『インベスターZ』1巻から9巻のネタバレ感想。作者は三田紀房。モーニング(講談社)で連載中の投資漫画。インベスターZ最新10巻が9月23日に発売されたので記事化。

あらすじ

舞台は北海道にある道塾学園という、全国屈指の中高一貫校。しかも入学金ゼロ、授業料もゼロ。何故こんなことができるのか?
インベスターZ1巻 神代圭介
(1巻)
それは裏で学年トップの生徒たちが株や投資でお金儲けしてるから。元手は学園が保有してる3000億円の資産。そこで得た利益が他の生徒たちの授業料の原資といった、道塾学園の運営資金になってる。画像は投資部の部長・神代圭介。高校3年生。

インベスターZ1巻 財前孝史
(1巻)
主人公は中学1年生の財前孝史。大の負けず嫌い。道塾学園に学年トップとして入学。最初は野球部に入部しようと考えていたものの、あれよあれよという間に「投資部」に入部させられる。最初は株に半信半疑で疑問を抱きながらも、次第に投資の魅力にハマっていくというストーリー。部長・神代圭介に憧れという感情と共に、ライバル視している。

だから漫画タイトルは「インベスター=投資家」というそのまんまの意味。「Z」は主人公・財前孝史の苗字の頭文字。ちなみに「インベスト(invest)」は動詞で「投資する」という意味。

最新刊までのストーリーを先にネタバレしておくと、道塾学園を創設したのは藤田金七という資産家。時代は100年以上前に遡って、多分明治時代ぐらい。そして投資部を創設したのが、財前龍五郎という生徒。苗字から察することができますが、主人公・財前孝史の曽祖父。

一方、藤田金七の来孫(玄孫の下)にあたるのが藤田慎司。現藤田家当主の孫。その藤田家当主が金七の孫なので、相当歴史が長いっちゃ長い。ただ藤田家の資産をずっと赤の他人が運用してるわけですから、藤田金七の血を引くものとしては面白くない。
インベスターZ9巻 財前孝史VS藤田慎司
(9巻)
だから藤田家の資産を自分が運用したいと言い出す。つまりイコール投資部の廃止と直結。そこで二人は投資部の存廃をかけた勝負を行う。短期間(1~2ヶ月)でどれだけ運用益を出すか?その勝負が10巻以降で行われる模様。

初心者でも観念的に分かりやすい

主人公・財前孝史は中学1年生で、しかも株初心者ということもあって、誰にでも分かりやすい内容になってます。特に一言でバーンと言い切るシンプルな格言が印象深い。すぐさま理解できるようなこともあれば、説明を聞いて「あー」と納得するものまで。

インベスターZ1巻 格言
(1巻)
例えば1巻だと「株は法則でやれ」。一番初歩も初歩である「利食いと損切り」のことを指してます。要するに確実に利益がなるように株を売って、また逆に損が増えないようにさっさと売れ、みたいなこと。他にも藤田慎司の妹・美雪だと「ラーメン屋に並ばない」(7巻)。世間の評判や他人の意見に左右されないことが大事など。

2巻では「株の売買で議論をするな」。何故なら他人と議論をしてしまうと、変な持論を展開させたくなる。結果、自分だけのこだわりを生んでしまう。ただ、こだわりは所詮こだわり。冷静な判断力を奪って、売れるときに売れない、買えるときに買えない。投資を失敗させる。

同じく優秀な者同士での議論も投資失敗を招くんですが、理由は真逆(6巻)。今度は自分のこだわりを主張するようになるのではなく、意見のすり合わせを行おうとする。AさんとBさんの主張をハイブリッドに混ぜた投資方法に集約されていく。でも、単に妥協の産物に過ぎない。しかも失敗した場合、責任のなすりつけ合いを招くという最悪の展開。

インベスターZ2巻 格言186P
(2巻)
神代圭介曰く、「金を掘ったやつに金はいない」。アメリカでは百年以上前にゴールドラッシュがあった。金脈を掘り当てようとこぞっと労働者たちが集まった。でも金を掘ってた労働者よりも、そいつらを相手に商売をしたヤツが儲けてる。ジーンズを作ったオッサンとか労働者を運ぶための汽車やレールを整備したやつ。そういえば、投資部部長・神代圭介が優秀なだけに、こういった格言を多く喋ってる印象。

最終的に、自分が『インベスターZ』を読んで体得した結論が、「株や投資は売ってナンボ」ということ。商品も製造しただけでは利益は上がらない。それと同じで株を購入しただけでは利益は出ない。むしろ株をいつまでも持ち続けることは「塩漬け」といって、一番利益を損なう行為。「アベノミクスで株価が上がるんじゃないか」と幻想を抱くのも危険。

そして「100万円を儲けることよりも、1万円の損を出さない方が大事」ということ。DMMがCMをバンバン出稿してるFX投資が最たる例ですが、一見するとギャンブルではありますが、やはり元手を減らしちゃダメ。だから他にも「ここで売ってたら100万円の利益を得てたのに、たった30万円しか儲けられなかった…」と悔やんだりするのは危険。確実に30万円の利益を出せたことをしっかり喜ぶべき。

実在する有名社長や有名企業が登場

ただ株や投資ばかりの話が続いても、やはり全く興味がない読者の心はつかめない。そこで実在する有名社長や有名企業がたくさん登場。

インベスターZ9巻 DMM会長・亀山敬司
(9巻)
前述のDMMの社長・亀山敬司や、6巻ではジャパネットタカタの社長が登場します。そこで企業理念やどうやって成功を収めるに至ったかを分析や彼ら自身の口で解説させています。似てるか似てないかは作者・三田紀房の画力(実際には外注してるらしい)から察してください。

インベスターZ8巻 ホリエモン
(8巻)
そして、あのホリエモンも登場。ベンチャー村という場所で主人公・財前孝史たちと出会う。ホリエモンは何故か写真写りにウルサイんですが、この程度でも満足したんでしょうか?はてさて。

ただホリエモンが登場すると途端に安っぽいマンガに見え出したのは自分だけ?所詮は粉飾決算で会社を大きく見せてただけやん…とか書いたら怒られるか。

ストーリーとしてはホリエモンが学生を相手にベンチャーとはなんぞやを指南する。そこで不老不死をビジネスにしたいと言い出す京大生が登場。その京大生は江戸時代と平成時代の平均寿命の差を例に出すんですが、江戸時代の寿命が短かったのは「乳幼児の死亡率が高かった」から。例えば杉田玄白は83歳まで生きてる。ホリエモンの破天荒感を出したかったんでしょうが、さすがになー。

でも企業名は知ってても、社長の名前や人物像を知ってる読者も少ない。ジャパネットタカタやソフトバンクの元社長・孫正義のようにメディアに積極的に登場する方がむしろ珍しい。

例えば、5巻だと朝日印刷という企業が登場。聞き慣れない読者も多いと思いますが、チョコラBBやユンケルといった製薬会社のパッケージをデザイン印刷してる会社、と説明すれば理解できる人も多そう。この朝日印刷がパッケージデザインを担当してから、これらの商品は爆発的にヒットしたそう。漫画の装丁も似たようなことが言えるんでしょうが、パット見の印象は大事。

インベスターZ3巻 セコムのCMの意味
(3巻)
他にもセコムのCMの意図を裏読みした解説は面白かった。女子レスリングの吉田沙保里などが登場してるやつ。ただお客に対してずっと訴求してるのかと思いきや、実は犯罪者に対しても向けられたCMだった。セコムに入ってる家には泥棒を働いても無意味だぞ!と威嚇してる。ある意味、一石二鳥。

株は就活にも役立つ?

だから実は株を始めるということは、同時に様々な企業や業界をリサーチする習慣が身につくということ。企業の詳細や功績を知らないとそこに投資はできない。

つまり株は大学生や専門学校生の「就活」に意外に役に立つ。株は企業とは一瞬の繋がりでしかありませんが、就職するとしたら一生の繋がり。企業リサーチは重要。特に中小企業は知らないことが多すぎる。しかもそこで小遣い稼ぎができたら、まさに一石二鳥。

7巻だと藤田美雪が言った「会社の社是を見ろ」が参考になります。社是を分かりやすく言うと、会社のモットー。多くは掛け声倒れで終わってることも多そうですが、意外に企業ごとに個性が読み取れる部分。

例えば、日清食品は「決断なき上司は無能と思え。社長に直訴せよ」。アメリカ企業やベンチャー企業も真っ青。なかなかすごい。まさに「ハングリー(HUNGRY)?」をウリにする食品企業。

ガソリンスタンドで有名な出光興産だと「人間尊重」。社員は家族だということで「クビ・定年・出勤簿・労働組合」の「四無主義」を2006年まで貫いたそう。逆に言うと、2007年以降は…?というか労働組合を作らせないのはどうなんだって感じもしますが(笑)

他にも身近な出来事で企業の働きも垣間見れることもあります。
インベスターZ2巻 マヨネーズをより多く消費させる
(2巻)
2巻で財前孝史は今まで使っていたマヨネーズの変化に気づく。マヨネーズの注ぎ口は星形の突起をしてることが多いですが、その突起を増やすことでマヨネーズの消費量を増やそうと企業が画策してた。

最近は消費税増税や円安のせいで、食品の材料費が値上がりしてる。だから内容量がかなり少なくなってる食品が実は多い。ポテトチップスも内容を減らしたのをごまかすために、やたらと袋がパンパンだったりします。そこら辺から企業の動向や苦しみが実際に読み取れます。

華やかに見える市場も意外に小さかったりします。例えば映画市場。やたらとテレビCMが放送されていたり、評論家崩れも多い業界だったりするので、ものすごく市場が大きいのかと思ったら日本の映画市場はたった1900億円。マンガ内では100億円市場の紅生姜業界と比較して小さすぎると批判。例えば自動車は60兆円市場。ちなみに自動車のブログ『くるまン。』も運営してるのでチェックしてみてね!

しかもゴリゴリのハリウッド映画や定番のアニメ映画が大半を占めてることを勘案すると、本当に映画市場は小さいと言えます。そりゃあダウンタウン松本のサブい映画を量産してるようじゃあなー…とは言え、マンガの市場も偉そうに誇れるほど大きくはないんでしょうが。

ただ前述のワンマン社長が経営してる企業は、個人的に危険だと思います。確かにワンマン社長は決断力が早く、上から下へのトップダウン型は、会社の規模が大きくなるほど尚更そういうスピード感は大事。でも、そのワンマン社長だっていずれは寿命を迎える。不老不死は現実的に有り得ない。

だから「企業の寿命=社長の寿命」という考え方ができます。実際、城南電機の宮路社長というのが昔いましたが、彼が亡くなったら途端に会社が倒産しましたから。まさに諸刃の剣。その企業への投資することも含めて、少し考慮に入れておいてもいいのかも。

総合評価

今年8月9月の株価の乱高下で大損ぶっこいてる読者も多そうですが、いかがお過ごしでしょうか?川合俊一がボビー・オロゴンは今頃息をしてるんでしょうか、はてさて。

専門用語は少なく、比較的株に興味がない読者でも読める内容。安倍総理が年金の金をブチ込んでることや、アルゴリズムで一瞬で大量の株がばいばいされてることなど、深く物事を知ることは難しいものの投資のための心構えぐらいは身につきます。例えば主人公・財前孝史が明治時代までタイムスリップして、財前龍五郎に会いに行くといったマンガ的な展開もあって飽きはしません。

他にも歴史面からのアプローチも意外に面白い。例えばお金が生まれた経緯やお札に切り替わった経緯などがあって、そして意外にも日本が第二次世界大戦で負け戦を突き進んでいた頃、実は株高だったらしい。

インベスターZ8巻 戦中は政府が市場に介入
(8巻)
その理由は日本政府が市場に介入してたから。株価さえ上がってたら国民や市民の批判を交わせると考えたから。今の安倍政権と同じ。年金のお金を使ってバンバンやって、それが株高を支えてるわけですから。

そして、日本が戦後に経済成長を成し遂げたのは「運」だとまで言い切る。要するに「単なる人口ボーナスがあった」から。日本人が団塊世代が優れているからというより、シンプルに人口が増え続けたからに過ぎない。現在の新興国市場を見れば、おおよそ正しいと言えそう。

他には日本は国土が狭かったからこそ、交通インフラを集中的に投資しやすかった。日本は国境はどこの国とも接していないので紛争という問題も抱えてないなど、それらの要因が複合的に重なっていただけにすぎない。その信ぴょう性はどこまであるかはさておき、面白い理屈で同時に合点がいくものでした。ちなみに、これらの発言は藤田家当主に語らせています。

マネックス証券などが必ずコミックス巻末で投資入門講座を載せるなど、若干のステマ臭は漂いますが、それでも勉強になる部分は多い。そういう意味で「面白い」と評価してみました。



◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◯おすすめ度…87点!!!!