『アイアムアヒーロー』1巻から20巻のネタバレ感想をレビュー。作者は花沢健吾。掲載誌はビッグコミックスピリッツ。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックのゾンビ漫画。『アイアムアヒーロー in OSAKA』といったスピンオフ漫画も発売されたり、累計発行部数が600万部を突破するなどなかなかの人気。

そろそろ主演・大泉洋で実写映画が公開されるそう。ヒロインにはエラm…有村架純と長澤まさみが出演しているそう。長澤まさみは小田つぐみ役ってことで、きっと映画ではあの豊満な乳を惜しげも無く披露してくれることでしょう。ちなみに長澤まさみの身長は168cmと意外にデカイ件。

そこで映画公開の前に面白いか面白くないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は鈴木英雄(ひでお)。35歳のしがない漫画家。とは言っても過去に一作だけ連載しただけ。しかも上下巻の2巻のみ。そして今はある工口漫画家の元でアシスタントとして、女体の××にトーンを貼ったりしてるだけの空疎な日々。

ただ突如として街中はZQN(ゾンビ)だらけになってしまう。
アイアムアヒーロー1巻 彼女てっこ ZQN
(アイアムアヒーロー 1巻)
鈴木英雄の彼女・てっこもZQN化し、次々と襲ってくる。まさに絶体絶命のピンチ。ちなみに映画だと、てっこ役は片瀬那奈。

アイアムアヒーロー3巻 鈴木英雄
(アイアムアヒーロー 3巻)
ほぼ何の取り柄もない鈴木英雄だったが、唯一の武器は猟銃。これまでひたすら脇役キャラのような冴えない人生を歩んできた鈴木英雄は、果たしてこの状況を乗り越えることはできるのか?そして何故ZQNたちは発生したのか?ZQNたちの目的は?…みたいなストーリー。

詳しくは『アイアムアヒーロー 1巻』のネタバレ感想でも読んで下さい。自分の中でトップクラスに面白かった1巻でした。


ゾンビ描写(ZQN描写)がキモ怖い

『アイアムアヒーロー』はゾンビ(ZQN)描写が怖い。気持ち悪い。

アイアムアヒーロー15巻 素通りするZQN
(アイアムアヒーロー 15巻)
基本的に見た目がほぼ人間。メガネは掛けたままなど、人間として生活してた部分を絶妙に残してる。どうしてもゾンビは身体をドロっと溶かしたいところですが、「血管」など些細な箇所を上手いこと使ってキモさを表現してる。「不気味の谷現象」とか言うんでしたっけ。そういうのに近いもんがあって、だからこそ恐怖が煽られる。

アイアムアヒーロー5巻 赤ちゃんのZQN
(アイアムアヒーロー 5巻)
赤ちゃんゾンビの描写だって容赦ありません。

アイアムアヒーロー2巻 女アシスタント
(アイアムアヒーロー 2巻)
主人公・鈴木英雄が働いてた職場の女性アシスタントもZQN化するんですが、金属バットを咥えさせて食い止めるものの、まさかの菜々緒ばりのローリング◯ェ◯を披露。ZQNは人間時代の習性が出てしまうので…ってことなんですが、こういう下品な部分はいかにも花沢健吾らしい。

アイアムアヒーロー8巻 井浦 チンコもぐ
(アイアムアヒーロー 8巻)
ショッピングモールに立てこもってたグループのリーダーだった井浦だと、セリフの文字(フォント)の使い方が絶妙にキモい。一応文章としては成立してそうなんですが、よく読むとやはり意味不明。それがZQNの気持ち悪さを際立たせる。

ちなみに直前に井浦は自分のイチモツをシコシコしながら、最終的にブチッと引きちぎってしまうんですが、実写映画だと吉沢悠というイケメン俳優が演じる予定。果たしてシコシコぐらいはやってくれるんでしょうか?(笑)

アイアムアヒーロー16巻 小田つぐみ
(アイアムアヒーロー 16巻)
主要キャラクターの小田つぐみがZQN化したときも、その演出が遺憾なく発揮。実写映画だと長澤まさみが演じる予定。『アイアムアヒーロー』の実写映画は第二弾第三弾とあるかも知れないので、今月公開予定のやつではこのクダリまでストーリーは進まないかも。

アイアムアヒーロー17巻 パイプ椅子トラップ
(アイアムアヒーロー 17巻)
ZQNと戦う時も人間側は派手な武器を振り回すってことではなく、例えばパイプ椅子を並べてトラップとして利用するとか、身近なもので戦うのがリアル。『アイアムアヒーロー』は「日常が壊れていく」のがテーマの一つでもあるらしく、ZQN描写も含めて、あくまでそういった日常をベースにしてるのが面白いのかなと。

アイアムアヒーロー14巻 鈴木英雄 猟銃に入れ歯
(アイアムアヒーロー 14巻)
老人ZQNの口に猟銃を突っ込んでぶっ放した場面だと、鈴木英雄の猟銃に入れ歯だけがカタカタと残ってる。こういう些細なポイントを切り取った着眼点が見事。あくまで「日常の延長線上にある」ってことを少ない情報でズドンと伝えるアイデアが面白い。

アイアムアヒーロー19巻 監視するZQN
(アイアムアヒーロー 19巻)
ただ最近はZQNのデザインが先鋭的になりすぎてて、もちろんそこにはしっかり意味があるものの、非日常性の方が上回ってるのはちょっとどうかな?と思う部分も。それだけストーリーが進んでる and 佳境に入ってる証拠ですが。


変化が乏しいコマの連続だからこそ映像的

『アイアムアヒーロー』は1巻のオチも含めて、良い意味で大胆にページをムダ使いしてる。

アイアムアヒーロー4巻 コマ割り
(アイアムアヒーロー 4巻)
一コマずつ時間が徐々に進んでいくので映像的。どのコマも大きさが同じ。だからこそ細かい違いに気付きやすく見入ってしまう部分もある。ゾンビ漫画で凝視させられるってのは、読者からしたらただただ恐怖でしかない。

アイアムアヒーロー4巻 女子高生のZQN コマ割り
(アイアムアヒーロー 4巻)
女子高生のZQNが迫ってくる場面が好例ですが、そのことでジワジワとZQNが確実に迫ってくるのが恐怖感を倍化させる。この走り方がなんやねん。

アイアムアヒーロー17巻 コマ割り
(アイアムアヒーロー 17巻)
医者のZQNが迫ってくる場面だと、背景が両方のコマにきっちり丁寧に描かれてるからこそ、そのZQNがグワッと迫ってくる圧迫感が表現されてる。「動くもの」と「動かないもの」をはっきり差別化することで、「動くもの」がより躍動感(?)が出ます。

アイアムアヒーロー21巻239話
(アイアムアヒーロー 21巻)

アイアムアヒーロー21巻240話
(アイアムアヒーロー 21巻)
本当に背景が細かくキレイに描かれてる。トレースが悪だという風潮もありますが、それはマンガのジャンルや使い所にも寄る気がします。背景をリアルに描写するからこそZQNの存在が違和感に映るし、逆にリアルな生活空間に溶け込ますことができて恐怖感が煽られる。

どうしても反面としてストーリーが進みづらいデメリッがあるので勇気が入りますが、一瞬の恐怖を緻密に描くだけでここまで震えるものなのか。へばり付くようなイヤな余韻だけが残る。もはや二次元だけではなく、三次元の枠すら超えた恐怖があります。ゾンビ漫画というジャンルに限らず、こういった演出はマンガの中で効果的に働きそう。


伏線の張り方が上手い

『アイアムアヒーロー』はまずゾンビ(ZQN)描写に目が行きがちですが、意外にストーリー性が高い。もっと言うと伏線の張り方が上手い。『ハンターハンター』もそうですが、後から読み直さなくても伏線の仕掛けに気付ける。少なくとも読み直せば確実に気付く、分かりやすさが良い。

アイアムアヒーロー9巻 伏線の張り方
(アイアムアヒーロー 9巻)
例えば食料確保のためにお店に入ったとき、チラッとカレンダーを見やると「出産予定日」の文字。16ページ後ぐらいにトイレから登場した女性ZQNが妊婦。今まさに赤ちゃんを産もうとしていた瞬間で、そのZQNの股からは既にZQN化した赤ちゃんが…みたいな。

プロットが綿密に練り込まれてるのかストーリー展開も行き当たりばったりではないので、ZQN描写に不安感を抱くことはあっても、読んでて伏線がしっかり回収されるという安心感はあります。

同じく9巻だと、鈴木英雄も担当している漫画編集者が女漫画家と不倫旅行…もとい取材で台湾に行く。作者・花沢健吾のことですから、実際に不倫旅行してた編集者さんがいたんでしょう。二人がホテルで行為後に喋ってるんですが、その会話の中に「サイフ捜してたら変な子供に足かまれちゃったよ」という女漫画家のさり気ない一言があったりする。

1巻だと彼女・てっこからのメールの文面に「何か急に体がだるくて寝てたよ。(ムチャクチャ寒いよ体がきしむよ)最近バイトが忙しかったからかな~?」というさり気ない一文が添えられてる。つまり既にその時点でてっこは感染済み。

そして鈴木英雄がZQN化したてっこの家に行く直前に、横断歩道橋の上から自衛隊車両を見たり、てっこのアパート前で「なんだ、このにおい」と鼻をつまむ鈴木英雄の仕草がある。そういう一つ一つの仕掛けや描写が全体的な世界観のリアリティーに繋がってる。

5巻の段階で既に来栖が動画配信サイトに登場してたり、11巻だと一軒家に立てこもってた来栖組
ヒゲのハゲが中田コロリと無線で通信してる。ハゲが「都内は危険な状態ですか?どーぞ」と話すと、「危険でしゅ。少し前までヘリや警察のサイレンが鳴ってましたが、今はとても静かでしゅ」という独特の語尾の話し方をする男から返事が返ってくる。改めて読み直すと伏線が一目瞭然で、後から読み直す面白さがある。

最近の漫画家は伏線を張るのが好きですが、後から読み直しても気付かないぐらい細かすぎたり、いまいちどう話が繋がってたのか分からなかったりしますが、『アイアムアヒーロー』という作者・花沢健吾の伏線は大胆かつ明らかだからこそ高評価。


ZQNの目的とは?

こういった伏線を見るだけで『アイアムアヒーロー』のストーリー性が高いことが分かりますが、ただ闇雲にZQNから鈴木英雄や小田つぐみたちが逃げてるわけではなく、「ZQNは何故生まれて、どこへ向かっていくのか」というゴールが設定されてるらしい。

アイアムアヒーロー20巻 集積脳ZQN
(アイアムアヒーロー 20巻)
ZQN個人個人には意思が基本的にないものの、どうやらZQN全体には共通の意識があるらしい。例えば人間だった当時を含めた記憶や、今現在目で見えているものはZQN同士で共有し合ってるっぽい。これは「掲示板」のような概念で表現されてて、ZQN同士でも過去に共通の記憶があれば会話できたりもするっぽい。

そしてZQNは何か「一つの大きな目的」に向かって南に動いてるらしい(11巻参照)。じゃあ、その目的とは一体何なのか?

アイアムアヒーロー16巻 ZQNを食べるZQN
(アイアムアヒーロー 16巻)
また中には自我を持つZQN…もっと正確に言えばZQNを攻撃するZQNがいる。画像はスペインかどっかに現れた謎のZQNでモブZQNを食べてる最中。

アイアムアヒーロー12巻 来栖
(アイアムアヒーロー 12巻)
これは日本でも来栖(狂巣)というZQNを操作できるようなZQNがいる。だから仲良くZQNと肩なんか組んじゃってる。

コイツらは人間としての意思を残してるので、いわば「半ZQN」という存在。間違いなく「ZQNの敵」とは考えられるものの、じゃあ簡単に「人類の味方」と位置付けてもいいのか?敵の敵は味方という単純な話ではないはず。そもそも何故同じZQNを攻撃する必要があるのか?

アイアムアヒーロー6巻 早狩比呂美 フケ
(アイアムアヒーロー 6巻)
ヒロインの早狩比呂美もZQN化してしまうんですが、こちらも「半ZQN」のような存在。途中で人間とZQNの間をさまよってたものの、結果的に人間としての意識を完全に取り戻す。でも肉体はZQNだからめちゃめちゃ強く、そのままZQNと戦ったりもする。

ただ来栖(狂巣)曰く、「オレたちZQNは早狩比呂美のものだ」とのこと。比呂美は『進撃の巨人』でいうところの「エレンの軸」みたいなもんなのかなーと勝手に推察してます。比呂美自身は19巻あたりでそのことに気付いて、結果的に鈴木英雄の元から離れる。人間に戻ったように見えて、やっぱり比呂美はZQNのままだった。だから愛する鈴木英雄を傷付けないために…みたいな選択か。

ここだけ読むと人類を助けるため(?)には早狩比呂美がキーマンとしか思えませんが、むしろ鈴木英雄がキーポイントと言えます。何故なら、比呂美は鈴木英雄のことがやっぱり好き。19巻で比呂美が初体験を済ませたのもネットでは気持ち悪がられてましたが、きっとそこには意味があるはず。比呂美の恋心はストーリーに活かされるはず。もっと言うと鈴木英雄も半ZQNっぽい。

アイアムアヒーロー15巻 鈴木英雄と来栖
(アイアムアヒーロー 15巻)
実際、鈴木英雄がZQNに一時取り込まれた時は、前述の来栖(狂巣)がピンポイントで鈴木英雄を襲ってくる。早狩比呂美を頂点としてZQN全体が動こうとする時に、比呂美の意思を揺らがせる鈴木英雄は邪魔な存在になるからだと思います。

だから『アイアムアヒーロー』は単にゾンビから逃げ回ってるだけの無機質なサバイバル漫画かと思いきや、実は人間ドラマが下地に込められてて意外にストーリーも面白い。


総合評価・評判・口コミ


『アイアムアヒーロー』の感想レビューをまとめると、きっとゾンビ好きにはたまらない。グイグイ読ませてくれる展開は面白い。だからゾンビ漫画に興味が無い読者でもハマりそう。ゾンビ漫画としては王道なアプローチをしつつも、どこか目新しさもあるっていう不思議な面白さがあります。

ただどうしても前述のようにコマの連続を使った映像的な演出が多く、これは裏を返すとリアルタイムで読んでるとストーリー展開のスピードが遅く感じる。ただ、きっと現状のスピードが適正値。面白いからこそヤキモキ感じてしまうだけ。少なくとも期待感が裏切られることは少ないはず。

そして先程は『進撃の巨人』に少し触れましたが、実はアプローチや表現こそ違えど『アイアムアヒーロー』と内容や設定、ストーリーのオチも含めて両者には共通点が多いのではないかと思ってます。それは『アイアムアヒーロー』が最終回を迎えたら、改めて全巻のネタバレ感想記事で触れたいと思います。

…ということで以上、実写映画公開を記念して「アイアムアヒーローは面白いか?」を考察してみた。映画は尺が短いのできっとZQN描写がメインになるか。