『アイアムアヒーロー in OSAKA』のネタバレ感想。作者は本田優貴。花沢健吾 原作の『アイアムアヒーロー』のスピンオフ漫画。やわらかスピリッツ(小学館)で配信されてました。


あらすじ物語・ストーリー内容

舞台は大阪。主人公は「辰男」という、しがないバイトの雇われ店長。性格はお気楽で、人生は無計画。辰男の彼女である「こずえ」は漠然と不安を抱いていた。そのこずえが友達の結婚式帰りの飛行機内で事件が起きる。

アイアムアヒーロー in OSAKA 大阪にゾンビ

それが大阪全土でZQN(ゾンビ)の大量発生。こずえは関西国際空港に閉じ込められてしまう。正確には飛行機内ではありますが、外には大量のZQNが発生してるので出るに出られない。

アイアムアヒーロー in OSAKA 辰男
そこで普段は頼りない辰男でしたが、愛するこずえのために動く。果たして辰男は漢を見せられるのか?無事こずえを助け出すことはできるのか!?…みたいなストーリー。

アイアムアヒーロー in OSAKA 大阪にゾンビ
ちなみに「なんでやねん!?」の部分は「なんやねん、これ」とか「う、うそやん」の方がリアリティが出そう。「なんでやねん」だとツッコミ要素が強くなるので、ちょっとゾンビが発生している状況を把握できてる感が出てしまう。言葉にも変に力強さがあって、「うそやん」とかの方がヘタレっぷりが出るのかなと。

アイアムアヒーロー5巻 大阪
(アイアムアヒーロー 5巻)
本編の『アイアムアヒーロー』でも大阪が描かれたこともありますが、このZQNがギャルに噛み付いた後、警察官の「どーしました?」という職質されたことに対する反応。だから絶妙に会話が成立してない場面で、ここは「ZQNの得体の知れなさ」が表現されています。


ゾンビ(ZQN)描写は上手いが…

アイアムアヒーロー in OSAKA 辰男のダチ
ZQN描写はこんな感じ。独特のフォントの使い方がしっかり踏襲されていて、『アイアムアヒーロー』らしさが出ています。強いて言えば、まともな文章をしゃべりすぎ。冷静に読むとZQN感は薄れる。

アイアムアヒーロー in OSAKA バイク屋 ご都合主義的
辰男と馴染みのバイク屋の店長が自ら母親と心中する場面は少し胸熱。『アイアムアヒーロー』にはこういった場面はありませんが、スピンオフ漫画ということで別にアリなのかなと。

アイアムアヒーロー in OSAKA こずえのダチ ご都合主義的
こずえと女友達にも同じようなクダリがあります。


アクション描写は迫力がある

『アイアムアヒーロー in OSAKA』の作者・本田優貴は『東京闇虫』やその続編の『東京闇虫 パンドラ』を連載してた漫画家さん。別に画力がないって印象はありませんでしたが、画力があるって印象もありませんでした。

ただ意外にアクション描写が上手いのかなーと思わせました。

アイアムアヒーロー in OSAKA 飛行機ボーン
例えば、飛行機が道路に突っ込んでくる場面。飛行機でできた影もリアル。

アイアムアヒーロー in OSAKA 空港にゾンビ
空港内で暴れるZQNの描写も意外に迫力というか、鬼気迫る感じがありました。

そういえば関西国際空港で思い出しましたが、大阪の橋下徹が「伊丹空港を廃止する」とか叫んでましたが、アレは一体どうなったんでしょうか。大阪は大都市のくせに人口が減少したり、つくづく無能なお方でした。


総合評価 評判 口コミ


ただ『アイアムアヒーロー in OSAKA』は一巻完結のスピンオフ漫画。だから1巻というボリュームを考えると、少し内容を詰め込みすぎ。

例えば、こずえの女友達のクダリは不要。ZQNとしては自我を普通に保ちすぎてて、展開にちょっとご都合主義的な感じもしました。

あと途中から辰男が赤ちゃんを拾ってくるんですが、こちらも不要。まだこずえが不妊体質だったら何となく理解もできますが、二人は今後生きていく上で妊娠だってするでしょう。ましてや1巻という短期間でこの赤ちゃんが特に展開に変化をもたらしてはいないことも考えると、やはり正直必要性を感じません。

基本的にはアクションと辰男とこずえの愛だけで十分でした。しかし作者・本田優貴がここまでアクション描写を描けたことに驚き。『アイアムアヒーロー in OSAKA』はアクション主体で読むならアリか。

アイアムアヒーロー in OSAKA 大味なアクション
ただアクション描写も少し指摘しておくと、やや大味すぎる。確かに『アイアムアヒーロー』はアクション描写が一つのウリだと思いますが、あくまで日常的な範囲内で起きるから良い意味で恐怖感や違和感がある。

でも画像を見てもらったら分かりますが、関西国際空港がひっくり返る。もちろんこの描写そのものは上手くて迫力がありますが、ZQN発生してからそこに至るまでの説明が少なすぎる。「どうしてこんな事態が起きるのか?」ということが感覚的に理解しづらかった。さすがに突拍子がないかなと。

そういえば今現在ビッグコミックスピリッツでは横槍メンゴや伊藤潤二や石黒正数などが、同じように『アイアムアヒーロー』の読み切りスピンオフを掲載中。いわゆるアンソロジー。8週連続の企画だからおそらく単行本化されるはず…と思ったら案の定、『アイアムアヒーロー 8TALES OF THE ZQN』が発売されました。そのレビュー記事| すごないマンガがすごいは既にアップロード済みなので良かったら。