いぬやしき5巻 対2ちゃんねらー2
(5巻)
パソコンのモニターをハッキングしてボーンと現れる獅子神。これまではヘラヘラと余裕ぶっこいてたくせに、突然の状況に無表情を浮かべる2ちゃんねらー。でも虚栄心にまみれてる彼らですので、即座に余裕ぶった笑顔を浮かべる。でも不自然極まりない。必死に母親を呼んでる時点で、内心かなりビビってることも伺えます。

絶妙に冴えない感じのルックスも愛おしい。獅子神はコイツに一方的に話しかけるものの、それに対してこの2ちゃんねらーは応えることは少ないので、「獅子神だ!本物…ウケるー」と強がりつつも、これをイマイチ現実として認識するのに時間がかかってる印象。

いぬやしき5巻 対2ちゃんねらー3
(5巻)
だから獅子神に「今から俺がお前に何するか分かる?」と訊かれても、「エ口フォルダバラまかれるぐらいで俺がビビると思うなよ」と、自分の頭の中で事態を矮小化しようと必死。獅子神は極悪人なわけで、だからコイツもマスコミに母親の居場所をリークしたわけです。

コイツはもちろんボコボコにされちゃうわけですが、この映像を公開しても他の2ちゃんねらーは「合成が甘い。セミプロCG職人だな」と強がるアホもいる。安倍晋三がゴルフ三昧で何もしなかったイスラム国関連の事件でも、こういう自称映像のプロがたくさんいましたが、もちろんこのあと…。色んなパターンのリアルにいそうなルックスの人間ばかりで、許可もらってないなら結構問題かも(笑)

自分だけは「例外な存在」と思い込んでる典型的な野次馬像(2ちゃんねらー像やヤフコメしてる連中像)を描けてる気がします。作者の奥浩哉も人気ですので色々と思うことはあるんでしょうが、だから読後感としては変に溜飲が下がります。

いぬやしき5巻 対2ちゃんねらー5
(5巻)
最終的にはスレッドは白紙状態。まさに誰も書き込まなくなった。モニター画面越しでも獅子神は攻撃できるという一種の布石は、今後の展開に活かされる気がします。


渡辺しおんの懇願

この後のストーリーとしては、ずっと泊めてもらってた渡辺しおんに全部バレる。というか獅子神が自分の口で白状する。母親が亡くなったことで自暴自棄めいたものもあったんだと思います。

だから獅子神ヒロ的には渡辺しおんも…ということを考えてたと思いますが、渡辺しおんはビビるどころか、それでも獅子神と離れたくないと主張。その好意に対して、母親の死で生まれた確固たる殺意の感情が薄らぐ。

いぬやしき5巻 渡辺しおんの懇願
(5巻)
ただ渡辺的には、それでも獅子神が行った行為に対しては強い憤りがある。警察に自首しない獅子神を責めるものの、一方で獅子神とは離れたくないという真逆の感情にどうしていいか分からず、渡辺は号泣。

いぬやしき5巻 獅子神ヒロが病気を治療
(5巻)
そこで獅子神は犬屋敷と同様に、末期ガンの患者など病人を救っていく。犬屋敷とは違って、病人を集める方法はまさかのツイッター。渡辺しおんのアカウントでやってるものと考えられます。ただ犬屋敷は驚異的な聴覚で病人の存在を知ったと思うので、SNSを使う方法はアナログなのか最先端なのかイマイチ分かんないという(笑)

そして獅子神浩も渡辺しおんにホレたのか、最終的には渡辺しおんを空中で抱きしめながら、「ずっと大事にするから」と軽い恋愛漫画モード。渡辺しおんの祖母とも仲良く食事するなど、まさに家族団らんといった光景…のまま終わるはずがない!
いぬやしき5巻 急襲部隊
(5巻)
みんなが寝静まった頃、ベランダには警察か自衛隊と思わしき急襲部隊の姿が!!もうイヤな予感しかしないという場面で最新6巻へ

総括


いやー面白かったです。一部のネット住民の追い込み方としては、斬新なアイデア。どうしても「仮想空間」という発想から抜け切れないことが多いものの、相手を物理的にぶっ潰した作品は小説・アニメ・映画を含めてなかったはず。

2ちゃんねる自体が落ち目だからアレな部分もありますが、痛いブヒブヒ野郎が倒される姿は軽く爽快。とはいえ、奥浩哉とかから見たら、自分はどちらかと言えばヤられる側に入るのかも知れませんが(笑)

いぬやしき5巻 獅子神ヒロ「全世界が敵」
(5巻)
そして獅子神は対2ちゃんねらー後、渡辺しおんに対して「これからは全世界が俺の敵だ」と言い放ってるんですが、まさに6巻以降はこんな展開が待ってそう。せっかく渡辺しおんの存在で獅子神は改心しつつあったものの、本当に絶妙なタイミングで暗黒面に突き落とそうとする、作者・奥浩哉の鬼畜っぷりには頭が下がります。テンポ感は◎。

ちなみにいぬやしきが面白いか考察レビューを書いた記事はアップ済み。