『妖狐×僕SS』全11巻のネタバレ感想をレビュー。作者は藤原ここあ。掲載誌は月刊ガンガンジョーカー。出版社はスクウェア・エニックス。ジャンルは少年コミックの妖怪恋愛漫画。ただ輪廻転生などSF要素もあってストーリーはやや複雑かも。ちなみに漫画感想ブログ「すごないマンガがすごい」で過去レビューした記事の再編集版。

残念ながら、作者・藤原ここあが今年3月に30代前半という若さで亡くなってたらしい。そこで冥福も込めて面白いかつまらないか考察してみた。


読み方は「いぬぼくシークレットサービス」

最初に言っておくと漫画タイトルである『妖狐×僕SS』の読み方は「いぬぼくシークレットサービス」。略し方は多分「いぬぼく」。間違っても「ようこぼくエスエス」ではありません。ずっと自分はそう呼んでたのは内緒( ;∀;)

ちなみに後述しますが、それと比例してか『妖狐×僕SS』に登場してくるキャラクターも難解な名前が多いです。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は白鬼院凜々蝶(しらきいんりりちよ)。
妖狐僕SS1巻 白鬼院凜々蝶
(1巻)
驚異的なツンデレで周囲に悪態をついてしまうクセがある。そして一人称が「ぼく」。いわゆるボクっ娘。これがタイトルの「僕」に繋がってる。

ずっと大事に育てられてきた白鬼院凜々蝶は、それじゃあイカンと一人暮らしを決意する。ただ親から条件として出されたのが「妖館(あやかしかん)」に住むこと。ちなみに正式名称は「メゾン・ド・章樫(あやかし)」というマンション。

妖狐僕SS1巻 妖館
(1巻)
その名の通り、そこは妖怪の先祖返りした半妖(?)ばかりが住むマンションだった。ちなみに先祖返りとは、「先祖が過去に妖怪と交わり、その妖怪の血を濃く受け継いで生まれてくる者たち」だそう。

そのメゾン・ド・章樫ではセキュリティー対策として、一世帯につき一人のシークレットサービス(SS)が付くようになってた。分かりやすく言うと、いわゆるボディーガード。つまりタイトルのSSは「シークレットサービス」の略語。
妖狐僕SS1巻 御狐神双熾と白鬼院凛々蝶
(1巻)
そして白鬼院凛々蝶には御狐神双熾(みけつかみ・そうし)というSS(シークレットサービス)が付く。九尾の妖狐の先祖返りってことで、タイトルの「妖狐」は、この御狐神のこと。白鬼院凛々蝶は「御狐神くん」と君付けで呼んでる。

だから『妖狐×僕SS』のストーリーとしては、この二人の恋愛物語的側面が強いマンガ。他には序盤は妖館に住むキャラクターたちと悪い妖怪たちと戦ったり、住民同士による絆を深め合ったりといったホッコリしたオムニバスが展開される。

ただ中盤の5巻以降は、犬神命というボスによって「百鬼夜行」が行われる。そこで白鬼院凛々蝶たちは死亡。そして再び輪廻転生を起こして第二の人生(?)を歩む。23年の月日が経った場面からが『妖狐×僕SS』というマンガのメインストーリーが始まるといったところ。それは追々説明。


妖狐×僕SSの登場人物キャラクター

冒頭でも書きましたが、『妖狐×僕SS』のキャラクターは難解な名前が多い。

白鬼院凜々蝶(しらきいん・りりちよ)…鬼の先祖返り。
御狐神双熾(みけつかみ・そうし)…九尾の妖狐の先祖返り
反ノ塚連勝(そりのづか・れんしょう)…一反木綿の先祖返り。
雪小路野ばら(ゆきのこうじ・のばら)…雪女の先祖返り。
青鬼院蜻蛉(しょうきいん・かげろう)…鬼の先祖返り。
髏々宮カルタ(ろろみや・かるた)…がしゃどくろの先祖返り。
渡狸卍里(わたぬき・ばんり)…豆狸の先祖返り。
夏目残夏(なつめ・ざんげ)
小人村ちの…コロボックルの先祖返り。


ざっと並べてみると壮観。自分のようなオジサン読者だときっと苦労しそう。いや、自分ですらこの漢字の多さに辟易としてるぐらいなので、むしろメイン読者層であろう中高生ぐらいは難解漢字をちゃんと読めてるのか心配になるぐらい(;´Д`)

ちなみに先祖返りの意味を改めて説明しておくと、妖怪の血を濃く受け継いで生まれてきた人間。だから、ちょいちょい妖怪に戻ることも可能。その妖怪の姿に戻ると戦闘能力もアップするので、前述のようにアクション描写もしばしば展開される。

でも『妖狐×僕SS』のキャラクターは個性的。
妖狐僕SS1巻 白鬼院凜々蝶のツンデレっぷり
(1巻)
例えば、主人公の白鬼院凛々蝶のツンデレっぷりは、まさにこれぞツンデレ。使い古された設定ではありますが、実はマンガの中で体現するのは難しい。どうしてもツンの比重が多くなってしまうマンガが多くて、ただの「嫌な性格の奴」になってるキャラが多い。

でも白鬼院凛々蝶の場合、デレが7割ぐらいあって好感が持てるキャラ作りができてる。特に女子的には好きそうな、ちょうどいい陰の部分もあるキャラ。御狐神とのラブストーリーはきっと女子はハマりそう。

妖狐僕SS2巻 渡狸卍里
(2巻)
渡狸卍里(わたぬきばんり)というキャラだと、豆狸の先祖返りだからあまり役に立たない。でも人間に戻るとイケメンな美少年。女子ウケ抜群っぽい。他にも渋いハンサム系のキャラクターがいたり、それぞれ個性的なキャラが多かったイメージ。


百鬼夜行というタイムループがややこしい

ただ「あらすじ」部分でも書きましたが、5巻あたりで上記キャラクターが全滅する。いわゆる「百鬼夜行」の犠牲になっちゃう。ただ、それぞれのキャラクターが輪廻転生して時間軸が20年ほど進行。そして、また同じように白鬼院凜々蝶などは妖館へ入居して…という展開を繰り返す。

だからSF要素が全開で、ストーリーはややこしい。過去に戻って何を変えるのか。百鬼夜行を止めたところで、現在を生きてる人間は消える?正確にある程度時間軸が把握できないと、そもそもいつどこの誰が何をしてるのかみたいなことが分かりづらい。

妖狐僕SS8巻 輪廻転生表
(8巻)
またキャラの名前自体は変わってないものの、見た目は微妙に変化。あと前世の記憶を覚えてるキャラがいたり、逆に前世の記憶がないキャラがいたり。例えば、白鬼院凜々蝶だと今の御狐神が好きなのか、前世の御狐神が好きなのか葛藤したりする。そういう設定があるからこそ色んな話の展開が作れてる部分は多いものの、結構付いていくのは大変。

しかも、途中から「interlude」というキャラクターの過去編やオムニバスが合間に挟まれてるので、リアルタイムで読んでた方はきっとヤキモキしたはず。また繰り返す展開はやや既視感も芽生えなくはないので、アンチ読者さんからは「引き伸ばし」批判があったとかなかったとか。


最終回のオチは泣ける

それでもストーリーの展開は見事。構成力は秀逸。11巻という短いボリュームで、しっかりキレイに完結させた最終回でした。リアルタイムだったら知りませんが、11巻まとめて読めば決して「引き伸ばし」という批判は的外れだったことが分かります。

序盤はゆるい恋愛マンガかなーと思ってたら、かなり実はシリアスな展開。メインの読者層を考えると、やや疲れそうな展開に思えなくはないですが、しっかり胸を打つような展開を要所要所で作れてる。

妖狐僕SS11巻 犬神命
(11巻)
百鬼夜行で白鬼院凛々蝶たちを苦しめていた犬神命も、ラストでは泣けるような生き様を見せてくれる。犬神命はラスボスとは言いつつも、最後は憎めない奴で終わってて読後感としては悪くない。少年マンガとして考えても王道な終わり方。また少女マンガとしてもキュンキュンできる終わり方は王道と呼べる。両方の王道が交じり合った良い死に方。

妖狐僕SS11巻 白鬼院凛々蝶と御狐神双熾
(11巻)
SF要素について若干批判もしましたが、しっかり最後は「これから続く白鬼院凛々蝶と御狐神双熾の恋愛ストーリー」というSF要素を活かした終わり方に仕上がってる。それが絶妙に切なく、またキュンキュンした読後感をもたらす。きっと『運命』という単語に惹かれそうな、女性読者はこんなオチや完結は好きかも知れない。

序盤だけ読むと、よくあるオタク少女向けのマンガかと思ってたら、実はマンガとして良書の部類に入るクオリティーだった。少女マンガにありがちな薄っぺらい「キュンキュン」ではなく、男読者でも思わず涙腺が緩むような『キュンキュン』。


総合評価・評判・口コミ

『妖狐×僕SS』のネタバレ感想をまとめると、11巻という巻数ながら実に内容が濃い。総じてレベルが高い漫画でした。また登場人物・キャラクターは、それぞれ絵柄も可愛らしくまたカッコいいので、きっと女の子読者は好きなはず。

ただ後半は特にシリアスな展開が続くなど、内容的に小中学生だと難しい感じもしますが、途中でのほほんとするようなギャグやコメディが挟まれるます。だからちょうどいい刹那的な箸休めになっていてそこまで疲れない。その箸休めが落差やギャップ感として、悲しいオチがより悲しくなる触媒として生きている部分もあります。だから読後感の余韻は切なさが残ります。

惜しむらくは、作者の藤原ここあが亡くなったことぐらい。笑いも描けるし、キュンキュンも描ける。泣ける展開やシリアスな展開も描ける。本当に惜しいマンガ家さんを亡くしました(合掌)

「輪廻転生」がテーマということで、もし自分で命を絶っていたとしたらモッタイナイ。むしろ、自分の命を見つめながら描いていた可能性もあり、この『妖狐×僕SS』を描いてるうちに作品に感化されて…という部分があればファンの読者からしてみたら、また違った読み方をしてしまうのかも。